平成21年9月県議会での知事提案説明

公開日 2009年09月27日

更新日 2014年03月19日

平成21年9月高知県議会定例会での知事提案説明 (9月25日)

1 補正予算の編成について
2 緊急経済対策について
3 産業振興計画について
  (計画の推進について)
  (地産外商戦略・アンテナショップ)
  (海外への販路開拓)
  (高知市内でのアンテナショップ)
  (土佐・龍馬であい博と観光振興の取り組み)
  (公共交通の維持・利用促進)
  (一次産業分野の取り組み)
  (産業振興計画の改訂)
4 新型インフルエンザへの対応について
5 高知医療センターの経営改善
6 教育について
  (全国学力・学習状況調査の結果と対応)
  (高知県教育振興基本計画の策定)
  (全国生涯学習フォーラム高知大会の開催日の決定について)
7 高知県・安徽省友好提携15周年と今後の交流ついて
8 議案


 本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成21年9月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。

 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。

1 補正予算の編成について

 先月実施されました衆議院議員選挙を受けて、先日、新しい政権が発足いたしました。

今回の選挙で、ほぼすべての政党において、その公約の中に地方分権の推進を掲げておられたことにも表れておりますように、地方を重視し再生させるといった視点は、今後の国政の運営にあたって、欠かすことのできない基軸となるものだと考えております。

 新政権は、「地域主権」を政策の大きな柱の一つとしております。国と地方を通じた財政の健全化や社会保障の立て直しなど今後の政策課題が山積する中、公約に掲げられた「国と地方の協議の場」を早期に設置し、地方の意見を聞き、地方の実情に応じた実効ある政策を実施していただくことを願っております。

 全国よりはるかに先行している人口減少、高齢化や、疲弊した地域経済、立ち遅れている社会資本など、本県の抱える諸課題に対し、本県の実情にあった効果的な施策を間断なく講じていかなければなりません。引き続き、県勢浮揚に向けて、議員の皆様のお力添えをいただきながら、県政の歩みを進めていくとともに、国に対しては、本県の実情に応じた説得力のある理屈に基づいた提言を行ってまいりたいと考えております。

 今議会では、現下の情勢にかんがみ「緊急経済対策の切れ目ない実施」、「産業振興計画の一層の加速化」、「喫緊の県政課題にタイムリーに対応」の三つの柱に基づき、総額211億円余りの補正予算を提案しております。

 第一に、一部で下げ止まりの動きがうかがわれるものの、世界的な金融危機のあおりを受けて依然として厳しい県経済をしっかりと下支えするため「緊急経済対策の切れ目ない実施」を図ってまいります。このため、7月補正予算に引き続き、「地域活性化・経済対策臨時交付金」を活用した雇用の創出や地域活性化のための事業を実施しますとともに、道路特定財源の一般財源化に伴い創設されました「地域活力基盤創造交付金」などを活用して、命の道の整備をはじめ全国に比べて極端に立ち遅れているインフラの整備を推進する等の事業を行ってまいります。

 第二に、「産業振興計画の一層の加速化」を図ってまいります。4月以降の計画の実行過程で生まれたチャンス等にスピード感を持って確実に対応するため、計画の大きな柱であります地産外商戦略の推進や、開催まで4カ月を切った「土佐・龍馬であい博」のPRなどの取り組みの強化、また、本県の強みである農林漁業の支援策の拡充などに努めてまいります。

 第三に、「喫緊の県政課題にタイムリーに対応」していくことも求められております。先月末に公表されました「平成21年度全国学力・学習状況調査」の結果を踏まえた学力向上対策や、この秋にさらなる流行が懸念されます新型インフルエンザ対策などを実施してまいります。また、県民の皆様の命を守る救急医療施設や、子どもや障害のある方などが入所する社会福祉施設の耐震化など県民の皆様の安全・安心を確保する事業、さらに、子育て支援事業や地球温暖化対策に関連した事業も実施することといたしております。

 これらの事業につきましては、国の補正予算をできる限り活用することにより、一般財源の負担を最大限抑制することに努めました。例えば、補正予算で計上した公共事業の地方負担額の9割相当額が交付される「地域活性化・公共投資臨時交付金」を当初予算における地方単独事業に充当することにより、財政調整的な基金の取り崩しをおよそ33億円抑えるなど、財政健全化の一層の推進に努めたところであります。

