海洋深層水について

公開日 2009年04月01日

■海洋深層水の定義

 深海すなわち陸棚外縁部以深にある海水を海洋深層水と総称しています。陸棚外縁部はおおむね水深200から300mにあります。外洋においては水深200mより深くなると太陽光線のほとんどが海水に吸収され、弱いブルーライトの世界になります。また、1000mを超すと暗黒の世界と言われています。したがって、水深200m以深の海水中では植物プランクトンによる光合成は行われず、分解力が優勢となり、無機栄養塩が次第に蓄積されます。海洋深層水の特徴の一つとして富栄養性が挙げられますが、このような機序によるものであります。

 また、北極や南極で冷やされた海水は比重が重くなり下に潜り込みます。この潜り込みは、地球規模で生じており、海水の比重に応じて一定の水深へ潜り込み層状をなします。逆に、水深200mより上部では太陽熱で暖められた海水の層があります。ごく表面の海水は冬には大気によって冷やされ冷たくなり、その場所での垂直的潜り込みが生じ上下混合が行われます。この上下混合の到達する最大水深が約200mとされています。海洋深層水の特徴の一つとして低温安定性が挙げられますが、このような機序により、水深200m以深には四季を通じて水温の低い海水が存在します。

 このように海洋深層水は抽象的に共通の概念、すなわち、清浄性、低温性、富栄養性、熟成性で説明されます。しかし、当然のことながら地球上には地域、水深によって起源や性質を異にする海洋深層水が様々に存在します。海洋深層水を汲み上げ、利用しようとする場合にはそれぞれ汲み上げる場所の海洋深層水について、起源、流れの実態、水質などについて個別に調査する必要があります。たとえば、北太平洋西部においては、下図に示すように海洋深層水は3から4層に分類され、それぞれ起源を異にする海水がそれぞれ異なった方向に流れています。

 海洋深層水は海洋中を循環していますが、流れが遮られるとその地点で湧昇します。このとき、表層水に栄養塩を供給することによって海域の生産力向上に大きく寄与します。この点からも重要な海洋資源であるといわれています。この流れのうち、北太平洋深層流はアラスカ,オホーツクから南西方向に潜り込み,東経130度,北緯20度,水深2000mあたりで反転して北上し,北太平洋中層流と呼ばれる流れになるとされています。この北太平洋中層流の一部が四国陸棚斜面あたりに湧昇しています。室戸海洋深層水はこの湧昇流を水深300-400mで汲み上げており、北太平洋の中層を一巡する北太平洋中層水(北太平洋深層流、北太平洋中層流)に起源すると考えられています。

 海洋深層水が各地で人為的、連続的に汲み上げられるようになり、事業用として大量取水の時代が到来しつつあります。大量取水、放水がなされた場合の海洋環境に与える影響を十分に把握しておく必要があります。
 

北太平洋中緯度東部における海岸構造


■海洋深層水の特性について

 低温安定性

 取水口付近の水温は年間を通して約9.5℃で安定しています。汲み上げた段階で11~12℃です。室戸岬沿岸の表層水は16~28℃の範囲で変動します。

 富栄養性

 海の生産力の基本である窒素やリン、ケイ酸などの無機栄養塩に富み、室戸岬沿岸の表層水と比較して10~30倍の濃度があります。 

 清浄性

 陸水由来の大腸菌や一般細菌に汚染されていません。また、海洋性細菌数も表層の海水に比べて非常に少ないうえ、陸水や大気からの化学物質による汚染に晒される機会も少なく、この点でも清浄といえます。

 熟成性

海洋深層水は水圧30気圧下で長い年月をかけて形成された海水ですので、性質が安定しています。

 ミネラル特性

海水には必須微量元素や様々なミネラルがバランスよく含まれ、海洋深層水特有の溶存状態にある元素も明らかにされつつあります。
 

■海洋深層水の利用について(1.水産分野での利用)

  低温安定性

 水温制御が容易になり、夏季の高水温期においても、生物への影響を最小限に抑えることができるようになります。低温の必要な冷水性や深海性生物の飼育技術開発も可能です。

  富栄養性

 植物プランクトンや海藻を培養する場合、栄養塩に富んだ良好な環境を提供することができます。

  清浄性

 海水中の病原生物などが非常に少ないため、魚病菌による病気などの被害がなくなり、生物管理、水質管理が容易になります。

  熟成性

 これまで表層海水や、沿岸海水では培養・飼育することが困難であった生物を培養することが容易になります。 

■海洋深層水の利用について(2.水産分野以外での利用)

  低温安定性

 温帯地域では困難ですが、表層水の水温が高い熱帯地域では、深層水との温度差を利用して、発電や淡水の製造が可能です。また、陸上に汲み上げられた深層水の低温性は、室内の冷房や花卉栽培の温度調節などの利用が考えられます。

  清浄性 熟成性 ミネラル特性

 深層水に含まれる様々な有用物質、希少金属やミネラルの利用が考えられます。特に、食品・美容・医薬品などへの利用については実用段階での研究が行われています。

連絡先

高知県 商工労働部 海洋深層水研究所
住所: 〒781-7101 高知県室戸市室戸岬町7156番地
電話: 0887-22-3136
ファックス: 0887-23-1253
メール: kochidsl@pref.kochi.jp