平成26年12月県議会での知事提案説明

公開日 2014年12月10日

平成26年12月高知県議会定例会での知事提案説明 (12月10日)

1 国の動きについて

2 12月補正予算について

3 台風第12号、第11号による被害への迅速な対応について

4 第2期産業振興計画の推進について
(1)地産外商公社の体制強化について
(2)まるごと高知について
(3)高知家プロモーション3年目に向けて
(4)第一次産業の担い手育成支援について
(5)観光の取り組みについて

5 南海トラフ地震対策について
(1)確実な津波避難対策の推進
(2)地域を主体とする避難所の運営
(3)その他の取り組み

6 日本一の健康長寿県づくりについて

7 教育の充実について

8 インフラの充実と有効活用について

9 中央地域の公共交通について

10 議案


 本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成26年12月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。

 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。

1 国の動きについて
 今月2日、第47回衆議院議員総選挙が公示されました。
 現在、我が国には、デフレからの脱却に向けた経済の好循環の実現、持続可能な社会保障制度の構築、さらには、南海トラフ地震等大規模災害への対応や、外交・安全保障問題など、多くの政策課題が山積しております。
 先月21日には、「まち・ひと・しごと創生法」が成立し、今後、国において、まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための「総合戦略」を策定することとなっております。この「総合戦略」などに基づき、東京一極集中の是正や抜本的な少子化対策の推進、地域経済の活性化といった、人口減少に歯止めをかけ将来にわたって活力ある日本社会を目指していくための施策をいかに進めていくかが重要な課題だと考えております。
 各政党におかれましては、今回の選挙戦を通じて、これらの課題について、地方の声をしっかりと聴いていただき、活発な政策論議を展開されますことを大いに期待したいと思います。

2 12月補正予算について
 今議会では、台風第12号、第11号による被害に迅速に対応いたしますとともに、5つの基本政策を着実に推進してまいりますため、総額98億円余りの歳入歳出予算の補正及び総額38億円余りの債務負担行為の補正を含む一般会計補正予算案を提出しております。
 具体的には、台風被害への対応に関し、復旧箇所の追加などに迅速に対応してまいりますとともに、5つの基本政策に関しては、外商体制の強化や林業の担い手育成といった「経済の活性化」、命をつなぐ対策などの「南海トラフ地震対策」、さらには、地域医療提供体制の確保といった「日本一の健康長寿県づくり」などを推進してまいりたいと考えております。