 さらに、本県の実情を積極的に訴えたことによる国の交付金の確保や、地域雇用創出推進費の創設に伴う地方交付税の増額などによって、先日公表いたしました平成27年度までの中期的な財政収支の試算でお示ししておりますように、この期間における財政運営には、なお厳しさは残るものの一定のめどが立ったものと考えております。

 他方、現在、国においては、平成21年度補正予算の執行停止や、揮発油税などの暫定税率の廃止、国庫補助金の見直しによる一括交付金制度の導入など、地方財政の先行きにかかわる検討が行われようとしております。

 こうした検討に際しましては、「国と地方の協議の場」等、地方の意見が反映される仕組みをつくり、地方の実情や事業の必要性などを丁寧に検証した上で、地方の意見に最大限配慮されることが必要だと考えております。

 特に、目下、国の平成21年度補正予算の見直しが図られているところですが、本県では、厳しい経済状況等にかんがみ、基金にかかわる事業を含め本県の実情に照らして必要な事業を着実に実行していくとの考えの下、予算編成を行ってきております。国においては、地方に混乱を引き起こし、停滞を招くことがないよう、丁寧な対応をしていただきたいと考えております。

 

2 緊急経済対策について

 次に、今回、補正予算で提案いたしております個別の政策とその背景についてご説明申し上げます。

 まず、緊急経済対策についてご説明申し上げます。

 本県の7月の有効求人倍率は、0.39倍と前月比でわずかながら上昇しましたが、昨年の同時期に比べますと、0.1ポイント下回っており、依然として厳しい水準にあります。

 こうした状況に対し、県では、「ふるさと雇用再生特別基金」と「緊急雇用創出臨時特例基金」を活用し、平成23年度までの3年間で6,500人の雇用を目指す「あったか高知・雇用創出プラン」に取り組んでおります。これまで進めてきた介護現場の体制の充実などに加え、今回の補正予算で河川環境の整備、港湾美化対策をはじめとする事業を実施するなど、引き続き雇用機会の掘り起こしに努めるとともに、雇用の創出と県経済の体質強化を同時に進めていく観点から、産業振興計画の実行の過程で事業者の方々が各種の事業を推進するために必要となる体制の整備などに関して、これらの基金を最大限に活用した支援策を講じることとしております。

 こうした取り組みにより、現段階で生み出された雇用機会は、合計で  2,423人となりますが、引き続き、プランで示した目標の達成に向け、市町村とも力を合わせて、雇用の場の創出に努めてまいります。

  また、現在の全国的に厳しい雇用情勢は、来春卒業予定の高校生や大学生の就職にも、大きな影を落としています。来春に卒業する予定の本県高校生のうち就職を希望している生徒に対する8月末現在の求人数は、前年同期に比べほぼ半数で、求人倍率も0.66ポイント減少し0.65倍となっています。

 このため、高知労働局やハローワークと連携して、県内の経済団体などに、高校生の採用枠の拡大について要請をいたします。また、本県高校生の就職を少しでも有利にするため、高校生緊急就職対策事業として、高校生に対する面接等の個別指導、就職試験対策の実施や、就職担当教員等による企業開拓などに緊急に取り組んでまいります。

3 産業振興計画について 

(計画の推進について)

 次に、「本気で実行」を合い言葉に、県民の皆様のご参画をいただきながら取り組んでおります高知県産業振興計画の実行状況及び今後の対応策についてご説明申し上げます。

 実行元年である平成21年度も、はや半年が経過しようとしておりますが、この間、私が本部長である産業振興推進本部や地域アクションプランを推進する地域本部の立ち上げなど計画推進のための体制整備を行いましたほか、地産地消、地産外商の取り組みや、総合補助金を活用した各地域の事業なども関係者の皆様のご努力により順次進められております。

 計画の進行管理に関しては、これまで四度の産業振興推進本部会議を開催し、産業成長戦略や地域アクションプランの進捗状況の点検と、実行にあたって生じる様々な課題の確認、対応策や新規施策の検討などを行ってまいりました。さらに、各界、各層の代表者で組織します高知県産業振興計画フォローアップ委員会において、各分野でのこれまでの実践に対する検証や評価、今後、さらに充実させていく取り組みなどについて検討いただいているところです。

