障害のある人への配慮について 令和4年1月 高知県 ~ 目  次 ~ はじめに Ⅰ 基本的な心構え Ⅱ 障害の理解   1 視覚障害について   2 聴覚・言語障害について   3 盲ろうについて   4 肢体不自由について   5 内部障害について   6 重症心身障害について   7 知的障害について   8 発達障害について   9 精神障害について   10 高次脳機能障害について   11 難病を原因とする障害について Ⅲ 配慮の具体例   1 庁舎内での案内など   2 来客・窓口対応など   3 文書等の作成・送付、情報の提供など   4 会議   5 講演会等のイベント開催   6 緊急時の対応 Ⅳ 相談、苦情などへの対応、相談窓口 参考資料 1 高知県障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領 2 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 3 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 4 基本的な介助方法 5 合理的配慮サーチ 6 障害のある人に関するマーク はじめに  この手引きは、平成28年4月1日に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)に基づき策定した「高知県障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領」を補足し、職員が事務事業を実施するうえで、障害の特性を理解して適切な配慮が可能となるよう作成したものです。  障害者差別解消法では、地方公共団体等に「障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止」と「障害のある人に対する合理的配慮の提供」が義務付けられていますが、そもそも、行政サービスを提供する行政機関の職員は、不当な差別的取扱いをしないことはもちろんのこと、特に障害のある人に「配慮」することは当然のことと言えます。   職員の皆さんは、こうしたことを念頭におきながら、「職員対応要領」やこの手引きに基づく取組を積極的に進めていただくようお願いします。  なお、この手引きは、基礎的なものでありすべてに対応できるものではありません。今後、技術の進歩や環境の変化なども反映しながら、また、障害のある人や職員の皆さんからのご意見もいただきながら改善を重ねていきます。 Ⅰ 基本的な心構え 1 障害の有無や種類に関わらず、困っている人には進んで声をかけましょう。 ・ 外見だけでは障害のあることが分からない場合があるので、来庁者などの中に障害のある人が含まれている可能性があることを念頭におくようにします。 ・ 困っていそうな様子を見かけたら、「何かお困りですか?」や「何かお手伝いしましょうか?」など、一声かけて、自分でできるサポートをします。見てみないふりはやめましょう。(サポートを断られても気にする必要はありません。) 2 相手の「人格」を尊重し、相手の立場に立って応対しましょう。 ・ 介助者等を伴う場合でも、障害のある人本人に直接応対するようにします。応対に行き詰ったときに介助者等に助言を求めるようにします。 ・ 何らかの配慮の必要があると思う場合でも、思い込みや押しつけではなく、本人が必要としていることを確認します(障害の種類や内容ではなく、「どのようなお手伝いが必要か」を本人にたずねます)。介助者を伴う場合は、必要に応じて介助者等の意見も聞くようにします。 ・ 相手の話をよく聞き、目的などを的確に把握し、たらい回しにしないようにします。 ・ 相手の立場に立って、明るく、ていねいに、分かりやすい応対を心がけます。  障害のある人本人も、多くの場合、できる限り自分の力で行動しようとしています。「やってあげる」という意識を捨て、その人の意思を尊重します。介助は必ず本人の意向を確認し、必要な部分だけに留めるように心がけます。  介助者や手話通訳者が同行している場合、無意識に同行者を相手に話をしてしまいがちですが、対応する相手方は障害のある人本人であることを常に認識しておく必要があります。 3 コミュニケーションを大切にしましょう。 ・ コミュニケーションが難しい場合でも、敬遠したり分かったふりをしたりせず、明確に、ゆっくり、丁寧に、くり返し、相手の意思を確認します。 ・ 差別的な言葉はもとより、乱暴な言葉や不快に感じる言葉、子供扱いした言葉は使わないようにします。 ・ 意見の相違があっても、根気よく、建設的な対話を心がけます。 ・ 応対方法がよく分からないときは、一人で抱え込まず周囲に協力を求めます。  普段自分たちが何気なく使っている行政用語や略称、カタカナ語は、意味が伝わらない場合があります。相手に伝わるよう、内容を置き換えて、ゆっくり伝えます。 4 プライバシーには立ち入らないようにしましょう。 ・ 必要がないのに、障害の原因や内容などについて聞いたりしないようにします。 ・ 個人の情報については、守秘義務を守ります。 Ⅱ 障害の理解  まず、“障害”について理解しましょう。 ○“障害”は誰にでも生じ得るものです。  いつ病気になるか、事故はいつ起こるのか、誰にもわかりません。同様に、障害はいつでも誰にでも生じ得るものです。 ○“障害”は多種多様で、一律ではありません。  障害の種類も程度(重さ)も様々であり、同じ障害でも、人によってその症状は一律ではありません。また、複数の障害を併せ持つ場合もあります。 ○外見で分からない障害があります。  外見では障害があることが分からないことがあります。そのため、周囲の人に理解されずに苦しんでいる人もいます。 ○周囲の人の理解や配慮があれば、障害のない人と同様に日常生活や社会生活がおくれます。  障害の種類や程度は人それぞれ違いますが、周囲の人の理解や配慮、少しの手助けがあれば、障害のない人と同じように日常生活を営み、働いたり、趣味を楽しんだりすることができます。 ○「障害」と「障がい」  最近、「障害」を「障がい」と表記する自治体や団体等が増えてきましたが、これは、障害のある人やご家族等の心情などに配慮したものだと考えられます。  一方で、高知県が平成20年に実施した県民世論調査では、「障害」でよいと答えた人が43.2%、「障がい」に改めた方がよいと答えた人が11.4%、どちらでもよいが24.2%でした。また、内閣府が平成22年に行った「障害の表記の在り方に関するアンケート調査」では、「障害」の表記を改めるべきだと思う人が21.9%(障害のある人22.4%、障害のない人21.9%)であったのに対して、改めるべきだとは思わない人が43.0%(障害のある人44.6%、障害のない人42.9%)、どちらとも言えないが35.1%でした。(平成23年度版障害者白書)  このように、「障害」の表記については、国民(県民)の間で様々な見解があることから、高知県では現在のところ、表記を改める意思決定をしていません。 1 視覚障害について ■視覚障害とは  何らかの原因により視機能に障害があることにより、まったく見えない場合と見えづらい場合とがあります。視覚障害には、先天性のものと、事故や病気などにより生じるものがあります。  見えづらい場合の中には、 ・細部がよく分からない   ・光がまぶしい   ・暗いところで見えにくい ・見える範囲が狭い     ・特定の色が分かりにくい などの症状があります。 ■こんなことに困っています。 ・一人で移動することが困難です。特に、慣れていない場所では困難を伴います。 ・点字ブロックの上に、物や自転車などが置かれていると大変困ります。 ・目から情報を得にくいため、音声や手で触れることなどにより情報を得ています。 ・自分がどこにいるのか(自分の位置)、そばに誰がいるのか、説明がないと分からないことがあります。 ・人の視線や表情が分かりにくく、コミュニケーションに苦労します。 ■こんな配慮をしましょう。 ・白杖を使っている人を見かけたとき、困っているように見えたら声をかけます。  特に、白杖を頭上に掲げている場合は、SOSを発信しているシグナルです。進んで声をかけ、何に困っているか尋ねるようにしましょう。 参考資料(ワード版P56)参照 ・視覚に障害のある人は、周りの状況が分かり難いため、会話が始められないことがあります。また、知っている相手でも声だけでは分からないことがあります。声をかけるときは、まず自分の名前などを告げるようにします。 ・突然体に触れられると驚きます。声をかけるときは、できるだけ前方から話しかけます。 ・誘導する時は、相手に自分の肘の上か肩を持ってもらって、その人のペースに合わせて歩きます。段差の上り下りや曲がるときは、声に出して伝えます。 参考資料(P54)参照 ・用事が終わったら、視覚に障害のある人が自分で分かるところまで案内し、向いている方向などを伝えます。 ・ドアの開閉や車の乗降の際に、手を挟まれたり、頭や体をぶつけたりしないよう気をつけます。 ・「こちら」「あちら」「これ」「それ」などの指示語や、視覚による情報(色や形など)を表す言葉では、「どこ」か、「何」かわかりません。「○センチ右」や「時計で○時の方向」など、具体的に説明します。場合によっては、手で触れながら説明します。 ・視覚に障害がある人すべてが点字を読めるとは限りません。情報提供の際は、点字版に加えて大活字版を使用するほか、ホームページ等に記載の場合はテキストデータを作成してください。 ※資料作成については(P23)参照 ・身体障害者補助犬(盲導犬など)には、声をかけたり、触ったりしません。また、水や食べ物も与えてはいけません。 「点字」に対して、目を使って読む文字(ひらがな、カタカナ、漢字等)を「墨字(すみじ)」と呼びます。  白杖には3つの機能があります。 ・視覚障害があることを第3者に伝えること ・障害物から防御すること ・路面の状態などの情報を得ること  視覚障害のある人を案内する際に、最も注意しなければならないのは階段の上り下りです。階段は一歩間違えると、転落等の危険を伴うものであり、特に正確に位置などを伝えることが大切です。  案内の仕方は、参考資料(ワード版P54)参照 2 聴覚・言語障害について ■聴覚・言語障害とは  聴覚障害には、まったく聞こえない「ろう」と、聞こえにくい「難聴」があります。また、先天性のものと、事故や病気で聞こえなくなる中途失聴があります。  言語障害には、言葉の理解や適切な表現が困難な「言語機能の障害」(失語症、言語発達障害など)と、言語の理解には支障はなく発声だけが困難な「音声機能の障害」(吃音症、構音障害、発声機能喪失など)があります。また、聴覚障害と言語障害が重複することもあります。 ■こんなことに困っています。 ・外見では分かりにくい障害のため、周囲の人に気づいてもらえないことがあります。 特に中途失聴の場合は、話せる人も多く、「挨拶をしたのに無視された」などと誤解をされることがあります。失聴した年齢や障害の程度などによって聞こえ方は様々です。また、発声が困難な音声機能の障害のみの場合でも、言葉の理解や聴力にも障害があると誤解されることがあります。 ・放送や呼びかけ、自転車のベルなどに気づかないことがあります。また、音による状況判断ができない場合があるため、危険な目に遭うことがあります。 ・聴覚障害のある人とのコミュニケーション方法は、「手話」「筆談」「口話」など、その人なりの方法があります。補聴器をつけている人もいますが、明瞭に聞こえているとは限らず、「口話」などで話の内容を補っている人もいます。 ■こんな配慮をしましょう。 ・会話の方法が適切でないと話を伝えることが困難な場合があります。その人にあった会話の方法を確認するようにします。特に言語障害のある人への応対は、一つひとつの言葉を聞き分けることが大切です。分かったふりをせず、きちんと内容を確認するようにします。 手話・・・・・手話や表情で表わす言語です。中途失聴の人の中には、手話が苦手な人もいます。 筆談・・・・・互いに文字を書いて意思を伝え合います。もっとも手軽な手段ですが、中には読み書きが苦手な人もいます。 口話・読話・・・相手の口の動きを読み取る方法です。聴覚障害のある人が、口の動きを読み取ってくれる場合があります。その場合は、少しゆっくりはっきりと口を動かして話すようにします。 代用発声・・・・発声機能を喪失した音声機能障害の人の中には、声帯の代わりに食道部を振動させて声にしたり(食道発声)、電動式人工喉頭を首にあてて声にしたりする人がいます。筆談を併用する場合もあります。 ・窓口などに、「耳マーク」を掲示しておくと、聴覚障害のある人が相談しやすくなります。 ・音声によるコミュニケーションを希望されるときは、表情や口の動きが読み取れるよう明るい場所、周囲がざわついていない静かな場所に案内して対応します。 ・手話通訳者などが同行している場合でも、直接本人の顔を見ながら話しかけます。また、2人以上の人が同時に話しかけることは決してしないでください。 ・連絡手段としては、電子メール、ファックスなど、視覚を通じた伝達方法を活用します。 ・イベントなどを開催する際は、手話通訳だけでなく、要約筆記も活用するようにします。 ・口の動きを読み取ってくれる場合があるので、マスクは外して応対します。 ・あいさつや簡単なやり取りができるよう、手話を勉強しましょう。 筆談のコツ ・要旨(必要なこと)だけを簡単にまとめて書く。    ○「調べるのに約10分かかります。」    ×「只今込み合っていますので、お調べするのに約10分かかります。」 ・抽象的な言葉や二重否定は使わない。    ○「資料を探すのに約20分かかります。」    ×「資料がないことはないのですが、少し時間がかかります。」 ・適切に漢字を使う。(必要に応じてふり仮名をつける。)    ○「調べるのに約10分かかります。」    ×「しらべるのにやく10分かかります。」 ・楷書で読みやすい字を書きます。乱暴な字を書くと、ぞんざいに扱われていると誤解されることがあります。 ◆ 手話を勉強してみましょう。  県庁内には「県庁手話倶楽部」があり、週1回活動しています。  聴覚に障害のある人を交えて、手話を楽しく学んでいます。  また、県内には「手話サークル」がある地域もあります。  どちらも気軽に手話が学べますので、一度覗いてみてはいかがでしょうか? ◆ 電話リレーサービスについて  電話リレーサービスとは、聴覚や発話に困難のある方(以下「聴覚障害者等」といいます。)と聴覚障害者等以外の者との会話を、通訳オペレータが手話・文字と音声を通訳することにより電話で双方向につなぐサービスです。  令和3年7月1日から開始します。  https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/telephonerelay/index.html 3 盲ろうについて ■盲ろうとは  視覚と聴覚の両方に障害があることを「盲ろう」と言います。盲ろうは、大きく分けて、次の4つのタイプがあります。 ・全盲ろう・・・まったく見えず、まったく聞こえない状態 ・盲難聴・・・・まったく見えず、少し聞こえる状態 ・弱視ろう・・・少し見えて、まったく聞こえない状態 ・弱視難聴・・・少し見えて、少し聞こえる状態  また、「盲ろう」になる経緯も様々で、大きく次の4つに分けられます。 ・盲ベース盲ろう・・・・視覚障害があり、後に聴覚障害を発症したもの ・ろうベース盲ろう・・・聴覚障害があり、後に視覚障害を発症したもの ・先天性盲ろう・・・・・先天的に、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症したもの ・成人期盲ろう・・・・・成人期以後に視覚と聴覚の障害を発症したもの ■こんなことに困っています。 ・情報入手、コミュニケーション、移動などの様々な場面で大きな困難が生じます。自分だけでは情報を得たり、人と会話したり、外出・移動することが困難です。このため社会から孤立してしまうこともあります。 ・生活環境や視覚障害と聴覚障害の程度、またその障害の発症時期により、コミュニケーションの方法が一人ひとり異なります。家族や周りの支援者が、手のひらに文字を書いたり、触手話や指点字など、それぞれにあったコミュニケーション方法を生み出す努力と工夫をしています。 手書き文字・・・手のひらに指先等で文字を書いて伝えます。 触手話・・・相手の行う手話に触れて、手話の形で読み取ります。 指点字・・・点字タイプライターのキーの代わりに、盲ろう者の指を直接たたいて点字を表します。6本の指を点字の6点に見立てます。 文字筆記・・・・視覚の活用が可能な人に対して紙やパソコンに文字を筆記して伝えます。文字の大きさ・間隔・線の太さなど見え方に合わせた配慮が必要です。 音声・・・・・聴覚の活用が可能な人に対して耳元や補聴器のマイクなどに向かって話します。声の大きさ・抑揚・速さ・音の高さなど、聞こえ方に合わせた配慮が必要です。 ■こんな配慮をしましょう。 ・肩にそっと手を触れて話しかけます。聴力が使える人もいます。相手が気づいてくれたら、やさしく手を取って、手のひらに文字を書いてみます。この方法でコミュニケーションをとることができる人もいます。いろいろ試行してその人にあったコミュニケーション方法を見つけるようにします。 ・盲ろう者は、お互いの会話の内容だけでなく、周りの状況を把握することも困難です。他の人の発言や情景、その場の状況を知らせることも大切です。 ・盲ろう者はコミュニケーションをとることが難しいので、社会的に孤立してしまいがちです。困難な状況にある人を見かけたら、様々な支援があることを伝えるようにします。 ヘレン・ケラー(1880年~1968年 アメリカ合衆国の教育家、社会福祉事業家)という名前を知っている人は多いと思います。  彼女は2歳のときに高熱にかかり、聴力、視力、言葉を失い、話すこともできなくなってしまいますが、家庭教師のアン・サリバンに指文字や言葉を習い、ついには話せるようになります。その後、彼女は日本を含め、世界各地を歴訪し、身体障害者の教育・福祉に尽くします。  ヘレン・ケラーとアン・サリバンのことを描いた「奇跡の人」という映画(もとは舞台)があります。  日本ではタイトルの「奇跡の人」のことをヘレン・ケラーのことだと誤解されがちですが、実は、「奇跡の人」というのは、彼女を三重苦から立ち直らせ、偉大な人に育て上げた家庭教師のアン・サリバンのことを表しています。 4 肢体不自由について ■肢体不自由とは  事故等による手足の損傷・欠損等あるいは脳などの血管の損傷や先天性の疾患などによって生じる上肢・下肢のマヒなどにより、歩くことや物の持ち運びなど日常の動作や姿勢の維持が不自由になります。中には、自分の意思と関係なく体が動く不随意運動を伴う人や体温調節が困難な人もいます。病気や事故で脳に損傷を受けた場合には、言葉の不自由さや記憶力の低下等を伴うこともあります。 ■こんなことに困っています。 ・車いすを利用していると、十分なスペースがなかったり、ちょっとした段差や障害物があるために、移動することができないことがあります。また、高いところにあるもの、床にあるものなどを取ることが困難です。 ・脳性まひの人の中には、発語の障害に加え、顔や手足などが自分の思いとは関係なく動いてしまう(不随意運動)ため、自分の意思を伝えにくい人もいます。 ・中には、食べることや飲み込むことが困難(摂食嚥下障害)な人もいます。 ・障害者用駐車スペースが空いていないため、利用できないことがあります。 ■こんな配慮をしましょう。 ・車いすを使っている人と話をするときは、少しかがんで同じくらいの目線で話すようにします(立ったままの姿勢で話をすると、身体的・心理的に負担になります。)。 ・さりげなく声をかけ、どんな手助けが必要か気軽に尋ねます。望まれる方法で対応することが大切です。中には手助けを必要とせず、手助けを断られることもありますが、気にする必要はありません。 ・言葉がうまく話せない人に対して、子どもに対するような接し方をしないようにします。また、聞き取りにくいときは、分かったふりをせず、きちんと内容を確認するようにします。 5 内部障害について ■内部障害とは  内臓機能の障害であり、身体障害者福祉法では、「心臓機能」「呼吸器機能」「腎臓機能」「ぼうこう・直腸機能」「小腸機能」「肝臓機能」「ヒト免疫不全ウィルスによる免疫機能」の7種類の機能障害が定められています。 ■こんなことに困っています。 ・外見からは分かりにくく、周りの人から理解されにくいため、電車やバスの優先席に座りにくいなど、心理的ストレスを受けやすい状況にあります(障害者用駐車スペースについても外見から分かりにくいため、利用を控えてしまうことがあります。)。 ・体力が低下し、疲れやすい人がいます。重い荷物を持ったり、長時間立っているなどの身体的負担を伴う行動が制限されます。また、集中力や根気が続かない場合もあります。 ・「呼吸器機能障害」のある人は、タバコの煙などにより、大きな影響を受けます。 ・「腎臓機能障害」のある人の中には、人工透析治療を受けている人もいます。定期的な通院への理解と時間の配慮が必要です。 ・「ぼうこう・直腸機能」のある人の中には、人工肛門・人工ぼうこうを使用している人もいます。こうした人には専用のトイレ(オストメイト用トイレ)が必要です。 ■こんな配慮をしましょう。 ・障害の種類や程度は様々です。外見では分かりにくく、周りの人から理解されず苦しんでいる障害のある人がいることを理解しましょう。 ・風邪などに感染しやすい人もいます。また、障害のある臓器に悪影響を及ぼすこともあるので、周りの人は風邪などをうつさないよう注意しましょう。  県庁本庁舎1階西側の多目的トイレは、オストメイト対応トイレです。  尋ねられたら、ご案内しましょう。 オストメイトを示すシンボルマーク(参考資料(ワード版P57)参照)→ 6 重症心身障害について ■重症心身障害とは  重度の身体障害と重度の知的障害などが重複している障害です。自分で日常生活をおくることは困難であり、自宅などで介護を受けたり、専門施設等に入所したりして生活しています。口の動きや目の訴えで意思を伝えられる人もいますが、常時介護している人でないと理解することは困難です。 姿勢・・・・多くの人がほとんど寝たままで、自力では起き上がれません。 移動・・・・・自力での移動や寝返りが困難で、座位や車いすなどで移動します。 排泄・入浴・・ほとんど全介助となり、大変な労力を要します。 食事・・・・・自力で食事をすることは困難なため、スプーンなどで介助します。また、誤嚥を起こしやすいです。通常の食事が食べられない人は、細かく刻んだり飲み込みやすいようにトロミをつけたりします。 変形・拘縮・・手、足が変形または拘縮しており、側わんや胸郭の変形を伴う人もいます。 筋緊張・・・ 極度に筋肉が緊張し、思うように手足を動かすことができません。 コミュニケーション・・・多くの場合、言語によるコミュニケーションが困難で、声や身振りで表現します。 健康・・・・肺炎気管支炎を起こしやすく、多くの人が痰の吸引を必要としています。水分と食べ物を鼻から胃へ注入する管をつけたり、呼吸がうまくできないため人工呼吸器をつけたりしている人もいます。このような人は、常に医学的な管理が必要なため、外出することが困難です。 ■こんな配慮をしましょう。 ・車いすやストレッチャーでの移動時に人手がいりそうなときは、介護している人に声をかけます。また、人工呼吸器などの医療機器のアラーム音が鳴っているときは、速やかに介護している人に知らせます。 ・風邪などに感染すると命にかかわる場合もありますので、周りの人は風邪などをうつさないよう注意します(マスクの着用や手の消毒など)。 7 知的障害について ■知的障害とは  何らかの原因で知的な能力が年齢相応に発達していない状態であること、及び社会生活への適応に困難があることをいいます。  「言葉を使う」「記憶する」「抽象的なことを考える」などに少し時間がかかり、仕事の手順をすぐに覚えることや、人とのやりとりにすばやく対応することが困難な場合があります。  障害を感じさせない人や会社などで働いている人もいる一方で、言葉や行動の意味が相手にうまく伝わらず、周りから誤解や偏見を受けてしまう人や、重度の障害のために常に同伴者と行動する人もいます。また、犯罪の被害者になりやすく、場合によっては加害者と間違われる場合もあります。 ■こんなことに困っています。 ・複雑な会話や抽象的な概念が理解しにくいことがあります。 ・漢字の読み書きや計算、自分の意見を言うことなどが苦手な人もいます。 ・ひとつの行動に固執したり、同じ質問を繰り返す人、オウム返しをしたり、話を十分に理解しないまま相槌を打ってしまったりする人もいます。 ■こんな配慮をお願いします。 ・「一方的に話す」「ひとり言を言う」「同じ言葉を繰り返す」など、コミュニケーションがうまくとれない場合があります。そのようなときは、内容が理解できるようにゆっくりと簡単な言葉で話しかけます。また、必要に応じてコミュニケーション支援ボードなどを活用します。 ・オウム返しをしたり、話を十分に理解しないまま相槌を打ってしまったりする人もいるので、こちらの意思を伝える場合、理解されているかどうかよく確認します。 ・中には「危険であることが分からない」「助けを求めることができない」人がいます。そのような人を見かけたときは、やさしく声をかけ、危険であることを知らせます。 ・状況の変化などに柔軟に対応できず、「泣きわめく」「飛び跳ねる」などのパニック行動を起こすことがあります。そのようなときは、やさしく声をかけ落ち着ける場所に誘導します。 ・「通行する人を無表情で見ている」「ぴょんぴょん跳ねたりする」「ひとつのことにこだわる」など、人から誤解されやすい行動をとる人がいます。そのような人を見かけたときは、穏やかな口調で「どうしましたか?」「何かお手伝いしましょうか?」などと声をかけるようにします。 ・成人の場合は、子供扱いしないように気をつけます。 8 発達障害について ■発達障害とは  自閉症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの総称で、脳機能の発達が関係する生まれつきの障害です。複数の障害が重なることもあり、障害の程度や年齢、生活環境などによっても症状は違います。コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手な人もいますが、優れた能力を発揮する人もいます。   (主な発達障害) 自閉症(ASD)・・・相手の気持ちを理解したり、相手の立場に立って物事を考えたりすることが苦手で、周囲の人と共感的な関係を築くことが困難です。また、他人に意思を伝えること、理解することが苦手です。急なスケジュールの変更などに対応できず、パニックを起こしてしまうことがあります。 注意欠陥多動性障害(ADHD)・・・同じ間違いを繰り返してしまうことがあります(注意力散漫)。また、おしゃべりが止まらなかったり(多弁)、じっとしていられない(多動)ことがあります。約束や決まりごとを守れなかったり、考えるよりも先に行動してしまうことがよくあります(衝動性)。 学習障害(LD)・・・知的発達の遅れはないのに、音と文字のつながりを理解することや文字の認知等が困難であるため、読むことや書くことが極端に苦手であったりします。また、数字の認識などが困難なため、計算が極端に苦手だったりします。 ■こんなことに困っています。 ・中には、相手の表情・態度やその場の雰囲気を読み取ることが苦手で、周囲から孤立しがちな人がいます。 ・言いたいことを、ふさわしい言葉や表情、態度で表現できない人がいます。 ・文字や文章を読むことはできても、書くことが極端に苦手な人がいます。 ■こんな配慮をお願いします。 ・抽象的な表現は極力減らし、短い文で、順を追って具体的に伝えるようにします。 ・知らないことや初めてのこと、変化に対応することが苦手な人がいます。