3 台風第12号、第11号による被害への迅速な対応について
 続きまして、平成26年度の県政運営の現状に関し、まずは、本年8月に本県に大きな被害をもたらしました、台風第12号、第11号による被害への対応についてご説明申し上げます。
 県としましては、これまで、9月議会でお認めいただいた129億円余りの補正予算によりまして、インフラ施設の災害復旧、被災された方々の生活の再建支援、さらには経済被害対策など、5つの対策を柱とした復旧対策を迅速に進めてまいりました。
 第一の対策である公共施設等の復旧に向けた対策に関しては、県管理道路の被災箇所につきまして、迂回に多少時間が必要となる箇所や大型車両の通行制限が残る箇所はありますものの、仮橋設置などの応急的な対策は年内に全て完了いたします。
 他方、河川など137カ所では、豪雨直後に把握できていなかった被災箇所が判明しましたほか、地すべり箇所など12カ所では、現地でのボーリング調査や斜面の監視を行った結果、工法の見直しが必要になってきており、さらに、安芸漁港沖防波堤においては、その後の台風第18号、第19号により被害が拡大するなど、追加的に予算措置を講じる必要が生じてまいりました。
 このため、今議会では、公共施設の復旧などに追加で必要となる予算63億円余りを提案しております。
 今後、速やかに工事の発注を行うなど、引き続き、被災箇所の復旧に全力を挙げてまいります。
 そのほか、第二の対策である浸水被害についての再度の災害防止対策に関しては、日下川など広範囲に浸水した7つの河川を対象に、4市町村で、浸水対策調整会議を設置しており、河川の流下能力を向上させるための河川の改修や内水の氾濫を防ぐための有効な対策について検討を進めているところであります。
 第三の対策である土砂災害から人命を守る対策に関しては、まず、観測史上1位となるなどこれまでに経験のない雨量を記録した地域の土石流危険渓流や地すべり危険箇所905カ所、砂防及び地すべり施設475カ所について、豪雨の影響によるひび割れなどの変状等の有無を確認するため、緊急の点検を実施しております。
 また、土砂災害が発生する可能性がある18,112カ所の危険箇所のうち、約4割しか指定の進んでいない土砂災害警戒区域については、9月以降、新たに463カ所の指定を行い、目標の年間1,000カ所の指定を上回る見込みとなっております。今後は、今回のような豪雨に備えてさらに指定の加速化を図りますため、区域指定の基となる基礎調査を、来年度は1,000カ所追加し2,000カ所で実施することとしており、この調査に必要な準備を進めてまいります。
 あわせまして、土砂災害への備えに関する冊子と危険箇所などを示したマップの全戸配布に向けた準備作業を進めてまいりますほか、住民の的確な避難行動に結びつくよう、豪雨や南海トラフ地震に伴う大規模な土砂崩れ、いわゆる深層崩壊を想定した住民参加型の防災訓練を、来年1月から2月にかけて県内5カ所で実施いたします。
 第四の対策である被災された方々の生活の再建支援に関しては、地すべりなどにより、長期の避難生活を余儀なくされた高知市鏡的渕地区及び土佐山菖蒲地区の皆様のために、教職員住宅の提供と民間住宅の借上げにより9世帯の住居を確保し、避難生活を支援してまいりました。このうち、避難指示が出ておりました鏡的渕地区については、地すべりに対する応急対策が完了し、今月4日、想定より3カ月程度早く避難指示が解除されたところであります。
 第五の対策である経済被害に対する対策に関しては、農業分野では、選果ラインの浸水被害により出荷及び販売への影響が懸念されておりました日高村のトマト選果場が、関係する皆様のご協力もあり、今月2日に再稼働いたしました。また、農作物の作付けなどに影響がでないよう、ビニールハウスの修繕など農業用施設の一日も早い復旧を引き続き支援してまいります。林業分野では、作業道について本年度末までに約7割の復旧を見込んでおり、残りの箇所についても早期の復旧に向け支援してまいります。

4 第2期産業振興計画の推進について
 次に、産業振興計画の推進についてご説明申し上げます。
 産業振興計画については、それぞれの施策がうまく連携できているか、実効性のあるものになっているかといった視点から各施策を確認し、さらなるバージョンアップに向け、議論を重ねているところであります。
 このバージョンアップの検討にあたっては、官民協働による地産外商の成果をいかに新たな設備投資や雇用の増加といった拡大再生産につなげていくのか、また、第一次産業の担い手の減少や中小企業者の休・廃業の増加といった状況に対し、いかに後継者を確保し事業承継を図るか、そして、それらを通じ本県産業を成長させていくのかといった点がポイントになると考えております。
 また、今後、各産業分野において、これまでよりも高い次元の新しいステージに踏み出していくためには、どのような姿を目指し、そのための目標はどうあるべきか、さらに、それを実現するためにどのような骨太の施策を展開していくかといった点も極めて重要であります。
 今後、こうした点について、関係団体や各分野の専門家の皆様からのご意見もいただきながら、議論をさらに深め、来年度のバージョンアップにつなげてまいります。

