1−12 賃金請求権の消滅時効

公開日 2023年07月20日

【相談内容】 (香川県労働委員会)


 未払いとなっている残業代などの賃金を請求できる期間はいつまででしょうか。また、賃金の時効を止めるためにはどうすればよいか教えてください。                 


【お答え】 


 令和2年4月から改正された民法が施行され、労働基準法も大きく見直されることになり賃金を請求できる期間が延長されました。
 給料、賞与、休業手当、時間外手当などの割増賃金及び年次有給休暇の賃金などについて未払いが生じた場合は、令和2年4月1日から請求できる期間が2年から3年に延長されました。これは、令和2年4月1日以降に支払期日が到来する賃金が対象になっていますので、令和2年3月31日以前に支払期日が到来する賃金については、これまでのとおり、請求できる期間は2年のままになります。(労基法115条、附則143条3項)
 退職金については、従来と同じく5年となっています。
 なお、休業手当、割増賃金、年次有給休暇の賃金、解雇予告手当について未払いが生じている場合には、労働者の請求があれば裁判所が未払金と同額の付加金の支払いを命ずることがありますが、これについても2年から3年に延長されています。(労基法114条、附則143条2項)
 労働者が賃金の未払いがあると気づいてから、請求に向けて手続をはじめても、時効の到来は着々と近づいてくるので、場合によっては賃金の未払いに気づいた時点で時効を止める必要があります。裁判所に訴訟を提起するのが一番確実な方法ですが、弁護士のところに相談しても、すぐ訴訟提起するのが難しい場合は、ひとまず時効を止める方法として「支払いの催告」があります。「支払いの催告」は、実際、催告をした証拠を保全するため会社に対して未払い賃金の支払いを求める旨を明記した請求書を配達証明付の内容証明郵便で行うようになります。これにより、6か月間の消滅時効の完成猶予の効果(時効が延びる)が得られることになります。ただし、6か月を経過すると時効が完成するので、6か月を経過する前に裁判所への訴訟提起、労働審判、労働局への個別労働紛争のあっせん申請などきちんとした時効の完成猶予の手段を取らなければなりません。(労働委員会の個別労働紛争あっせん制度には、残念ながら時効の完成猶予の効果がありません。)
 なお、「支払いの催告」によって6か月間の消滅時効の完成猶予の効果が得られるのは、1回だけですので注意してください。
 また、時効完成の間際に当事者間で賃金未払いの協議が継続している場合は、令和2年の改正民法で未払い賃金(権利)について協議を行う旨の合意が書面でされたときは、一定期間は時効が完成しないという規定が新設されています。(民法151条)
 時効の制度は複雑なことから、詳しくは法テラスや弁護士会などを通じて、法律の専門家に相談されることをお勧めします。

 

 

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