そうした人には言葉だけでなく、絵や写真も使ってあらかじめ本人が納得できるように見通しを示すようにします。 9 精神障害について ■精神障害とは  統合失調症や気分障害(そううつ病)などの精神疾患では、幻覚や妄想、不安やイライラ感、憂鬱感、不眠などが認められます。これらの症状は、薬を服用することや環境が安定することにより、軽快していきます。  一方で、「自発性がない」「集中力や持続性がない」「人付き合いに緊張しすぎる」などの症状が見られることがあり、周りの人から怠けているかのように見られるなど、誤解を受けることがあります。しかし、これらの症状は、病気の症状が落ち着いてくる経過の中で認められるものであり、怠けているとか、意志が弱いということではありません。 ■こんなことに困っています。 ・統合失調症などの多くの症状は、症状が不安定な時期を過ぎると、しだいに回復し、安定していきます。その経過の中では、無気力になったり、集中力や持続力が低下したり、落ち込んだり、疲れや眠気を感じ、ひきこもりがちになるなど、日常生活や社会生活のしづらさがみられます。 ・若い時からの長期入院のために、社会生活に慣れていない人がいます。 ・障害に対する理解不足から、周りの人から偏見を持たれたり、敬遠されたりすることがあります。 ■こんな配慮をお願いします。 ・精神疾患や障害に対する正しい理解が必要です。 ・一度にたくさんのことを言われると混乱することがあるので、「ゆっくり」「ていねいに」「くり返し」説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対します。 ・穏やかな口調で、相手に考えてもらう余裕や安心感を与える応対を心がけます。 10 高次脳機能障害について ■高次脳機能障害とは  人間の脳には、体を動かしたり、見たものや聴いたものを直接感じる「一次脳」と、それらの様々な情報を互いに伝えあう高度な働きをする「高次脳」とがあります。  交通事故などの頭部外傷や、脳出血・脳梗塞などの脳血管疾患、病気などによりこの高次脳に損傷がおきると、「言語」「思考」「記憶」「注意」などの様々な脳機能の一部に障害が起きることがあり、これを高次脳機能障害と言います。  外見から分かりにくいため、周囲の人が理解することが難しく、また本人も自分の障害を十分に認識できないことがあります。 ■こんなことに困っています。 ・新しいことが覚えられない、よく忘れ物をする。(記憶障害) ・気が散りやすい、同じミスを繰り返す、同時に複数のことができない。(注意障害) ・スケジュールや計画の手順が立てられない、トラブル時の対応ができずに混乱する。(遂行機能障害) ・話そうとしてもうまく話せない。(失語) ・いつもイライラして怒りっぽい、やる気が起きない、人が変わった。(感情や社会的行動の障害) ■こんな配慮をお願いします。 ・本人は日常生活や対人関係、仕事などがうまくいかず自信をなくし、混乱や不安の中にいることを理解します。 ・ゆっくり、分かりやすく、具体的に話します。また、何かを頼む時には、一つずつ、具体的に示すようにします。情報は、メモを書いて渡し、絵や写真、図なども使って伝えるようにします。 11 難病を原因とする障害について ■難病とは  原因不明で治療方法が未確立であり、かつ後遺症を残す恐れが少なくない疾病で、慢性的経過をたどり、本人や家族の身体的、精神的、経済的負担が大きい疾病です。  ストレスや疲労により症状が悪化しやすかったり、定期的な通院が必要であったりして、様々な生活のしづらさを抱えています。 ■こんなことに困っています。 ・外見からは分かりにくく、周りの人から理解されにくいため、電車やバスの優先席に座りにくいなど、心理的ストレスを受けやすい状況にあります(障害者用駐車スペースについても外見から分かりにくいため、利用を控えてしまうことがあります。)。 ・体調の変化が激しく、一日の中で体調の変動があることもあります。特にストレスや疲労により、症状が悪化することがあります。 ■こんな配慮をお願いします。 ・外見では病気や障害があることが分かりにくく、周りの人から理解されず苦しんでいる人がいることを理解しましょう。 ・症状や体調に応じて、対応してほしい内容を本人に確認しながら、できるだけ負担をかけない応対を心がけます。 Ⅲ 配慮の具体例  障害者差別解消法では、行政機関等には、障害のある人から社会的障壁の除去を求められた場合、それが過重な負担を伴わない場合は、合理的配慮の提供が義務付けられています。このような合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものです。  一方で、障害のある人等から求められる前にできる配慮はたくさんあります。そうした配慮を事前にしておけば、障害のある人等は配慮を求めることが不要になりますし、誰にとっても使い勝手のよいもの(こと)になります。  ここに示す具体例は、障害のある人等から求められて行う合理的配慮だけではなく、求められる前にできる配慮も含まれています。  なお、ここに示す具体例については、過重な負担がないことを前提としており、また、行うべき配慮はこれらに限定されるものではありません。 1 庁舎内での案内など 【各障害共通】 ・庁舎内や出入口などで困っていそうな人を見かけたら、職員であることや名前を名乗ったうえで「何かお手伝いすることはありますか?」と積極的に声をかけます。 ・介助者を伴う場合でも、できる限り直接本人に声をかけます。 ・ドアの開閉が困難な人には開閉を手伝います。 ・目的の場所まで案内する際に、障害のある人の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害のある人の希望を聞いたりします。 ・庁舎内の案内表示等は、必要に応じて漢字にルビをふります。 【主に視覚障害のある人に対して】 ・庁舎内の案内表示は、できるだけ大きく、はっきりとしたコントラストにするなど分かりやすく表示します。また、点字による案内を付けたりします。 ・廊下や執務室などの歩行空間には、通行の支障になるような物を置かないようにします。 ・移動を介助する場合は、肘、肩又は手首を軽く握ってもらい、半歩先に立って歩きます。階段や段差の手前では「上りです。」や「下りです。」と声をかけます。 案内の仕方は、参考資料(ワード版P54)参照 ・ドアで手などを挟まないよう注意します。 【主に聴覚障害のある人に対して】 ・お互いが可能なコミュニケーションの方法を確認します。 ・マスクをしている場合は、原則マスクを外して応対します。(感染症流行下においては、間仕切りや一定の距離を保つなど十分な感染症対策をしてください。) ・庁舎の入口や駐車場などでは、口頭での案内と併せて紙に書いて渡します。 【主に肢体不自由のある人に対して】 ・話をするときは、少しかがんで目線の高さを合わせます。 ・車いすを使用している人を案内する際、段差のあるところでは本人の意向を確認したうえでキャスター上げなどの手伝いをします。介助の仕方は、参考資料(P53)参照 ・廊下や執務室などの歩行空間には、通行の支障になるような物を置かないようにします。 ・庁舎内の案内表示等は、低い位置からも見えるように工夫します。 ・パンフレット等はできるだけ低い位置に置きます。配架棚の高い所に置かれたパンフレット等は手に取って渡します。 2 来客・窓口対応など 【各障害共通】 ・相手の話をよく聞き、目的などを的確に把握し、「たらい回し」にしないように注意します。 ・来庁等の意図などが的確に把握できない場合には、必要に応じて複数の職員で応対します。 ・ゆっくり、丁寧に説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対します。説明は、ポイントを明確に、一般的な分かりやすい言葉で説明します。専門用語やなじみのない外来語、比喩や二重否定などは使わないようにします。 ・必要に応じて絵や図、写真などを使って説明します。 ・相手が声の調整ができず大きい声で話をしても、落ち着いた雰囲気で応対することを心がけます。 ・書類への記入を依頼する際には、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい言葉で説明したりします。 【主に視覚障害のある人に対して】 ・まず、所属や名前を告げてから応対します。また、一時的にその場を離れる場合や応対する職員が代わる場合、職員が加わる場合などは、その旨を伝えます。 ・待っていただく必要がある場合は、おおよその待ち時間を伝えて、いすなどに案内します。 ・資料等を使って説明する場合、拡大文字の資料等を希望する人には拡大コピーした資料等で説明します。 ・説明資料等を読み上げる場合は、必要な個所や希望する箇所を原文のまま読み上げます。 ・自筆が困難な場合には、本人の意思を確認して、可能な限り代筆を行います。署名欄には、サインガイド(署名欄の部分だけを切り取った枠)があると署名がしやすい人もいます。代筆した場合は、その内容を読み上げ、内容を確認してもらいます。 【主に聴覚障害のある人に対して】 ・手話通訳が実施できない場合に、筆談や身振りでの応対、図や表示物を使用しての説明が可能か検討します。 ・手話通訳が実施できない場合は、筆談のできるメモ用紙やホワイトボードなどを用意しておきます。 ・マスクをしている場合は、原則マスクを外して応対します。(感染症流行下においては、間仕切りや一定の距離を保つなど十分な感染症対策をしてください。) 【主に肢体不自由のある人に対して】 ・自筆が困難な場合には、本人の意思を確認して、可能な限り代筆を行います。代筆した場合は、その内容を読み上げ、内容を確認してもらいます。 ・不随意運動等により書類等を押さえることが難しい場合に、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりします。 【主に知的障害や発達障害のある人に対して】 ・順番を待つことが苦手な障害のある人に対し、周囲の人の理解を得た上で、手続き順を入れ替えるなどの配慮をします。 ・他人との接触や多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、障害のある人に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備するなどの配慮をします。 ・必要に応じて絵や図、写真などを使って説明します。 ・意思疎通が不得意な障害のある人に対し、絵カード等を活用して意思を確認するようにします。 ・口頭での説明では理解が得られ難い場合は、説明のポイントをメモ書きして渡します。その際、必要に応じて、漢字にふりがなをふります。 【主に内部障害のある人や難病の人に対して】 ・疲労を感じやすい障害のある人から別室での休憩の申し出があった場合には、別室を確保するようにします。別室を確保することが困難である場合には、本人に事情を説明し、臨時の休憩スペースを設けるなどの配慮をします。 ・立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の人の理解を得た上で、この障害のある人の順番が来るまで別室や席を用意するなどの配慮をします。 3 文書等の作成・送付、情報の提供など ■印刷物 【主に視覚障害のある人に対して】 ・文書を送付する場合は、封筒に文書名、所属、電話番号等を点字化したシールを貼付する等の配慮を行います。 ・相手方が特定できる場合は、送付先の数にもよりますが、可能な限り送付した文書の内容について電話で連絡するなどします。 ・パンフレット等の作成に際しては、拡大文字や見分けやすい配色(色覚バリアフリー)について配慮します。 ・広く県民に広報する資料については、テキストデータおよび音声データの提供、音声コード(Uni-Voice)の印刷又は点字化をする等の配慮を行います。 ・資料等の点字化等が難しい場合は、希望する人に口頭で説明をするなどの対応をします。 【主に聴覚障害のある人に対して】 ・電話番号だけではなく、ファックス番号やEメールアドレスを記載します。 【主に知的障害のある人に対して】 ・文書を送付する場合は、分かりやすいように漢字にふりがなをふるとともに、抽象的な言葉は避け、絵や図を使って具体的に分かりやすいように工夫します。 ■ホームページ 【各障害共通】 ・ホームページにファイルを添付する場合は、PDFファイルなどの画像データだけではなく、読み上げソフトに対応できるような電子データ(テキスト形式)やふりがなを付したファイルなども併せて添付します。 ■テレビ、DVDなどの映像 【主に視覚障害のある人に対して】 ・番組の中で、問合せ先等の連絡先を知らせる場合は、画面に表示するだけではなく、音声でも伝えるようにします。 【主に聴覚障害のある人に対して】 ・手話、字幕付きの映像を提供するなどの配慮を行います。 ☆カラーユニバーサルデザイン(色使いに配慮したデザイン) 1 多くの人に見分けやすい配色を選ぶ ・色を変える 色の鮮やかさの高い色と低い色を組み合わせたり、明るい色と暗い色を組み合わせたりします。 ・色の濃淡、明度の差(コントラスト)をつける。 背景の色と文字の色に明暗の差をつけます。 2 色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする。 ・形を変えたり、文字にふちどりをつけたりする。 形を変えたり、文字にふちどりをつけたりすると、色を見分けにくい人にも伝わりやすくなります。 ・模様をつける。 グラフなどは斜線やドットなどの模様をつけ、色のみで識別するようなグラフや図は極力使わないようにします。 ・小さなイラストに複数の色は使わないようにする。 ・文字や線を太くする。 <参考>配色のバリアフリー  https://tsutawarudesign.com/universal1.html ☆ 文字・レイアウト ・ 文字の大きさ(ポイント数)は小さすぎないようにする。 ・ 大活字版を作成する際の標準フォントサイズは18ポイントです。