第9回INAP報告書第2部(高知)

公開日 2013年03月27日

更新日 2014年03月30日

2007年9月5日

第9回INAPシンポジウム 第2部パネルディスカッション

テーマ「会員港相互の経済交流の促進」

参加者
座  長:高知県シンガポール事務所長 段田芳郎
パネリスト:高知県知事 橋本大二郎  
      高知県上海事務所長 元木宏之
      セブ港湾局副長官 デニス・ビラモア
      スービック湾都市開発庁長官 フェリシアーノ・サロンガ
      スリランカ港湾庁部長 W.K アリヤダサ
      青島港集団有限公司総裁 常徳傅
      タンジュンペラ港長官 アクマド・バロト
      木浦新港湾株式会社社長 チェ・ビョンス 


【段田座長】
 おはようございます。私は高知県シンガポール事務所の段田です。これから司会役を務めさせていただきます。日本語―英語、日本語―英語というふうに進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
 これからこの経済交流の促進というのはかねてから重要なテーマでありますが、同時に非常に難しい問題でありまして、先ほど橋本知事からINAPの目的3つのうちの1つであるというふうに申し上げましたけども、これをどうやったら促進できるかという面に焦点をあてて、パネルディスカッションをさしていただければと思います。先ほど各国のスピーチで、かなりつっこんで促進案を出されていた港もあります。少し変えまして、ズバリ高知あるいは日本にどういった輸出品があるか、そういったことにできれば焦点を絞って話し合いを進めていただければと思います。
まず始めに、正面から向かって右側の木浦新港からチェさんから始めさせていただきます。木浦新港は先ほど紹介がありましたように新しいメンバーです。

【木浦新港 チェ社長】
 最初に話す機会をくださいましてありがとうございます。私達の韓国での主な輸出入品目と、全羅南道がどうして貿易に適しているかをお話ししたいと思います。前にも言いましたが、木浦新港は韓国南西部の全羅南道地域に位置しており、アメリカ、ヨーロッパそして東南アジアへの航路を持っている利点から、全羅南道の拠点港になります。
 9つの国営産業団地と15の地方産業団地があり、2006年には、2,500万トン、1,082億ドルの輸出と、9,000万トン、316億ドルの輸入がありました。輸出品目は、半導体、車、家電製品、船舶、石油化学製品、タイヤなどで、輸入品目は原油、半導体、天然ガス、コンピューター、鋼板などがあります。

【段田座長】
 木浦新港さんが特に輸出したい品物はありますか?

【木浦新港 チェ社長】
 9つの国営産業団地がありますので、特にワイヤー、家電製品、自動車などを輸出したいと思います。輸出入したい品目についてはリストを作成したいと思います。

【段田座長】
 ありがとうございました。次はタンジュンペラ港のバロト長官にお願いしたいと思います。第1部のスピーチでは、いろいろな経済促進のアイデアや、例えば高知にシュガーケイントップを輸出しているように、何か特別な品目に集中して輸出策を持っていきたいと、述べられていました。そして港を活性化するために2つのことをおっしゃっていました。1つは港管理の効率性を上げる技術面、もう1つは姉妹港や姉妹都市関係のように、人的な交流関係を築くことです。その他に付け加えることはありますか?

【タンジュンペラ港 バロト長官】
 私達の港の状況についてもう少し説明させていただきたいと思います。タンジュンペラ港は高知にシュガーケイントップや肥料を年間600TEU、製紙機械を50~60TEU輸出しています。タンジュンペラ港を通してINAPメンバーとの貿易がさらに促進されることを望みます。第2に、人的な交流について、将来的には2国間だけの交流ではなく、その他のメンバー港とも情報システムや管理の面でもっと意見交換を深めることができたらと思っています。

【段田座長】
 次は青島港の常さんにお願いしたいと思います。

【青島港 常総裁】
 今日はINAP2007会議に参加でき、とてもうれしく思っています。今日のテーマである‘各港間の経済交流促進’は、重要ですばらしいテーマだと思います。最近の数年間に青島港が急速に発展できた理由は、世界的な経済発展と、中国及び山東省地域の経済発展などいくつかの要因があげられます。
 ご存じのように、世界の経済発展は港に依存し、港の発展なしに経済発展はありません。ですから、港の責務として我々がその取扱貨物を丁寧に扱うことで、経済発展につながると思います。世界経済の発展とともに、我々のネットワークのように総合的な交流も盛んになってきました。今後、港湾機能をうまく働かせるために重要なポイントの1つは、港の管理レベルを上げることだと思います。港は貨物を取り扱って保管する機能だけでなく、物流センターとしての役割も果たさなければなりません。このような背景の下、各港は、輸出入貨物の取扱いと国際交流の両面から任務を遂行することで、港間の交流が促進されると思います。
 最近、青島港と高知港、コロンボ港またはINAPメンバー港の間で、物や人の交流が盛んになってきました。特に、ここ最近の高知港との交流は、知事のおかげでいっそう盛んになってきました。高知港の一層の発展とINAP内の友好交流、物流の往来などの発展を願っています。我々INAPネットワークが、世界の経済と平和に寄与することを信じています。
 中国政府の政策としても、中国と日本や韓国の経済関係が重視されています。東南アジア諸国内の経済交流もとても重視されています。我々INAPにとりまして、有利な要素の1つとなっています。このような状況の下で、我々INAPの発展と各港の明るい未来があることを期待しています。ありがとうございました。