(1)地産外商公社の体制強化について
 次に、地産外商戦略など、個別の取り組みについてご説明申し上げます。
 地産外商戦略を担う地産外商公社は、平成21年の設立以来、県外で売れる商品づくりや、その売り込み、商談機会の確保、さらには、アンテナショップまるごと高知の運営による県産品の紹介や販売、情報発信などの活動を精力的に展開し、大きな成果を挙げてまいりました。
 具体的には、公社の外商活動を契機とした成約件数が、平成23年度は1,327件、平成24年度が2,603件、昨年度が3,333件、成約金額は、それぞれ3億4千百万円、7億6千8百万円、12億3千5百万円と、年を追うごとに大きく増加してまいりました。また、こうした成約金額やまるごと高知の店舗での売上原価などを基に算出した経済波及効果は年間約30億円となっており、さらには、本県や本県産品がテレビなどに取り上げられたことによる広告換算効果は年間約68億円に上るなど、公社の活動は、本県に大きな波及効果をもたらしております。
 このように首都圏における外商活動が大きく飛躍してまいりましたのは、地産外商の主役を担う多くの事業者の方々が、公社の機能を活用しながら、意欲的に外商活動にチャレンジしてこられた結果であると考えております。
 この10月に行いました、県と公社が支援する展示商談会などに参加している県内企業に対する県のヒアリングでも、今後、県外向けの取引が増加すると見込んでいる方々が、29社のうち9割を超えるなど、外商拡大に取り組む意欲が一層高まってきていると感じております。
 また、本年4月に公社が実施した事業者アンケートにおいても、97.8パーセントの方々から「今後の公社の活動に期待する」との回答をいただいており、公社活動に対する期待の高まりを感じております。
 さらには、販路開拓や商品の磨き上げを目指した、県内の食品加工事業者や農林漁業者の皆様と旭食品株式会社とのビジネスマッチングでは、40社の方々に応募をいただき、そのうち22社の商品が採用されるなど、事業者同士の連携による具体的な事業展開も進んでおります。
 こうした県内事業者の意欲や公社への期待の高まりを好機と捉え、さらなる取引の拡大につなげてまいりますため、地産外商公社について2点の機能強化を図ってまいります。
 1点目は、公社の体制強化であります。まず、首都圏については、新規の顧客開拓を加速化させるため、外商部門を増員いたします。また、これまで県が外商活動を支援してきた関西、中部、中国、四国、九州については、公社が首都圏で培ったノウハウやネットワークに基づきより一歩踏み込んだ支援を行うこととし、関西、中部を担当する職員を新たに大阪に配置するとともに、中国、四国、九州を担当する職員を高知事務所に増員いたします。
 2点目は、公社の体制強化と併せた、外商ツールの充実であります。具体的には、公社の高知県産品のデータベースについて、来年4月からの外商活動で活用できるよう、新たに700商品のデータ等を追加することとし、さらに今後、事業者自らが直接データを更新して、バイヤーが商品情報を検索し閲覧できる機能を追加するなど、バージョンアップを図ってまいります。

(2)まるごと高知について
 また、地産外商の拠点であるまるごと高知については、現在入居しております商業ビルの賃貸借契約の契約期間が本年度末で満了することから、不動産業者など関係者と協議を行いつつ、来年度以降の契約の継続について検討を重ねてまいりました。
 まず、契約期間については、外商に意欲的に取り組まれる事業者の方々が増えてきている中で、少なくとも第2期産業振興計画の目標年度として掲げている平成33年度までは、首都圏における地産外商の拠点が必要であるとの考えの下、提示された平成34年度までの8年間という期間が妥当であると判断したところであります。
 また、年間の賃料については、約1億5百万円と現在の賃料からは3割程度の増額となりますものの、最近進出した他県のアンテナショップなど周辺物件の賃料と比較しても、妥当な水準であると考えております。さらに、先ほど申し上げましたように、まるごと高知を拠点とする公社の活動により、年間約30億円の経済波及効果と約68億円の広告換算効果が生じており、店舗部分だけで見ても、約4億円の経済波及効果と約9億円の広告換算効果が生じているところです。加えて、昨年度は、店舗でのテストマーケティングや催事に179商品が出品されるとともに、店舗を利用した試食商談会が139回開催されるなど、店舗が商品の磨き上げや効率的な外商活動の支援機能を発揮していることなどを踏まえましても、今後、十分な投資対効果が期待できると考えております。
 以上のことから、現在入居しているビルでの賃貸借契約を継続してまいりたいと考えております。今後も、引き続き、まるごと高知を最大限活用することにより、県産品のさらなる販売拡大など、外商面での具体的な成果につなげてまいります。