(地産外商戦略・アンテナショップ)

 産業振興計画の大きな柱である地産外商戦略を担う、一般財団法人高知県地産外商公社を8月3日に立ち上げました。

 県産品の販路開拓や販売拡大については、これまでも、昨年を上回る頻度で、商談会やホテルなどでの高知フェアの開催に取り組んでまいりましたが、この公社の設立によって、よりスピーディに、かつ踏み込んだ対応が可能となり、地産外商戦略は新しいステージを迎えました。

 公社では、テイクオフプランとして発足後150日間の具体的な行動の実施計画を定め、県産品の販売支援や商品開発の支援に取り組んでおります。また、首都圏の新しいアンテナショップを活用した本県の観光と食文化の情報発信も行うこととしています。

 具体的には、県外の百貨店や量販店、ホテルなどへの県産品の仲介やあっせん、東京ビッグサイトなどで行われる展示会や商談会への出展機会の確保などにより、県内事業者の営業活動を支援してまいります。

 これらの取り組みは、昨年度は1年間に10件程度であったものが、本年度では、既に19件実施され、今後も17件の開催が予定されるなど、大幅に増加しています。こうした機会をできる限り増やし、事業者の皆様の販路開拓や販売拡大、商品の改良や開発につながるよう様々な支援を行ってまいります。

 なお、首都圏の新しいアンテナショップにつきましては、物件の選定を進めておりますが、現時点では最終的な決定には至っておりません。アンテナショップの開業に向けましては、収支の見通しや物件の選定に加えて、取り扱う商品の選定、店舗のコンセプトや盛り込むべき機能、店舗内の機能配置といった運営計画が重要となるため、物件の選定と併せて運営計画の検討作業も進め、できるだけ早期に具体的なプランをお示しできるように取り組んでまいります。

(海外への販路開拓)

 海外への県産品の販路の開拓についても、香港、上海、シンガポール、韓国などアジア地域を中心に活動を始めております。

 海外進出にあたっては、商習慣の違いや複雑な貿易実務への対応など様々な課題があります。このため、本年7月に4名の貿易促進コーディネーターを県庁内に配置し、企業の皆様の貿易に関する様々な相談に応じる体制を構築しましたほか、海外事務所と一体となって県内での輸出商談会や分野別・国別のセミナー等を開催するなどの取り組みを進めております。

 国別の対応について申し上げますと、まず、香港向けに関しては、本年5月の「香港への県産品輸出セミナー」開催を皮切りに、「香港食品販路開拓オリエンテーション」といった、販路開拓のためのセミナーや個別の相談会を実施しました。こうした取り組みを受けて、11月には香港で現地バイヤーとの商談会等を行う「香港食品販路開拓経済ミッション」を計画しております。

 さらに、上海におきましては、輸入食品を多く扱う高級スーパーである「シティショップ」で8月下旬に開催された「高知県フェア」に私も直接出向き、「シティショップ」を運営する企業のトップの方とフェアの定期開催をはじめとする県産品の販売拡大策などについて意見交換をしてまいりました。こうした取り組みは、中国という巨大市場への進出の足がかりになるのではないかと期待をしています。

 次に、シンガポールにおいては、先月末から今月初旬にかけ、シンガポール伊勢丹で四国フェアが開催され、好評であった商品は定番化されるなど、県産品を海外で売り込むきっかけが生まれています。

 また、韓国につきましては、今月8日から9日に、高知港の姉妹港などで構成されます港湾のネットワーク組織「INAP」の会議が木浦市で開催されましたが、私も高知港の代表として同会議に参加し、さらなる相互交流を進めていくことを確認してまいりました。この会議に併せ、経済ミッション団を編成し、県内企業12社の方々が個別商談などを通じて、木材製品などの県産品の販路の開拓に取り組まれました。また、私自身も韓国プロ野球のSKワイバーンスを訪問するとともに、韓国観光公社や韓国の大手旅行業者を訪問し、本県への誘客を働きかけてまいりました。

 今後とも、産業振興計画で定めた新しい仕組み、手法を最大限活かして、海外への「地産外商」に取り組む県内事業者の皆様を支援してまいります。

(高知市内でのアンテナショップ)