【段田座長】
 「港の発展というのは、当然のことながらその国の発展と密接に関連し、国を支えている」という常さんのコメントはたいへん感銘深くお聴きしました。それでは橋本知事のほうからご意見をいただきたいと思います。

【橋本知事】
 先ほど、青島の常さんのスピーチで、人の交流の大切さというお話しがありました。そのお話を聴いていて思ったのですが、私達ここに並んでいるメンバーは、それぞれ地域の港を管理、運営をしている立場です。行政か民間かという違いがあっても、港を管理、運営しています。実際に貿易をされるのは、その港を使う企業の方々です。ですから港の管理者の交流ということを土台にして、企業がそれぞれの相手方の企業なり地域を知ることが、とても大切ではないかと思っています。ですからこの数年間は、INAP会議が各国持ち回りで順番に開かれるときに、高知から県内企業の方々、といってもごく小さな会社を経営されている方もいますけれども、そういう企業の皆さん方とミッションを組んで、各地域に出かけるということを心がけてきました。
 これから申し上げることは、直接貿易として実を結んだことではありませんが、例えば去年インドネシアのタンジュンペラ港に伺った時は、県内でお芋を使って食品加工をしている企業の方が、インドネシアのお芋が使えないかということで、スラバヤ近くでお芋を栽培、加工をしている会社を私も一緒に訪ねました。先ほど言いましたように、そのことですぐ貿易が起こるということではなくても、そうした地域を見せていただく、またいろんなお話しを聞くなかで、様々なアイデアなりヒントなりを得ることができます。このようにして、それぞれの会員港の周辺地域にある企業が、互いの地域のことを知っていくことが、その地域と地域との間に経済交流や貿易を興すうえで、とても大切なことではないかと思います。
 具体的には、2003年に青島でINAP会議が開かれました。そのことをきっかけに、県内にあるFRP鋼質のプラスチックを使った造船会社の方が、青島に会社を起こすということが実現しました。また2004年にセブで会議が開かれた時には、セブを訪問した企業の中から家具を買い入れる、また紙製品を買い入れるというような動きが起きましたし、一昨年2005年のスリランカコロンボでの会議をきっかけに、コロンボに合弁会社が設立される、また農業資材として、やしがらを輸入するというような動きも起こりました。また、昨年のインドネシア、タンジュンペラでの会議をきっかけに、インドネシアから黒砂糖を輸入するような動きも起こっています。
 高知県はまだまだ企業の力も経済力も小さな県ですから、申し上げたことは、大きな港の方にとっては非常に小さな話に見えるかも知れませんが、このようにお互いの企業がお互いの地域を知り合い、そこから何かビジネスの芽をビジネスの種を探していくことが、お互いの経済交流の第一歩として大事だと思っています。ですからこうしたINAPという港のネットワークの交流を通じて、今申し上げたような動きが各港の間で起きていけば、東南アジアの国々、アジアの国々全体を盛り上げることにも貢献できるのではないかと思います。どうもありがとうございました。

【段田座長】
 知事ありがとうございました。では次はセブ港のビラモアさんにお願いしたいと思います。

【セブ港 ビラモア副長官】
 セブ港のビラモアでございます。これからどのようにしたらメンバー港間での経済促進がもっと活発にできるかをお話ししたいと思いますが、その前に、セブ港について少しお話ししたいと思います。
 セブはマニラに次ぐ第2の都市で、経済成長著しく、フィリピン経済を担っています。過去5年間に約20%の経済成長をしています。これは他のフィリピンの都市と比べて、非常に良い数字です。セブの特徴としては、マニラよりも空海の便利が良く、ハブ港としての役割を担っており、フィリピン中部から南部への玄関口になっています。またそこから家具、ファッション関連、家庭用品や海草を使った化粧品などを輸出しています。
 また、セブは政治的にも安定し、治安も良いです。労働の質もフィリピンで1位2位を争うぐらいの良さを保持しています。
 インフラ整備も必要で、全ての地域は競争力を上げ、投資も持続することが必要になってきます。そして、知事がおっしゃったようなミッションを組み、民間企業が積極的に参加すべきだと思います。さらに、政府からの援助も必要です。きちんとした援助なしでは、私達が取り組んでいる経済交流の促進も、良い結果につながらないと思います。 INAP活動を促進するために、各港から来る貿易情報を統括する専門委員会を立ち上げることを提案します。そうすれば、もっと頻繁に情報交換やアイデアを出し合える機会が増えると思います。

【段田座長】
 普段から情報交換などをしていこうというご提案がありましたが、私自身それはもっともだなと思います。やはり会員相互のコミュニケーションというのが課題になるのではと思います。ありがとうございました。次はスービック湾港のサロンガ長官の方からコメントを頂きたいと思います。

