2.これまでの農業農村整備事業の実績と評価 2)

公開日 2009年03月18日

更新日 2014年03月16日


2)農業用用排水施設の整備


(1)用水施設

事業の目的と内容

  • 用水施設整備は農業生産に不可欠な農業用水を確保し、効率的に安定供給することにより、農業の持続的な発展や有利作物の導入を可能にします。
  •  そのために用水路の整備のほか、ダム、頭首工などの整備を行うものです。

   
 これまでの取り組みの成果

  • 本県のかんがい施設整備は、昭和20年代後半の仁淀川地区や40年代の物部川地区など、受益面積2,000ha規模の地区をはじめとして、昭和50年代まで県内の主要河川流域で実施され、県営かんがい排水事業では、幹線用水路100km、頭首工4カ所、ダム1カ所、ため池3カ所の整備を行い、6,791haの受益地に安定して農業用水が供給されるようになりました。また、団体営事業等での整備も含めた用水路総延長は878kmにものぼり、殆どの水田地帯で水不足の声を聞くことはなくなりました。
     【地区事例】
    ◆ 物部川右岸側に展開する約2,000haの農地にかんがいする山田堰井筋は、水稲二期作などにより県内最大の穀倉地帯を形成してきましたが、慢性的な用水不足の解消や、米の生産調整に伴う畑作物への転換に対応するため、昭和43年から昭和61年にかけて、頭首工や約26kmの幹線用水路を整備しました。
    現在では、ニラを中心に180ha余りでのハウス栽培や、葉タバコ、ネギなどの畑作が盛んに行われており、また、約1,000haの農地では、他産地よりも早く収穫する早期稲の産地を形成しており、本県でも有数の農業振興地域となっています。
      
  •  一方、畑作を主体とする地域では、110km余りのパイプラインを整備し、約700haの受益地に用水の効率的な供給を可能としています。
    土佐市新居地区や須崎市池ノ内地区では、用水の水質悪化や塩水化に対応するために新規水源を整備しています。
     【地区事例】
    ◆ 土佐市新居地区は、県内有数の施設園芸地帯で、約270本にも及ぶ井戸をかんがい用に利用していましたが、地下水利用の増大や海岸浸食による海岸線の後退などにより、地下水の塩水化が進行し、良質な農業用水の確保が問題となりました。このため、畑地帯総合整備事業を導入し、昭和57年から平成3年にかけて、表流水の浄化施設や約22kmのパイプラインを整備しました。
    整備後、特に、メロンは県全体の16%程度(57ha)を占めるまでに増加し、またネギについても12%程度(45ha)を占める作付けが行われています。
    一方、供用開始後20年余りが経過し、浄化施設の劣化やパイプラインの破損により維持管理コストが増加しており、将来的には営農への影響が懸念されることから、施設の機能診断を実施した上で、現在、予防保全対策を実施中です。

   
評価と課題

  • 農業用水の確保は、農業の基礎的役割を担うものとして必要不可欠であり、県営かんがい排水事業や畑地帯総合整備事業の受益地が優良な農業地帯として発展していることを見れば、手段としての有効性がうかがえます。
  •  本県の、基幹的な水利施設はこれまでに一定の整備を終えており、殆どの地域においては新たに取水施設を設ける必要性は少ないと考えられますが、畑作地帯などにおいて、今後塩水化などの水質悪化が生じた場合は、新たに水源を確保していく対策が必要です。
  •  一方、これまでに整備した基幹的農業水利施設の多くが老朽化しています。とりわけ取水堰の転倒ゲート等いわゆる「機械もの」の老朽化は深刻な問題であり、動作不能に陥ればたちまち広い範囲で大きな農業被害が発生することから、早急に対策に取り組む必要があります。
  •  基幹的用水路は「機械もの」と違い、ある日突然に機能を失うものではありませんが、その大半が耐用年数とされる40年を迎えようとしていますので、この5年間で地元土地改良区の啓発活動を行い、予防保全対策の具体的な計画を策定していくことが必要です。
  •  また幹線から末端までの一連の水利システムについては、幹線部分は「ストックマネジメント事業」等の更新事業を活用し、支線から末端については、「維持管理適正化事業」や「農地・水・環境保全向上対策」等を組み合わせて、効果的に延命化を図っていく必要があります。

  

(2)農業用用排水施設の整備
ア.用水施設

事業の目的と内容

  • 用水施設整備は農業生産に不可欠な農業用水を確保し、効率的に安定供給することにより、農業の持続的な発展や有利作物の導入を可能にします。
  • そのために用水路の整備のほか、ダム、頭首工などの整備を行うものです。

イ.排水施設

事業の目的と内容

  • 排水施設整備は農作物の湛水被害を防止したり、水田の排水不良を解消して収益性の高い水田農業を確立します。
  • そのために排水路の整備のほか、排水機場、排水樋門などの整備を行うものです。

これまでの取り組みの成果

  •  本県の排水施設の整備は、昭和20年代の後半から県営かんがい排水事業で開始された新川川地区や昭和40年代の香我美地区などを経て、昭和50年代には米の生産調整に伴い排水対策特別事業が開始されました。これらの事業により現在まで、91kmの排水路の整備を行い、2,924haの排水不良な水田を、畑作も可能な水田に改良してきました。このほか、団体営事業も含めた各種事業により整備してきた排水路の総延長は167kmになっています。
  •  また、排水路整備による自然排水のみでは湛水被害が解消できない地域において、昭和40年代以降、湛水防除事業や排水対策特別事業などにより44カ所の排水機場を設置し、2,387haの受益地の湛水被害を防止してきました。
     【地区事例】
    ◆ 水田の高度利用の事例として、ほ場整備事業と湛水防除事業に一体的に取り組んだ高知市春野町西畑地区では、湛水被害の解消により受益地の72%が畑作に転換され、施設キュウリの作付け面積増に加え、施設トマトや施設パプリカなどの導入が図られています。またこれに伴い認定農業者も5人から25人と大幅に増加し、県内でも優良な施設園芸地域となっています。
     

評価と課題

  •  排水施設の整備は、農地の排水条件を改善して湛水被害の防止や、農地の汎用化を図るなど農業生産の基礎的役割を担うものとして必要不可欠であると考えられます。このため、園芸農業など畑作を振興していく上で、湛水被害の解消や地下水位の低下などの条件整備が必要な地域では、今後も整備を行う必要があります。
  •  一方、これまでに整備した基幹的な排水施設の多くが老朽化しています。とりわけ排水機場(排水ポンプ)など、いわゆる「機械もの」の老朽化は深刻な問題であり、動作不能に陥れば広い範囲で大きな農業被害が発生することから、早急に対策に取り組む必要があります。
     

この記事に関するお問い合わせ

高知県 農業振興部 農業基盤課

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