令和2,3年度研究報告 第44号 令和4年3月

公開日 2023年08月18日

1 地形に適した作業システムの選択に関する研究

 ー 地域別地形特性と作業システムの考察 ー 

【山﨑真、渡辺直史、鈴木志保、後藤純一】

  林業事業体が効率的な原木生産を行うためには、地形に適した作業システムを選択することが重要である。これまで、その選択に用いる地形情報には平均傾斜や起伏量、谷密度等が提案されているが、地形の複雑さについては用いられてこなかった。そこで本研究では、地形の複雑さを表す指標として等高線迂回率を用い、平均傾斜や起伏量と併用することで作業システムを選択する手法について検討した。さらに、実際の路網整備および林業機械の導入状況と比較することで地域ごとに適した作業システムと基盤整備の方向性について考察した。地形データには10m メッシュのDEM(数値標高モデル)を用い、オープンソースのGIS により地形情報の評価指標を算出し、適する作業システムの分類を行った。作業システムの分類結果と実際の状況は、従来架線とタワーヤーダの適地が多い県中部および東部では一致度が高いものの、西部では分類結果に比較して直接集材・単線地曳きや簡易架線向きの中小型の機械の導入割合が高い傾向にあった。地形から判断すると県全体ではタワーヤーダ等の中長距離架線が有利な箇所が多いが、基盤整備の状況や機械導入の経緯などの理由から実情が異なっている可能性が考えられた。

 

2 減圧及び高周波を用いた高付加価値乾燥材の少量多品種生産に関する研究

 【溝口泰彬、近田典章、市原孝志、宮部涼太郎

  木材の人工乾燥における混載乾燥( 異なる断面の同時乾燥) のモデル化を図るため、スギ柱角( 心持ち)を対象として、乾燥効率に影響を与えると想定される4 つの因子( 乾燥方式、断面寸法、混載による影響、乾燥前の見かけの密度) をもとにモデル化を検討するとともに、混載乾燥モデルにおけるシミュレーションによって得られた仕上がり含水率の分布を実際の仕上がり含水率の分布と比較することでその有効性を検証した。その結果、乾燥方式、断面寸法、乾燥前の見かけの密度の3 つの因子について仕上がり含水率に明確な差が見られたが、混載による仕上がり含水率への影響は非常に小さいことが分かった。また、蒸気式混載乾燥におけるシミュレーションを行った結果、得られた予測値は、実際の仕上がり含水率を概ね再現できていることが確認されたが、一部に改良の余地が見られたため、さらなるデータの蓄積やモデルの改良を行う必要があることが分かった。

 

3 CLT 等を使用した木造建築物の遮音性能向上に関する研究

 【市原孝志、溝口泰彬、近田典章、山中秀直】

  床衝撃音遮断性能について、CLT を使用した床については3 4 種類の仕様について検討した。その中で最も性能が高かったのは、CLT 板上にグラスウールを敷き床を設置した浮き床の仕様であった。また、SWP を使用した床については2 0 種類の仕様について検討した。その中で最も性能が高かったのは、複層(SWP 板+ 普通硬質石膏ボード3 層+SWP 板)にした上に浮き床を設置した仕様であった。
 空気音遮断性能について、CLT を使用した壁については1 4 種類の仕様について検討した。その中で性能が高かったのは、CLT 板の両面にCLT 板と接しないよう空間を設けて木下地を設置した仕様であった。また、SWP を使用した壁については1 0 種類の仕様について検討した。その中で性能が高かったのは、間柱等が千鳥状に配置され、普通硬質石膏ボードを使用した仕様であった。

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