天崎鍾乳洞トンネル

公開日 2009年03月28日

更新日 2014年03月16日

1.はじめに
 鍾乳洞は、平成13年11月7日、トンネル工事下半掘削中に発見されました。
 この鍾乳洞が発見された石灰岩層は約2億6,7千万年前に形成されたもので、浸食が始まったのが、約数十万年から数百万年前です。土佐山田町の龍河洞ほど大きくはないですが、その幻想的な光景は、「天然記念物級」と報道され、工事を一時中断して、空洞内部の調査やトンネルの構造検討、鍾乳洞の保存などの検討を行いました。

2.事業概要
路線名:県道土佐伊野線
工区名:土佐市吹越工区
延 長:1,200m(土佐市吹越から天崎) 
○計画概要
 構造規格:3種3級
 設計速度:40km/h
 計画交通量:15,000台/日
 幅 員:10m(1.0+6.0+0.5+2.5)
○事業の概要 
 事業期間:平成3年度から平成16年度
 全体事業費:2,040百万円
○天崎鍾乳洞トンネル 
 トンネル延長:109.0m
 全体事業費:750百万円
 事業期間:平成12年度から平成15年度
 掘削工法:NATM
 掘削方法:ロードヘッターによる機械掘削
 ☆トンネル工事の経緯
  平成13年 7月 掘削の開始(上半)
  平成13年11月 下半掘削の開始
  平成13年11月7日 鍾乳洞の発見
  平成13年11月 専門家による調査
  平成13年12月 潜水調査
  平成14年1月 潜水調査、揚水試験
  平成14年2月 地質調査、構造検討
  平成14年6月 工事の再着手
  平成15年6月 橋梁工事の着手
  平成15年10月 舗装、照明工事の着手

トンネル平面図

3.地質の概要
 基盤地質は、秩父帯南縁の三宝山層に属し、岩種は石灰岩で構成されています。詳細な地質調査の結果、特徴ある石灰岩がゾーン(帯)を形成して分布しており、その内訳は、石灰岩、鍾乳石石灰岩(仮称)、含泥質石灰岩で構成され、鍾乳洞や空洞のあるゾーンは、鍾乳石石灰岩層です。

トンネル地質縦断図

4.鍾乳洞の内部
 トンネル内部の空洞の状況です。
 空洞は、2段になっていて1段目まで地下水で満たされており、その内一段目の空洞は、高さ2m奥行き約15mほどあり、内部は、鍾乳石が乱立しています。また、下の段を潜水調査を行ったところ、こちらの空洞にも多くの鍾乳石があり、約15mいたところが鍾乳石などで狭くなっているため、その奥の状況は、どこまで続いているのか確認されていません。

5.天崎トンネル(仮称)・鍾乳洞調査検討委員会の開催
 このために工事の一時中止とほぼ同時に「天崎トンネル(仮称)・鍾乳洞調査検討委員会(会長:高知大学の鈴木堯士名誉教授)」を発足させ、鍾乳洞内部の調査や周辺の調 査を行うとともに、トンネルの専門家からトンネルの構造・施工方法について、また、文化財保護の立場や住民などから、意見や要望を聞きました。
 平成14年5月までの間に計4回の委員会を開催し、トンネル工法の検討や鍾乳洞の保存の方法について議論しました。
 結果、鍾乳洞のある区域に対して道路や鍾乳洞に影響を与えない構造として、トンネルアーチ部を補強するとともに、路面部は橋梁形式が採用されました。また、将来わたってトンネルの安全を点検するための管理用通路を設置し、一般公開にも利用するといった提言を受けました。