(3)高知家プロモーション3年目に向けて
 高知家プロモーションについては、本年度、高知家の県外での認知度を25パーセントにまで高めることを目標に掲げ、「おすそわけ」をコンセプトとしてプロモーション活動を展開してまいりました。
 この度、昨年度と同様に、関東や関西の大都市圏在住の方々を対象にインターネットによる本県のイメージ調査を実施いたしましたところ、中間結果ではありますものの、高知家の認知度は、目標の25パーセントを大きく上回る33パーセントという好結果を得ることができました。
 3人に1人が高知家を認知しているという今回の結果については、様々な工夫を凝らしたプロモーション活動を行ったことに加え、県民の皆様を中心に15万個を超えるピンバッジをご利用いただき、高知家をPRしていただいたこと、また、県と協定を締結している県外の民間事業者の方々に、広告の際にロゴを使用していただいたことなど、多くの方々に高知家を盛り上げていただいたおかげであると受け止めております。
 まさに官民協働の取り組みにより、高知家に対する共感の輪が大きく広がってきたものであり、来年度は、この機運の高まりを逃すことなく、さらに具体的な成果を上積みしてまいりたいと考えております。
 そのため、来年度の高知家プロモーションでは、高まった認知度を維持・向上させつつ、高知家を認知した方々の、高知のものを買う、高知に行く、高知に住むといった具体的な行動をさらに誘発していくためのプロモーションを大幅に強化し、その上で個別分野でのセールスプロモーションにつなげるとの展開を図りたいと考えております。
 具体的には、高知家の一番の魅力である「ひと」を通じた呼び掛けが行動誘発には有効と考えられますことから、県産品や観光、移住といったカテゴリーごとに、できるだけ多くの高知家の家族の方々に高知家プロモーションに直接参画いただき、その特徴や魅力を動画等で強力に発信してまいりたいと考えております。加えて、若手社会人などターゲットを絞った雑誌とのタイアップ企画を展開するなど、高知家認知者の具体的な行動誘発に重点を置いたプロモーションを積極的に展開してまいります。

(4)第一次産業の担い手育成支援について
 第一次産業については、これまでの取り組みにより見え始めてまいりました明るい兆しを確かなものとするため、新たな挑戦による競争力強化の取り組みを展開しております。
 具体的には、まず、農業分野では、環境制御などの先進技術を活用して高品質で高収量を目指す次世代型こうち新施設園芸システムの普及を進めております。また、林業分野では、四国最大級の製材工場「高知おおとよ製材」が操業したほか、来年には木質バイオマス発電施設が稼働する予定であり、あわせて、CLT技術の早期普及を目指した取り組みも進めております。さらに、水産業分野では、産直市場「築地にっぽん漁港市場」を拠点とした本県水産物の外商活動や、高知家の魚応援店制度による大都市圏の飲食店と県内事業者との取引拡大に取り組んでいるところであります。
 こうした一連の取り組みにより、第一次産業に新たな需要が喚起されることを狙うと同時に、これを事業体などの売り上げ増と経営規模の拡大に着実につなげていくためには、各分野の成長を担う、さらなる人材の育成を図ることが必要になるものと考えております。
 そのため、農業分野では、本年4月に、新規就農者の育成と先進技術の普及拠点として農業担い手育成センターを開設するとともに、水産業分野では、ブランド養殖魚などの生産者を育成すべく、本年8月から養殖ビジネススクールを開講するなど、新たな人材育成の取り組みを進めているところであります。
こうした中、林業分野では、今後、さらなる原木生産量の増加が見込まれる中で、これまでも新規就業者を対象とした研修などを実施してまいりましたが、就業前後の人材育成の取り組みが十分な担い手の確保につながっていない、林業就業者や小規模な林業活動を実践している方々が林業経営を学び直す機会が十分でないなど、関係者のニーズに沿った学びの場が確保されていないことが課題となっておりました。
 そのため、林業活動実践者のさらなる意欲の向上、スキルアップから専門人材の育成までに対応した学びの場として、新たに林業学校を開校することとし、必要な予算を今議会に提案しているところであります。
 具体的には、まず、林業活動実践者が自らの技術や知識のスキルアップのため、森林経営や鳥獣対策といった幅広いテーマの中から興味のあるテーマを自由に選択して学ぶことのできる短期コースと、就業前に林業の実践的な技術や知識を学ぶことができる基礎コースを、来年4月に先行して開講したいと考えております。さらに、林業事業体の経営を担う高度で専門的な人材を育成する専攻コースについては、平成29年度の開講を目指しまして、専門家による検討会を設置しカリキュラムなどの検討を進めてまいります。
 こうした林業学校の取り組みを通じまして、夢を持ちながら林業に就業する若者を育てていきますとともに、より多くの方々が林業活動に専業や副業で携わっていただくことで、中山間地域の活性化にもつなげてまいりたいと考えております。