(あまり大きすぎるとルーペ等で読みづらくなります) ・ 書体は可能な限りゴシック体を使用する。 ・ レイアウトは、縦書き横書きを混同させない。 ・ 写真や図については、解説を入れる。 ・ 資料の作成者(機関)や問い合わせ先は、文書の冒頭に記載する。 ・ 項目が多い場合は、目次を作成する。 ☆ 音声読み上げ対応(テキストファイル作成等)の留意点 ・ 日付け等は「R○/○/○ 12:00~」では正しく読めない場合があるので、「令和○年○月○日(○曜日)12時00分から」のように記載してください。 ・ 行間はなるべく空けないようにしてください。(スペース、改行は可) ・ 表、画像やグラフなどは、内容を説明する文章を作成して添付します。 ・ PDFファイル音声化できない場合があるので、メモ帳(txt形式)又はワード形式で配布してください。 ☆ Uni-Voice(音声コード)  紙に掲載された印刷情報をデジタル情報に変換した二次元コードで、スマートフォンアプリなどで読み取ることで、格納された文字情報を音声で聞くことができます。  印刷物に貼付する場合は、コードの位置認識のために切り込みを入れます。  音声コードを作成するソフトは、NPO法人日本視覚障がい情報普及支援協会のホームページから申請し、無償で取得可能です。  http://javis.jp/javis-appli/javis-appli_ 4 会議 【各障害共通】 ・会議の進行にあたり、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行います。 ・障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合は、座席位置を扉付近にします。 ・会議の進行にあたり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な委員等に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけます。 ・会議の傍聴を認める場合、事前に手話通訳等が必要なことを申し出てもらうようにします。 ・非公表又は未公表情報を扱う会議等においては、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認めます。 【主に視覚障害のある人に対して】 ・視覚障害のある委員に会議資料等を事前に送付する際は、希望に応じて、印刷した資料と併せて、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式等)を提供します。 ・資料等の点字化等ができないものについては、事前に資料等の内容を説明するなどの配慮をします。 ・会議の始まる前に、視覚障害のある委員の座席と他の委員や事務局等と位置関係(方向)など、周囲の状況を知らせます。 ・点字や拡大文字で会議資料等を作成した場合は、他の人が持っている資料とページ番号が異なり得ることに注意します。 ・発言者は、名前を名乗ってから発言するようにします。 ・映像等をスクリーンに映して説明する場合などは、「これ」「それ」などの指示語や、視覚による情報(色や形など)を表す言葉は使わず、具体的に説明するよう留意します。 【主に聴覚障害のある人に対して】 ・あらかじめ聴覚障害のある人の参加が見込まれている場合は、手話通訳や要約筆記などを手配します。その際、あらかじめ手話通訳や要約筆記の位置を打ち合わせておきます。 ・聴覚障害のある人に、スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保します。 【主に肢体不自由のある人に対して】 ・映像等をスクリーンに映す場合は、スクリーンが見えやすい席を確保します。 【主に知的障害のある人に対して】 ・資料等には、必要に応じて漢字にふりがなをふります。また、一般的な分かりやすい言葉を使います。専門用語やなじみのない外来語、比喩や二重否定などは使わないようにします。 ・必要に応じて絵や図、写真などを使います。 ・必要に応じて、事前に資料等の内容を説明するなどの配慮をします。 【主に内部障害のある人や難病の人に対して】 ・疲労を感じやすい障害のある人から別室での休憩の申し出があった場合には、別室を確保するなどします。 5 講演会等のイベント開催 【各障害共通】 ・スロープ、エレベーターや障害者用トイレがある会場で開催するようにします。また、できるだけ車いす使用者用駐車区画が入口近くにある会場で開催するようにします。 ・事前にエレベーターや多目的トイレ、障害者用駐車場の有無などを確認します。 ・障害のある人の参加が多数見込まれる場合は、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更します。又は、車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更します。 ・事前に参加申込みを受ける場合は、車いす使用者用駐車区画の確保や手話通訳等の必要な配慮を申し出てもらう記載欄を設けます。 【主に視覚障害や聴覚障害のある人に対して】 ・講演会等の開催に関する事前の情報提供は、広報誌、チラシ、新聞だけではなく、テレビ、ラジオ、ホームページなど、複数の情報伝達手段を利用します。 ・事前に参加申込みを受ける場合は、電話やFAX、電子メールなど、複数の手段で受け付けるようにします。 ・資料を配る場合は、要望に応じてテキストデータを送ったり、点字の資料を用意したりします。 ・対象者を限定しない講演会等では、手話通訳者及び要約筆記者を手配するとともに、事前の広報においては、手話通訳、要約筆記があることを周知します。 また、あらかじめ手話通訳や要約筆記の位置を打ち合わせておきます。 ・手話通訳者及び要約筆記者を配置する場合は、それらが見えやすい位置に聴覚障害のある人の席を確保します。 【主に視覚障害や肢体不自由のある人に対して】 ・会場に段差などがある場合は、簡易スロープを設置するなどの応急措置をする、又は介助する係員を配置します。 ・電源コードなどにより床面に凸凹ができる場合は、テープなどで被覆します。 ・車いすを使用する人には、出入口や通路に近い場所を広めに確保します。 ・映像等をスクリーンに映す場合は、車いすを使用する人には、スクリーンが見えやすい席を確保します。 【主に内部障害のある人や難病の人に対して】 ・疲労を感じやすい障害のある人から別室での休憩の申し出があった場合には、別室を確保するなどします。 6 緊急時の対応 【各障害共通】 ・来庁時等に体調が急変するなどして緊急に対応が必要となった場合、119番通報するほか、本人がかかりつけの医療機関への連絡を希望する場合は、連絡をとるなどの協力をします。 【主に視覚障害のある人に対して】 ・災害や事故が発生した際、状況を説明したうえで安全な場所に誘導します。 【主に聴覚障害のある人に対して】 ・災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい人に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図ります。 【主に肢体不自由のある人に対して】 ・エレベーターが使えない場合などは、周囲の人と協力して避難を支援します。 【主に知的障害や発達障害のある人に対して】 ・パニックを起こした人に対しては、穏やかな口調で話しかけるなど、相手に安心感を与える応対を心がけます。 ☆避難訓練の実施について  災害等が発生した際に障害のある人を安全に誘導するためには、来庁者等に障害のある人が含まれることを想定して訓練しておくことが必要です。  避難訓練等を実施する際には、障害のある人の視点を盛り込むように努め、可能な限り、障害のある人に協力してもらいながら訓練するようにしましょう。 Ⅳ 相談や苦情などへの対応、相談窓口  障害のある人等から差別的取扱いや合理的配慮の不提供に対する相談、苦情などの申し出があった場合は、各所属において迅速に状況を確認します。  なお、相談等の申し出は、対面のほか、電話、ファックス、電子メールなど、相手方が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段で受け付けられるようにします。  「正当な理由」のもとに行った差別的取扱いについては、相手方にその理由を丁寧に説明し、理解を得るようにします。そのため「正当な理由」についての説明責任を果たすことができるよう、その内容は第三者の立場から見ても納得が得られるような合理性、客観性を備えたものである必要があります。  「過重な負担」を理由に合理的配慮をしなかった場合は、相手方にその理由を丁寧に説明し、理解を得るようにします。そのため「過重な負担」についての説明責任を果たすことができるよう、その内容は第三者の立場から見ても納得が得られるような合理性、客観性を備えたものである必要があります。また、提供を求められた合理的配慮が「過重な負担」であると判断した場合であっても、相手方と代替案について協議するなど、合理的配慮を提供するよう努めます。  相談、苦情などの申し出は、職員対応要領の別表に掲げる相談窓口でも受け付けています。また、相談、苦情などの申し出があった所属においても、相談窓口に助言等を求めることができます。 参  考  資  料 1 高知県障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領 (趣旨) 第1条 この要領は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、法第6条第1項の規定により定められた障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)に即して、法第7条に規定する事項に関し、知事部局、議会事務局、教育委員会事務局及び教育機関(学校を除く。)、警察本部(警察学校を含む。)及び警察署並びに行政委員会(教育委員会及び公安委員会を除く。)事務局に属する職員(会計年度任用職員、臨時的任用職員及び非常勤職員を含む。以下同じ。)が適切に対応するため必要な事項を定めるものとする。 (不当な差別的取扱いの禁止) 第2条 法第7条第1項の規定に基づき、職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。以下同じ。)を理由として、障害がない人と不当な差別的取扱いをすることにより、障害がある人(障害がある者であって、障害及び社会的障壁(法第2条第2号に規定する社会的障壁をいう。次条において同じ。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。以下同じ。)の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、知事が別に定める留意事項に留意するものとする。 (合理的配慮の提供) 第3条 法第7条第2項の規定に基づき、職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害がある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害がある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害がある人の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(次条第1項において「合理的配慮」という。)をしなければならない。これに当たり、職員は、知事が別に定める留意事項に留意するものとする。 (管理職員の責務) 第4条 管理職員(管理職手当の支給を受ける職にある職員をいう。以下同じ。)は、前2条に定める事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次に掲げる事項を実施しなければならない。 (1) 日常の業務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、所属職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 (2) 障害がある人等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。 (3) 合理的配慮の必要性が確認された場合は、所属職員に対し、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 2 管理職員は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合は、迅速かつ適切に対処しなければならない。 (相談体制の整備) 第5条 職員から障害を理由とする差別を受けた人及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、別表に定める相談窓口を設置するものとする。 2 前項の相談等を受ける場合は、性別、年齢、障害の状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファクシミリ及び電子メールに加え、障害がある人が他の者とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。 (研修及び啓発) 第6条 障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修及び啓発を行うものとする。 2 新たに職員となった者に対し障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるため、新たに管理職員となった者に対し障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるため、それぞれ研修を実施するものとする。 