6.天崎トンネル(仮称)・鍾乳洞調査検討委員会での検討内容
 ○トンネル建設するための課題と対策として
  1.鍾乳洞が崩壊しても道路(トンネル)の安全を確保する。
  2.道路(トンネル)の将来の維持管理から鍾乳洞内を点検できる施設を確保する。
  3.鍾乳洞に極力環境負荷を与えない道路(トンネル)とする。
 ○構造検討
  1.鍾乳洞の保存方法に沿って、トンネル本体及び鍾乳洞周辺の具体的な構造方式を検討し、構造形式を決定する。
  2.周辺地盤のFEM解析等の解析検討
  3.トンネル本体及び鍾乳洞周辺の対策工の必要性の検討
 ○トンネル補強構造の選定
 地質調査結果より、下記の内容が明らかとなった。
  ・ 鍾乳洞分布範囲(L=18.5m)については、どこに空洞が出現してもおかしくないエリアであることから、トンネル支持期待が全く出    来ない。
  ・ 鍾乳洞分布範囲(L=18.5m)より起点側(南側)については、空洞が認められないことから、トンネル支持に問題はない。
    ただし、鍾乳洞崩壊によ る影響に留意する必要がある。
  ・ 鍾乳洞分布範囲(L=18.5m)より終点側(北側)については、左側壁部の下方に一部空洞が確認されているが、確認する範囲以    外広く分布することはない。このエリアは、支持が期待できる。
 以上条件により、比較3案を検討した結果、「RC断面補強梁+制振桁」を採用することとしました。
 なお、最終構造細目としては、極力スパンを縮小する目的から、桁支承はトンネルフーチング上に上載する構造としました。

☆トンネル補強区間
1. 覆工厚の変更
30cm → 90cm

2. 橋梁構造L=20.5m
構造:プレテンション方式
単純中空床版橋

7.交通振動に対する検討
 トンネル工事完成後、鍾乳洞に影響を及ぼすものとして、橋梁を通過する車両によって発生する振動があります。これには大きく分類して 
  1.上部工のたわみ振動に共振するもの
  2.上部工のねじれに共振するもの
  3.ジョイントでの衝撃的なもの
があります。振動対策を検討する場合は、「発生源対策」、「伝播経路上の対策」、「受信点側の対策」 の観点が必要となります。
 今回の振動対策の対象は、鍾乳洞内の石筍、石柱、ツララ石等が主体となることから発生源対策が主体と考えられます。そのため、振動の起因である「伸縮装置の段差解消」や「路面の凹凸の対策」等を図ることで、出来るだけ振動させない定性的な対策を行うこととしました。振動対策として、
  1.ジョイント部の「埋設型ジョイント」
  2.ゴム支承による振動抑制
  3.振動の少ない上部工(PCホロースラブ桁)
を採用し、また、有効性を検証するため、
  1.車両走行 時振動の実測値の把握
  2.鍾乳洞(主にツララ石や石柱等)の固有振動数を把握するための調査
を現在進めています。

8.管理用通路(管理と保存)
 トンネルを補強しても鍾乳洞の存在はトンネルにとって弱点となります。そこで、鍾乳洞の経年変化を観測するために管理用通路を設置することとしました。
 この通路は、鍾乳石石灰岩層を避けた位置を入口として、橋台に影響の少ない中央部に計画しました。
 また、この通路を利用して、鍾乳洞を一般公開を行うことが出来るような構造にもなっています(今後とも関係者と検討を行う必要があります)

9.さいごに
 偶然にも鍾乳洞を貫いた位置が影響の少ない天井部であることや、機械掘削により破壊や損傷を免れたことも幸いし、鍾乳洞の発見につながりました。県としても地元の貴重な資源として、観光や学習の場としての利用を期待しています。また、結果としてトンネル内に橋梁が架かる極めて珍しい構造となり、予算の増額となりましたが、貴重な資源を保存することができ、検討委員会の方々に感謝申し上げます。

現在,鍾乳洞内での現地見学はできませんので御了承下さい。なお,資料提供及びその他の箇所での見学は可能です。
 また,現在ホームページにて管理用通路,鍾乳洞内部等の状況を紹介しています。興味のある方は下のリンク
をクリックして下さい。
 鍾乳洞内部等の状況へリンク

その他のリンク


この記事に関するお問い合わせ

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