 また、県内の大消費地である高知市に県内各市町村の産品を販売するアンテナショップを設置することについて、産業成長戦略及び高知市の地域アクションプランにおける取り組みの一環として、4月以降、高知市や関係者の方々と検討を進めてまいりました。この8月にいわゆる「地域商店街活性化法」が施行され、商店街の活性化を図る事業への国の支援が強化されましたことから、今回の補正予算において、この制度を利用して民間の事業者が行いますアンテナショップの設置を支援することを提案いたしております。

 県内市町村の産品が一カ所に集まることで、アンテナショップとしての魅力が高まる上、出品者から見れば貴重なテストマーケティングや販路開拓の場ともなります。観光情報も併せて発信することなどで、県内外の皆様が気軽に立ち寄っていただけるスポットとなることを期待しております。

(土佐・龍馬であい博と観光振興の取り組み)

 大河ドラマ「龍馬伝」の放送に合わせて、来年1月16日から開催します「土佐・龍馬であい博」の開幕まで、残り4カ月を切りました。

 現在、メイン会場としてJR高知駅前に設置しますテーマ館「高知・龍馬ろまん社中」や高知観光情報発信館「とさてらす」の建設、さらには県内3カ所のサテライト会場の整備などの準備を急ピッチで進めており、先月10日からは、メイン会場とサテライト会場の入場券の販売も開始いたしました。

 また、誘客活動に関しては、これまでは、旅行商品化に結びつけるためには早い段階でのセールスが必要であるとの観点から、旅行会社の商品企画部門を主な対象として、「土佐・龍馬であい博」や本県の観光資源を旅行商品に取り上げていただくためのモニターツアーの実施やセールス活動、情報の提供などに努めてまいりました。その結果、本県の提案や情報提供が反映された旅行商品も企画されてきました。

 さらに、こうした取り組みに加え、全国からより多くの観光客の方々に本県にお越しいただくため、一般のお客様、観光客となっていただける皆様に直接アピールする取り組みもこの夏以降本格的に開始いたしました。

 先月末には、東京・原宿での「スーパーよさこい」や名古屋での「にっぽんど真ん中祭り」の会場、また本県と共に「龍馬伝」の舞台となる長崎県や九州最大の都市である福岡でPRを行いましたほか、継続的に多くの人々の目に触れるように、「土佐・龍馬であい博」のキャラクターを車体全体に描いたラッピングバスを東京と大阪への高速バスに導入しました。このバスは、イメージキャラクターの着ぐるみなどを乗せ、県外で観光客誘致のためのキャラバンを行う際にも利用いたします。

 このほかにも、11月下旬には、名古屋空港に隣接するショッピングモール内で県産品の販売や「土佐・龍馬であい博」のPR活動を行う「よさこい高知フェア」を開催しますほか、「龍馬伝」の放送が開始される来年1月には、東京駅に近接するオフィスビル「丸の内ビル」で、「土佐・龍馬であい博」の開幕直前プロモーション活動などを行うこととしております。

 また、県内におきましても、各地域の観光資源の磨き上げを着実に図っていく必要があります。現在、「土佐・龍馬であい博」関連のプレイベントの実施等に加えて、スピード感を持って各地域での広域観光ルートの企画や積年の課題である二次交通の整備に努めておりますが、新たに、本県の美しい景観を多くの皆様に観ていただくための景観整備を全県的に実施したいと考えております。素晴らしい景観でありながら多くの皆様にご覧いただけていなかった個所を選定し、景観を阻害している草木を伐採することで、写真などが撮りやすい「フォトスポット」と、車窓からの眺めを楽しんでいただく「ビューエリア」の整備を行ってまいります。

 今後とも、首都圏や関西圏を中心としたPRイベントやキャラバン活動の実施、旅行雑誌やマスメディアでの広報などによって「龍馬のふるさと高知」をアピールし、より多くの観光客の皆様が、「土佐・龍馬であい博」をきっかけに本県にお越しいただけるよう、またお越しいただいた皆様に満足していただけるよう、万全の準備を整えてまいります。

(公共交通の維持・利用促進)

 県民の皆様の生活と産業を支えます公共交通事業は、景気の低迷等により依然厳しい状況にあります。

 鉄道輸送では、利用者の落ち込みにより大幅な収入減となっており、一層の経費削減などが避けられない状況となっていますし、また、フェリーにつきましても、収入の大きな柱であるトラックの利用が大幅に減少しています。航空路線も利用率の低迷が続いており、航空各社は路線の維持に向け懸命の努力を重ねています。