(5)観光の取り組みについて
 次に、観光振興の取り組みについてご説明申し上げます。
 本県の観光産業は、この夏の再三にわたる台風や記録的な大雨によりまして、旅館やホテルの宿泊キャンセルが相次ぐなど、例年、観光客数がピークを迎える時期に大きなマイナスの影響を受けました。
 こうした影響を補うべく、まず、直ちに取り組む対策としまして、県内の旅館、ホテル業の皆様と連携して、大手旅行会社の主要店舗においてPRキャンペーンを実施いたしましたほか、私も本県観光関係者の皆様と共に大阪で開かれた観光説明会に参加し、旅行会社の皆様に、本県への観光客の誘致をお願いしたところであります。
 こうした取り組みによりまして、例えば、9月に旅行商品化されました、「『高知家の食卓』県民総選挙」で選ばれた店舗での食事が特典となる宿泊プランでは、当初4カ月かかると見込んでいた5,000人の利用客を、販売開始2カ月間で既に達成するなど、具体的な成果が出ております。
 また、あわせまして、9月補正予算によりまして、テレビや雑誌などマスメディアでの情報発信や、広告宣伝を活用した旅行商品の販売強化も進めているところであり、こうした効果も、徐々に表れているものと考えております。
 さらに、来年1月には、第2弾の県民総選挙を実施して、本県の強みである「食」を中心としたプロモーションをさらに推進してまいりますほか、4月に開幕いたします「高知家・まるごと東部博」の成功に向けて積極的に支援を行うなど、さらなる誘客に引き続き全力で取り組んでまいります。

5 南海トラフ地震対策について
 次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
 南海トラフ地震対策に関しては、命を守る対策に引き続き最優先で取り組みますとともに、助かった命をつなぐための応急期の対策にも本格的に取り組んでいるところであり、準備が整いましたものから、順次着手していくこととしております。
 今議会に提案している補正予算では、「命を守る」対策としまして、災害に備える県民の皆様の意識をより高めていただくため、できる限り多くの皆様にご利用いただけるよう、県所有の起震車の運行日数を増やしますとともに、「命をつなぐ」対策としまして、登下校中の発災に備え、県立特別支援学校のスクールバスに備蓄物資を整備することとしております。