3 職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、障害がある人に適切に対応するため必要なマニュアルの活用等により、意識の啓発を図るものとする。 附 則 この訓令は、平成28年4月1日から施行する。 附 則 この訓令は、平成30年4月1日から施行する。 附 則 この訓令は、令和3年4月1日から施行する。 別表(第5条関係) ○知事部局及び行政委員会(教育委員会及び公安委員会を除く。)事務局 部署:総務部行政管理課、総務部人事課、子ども・福祉政策部障害福祉課、相談等に係る事案が発生した所属が属する知事部局の主管課 担当:課長補佐の職にある者 ○議会事務局 部署:議会事務局総務課 ○教育委員会事務局及び教育機関(学校を除く。) 部署:教育委員会事務局教育政策課、教育委員会事務局特別支援教育課 ○警察本部(警察学校を含む。)及び警察署 部署:警察本部警務部県民支援相談課 (知事が別に定める留意事項) 高知県障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領に係る留意事項 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方  法は、障害がある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害がない人に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害がある人の権利利益を侵害することを禁止している。  ただし、障害がある人の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。従って、障害がある人を障害がない人と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害がある人に対する合理的配慮の提供による障害がない人との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害がある人に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。  このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害がある人を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害がない人より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 第2 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害がある人に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害がある人、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害がある人にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが必要である。 第3 不当な差別的取扱いの具体例  不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 (不当な差別的取扱いに当たり得る具体例) ○ 障害を理由に窓口対応を拒否する。 ○ 障害を理由に対応の順序を後回しにする。 ○ 障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 ○ 障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 ○ 事務・事業の遂行上、特に必要がないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。 第4 合理的配慮の基本的な考え方 1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。  法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害がある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害がある人の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害がある人が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害がある人の権利利益を侵害することとならないよう、障害がある人が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。  合理的配慮は、事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害がない人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害がある人が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害がある人の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。  なお、合理的配慮を必要とする障害がある人が多数見込まれる場合、障害がある人との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害がある人が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。  また、障害がある人からの意思表明のみでなく、本人の意思表明が困難な場合には、障害がある人の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。  なお、意思の表明が困難な障害がある人が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害がある人が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みて、当該障害がある人に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的に取り組むよう努める。 4 合理的配慮は、障害がある人等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害がある人に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。従って、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害がある人との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。 5 事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害がある人が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが必要である。 第5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害がある人にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが必要である。 ○ 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か) ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ○ 費用・負担の程度 第6 合理的配慮の具体例  第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。  なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 (合理的配慮に当たり得る具体例(物理的環境への配慮)) ○ 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。 ○ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。 ○ 目的の場所までの案内の際に、障害がある人の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害がある人の希望を聞いたりする。 ○ 障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を出入口付近にする。 ○ 疲労を感じやすい障害がある人から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障害がある人に事情を説明し、希望を聞きながら、長椅子を移動させるなどして臨時の休憩スペースを設ける。 ○ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害がある人に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。 ○ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。(避難訓練等を実施する際には、来庁者等に障害がある人が含まれることを前提に実施することが必要である。) (合理的配慮に当たり得る具体例(意思疎通の配慮)) ○ 手話、筆談、読み上げ、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。また、見分けやすい配色やコントラストに配慮する。 ○ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。 ○ 視覚障害がある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 ○ 意思疎通が不得意な障害がある人に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 ○ 駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 ○ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい言葉で説明したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。 ○ 比喩表現等が苦手な障害がある人に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。 ○ ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら対応する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。 ○ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害がある委員や知的障害がある委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。 ○ 会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。 (合理的配慮に当たり得る具体例(その他の配慮)) ○ 順番を待つことが苦手な障害がある人に対し、周囲の人の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。 ○ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害がある人の順番が来るまで別室や席を用意する。 ○ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 ○ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 ○ 障害者等用駐車場がない場合や障害がある人の来場が多数見込まれる場合に、通常、障害者等用とされていない駐車区画を臨時的に障害者等用区画に変更する。 ○ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当該障害がある人に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。 ○ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害がある委員の理解を援助する者の同席を認める。 2 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針  政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第6条第1項の規定に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を策定する。基本方針は、障害を理由とする差別(以下「障害者差別」という。)の解消に向けた、政府の施策の総合的かつ一体的な実施に関する基本的な考え方を示すものである。 第1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向 1 法制定の背景  近年、障害者の権利擁護に向けた取組が国際的に進展し、平成18年に国連において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択された。