海洋観測

公開日 2009年03月20日

更新日 2014年03月16日

土佐湾における表面水温の上昇:調査船による海洋観測から分かること

 2006年から2007年にかけては、全国的に記録的な暖冬となり、新聞やテレビでも話題となりました。このように、最近地球温暖化が大きな問題となっています。この問題では、気温の上昇はもちろんのこと、海水温の上昇も注目されています。では、我々の住む高知県の、土佐湾の海水温は、はたして上昇しているのでしょうか?

 高知県水産試験場では、調査船土佐海洋丸を使った海洋観測を、長年にわたり継続してきました。この海洋観測では、毎月1回、図1に示す地点を船で航行し、様々な機械を使った海の観測とプランクトンの調査を行っています。このうち、表面水温のデータ(各地点で表面の水をとって、温度計で測定したデータ)について検討した結果を紹介します。
 

 1973年から2005年までの33年間にわたる海洋観測データを整理し、土佐湾全体の平均表面水温を月ごとに計算しました。これに、長期変動をみるための数学的な処理をおこなった結果が図2です。土佐湾全体の表面水温は、1980年代のはじめから上昇傾向にある、ということがはっきりとわかります。表面水温の上昇の程度について計算したところ、1年間に約0.04℃、データを用いた33年の間に約1.2℃表面水温が上昇したという結果となりました。
 季節的な変化をみるため、33年間を11年ごとの3つに分け、1年間をとおした水温変化パターンを示したのが図3です。夏は3つの期間で目立った違いはみられません。一方、冬から春にかけて、年間を通して一番水温が低くなる時期に、年代を経るごとに表面水温が上昇していることが分かります。

 以上のことから、「土佐湾の表面水温は上昇傾向にある」ということを明らかに出来ました。これは、水産試験場が海洋観測という非常に地味な作業を長期間にわたって継続してきたからこそ分かったことです。もし、海洋観測データが10年間しかなかったり、途中で中断していたならば、図3のグラフはまったく違ったものになり、このようなことは分からなかったはずです。
 水温の変化は魚介類の生理や生態に大きな影響をおよぼします。結果として、高知県下の漁業に大きく影響していると考えられます。今後は、水温と重要魚種の漁獲量との関係について詳しく検討していくことが必要です。そして、この海洋観測を今後も継続していくことが、なにより重要なことであると考えています。


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