(1)確実な津波避難対策の推進
 また、個別の主要な取り組みに関しては、まず、津波避難対策では、現在、津波から県民の生命を守るため、避難路や避難場所、津波避難タワーの整備が進められているところでありますが、今後、確実な津波避難対策を進めてまいりますためには、整備された避難空間に困難な条件の下でも実際に避難することができるのか、避難路の点検や訓練などによりさらなる検証を重ねていく必要があります。
 このため、県では、本年7月から、沿岸市町村の508地区すべての地域における津波避難計画について、まず、図上において、昼間と夜間、さらに、夜間に歩行が困難な同行者がいる場合という、3つのパターンの避難を想定した点検を実施いたしました。
 その結果、比較的移動に支障がない昼間の場合でも、津波到達までに避難場所にたどり着くことが困難な地域があることが明らかとなるなど、一部の避難計画について課題も見えてきたところであります。
 今後、こうした図上での点検結果も目安としながら、各市町村と南海トラフ地震対策推進地域本部とが連携し、避難計画を現地で点検することとしており、既にいくつかの市町村においては、計画どおりの時間や手段で避難できるか、避難するルートの安全性は確保できているかといった視点で、現地での点検を開始したところであります。具体的には、避難路や避難路に出るまでの路地において、古い空家やブロック塀、耐震性の確保されていない橋などが避難の妨げとなる恐れがないかといった点についても、確認を進めているところであります。
 点検の結果、避難計画に課題があることが明らかとなった場合には、避難場所の追加や夜間の避難に備えた照明の整備といった必要な対策を迅速に講じるなど、より困難な状況下でも津波から安全に避難できるよう、市町村や地域の皆様と共に取り組んでまいります。

(2)地域を主体とする避難所の運営
 南海トラフ地震が発生すると、多くの住民の皆様が長期間にわたって避難生活を余儀なくされることとなります。
 東日本大震災の発生当初、行政は人命救助に最優先で対応せざるを得なかったことなどから、避難所の開設や運営体制の確立などに、十分に取り組めなかったことが報告されております。
 本県においても同様の状況が懸念されますことから、地域の皆様に、自らが主体となって避難所を運営することの必要性を認識していただくとともに、住民同士で迅速に避難所を立ち上げるルールづくりなどに取り組んでいただくことが重要であると考えております。このため、東日本大震災における教訓も踏まえ、地域を主体とした避難所運営の体制やルール、施設の利用計画、また、高齢者や障害者など避難生活に配慮が必要な方を受け入れる態勢の考え方などを盛り込んだ「大規模災害に備えた避難所運営マニュアル作成の手引き」を作成し、10月に公表したところであります。
 今後は、地域が主体となった避難所運営体制の構築に向けまして、この手引きを基に、市町村において地域住民の方々と連携しながら避難所運営マニュアルの策定が進むよう支援してまいります。

(3)その他の取り組み
 助かった命をつなぐ応急期の医療救護活動については、この1年間、有識者による懇談会を設け、地震発生直後から1カ月程度の応急期における対策のあり方を検討してまいりました。
 懇談会では、「道路網の寸断などにより災害拠点病院など後方へ負傷者を搬送することが困難な時期には、災害拠点病院よりも負傷者に近い前方の医療救護所や救護病院における救護活動を可能な限り強化する必要がある」また、「その際には、地域の医療従事者はもとより、住民も参画した総力戦で取り組む必要がある」といったご意見をいただきました。そうしたご意見も踏まえ、先月開催された最終の会議では、いわゆる前方展開型の医療救護活動の実現を目指すことを柱とする県への提言が取りまとめられたところであります。
 この提言については、現在、内容の見直しを進めております県の災害時医療救護計画に反映してまいります。
 さらには、提言に具体的な対策として挙げられている、地域の全ての医療従事者が災害時の医療救護活動に取り組むための研修制度を創設いたしますなど、総力戦に向けた対策を進めてまいりたいと考えております。