 県としては、こうした公共交通の維持は、産業振興の上でも、県民生活の上でも重要な課題であるととらえており、今後とも交通事業者などへの支援や利用促進に向けた取り組みを進めてまいります。航空路線のうち、名古屋線と福岡線は特に利用率が低いため、先にご説明しましたとおり、名古屋空港と福岡空港において「土佐・龍馬であい博」のPRと県産品の販売などを行うキャンペーンイベントを実施し、両路線の利用促進にもつなげたいと考えております。

 県内の公共交通は、中山間地域だけでなく、都市部においても利用者の減少などにより採算性が悪化し、路線の維持が課題となっています。お住まいの地域の路線がなくなることは、高齢者や障害のある方をはじめ住民の皆様にとって大きな問題です。このため、一部路線において、路線を再構築し効率的な運行を行う実証実験のための補助を事業者に対して行うこととしております。併せて、県と関係市町村で、中央地域の都市部における交通問題を協議する研究会を立ち上げ、将来にわたって持続可能な公共交通の仕組みを検討してまいります。

(一次産業分野の取り組み)

 本県の基幹産業である農業については、強みを伸ばしつつ、直面する課題に対応するため、生産から流通販売までの一元的な支援を行っております。

 篤農家を中心として生産者同士が学び教え合う仕組みをつくることで、高い品質と収量を確保する「まとまりのある産地づくり」に取り組みますなど、生産面での体質の強化を図りますほか、そうした強みを活かしつつ消費流通構造の変化にも対応するために、産地と流通関係者や量販店などとの交流や販路開拓・販売拡大に努める「新需要開拓マーケティング事業」の促進を図ります。

 また、昨年の12月県議会でも申し上げましたとおり、県内全域・全品目で取り組むという、全国でも例を見ない本県の環境保全型農業をさらに進めるため、この分野の世界のトップランナーでありますオランダのウェストラント市と友好園芸農業協定を締結することとしております。現在、協定内容の最終の調整を行っており、11月には、私も農業者や農業関係団体の皆様をはじめとするおよそ40名の方々と一緒に、ウェストラント市を訪問させていただき、協定の締結を行うほか、同市との交流を図ってまいります。

 さらに、林業分野においては、森林整備を引き続き図り、併せて県産材の知名度の向上と需要拡大策を講じます。

 水産業分野においては、養殖魚を含めた、県産魚の加工・流通対策を推進しますとともに、広く本県水産物の消費拡大を図る事業などを実施してまいります。

(産業振興計画の改訂)

 このように、産業振興計画については、それぞれの事業の着実な実行はもとより、さらなる加速化に最大限取り組んでおりますが、経済の状況の変化や事業の進捗度合いなどに合わせて改訂をしていくことも必要でありますし、計画に不十分な点があれば、進行中であっても改善をしなければなりません。また、計画に基づき実行している「インプット」である個々の事業や仕掛けが、狙い通りの成果としての「アウトカム」につながっているのか、量的にも質的にも検証を行わなければなりません。

 改訂や改善の内容は、補正予算での対応に加えて、来年度の予算編成に着実に反映させる必要があります。今後、産業振興計画フォローアップ委員会でのご議論、議会でのご審議をいただきながら、着実にPDCAサイクルを働かせ、県経済の抜本的な体質強化につなげるべく、努力を重ねてまいります。

4 新型インフルエンザへの対応について   

 次に、スピード感を持って対応すべき喫緊の県政課題についてご説明申し上げます。

 新型インフルエンザについては、8月中旬から全国的に患者発生の報告数が増加し始め、8月21日には、インフルエンザが流行シーズンに入ったとの発表が国により行われました。

 本県でも、学級閉鎖や学年閉鎖が相次ぐなど、感染の広がりが見られます。

 こうした中で、残念なことに9月1日に、県内で初めて新型インフルエンザに感染した疑いのある方が亡くなられました。お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 今後、秋冬の流行期を迎え、大幅な患者の増加が懸念されますことから、適切な医療提供体制の確保を図っていく必要があります。このため、国から示された医療提供体制の確保に関する方針に従って、現在、医師会など関係機関と協議を進めており、速やかに必要な体制や仕組みを確保してまいります。