我が国は、平成19年に権利条約に署名し、以来、国内法の整備を始めとする取組を進めてきた。  権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国に全ての適当な措置を求めている。我が国においては、平成16年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され、さらに、平成23年の同法改正の際には、権利条約の趣旨を踏まえ、同法第2条第2号において、社会的障壁について、「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。」と定義されるとともに、基本原則として、同法第4条第1項に、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと、また、同条第2項に、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定された。  法は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に制定された。我が国は、本法の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ、平成26年1月に権利条約を締結した。 2 基本的な考え方 (1)法の考え方  全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するためには、日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要である。このため、法は、後述する、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し、行政機関等及び事業者に対し、差別の解消に向けた具体的取組を求めるとともに、普及啓発活動等を通じて、障害者も含めた国民一人ひとりが、それぞれの立場において自発的に取り組むことを促している。  特に、法に規定された合理的配慮の提供に当たる行為は、既に社会の様々な場面において日常的に実践されているものもあり、こうした取組を広く社会に示すことにより、国民一人ひとりの、障害に関する正しい知識の取得や理解が深まり、障害者との建設的対話による相互理解が促進され、取組の裾野が一層広がることを期待するものである。 (2)基本方針と対応要領・対応指針との関係  基本方針に即して、国の行政機関の長及び独立行政法人等においては、当該機関の職員の取組に資するための対応要領を、主務大臣においては、事業者における取組に資するための対応指針を作成することとされている。地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人(以下「地方公共団体等」という。)については、地方分権の観点から、対応要領の作成は努力義務とされているが、積極的に取り組むことが望まれる。  対応要領及び対応指針は、法に規定された不当な差別的取扱い及び合理的配慮について、具体例も盛り込みながら分かりやすく示しつつ、行政機関等の職員に徹底し、事業者の取組を促進するとともに、広く国民に周知するものとする。 (3)条例との関係  地方公共団体においては、近年、法の制定に先駆けて、障害者差別の解消に向けた条例の制定が進められるなど、各地で障害者差別の解消に係る気運の高まりが見られるところである。法の施行後においても、地域の実情に即した既存の条例(いわゆる上乗せ・横出し条例を含む。)については引き続き効力を有し、また、新たに制定することも制限されることはなく、障害者にとって身近な地域において、条例の制定も含めた障害者差別を解消する取組の推進が望まれる。 第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項 1 法の対象範囲 (1)障害者  対象となる障害者は、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者、即ち、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」である。これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえている。したがって、法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれる。  また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する。 (2)事業者  対象となる事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者である。したがって、例えば、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となる。 (3)対象分野  法は、日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となる。ただし、行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされている。 2 不当な差別的取扱い (1)不当な差別的取扱いの基本的な考え方 ア 法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。  なお、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。 イ したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 (2)正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。行政機関等及び事業者においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 3 合理的配慮 (1)合理的配慮の基本的な考え方 ア 権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。  法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。  合理的配慮は、行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 イ 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「(2)過重な負担の基本的な考え方」に掲げた要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。  現時点における一例としては、 ・車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境への配慮 ・筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通の配慮 ・障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更などが挙げられる。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。内閣府及び関係行政機関は、今後、合理的配慮の具体例を蓄積し、広く国民に提供するものとする。  なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 ウ 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。  また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。  なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。 エ 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備(「Ⅴ」において後述)を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。 (2)過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、行政機関等及び事業者において、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 ○ 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ○ 費用・負担の程度 ○ 事務・事業規模 ○ 財政・財務状況 第3 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 1 基本的な考え方  行政機関等においては、その事務・事業の公共性に鑑み、障害者差別の解消に率先して取り組む主体として、不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供が法的義務とされており、国の行政機関の長及び独立行政法人等は、当該機関の職員による取組を確実なものとするため、対応要領を定めることとされている。行政機関等における差別禁止を確実なものとするためには、差別禁止に係る具体的取組と併せて、相談窓口の明確化、職員の研修・啓発の機会の確保等を徹底することが重要であり、対応要領においてこの旨を明記するものとする。 2 対応要領 (1)対応要領の位置付け及び作成手続  対応要領は、行政機関等が事務・事業を行うに当たり、職員が遵守すべき服務規律の一環として定められる必要があり、国の行政機関であれば、各機関の長が定める訓令等が、また、独立行政法人等については、内部規則の様式に従って定められることが考えられる。  国の行政機関の長及び独立行政法人等は、対応要領の作成に当たり、障害者その他の関係者を構成員に含む会議の開催、障害者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応要領を公表しなければならない。 (2)対応要領の記載事項  対応要領の記載事項としては、以下のものが考えられる。 ○ 趣旨 ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 ○ 相談体制の整備 ○ 職員への研修・啓発 3 地方公共団体等における対応要領に関する事項  地方公共団体等における対応要領の作成については、地方分権の趣旨に鑑み、法においては努力義務とされている。地方公共団体等において対応要領を作成する場合には、2(1)及び(2)に準じて行われることが望ましい。国は、地方公共団体等における対応要領の作成に関し、適時に資料・情報の提供、技術的助言など、所要の支援措置を講ずること等により協力しなければならない。 第4 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 1 基本的な考え方  事業者については、不当な差別的取扱いの禁止が法的義務とされる一方で、事業における障害者との関係が分野・業種・場面・状況によって様々であり、求められる配慮の内容・程度も多種多様であることから、合理的配慮の提供については、努力義務とされている。このため、各主務大臣は、所掌する分野における対応指針を作成し、事業者は、対応指針を参考として、取組を主体的に進めることが期待される。主務大臣においては、所掌する分野の特性を踏まえたきめ細かな対応を行うものとする。各事業者における取組については、障害者差別の禁止に係る具体的取組はもとより、相談窓口の整備、事業者の研修・啓発の機会の確保等も重要であり、対応指針の作成に当たっては、この旨を明記するものとする。  同種の事業が行政機関等と事業者の双方で行われる場合は、事業の類似性を踏まえつつ、事業主体の違いも考慮した上での対応に努めることが望ましい。また、公設民営の施設など、行政機関等がその事務・事業の一環として設置・実施し、事業者に運営を委託等している場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。 2 対応指針 (1)対応指針の位置付け及び作成手続  主務大臣は、個別の場面における事業者の適切な対応・判断に資するための対応指針を作成するものとされている。作成に当たっては、障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応指針を公表しなければならない。  なお、対応指針は、事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり、盛り込まれる合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、それだけに限られるものではない。事業者においては、対応指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待される。 (2)対応指針の記載事項  対応指針の記載事項としては、以下のものが考えられる。 ○ 趣旨 ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 ○ 事業者における相談体制の整備 ○ 事業者における研修・啓発 ○ 国の行政機関(主務大臣)における相談窓口 3 主務大臣による行政措置  事業者における障害者差別解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、主務大臣は、特に必要があると認められるときは、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができることとされている。  