 救命・救護活動などを迅速かつ効率的に行うための道路の啓開については、地域における防災拠点と総合防災拠点などを結ぶ地域内ルートと、高規格道路と総合防災拠点などを結ぶ広域的なルートの2つを優先することとし、年度内の計画策定に向けて取り組みを進めているところです。先月26日には、第2回の道路啓開計画作成検討協議会を開催し、国や自衛隊、建設業協会、警察本部など関係機関の方々の参加の下、防災拠点や啓開ルートの選定、啓開日数の算出基準などについて、協議を行ったところであります。
 その結果、まず、地域で負傷者を搬送するほか備蓄物資を受け入れる地域内ルートの起点となる地域の防災拠点として、命を守る、命をつなぐ、復旧の3つの段階を想定し、役場庁舎や避難所、ヘリポート、備蓄倉庫などの1,165カ所を選定いたしました。あわせて、これらの拠点と直近の総合防災拠点とを結ぶルートについて、道路の幅員や浸水区域を避けることなどを考慮して、市町村道724路線を含む計903路線を選定したところであります。
 また、県外からの応援部隊や物資を受け入れる広域ルートの拠点となる広域の防災拠点として、総合防災拠点、災害拠点病院、空港などの68カ所を選定いたしました。あわせて、これらの拠点と直近のインターチェンジとを結ぶ広域ルートについて、高規格道路や国道などを含む80路線を選定したところであります。
 これらの選定された路線について、啓開日数の算出にも着手いたしましたところ、幹線道路の橋梁が津波により被災する箇所や道路法面が揺れにより崩壊する箇所などが想定されました。このため、現在、代替ルートの検討や橋梁区間の復旧工法の再検討などを進めているところであります。
 今後は、実効性の高い計画となるよう、より早く啓開できるルートの再選定や啓開区間ごとの建設業者の配置、啓開手順書の作成などの取り組みを進めてまいります。

6 日本一の健康長寿県づくりについて
 次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
 医療提供体制の確保については、これまで、平成21年度に臨時的な措置として設置した地域医療再生基金を財源として、各都道府県が取り組みを進めてまいりましたが、本年6月、地域における医療と介護の総合的な確保を目指したいわゆる「地域医療介護総合確保推進法」が制定されたことを受けまして、今後は法に基づく恒久的な財源として、各都道府県が新たに「地域医療介護総合確保基金」を設置し、取り組みを進めていくこととなりました。
 本県においては、これまで、地域医療再生基金を有効に活用して、若手医師のキャリア形成支援に向けた高知医療再生機構の創設のほか、地域医療を担う医師の育成拠点となる県立あき総合病院の整備などの医師確保対策、災害拠点病院へのヘリポート整備支援などの災害医療対策といった様々な分野における医療提供体制の強化を進めてまいりました。
 新たに設置する基金については、これまで実施してまいりました医師確保や在宅医療の推進などの取り組みに加え、医師会や歯科医師会、大学など、関係団体から提案のあった取り組みにも活用してまいりたいと考えており、新基金を活用したこのような取り組みを進めるための予算を今議会に提案しているところであります。
 具体的には、在宅医療の質の向上を図りますため、高知大学を中心に行います、ICTを活用した医療、介護の関係機関による在宅療養患者の情報共有システムの構築を支援してまいります。また、医師養成奨学貸付金の指定医療機関など、地域の中核的な医療機関における医師の確保や定着を図りますため、医師住宅の整備を支援するなど、新基金を活用して医療提供体制の確保に向けた事業を進めてまいります。
 また、来年度からは、介護分野においても、高知県高齢者保健福祉計画及び第6期介護保険事業支援計画に基づく介護施設の整備や介護従事者の確保対策などに新基金を有効活用することにより、切れ目のない医療及び介護の提供体制の構築を目指してまいります。

7 教育の充実について
 次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
 教育委員会では、本年10月に、今後10年間の県立高等学校のあり方と方向性を示す県立高等学校再編振興計画を策定いたしました。
 この計画では、県立高等学校を取り巻く社会状況の変化を正面から受け止め、将来の生徒たちにより良い教育環境を提供していくため、「キャリア教育の充実」、「生徒や保護者の期待に応える教育活動の推進」、「生徒数の減少に対応するための適正な学校規模の維持と適切な配置」、「南海トラフ地震への対策の推進」、「次代を担う人材を育てる教育環境の整備」の5つの視点を基に、再編振興を進めていくこととしております。
 あわせて、今回の再編計画では、高知南中・高校と高知西高校の統合により新しい中高一貫教育校を設置し、大学進学の拠点校として県内トップのグローバル教育校を目指していくこと、また、須崎工業高校と須崎高校を統合し、進学と就職に実績がある両校の強みを生かした新たな高吾地域の拠点校としてさらなる発展を目指していくことなど、具体的な計画もお示ししたところであります。
 計画の内容については、先月、説明会などを通じて県民の皆様に丁寧に説明を行ったところであり、今後は、生徒や保護者、地域の皆様の期待に応えることができる活気と魅力あふれる学校づくりを目指して、統合により新たに設置する高等学校等の教育プログラムの開発、教育施設の整備や充実などに、しっかりと取り組んでまいります。