 また、抗インフルエンザウイルス薬につきましては、これまでも備蓄に努めてきましたが、このたび、来年度に購入を予定していた5万2千人分について、納期のめどがつきましたので、今年度中に購入するための補正予算を提案しております。これにより、目標量である県民の45パーセントに相当する34万7千人分の備蓄が今年度内に完了いたします。

 感染の拡大を防ぐためには、何よりも県民の皆様お一人お一人による、手洗いやうがいの励行といった感染防止対策の実践が重要です。今後とも感染の防止対策や感染した場合の対応などについて、きめ細かく県民の皆様に呼びかけをしてまいります。

 新型インフルエンザ対策としては、以上の点を含め県内関係者の皆様と共に総合的な対策を講じることが必要となります。このため、昨日、高知県新型・高病原性鳥インフルエンザ対策推進本部会議を開催し、県の新型インフルエンザ行動計画の見直しを行いました。今回の新型インフルエンザは感染力は強いものの、毒性は高くないと言われておりますが、重篤化する事例や亡くなられる事例も発生していることから、見直しにあたっては、強毒性を基本の対策としながらも、毒性や感染力を踏まえた柔軟な対応をとることを可能としました。今後は、この行動計画の下、市町村や医療機関など関係する皆様の協力も得ながら万全の対応を図ってまいります。

5 高知医療センターの経営改善対策

 高知医療センターの経営改善対策につきましては、先の7月県議会でご報告しましたとおり、現在、病院企業団と高知医療ピーエフアイ株式会社とが、医療センターのPFI事業契約の終了に向けて協議を進めているところです。当初は、秋頃を目途に基本合意をしたいと考えておりましたが、合意条件の整理にもう少し時間がかかりそうな状況であります。

 どういう内容で合意をするのか、腰を据えてしっかり協議をすることが重要であることから、引き続き、企業団、県、高知市が一丸となって取り組んでいきたいと考えております。

6 教育について

(全国学力・学習状況調査の結果と対応)

 次に、教育分野の取り組みについてご説明申し上げます。

 今年4月に行われました全国学力・学習状況調査の結果が、先月末に公表されました。

 中学校では、国語、数学ともに全国との差は、毎年度確実に縮まっておりますものの、引き続き全国水準を大きく下回っており、依然として厳しい状況にあります。また、小学校では、国語の平均正答率は全国と同程度でしたが、算数ではかえって全国との格差が広がるという厳しい結果となりました。

 私は、知事に就任して以来、子どもたちの将来のために学力の向上を何としても図らなければならないということを繰り返し申し上げてまいりましたし、教育委員会や市町村、各学校だけでなく、地域の皆様のご協力も得ながら県全体でこのことに取り組んでまいりました。

 生活習慣や学習環境で課題があった中学校の調査で、「家庭学習については勉強時間が30分未満」とする生徒の割合が減少し、全国平均並みとなるなど将来につながる明るい側面も見受けられるものの、学力の面ではまだまだ十分な結果に結びついていないという事実を教育委員会と共に真摯に受け止め、反省しなければならないと思っております。

 今回の調査において、「算数・数学の授業の内容がよく分かる」と答えた小中学生の割合が全国とほぼ同程度でありながら、学力の状況に依然として全国との差が見られるということは、現在の授業や家庭学習の質と量に課題があるということを示しております。

 このため、教育委員会では、今回の調査で正答率が低いなど課題の見られた問題の詳細な解説と適用問題を作成して各学校に配布するとともに、新たに、小学校4年生から中学校3年生までの算数・数学における質の高い教材として、基礎的な事柄の理解を深め定着を図るために家庭学習などで活用する「算数・数学シート」と、学んだことを応用する力を育てるために授業などで活用する「学習シート」を作成することとしております。こうした取り組みを通じて、現在実施している単元テストと併せて、より効果的に学力の向上を図ってまいります。

 また、一年間の学習の定着状況を把握するための確認テストを実施し、その結果必要があれば、学習の振り返りを行うなど、分からないことをそのままにせず、学習内容を確実に定着させる取り組みの強化も図ります。

 さらに、学習習慣の定着につながる放課後の学び場の整備を本年度から推進しておりますが、一層の加速化を図るために、今回の補正予算で「安心こども基金」を活用し、高知市において放課後児童クラブや放課後子ども教室、中学校の放課後学習室、合わせて77カ所で学習環境を充実させるための支援を行うこととしております。

