牛海綿状脳症(BSE)

公開日 2020年10月05日

1  BSE(牛海綿状脳症)とは

 BSEとは、Bovine Spongiform Encephalopathy の各頭文字をとったもので、主に牛にかかる病気のひとつです。
 なお、BSEとは異なりますが、めん羊や山羊に類似の症状を起こすスクレピー、シカが罹る慢性消耗病(CWD)、ヒトで発症がみられるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)など、うつり方や症状が共通する病気を総称して伝達性海綿状脳症(TSE)と呼んでいます。
 BSEは、家畜伝染病予防法で法定伝染病に指定されており、診断が確定すれば直ちに殺処分のうえ焼却しなければなりません。従って、BSEと診断された牛の肉や内臓が食用等に回ることはありません。
 この病気の概要は次のとおりです。  

1)原 因

・ プリオンと呼ばれるタンパク質でできた構造物が原因と考えられています。
・通常の感染症では、細菌やウイルスなどの病原体が中心となって他の動物に伝染していくようなうつり方をしますが、プリオンの場合、そのようなうつり方をしないので発症動物の近くにいてもうつることがありません。
・プリオンは、通常、健康な牛の脳内にも正常プリオンとして存在していますが、これとは別に、正常プリオンに似ているもののその構造が異なる異常プリオンというものが飼料などを通じて体内に入り、脳内で正常なプリオンを異常プリオンに変えることで発症すると言われています。
・このプリオンは、タンパク質でありながら熱に対して抵抗性が強く、通常の加熱処理ではその活性を失わせることが困難であり、失活させるには134℃で18分間加熱する必要があります。一方、苛性ソーダや次亜塩素酸ソーダなどの強いアルカリ性薬品に1時間以上触れると活性が弱まります。

2)感受性動物

・牛(豚や鶏には罹りません。)

3)症 状

・初めは時折けいれんを起こしたりするほかに目立った症状がみられませんが、その後、音や体への接触等に対し過敏な反応を示したり沈うつや攻撃的になることもあります。
・食欲がなくなり、乳牛では泌乳量が少なくなります。
・さらに進行すると起立不能など運動障害が現れるようになります。
・潜伏期間は3~7年程度で、発症すると2週間~6ヶ月で死亡します。

4)脳の病変

・この病気にかかると、脳組織に肉眼ではみえないような空胞(隙間)がまるでスポンジ(海綿)のようにできます。
・このため、脳や神経系の機能が失われて、運動や神経反射の障害が現れます。

2 発生状況

1) 海外の状況

・1986(昭和61)年、英国ではじめてBSEにかかった牛が確認されました。

・発生のピークは1992(平成4)年で、BSE対策の進展により、近年は発生頭数が大きく減少しています。

2) 国内の状況

・2001(平成13)年に、国内で最初の発生が確認されました。

・以降、現在までに36頭の発生が確認されていますが、出生年別にみると、特に1996(平成8)年生まれが12頭、2000(平成12)年に生まれが13頭と多く発生報告がありました。

・飼料規制実施直後の2002年1月生まれを最後に17年間以上にわたって、国内で生まれた牛での発生報告はありません。(次表を参照)

       

3 BSEと肉骨粉

1)肉骨粉とは

・家畜(牛、豚、鶏)から食肉部分を除いたあとの屑肉や脳、脊髄、骨、内臓、血液などを、化製処理施設などで加熱処理して油分を除き、乾燥させて細かく砕き粉末状にしたものです。
・肉骨粉は、安価でタンパク質やミネラルに冨み栄養価が高いことから、以前は家畜の飼料や農作物の肥料として利用されていましたが、BSEの発生で利用が一時制限されました。
・現在、豚や鶏のみに由来するものが豚と鶏の飼料あるいは肥料に利用できるようになっており、牛由来のものは焼却処分されるか、またはセメント製造に再利用されています。

  

2)BSEとの関係

・英国の発生では、牛の飼料中に、BSEに罹った牛から作られた肉骨粉が混入していたことが要因とされたことから、1988年に肉骨粉の製造が中止されました。

・国内での発生について、これまで摘発された事例を調査した結果、英国やイタリア産の肉骨粉の一部が輸入された際、飼料に混入した可能性のほか、肉骨粉とは別に、食肉処理された牛から代用乳(母乳の代わりに子牛に与えます。)成分のひとつである油脂を抽出する過程でBSE牛由来の肉骨粉が混入した可能性などが理由として考えられていますが、確実なところは分かっていません。

4 日本の対応

1)BSE検査

・我が国は、BSE発生以降の対応が評価された結果、平成25年5月28日に、リスク評価を行う国際機関であるOIE(国際獣疫事務局)から「無視できるリスク」の国(清浄国)として認定されました。

・現在、牛のと畜には、特定危険部位(SRM)※の除去をを行い、神経症状を呈する24か月齢超の牛についてBSE検査を実施しています(健康と畜牛の検査は廃止)。
 ※SRM:全月齢の牛に由来する扁桃及び回腸遠位部、並びに30か月齢超の牛に由来する頭部(舌、ほほ肉、皮を除く。)、せき柱及びせき髄

・死亡牛等のBSE検査は、飼料規制などのBSE発生防止対策の有効性を確認するために、平成31年4月1日から、一般的な死亡牛については96か月齢以上、起立不能牛については48か月齢以上、BSEの特定症状を示している牛については全月齢を対象に検査を実施しています。

・なお、死亡牛を対象としたBSE検査は、うつり方を解明したり国際的評価(無視できるリスク国)を維持する必要があることから、今後も引き続き実施して行きます。

  
   

2)飼料や肥料への利用制限

・牛由来の肉骨粉は、法的に家畜用飼料への利用が禁止されています。(豚や鶏由来の肉骨粉は、豚や鶏の飼料にのみ利用可能です。)
・BSEに罹っていないことが明らかでSRMを含まず熱処理した牛由来肉骨粉については、一定の条件で利用が可能です。

3)トレーサビリティ制度

・トレーサビリティとは、食品原材料の出所や製造元・販売先などの記録により、食品の情報を把握できるようにする仕組みで、問題が生じた際の原因究明や食品の追跡・回収がしやすいよう、食卓から農場までの経路を明らかにすることで、食品の安全性や品質、表示に対する信頼を確保するための制度です。
・この制度は、国内でBSEが発生したことを受けて、伝播の経路を解明するためBSE発生時における迅速かつ的確な関連牛の特定と所在地などを把握する必要が生じたことから、これを効率的に行えるよう、牛の出生時に両耳に耳票とよばれるタグを付け固有番号(個体識別番号)を割り当てて、その牛が死ぬまで移動履歴をチェックします。
・個体識別番号は、店頭で陳列販売されている食肉に合わせて公開されており、だれでもその食肉の由来となる牛の生産過程をインターネット上で確認できることにより、消費者に対する牛肉の信頼性(安全性)を提供してます。

               

この記事に関するお問い合わせ

高知県 農業振興部 中央家畜保健衛生所

所在地: 〒781-1102 高知県土佐市高岡町乙3229番地
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