8 インフラの充実と有効活用について
 次に、建設業の活性化に向けた取り組みについてご説明申し上げます。
 県内建設業の活性化に向けましては、本年2月に策定いたしました「高知県建設業活性化プラン」に基づき、4月に建設業活性化支援窓口を設置し、技術的な相談や経営上の相談に応じてまいりましたほか、施工力の向上を目的とした建設業者向けの研修を実施するなど総合的な支援を行っているところであります。
 入札の不調、不落への対応では、「資機材の調達や労働者の確保に時間を要するために、十分な工期が必要である」といった声も建設業者の皆様から多く聞かれましたことから、それらに応えるべく適正な工期の確保に努めておりますほか、市町村に対しましても十分な工期の確保に向けて働きかけを行ってまいりました。
 これらの対策に加えまして、1年間のうち公共事業の事業量が少なく、特に中小の建設業者における従業員の一時的な解雇にもつながりやすい4月から6月にかけての端境期対策として、工事の平準化を進めてまいります。
 具体的には、来年度予算に計上する予定の県単独事業費の一部を前倒しして発注し、年度早々に工事の着手が可能となるよう、そのために必要となる債務負担行為の予算を今議会に提案いたしております。今回の対策などを通じまして、端境期における工事量を確保し、特に中小の建設業者の雇用継続や会社経営の安定化につなげてまいります。

9 中央地域の公共交通について
 持続可能な中央地域の公共交通を実現するため、多くの関係者のご理解とご協力の下、とさでん交通株式会社が設立されまして2カ月が経過いたしました。
この間、とさでん交通では、事業再生計画の達成に向けまして、月ごとに業績会議などを開催し、再生計画の目標と実績を比較分析した上で、目標と実績にかい離がある場合には、原因究明と対策の検討を進めるなど、経営改善のための経営管理体制を整え、全社一丸となって取り組みを進めているとお伺いしております。
 また、会社による取り組みのほかにも、関係機関との連携を図るため、先月28日、県と関係市町村、事業者などが参画した「中央地域公共交通改善協議会」を設立して、利用者である県民の皆様のご意見や利用状況等のデータを事業に反映させるなど、将来にわたって持続可能な公共交通ネットワークの構築に向けた取り組みを始めております。今後、この協議会では、バスや電車の利用促進などにつながるアイデアの募集をはじめ、広く利用者の皆様のご意見や潜在的なニーズを汲み取り、とさでん交通の経営に生かしていくこととしております。
 県としましては、今後、この協議会の場をはじめ様々な機会を通じて、事業再生に向けた取り組みをしっかりと確認してまいりますとともに、利用者目線に立った多様なサービスが提供され、県民の皆様に今まで以上にバスや電車を利用していただくことができますよう、関係市町村などと連携を図りながら、引き続き、支援してまいりたいと考えております。

10 議案
 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
 まず予算案は、平成26年度高知県一般会計補正予算などの6件です。
 このうち一般会計補正予算は、先ほど申し上げました台風第12号、第11号による被害への迅速な対応などの経費として、98億8千万円余りの歳入歳出予算の補正などを計上しております。
 条例議案は、高知県地域医療介護総合確保基金条例議案など10件でございます。
 その他の議案は、高知県立交通安全こどもセンターの指定管理者の指定に関する議案など20件でございます。
 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

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