こうした行政措置に至る事案を未然に防止するため、主務大臣は、事業者に対して、対応指針に係る十分な情報提供を行うとともに、事業者からの照会・相談に丁寧に対応するなどの取組を積極的に行うものとする。また、主務大臣による行政措置に当たっては、事業者における自主的な取組を尊重する法の趣旨に沿って、まず、報告徴収、助言、指導により改善を促すことを基本とする必要がある。主務大臣が事業者に対して行った助言、指導及び勧告については、取りまとめて、毎年国会に報告するものとする。 第5 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 1 環境の整備  法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要である。  障害者差別の解消のための取組は、このような環境の整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための施策、職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要である。 2 相談及び紛争の防止等のための体制の整備  障害者差別の解消を効果的に推進するには、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要であり、相談等に対応する際には、障害者の性別、年齢、状態等に配慮することが重要である。法は、新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用・充実を図ることとしており、国及び地方公共団体においては、相談窓口を明確にするとともに、相談や紛争解決などに対応する職員の業務の明確化・専門性の向上などを図ることにより、障害者差別の解消の推進に資する体制を整備するものとする。内閣府においては、相談及び紛争の防止等に関する機関の情報について収集・整理し、ホームページへの掲載等により情報提供を行うものとする。 3 啓発活動  障害者差別については、国民一人ひとりの障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りに起因する面が大きいと考えられることから、内閣府を中心に、関係行政機関と連携して、各種啓発活動に積極的に取り組み、国民各層の障害に関する理解を促進するものとする。 (1)行政機関等における職員に対する研修  行政機関等においては、所属する職員一人ひとりが障害者に対して適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、法の趣旨の周知徹底、障害者から話を聞く機会を設けるなどの各種研修等を実施することにより、職員の障害に関する理解の促進を図るものとする。 (2)事業者における研修  事業者においては、障害者に対して適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、研修等を通じて、法の趣旨の普及を図るとともに、障害に関する理解の促進に努めるものとする。 (3)地域住民等に対する啓発活動 ア 障害者差別が、本人のみならず、その家族等にも深い影響を及ぼすことを、国民一人ひとりが認識するとともに、法の趣旨について理解を深めることが不可欠であり、また、障害者からの働きかけによる建設的対話を通じた相互理解が促進されるよう、障害者も含め、広く周知・啓発を行うことが重要である。  内閣府を中心に、関係省庁、地方公共団体、事業者、障害者団体、マスメディア等の多様な主体との連携により、インターネットを活用した情報提供、ポスターの掲示、パンフレットの作成・配布、法の説明会やシンポジウム等の開催など、多様な媒体を用いた周知・啓発活動に積極的に取り組む。 イ 障害のある児童生徒が、その年齢及び能力に応じ、可能な限り障害のない児童生徒と共に、その特性を踏まえた十分な教育を受けることのできるインクルーシブ教育システムを推進しつつ、家庭や学校を始めとする社会のあらゆる機会を活用し、子供の頃から年齢を問わず障害に関する知識・理解を深め、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人であることを認識し、障害の有無にかかわらず共に助け合い・学び合う精神を涵養する。障害のない児童生徒の保護者に対する働きかけも重要である。 ウ 国は、グループホーム等を含む、障害者関連施設の認可等に際して、周辺住民の同 意を求める必要がないことを十分に周知するとともに、地方公共団体においては、当該認可等に際して、周辺住民の同意を求める必要がないことに留意しつつ、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うことが望ましい。 4 障害者差別解消支援地域協議会 (1)趣旨  障害者差別の解消を効果的に推進するには、障害者にとって身近な地域において、主体的な取組がなされることが重要である。地域において日常生活、社会生活を営む障害者の活動は広範多岐にわたり、相談等を行うに当たっては、どの機関がどのような権限を有しているかは必ずしも明らかではない場合があり、また、相談等を受ける機関においても、相談内容によっては当該機関だけでは対応できない場合がある。このため、地域における様々な関係機関が、相談事例等に係る情報の共有・協議を通じて、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止の取組など、地域の実情に応じた差別の解消のための取組を主体的に行うネットワークとして、障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができることとされている。協議会については、障害者及びその家族の参画について配慮するとともに、性別・年齢、障害種別を考慮して組織することが望ましい。内閣府においては、法施行後における協議会の設置状況等について公表するものとする。 (2)期待される役割  協議会に期待される役割としては、関係機関から提供された相談事例等について、適切な相談窓口を有する機関の紹介、具体的事案の対応例の共有・協議、協議会の構成機関等における調停、斡旋等の様々な取組による紛争解決、複数の機関で紛争解決等に対応することへの後押し等が考えられる。  なお、都道府県において組織される協議会においては、紛争解決等に向けた取組について、市町村において組織される協議会を補完・支援する役割が期待される。また、関係機関において紛争解決に至った事例、合理的配慮の具体例、相談事案から合理的配慮に係る環境の整備を行うに至った事例などの共有・分析を通じて、構成機関等における業務改善、事案の発生防止のための取組、周知・啓発活動に係る協議等を行うことが期待される。 5 差別の解消に係る施策の推進に関する重要事項 (1)情報の収集、整理及び提供  本法を効果的に運用していくため、内閣府においては、行政機関等による協力や協議会との連携などにより、個人情報の保護等に配慮しつつ、国内における具体例や裁判例等を収集・整理するものとする。あわせて、海外の法制度や差別解消のための取組に係る調査研究等を通じ、権利条約に基づき設置された、障害者の権利に関する委員会を始めとする国際的な動向や情報の集積を図るものとする。これらの成果については、障害者白書や内閣府ホームページ等を通じて、広く国民に提供するものとする。 (2)基本方針、対応要領、対応指針の見直し等  技術の進展、社会情勢の変化等は、特に、合理的配慮について、その内容、程度等に大きな進展をもたらし、また、実施に伴う負担を軽減し得るものであり、法の施行後においては、こうした動向や、不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例の集積等を踏まえるとともに、国際的な動向も勘案しつつ、必要に応じて、基本方針、対応要領及び対応指針を見直し、適時、充実を図るものとする。  法の施行後3年を経過した時点における法の施行状況に係る検討の際には、障害者政策委員会における障害者差別の解消も含めた障害者基本計画の実施状況に係る監視の結果も踏まえて、基本方針についても併せて所要の検討を行うものとする。基本方針の見直しに当たっては、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。対応要領、対応指針の見直しに当たっても、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。  なお、各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨や、技術の進展、社会情勢の変化等を踏まえ、適宜、必要な見直しを検討するものとする。 3 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法) 第1章 総則 (目的) 第1条 この法律は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 1 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 2 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 3 行政機関等 国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第3章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。第7号、第10条及び附則第4条第1項において同じ。)及び地方独立行政法人をいう。 4 国の行政機関 次に掲げる機関をいう。 イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関 ロ 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第1項及び第2項に規定する機関(これらの機関のうちニの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) ハ 国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項に規定する機関(ホの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) ニ 内閣府設置法第39条及び第55条並びに宮内庁法(昭和22年法律第70号)第16条第2項の機関並びに内閣府設置法第40条及び第56条(宮内庁法第18条第1項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの ホ 国家行政組織法第8条の2の施設等機関及び同法第8条の3の特別の機関で、政令で定めるもの ヘ 会計検査院 5 独立行政法人等 次に掲げる法人をいう。 イ 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。ロにおいて同じ。) ロ 法律により直接に設立された法人、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(独立行政法人を除く。)又は特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、政令で定めるもの 6 地方独立行政法人 地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人(同法第21条第3号に掲げる業務を行うものを除く。)をいう。 7 事業者 商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう。 (国及び地方公共団体の責務) 第3条 国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。 (国民の責務) 第4条 国民は、第1条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。 (社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備) 第5条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。 第2章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 第6条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。 一 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向 二 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 三 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 四 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。 4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。 5 内閣総理大臣は、第3項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。 6 前3項の規定は、基本方針の変更について準用する。 