 今後、調査の分析を進めていく中で、また、対策を進めていく中で新たな課題が見つかれば、その都度必要な対策を講じるなど、これまで以上に取り組みを徹底し、それを継続していくことで、子どもたちの学力の向上に確実につなげてまいりたいと考えております。

(高知県教育振興基本計画の策定)

 先日、教育委員会において、本県における今後10年間を見通した教育の振興を図るための中長期的な計画である「高知県教育振興基本計画」が策定されました。

 この計画は、昨年7月に策定し、本年5月に改訂されました「学力向上・いじめ問題等対策計画」などの既に策定された計画や、今後策定する個別の計画の上位に位置付けられるものであり、乳幼児期の教育や学校教育、生涯学習も含めた、すべての県民の皆様を対象とする総合的かつ体系的な計画であります。

 計画の策定にあたりましては、すべての分野の教育関係者に加えまして、産業分野との連携という視点から、企業や農家など産業界の皆様にも参画をいただき、高知県の教育の現状や課題、さらにはその課題の要因や背景を深く掘り下げるなど、徹底した議論が行われてまいりました。

 本県の教育は、先に申し上げました全国学力・学習状況調査の結果などから、学力や体力、生活面で大きな課題を抱えています。計画では、こうした課題の解決に向け、将来の基礎となる力を確実に育成する教育の実現、「強み」をさらに生かし伸ばす教育の実現、教育による社会変革の実現、という3つの方向性を掲げております。また、全国の中でも極めて厳しい現状にある社会や経済などの諸課題も教育によって解決する気概を持って取り組んでいくという強い決意も示しております。

 今後は、教育委員会においてこの計画を実行していくこととなるわけですが、私自身も積極的に支援していきたいと考えております。また、この計画の考え方、施策を県民の皆様に十分ご理解いただき、その施策を県民の皆様と共に着実に実行していくことを通じまして、高知県の確かな将来を築いていきたいと考えております。

(全国生涯学習フォーラム高知大会の開催日の決定について)

 平成22年度の本県での開催が内定しておりました全国生涯学習フェスティバルは、名称を「全国生涯学習フォーラム高知大会」として、来年11月20日から22日の3日間の日程で開催されることとなりました。

 この大会は、国民一人ひとりの生涯学習への意欲を高めるとともに、生涯学習の振興を図ることを目的とするものです。生涯学習を通じて地域をどのように変革していくかをテーマに開催しますことから、教育振興基本計画の実践にもつなげてまいりたいと考えております。

 今後は、市町村や民間企業、教育関係団体などの皆様による高知県実行委員会を設置し、フォーラムの具体的な内容について検討を行いますほか、「土佐・龍馬であい博」の期間中であることも踏まえ、県外から多くの関係者の皆様が本県にお越しになるこの大会が、本県の教育のみならず本県全体をアピールする機会となるよう、開催に向けて準備を着実に進めてまいります。

7 高知県・安徽省友好提携15周年と今後の交流について

 最後に、中国安徽省との友好提携についてご説明申し上げます。

 本年は、本県と中国安徽省が友好提携を行いましてから、15年の節目の年に当たります。このため、先月18日から23日までの6日間、県議会や県民の皆様と共に安徽省を訪問し、祝賀会や記念行事を通じて交流を深めてまいりました。

 実際に訪問してみますと、安徽省の発展ぶりには目覚ましいものがございましたし、今後高速鉄道の整備などが進みますと一層利便性が向上し、さらなる発展が期待される地域であると感じました。

 これまで、本県と安徽省との間では、主に文化的、人的な交流を行ってまいりましたが、今後は、それに加えまして県産品の販路開拓と販売の拡大など経済面でのつながりも一層深めてまいりたいと考えております。

8 議案

 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。

 まず予算案は、平成21年度高知県一般会計補正予算など3件です。

 このうち一般会計補正予算は、先ほどご説明いたしました「緊急経済対策の切れ目ない実施」などに必要な事業の経費として、211億円余りを計上しております。

 条例議案は、高知県医療施設耐震化臨時特例基金条例議案など16件であります。

 報告議案は、平成20年度高知県一般会計歳入歳出決算など18件でございます。

 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。

 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

 

Topへ