第3章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置 (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止) 第7条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 (国等職員対応要領) 第9条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第7条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第3条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。 2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。 3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 4 前2項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。 (地方公共団体等職員対応要領) 第10条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第7条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第四条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。 2 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 3 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。 4 国は、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力しなければならない。 5 前3項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。 (事業者のための対応指針) 第11条 主務大臣は、基本方針に即して、第8条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。 2 第9条第2項から第4項までの規定は、対応指針について準用する。 (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告) 第12条 主務大臣は、第8条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。 (事業主による措置に関する特例) 第13条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによる。 第4章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置 (相談及び紛争の防止等のための体制の整備) 第14条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。 (啓発活動) 第15条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。 (情報の収集、整理及び提供) 第16条 国は、障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう、国内外における障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとする。 (障害者差別解消支援地域協議会) 第17条 国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下この項及び次条第2項において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。 2 前項の規定により協議会を組織する国及び地方公共団体の機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。 一 特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他の団体 二 学識経験者 三 その他当該国及び地方公共団体の機関が必要と認める者 (協議会の事務等) 第18条 協議会は、前条第1項の目的を達するため、必要な情報を交換するとともに、障害者からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。 2 関係機関及び前条第2項の構成員(次項において「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を行うものとする。 3 協議会は、第1項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等が行う相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、相談を行った障害者及び差別に係る事案に関する情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。 4 協議会の庶務は、協議会を構成する地方公共団体において処理する。 5 協議会が組織されたときは、当該地方公共団体は、内閣府令で定めるところにより、その旨を公表しなければならない。 (秘密保持義務) 第19条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。 (協議会の定める事項) 第20条 前3条に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。 第5章 雑則 (主務大臣) 第21条 この法律における主務大臣は、対応指針の対象となる事業者の事業を所管する大臣又は国家公安委員会とする。 (地方公共団体が処理する事務) 第22条 第12条に規定する主務大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、地方公共団体の長その他の執行機関が行うこととすることができる。 (権限の委任) 第23条 この法律の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、その所属の職員に委任することができる。 (政令への委任) 第24条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。 第6章 罰則 第25条 第19条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 第26条 第12条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処する。 附 則 (施行期日) 第1条 この法律は、平成28年4月1日から施行する。ただし、次条から附則第6条までの規定は、公布の日から施行する。 (基本方針に関する経過措置) 第2条 (省略) (国等職員対応要領に関する経過措置) 第3条 (省略) (地方公共団体等職員対応要領に関する経過措置) 第4条 (省略) (対応指針に関する経過措置) 第5条 (省略) (政令への委任) 第6条 (省略) (検討) 第7条 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、第8条第2項に規定する社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。 4 基本的な介助方法 (1) 車いすを使用している人の介助 車いすを使用している人にとっては、車いすを身体の一部のように感じている人もいます。介助を希望するかどうか、必ず本人の意向を確認します。 ① 車いすの押し方(写真) ② キャスター上げ(写真) ③ キャスターを上げながらの移動(写真) ④ ブレーキのかけ方(写真) (2) 視覚障害のある人の誘導 ① 基本姿勢(写真) ② 階段の上り下り(写真) ③ 座るとき(写真) 5 合理的配慮サーチ  内閣府では、合理的配慮の具体例を収集・整理し、活用するため「合理的配慮等具体例データ集『合理的配慮サーチ』」を立ち上げています。 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/index.html ~ 内閣府ホームページより ~ ○ 合理的配慮等具体例データ集について  障害者差別解消法は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成28年4月に施行されました。このページでは、合理的配慮等の具体的な事例をご紹介します。  合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものです。建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものであり、本データ集に事例として掲載されていることを以て、当該事例を合理的配慮として提供しないことがただちに法に違反するもの(提供を義務付けるもの)ではない点にご留意ください。 ○ 御利用にあたって  参考事例集は、合理的配慮や不当な差別的取扱いの具体例だけではなく、いわゆる事前的改善措置・環境整備にあたる内容も含んでいます。  本データ集には、内閣府の管理下にない外部のウェブサイトへのリンクが多く含まれます。外部のウェブサイトの操作方法・不具合等は各ウェブサイトの管理者にご確認ください。 6 障害のある人に関するマーク 【障害者のための国際シンボルマーク】  障害のある人が容易に利用できる建物、施設であることを示す、世界共通の国際シンボルマークです。マークの使用については、国際リハビリテーション協会の「使用指針」により定められています。  なお、このマークは車いすを利用する人に限定して使用されるものではありません。 <関係機関>公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 【身体障害者標識(身障者マーク)】  肢体不自由の障害のある人が運転している自動車であることを示します。危険防止のため、やむを得ない場合を除き、マークをつけた車に幅寄せや割り込みを行った運転者は、道路交通法の規定で罰せられます。   このマークの表示については努力義務です。 <関係機関>各警察署 【聴覚障害者標識(身障者マーク)】  聴覚に障害のある人が運転している自動車であることを示します。危険防止のため、やむを得ない場合を除き、マークをつけた車に幅寄せや割り込みを行った運転者は、道路交通法の規定で罰せられます。  このマークは表示する義務があります。 <関係機関>各警察署 【視覚障害者の国際マーク】  世界盲人連合(WBU)が1984年に定めた世界共通の国際シンボルマークです。WBUによれば、「このマークは手紙や雑誌の冒頭、あるいは歩行用に自由に使用してよい。色はすべて青にしなければならない」とされています。 <関係機関>世界盲人連合 【白杖SOSシグナルの普及啓発シンボル】  白杖を頭上50cm程度に掲げてSOSのシグナルを示している視覚障害のある人を見かけたら、進んで声をかけて支援しようという「白杖SOSシグナル」運動の普及啓発シンボルマークです。このシグナルを見かけたら進んで声をかけ、困っていることなどを聞き、サポートしましょう。 <関係機関>岐阜市福祉事務所、(福)日本盲人会連合 【ほじょ犬マーク】  身体障害者補助犬同伴の啓発のためのマークです。身体障害者補助犬とは、盲導犬・介助犬・聴導犬のことです。公共施設や交通機関を始め、スーパーやレストランなどの民間施設でも同伴できます。補助犬はペットではなく、体の不自由な方の体の一部となって働いています。マナーも訓練され、衛生面も管理されています。 <関係機関>厚生労働省自立支援振興室 【聴覚障害者のシンボルマーク(耳マーク)】  聴覚障害がある人であることを表すマークです。聴覚障害は外見では分かり難いため、誤解を受けるなど社会生活での不安が少なくありません。このマークを窓口に掲示しておくことなどにより、聴覚障害のある人が相談しやすくなります。「聞こえない」ことを理解し、コミュニケーションの方法などに配慮することが必要です。 <関係機関>一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 【ハート・プラスマーク】  心臓疾患などの内部障害があることを示すシンボルマークです。身体内部(心臓、呼吸器、じん臓、膀胱・直腸、小腸、免疫機能)に障害のある人は外見では分かりにくいため、様々な誤解を受けることがあります。こうした内部障害のある人を視覚的に示し、理解を広げるために利用を呼びかけています。 <関係機関>特定非営利活動法人ハート・プラスの会 【オストメイトマーク】  オストメイト(人工肛門・人工膀胱を使用している人)を示すシンボルマークで、オストメイト対応トイレであることを示すために、トイレの入口や案内誘導プレートに表示するものです。オストメイト対応トイレとは、排泄物の処理、腹部の人工肛門周辺皮膚や装具の洗浄などができる配慮がされているトイレのことです。 <関係機関>公益社団法人日本オストミー協会 【ヘルプマーク(東京都)】  義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせるためのマークです。東京都以外の自治体でも、同様の活動が行われているところがあります。 <関係機関>東京都福祉保健局障害者施策推進部計画課 障害のある人への配慮について Ver.2022-01 発 行:令和4年1月 作 成:高知県子ども・福祉政策部障害福祉課 電 話:088-823-9633 FAX:088-823-9260 E-Mail:060301@ken.pref.kochi.lg.jp http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/060301/