【スービック湾港 サロンガ長官】
 スービック湾港を代表いたしまして、ここにINAPのメンバーとして参加させていただくことに感謝したいと思います。フィリピンは7,000の島々から成り立っており、それぞれの島をどうやって調整していくかが課題ですが、私達スービック湾地域では、指導が行きわたっています。
 スービック湾は今劇的に変化を遂げています。まずは、韓国のハンジン・グループから17億ドルの投資を受けています。そのおかげで、私達は東南アジアで第3位の造船輸出港になろうとしています。それから、造船の合弁会社がいくつかあり、フィリピン中央部で造船技術の牽引役をしている、INAP会員港であるセブ港をとても参考にしています。
 フィリピン市場に興味のある造船会社がありましたら、是非スービック湾を投資先として検討していただきたいと思います。今フィリピンでは古い船がたくさんあって、JICAの調べによると、2,500トン級のロロ船が古くなっており、新造船が必要です。
 投資全般で言いますと、2006年の海外からの投資が14億ドルであったのが、2007年現時点では、昨年の総額を既に超えております。これを見ても、スービック湾がいかに劇的に変わってきているかが分かると思います。こういう変化に対応するためにも、先ほどセブ港さんからご提案がありましたように、専門委員会を立ち上げ、もっとお互いのコミュニケーションを図るべきだと思います。

【段田座長】
 次はコロンボ港のアリヤダサさんにスピーチをお願いしたいと思います。先ほど従業員の養成に力を入れているとおっしゃっていましたが、他に何かございませんでしょうか?

【コロンボ港 アリヤダサ部長】
 コロンボ港では毎年300万TEUのコンテナを扱っています。3年以内には収容能力がピークを超えてしまいますので、最新型船が入港できる港の建設を検討しています。私達は関税の優遇措置など特典を提供できます。段田さんが触れたように、コロンボ港にとって重要なことは、港を効率よく運営するために、コロンボ港で働いている従業員のレベルを向上することです。
 コロンボ港としては、セブ港さんのご提案に関連して、それぞれの港で実務担当者を決めて、もっとお互いがコミュニケーションを取っていくことが必要だと思います。それからスービック湾港さんがおっしゃったように、年に1回の会だけでなく、継続できるプログラムが必要です。そのために、貿易促進などができるワーキングチームを是非作りましょう。

【段田座長】
 各パネリストを一巡しましたが、各港からどうすれば港事業及び経済交流の促進ができるかということについて意見がだされました。その中でも、橋本知事の意見は重要だと思います。それは、何かシステムを立ち上げることは、事業を推進するための1つの手段だからです。例えば、高知はINAP会議に合わせて各国に経済ミッション団を送り、経済交流促進の可能性を模索してきました。このような動きに対してどう思われますか?バロトさんはどうでしょうか?ご意見を聞かせてください。

【タンジュンペラ港 バロト長官】
 次のINAP会議では、管理、技術や情報システムの観点から、港湾振興について議論すべきだと思います。

【段田座長】
 この提案に関して、何か他にアイデアはございませんでしょうか?ビラモアさんはどう思われますか?

【セブ港 ビラモア副長官】
 私はINAPのウェブサイトを立ち上げてはどうかと思います。このウェブサイトを活発化するには、各港が皆さんと共有したい情報をウェブサイトに提供し、INAPメンバー以外にも、民間企業の方々もアクセスできるようにしたらどうかと思います。例えば、セブ港がビジネス展望やこちらの担当者、連絡先を投稿すれば、もっと簡単に日本や韓国、インドネシアの企業の方々が知りたい情報を手に入れることができます。早速、このネットワークを開始したらどうでしょうか。

【段田座長】
 セブ港さんから出されたご提案について何かご意見はないでしょうか?スービック湾港のサロンガ長官はどうでしょうか?

【スービック湾港 サロンガ長官】
 私もその提案に賛成です。ウェブ上でもっと情報交換などが活発にできると思います。

【段田座長】
 なにかウェブサイトについてご意見はないでしょうか?チェさんはどう思われますか?

【木浦新港 チェ社長】
 私も大賛成です。とても良いアイデアだと思います。付け加えるならば、常時ウェブサイトを管理・運営するスタッフを置いてはどうでしょうか。

【段田座長】
 常さんはどうでしょうか?

【青島港 常総裁】
 皆様の意見に賛成しております。


【段田座長】
 ウェブサイトを立ち上げるのに異議のある方はいらっしゃいますか?

【コロンボ港 アリヤダサ部長】
 全く異議はございません。ウェブサイトを作り、より緊密な関係を築いていくことに賛成です。

【木浦新港 チェ社長】
 あともう一つ、誰がウェブサイトを作り、誰が費用を払うかというのは重要なことなので、後でみなさんと協議する必要があると思います。

【段田座長】
 ありがとうございました。実際にウェブサイトを運営するのには費用がかかりますので、もっともな提案だと思いました。どのように費用分担をするのかについては、後で話し合いたいと思います。そして、各港でINAP担当者を決めていただいて、もっとスピーディーにコミュニケーションがはかれるように、お願いしたいと思います。他に何かありませんでしょうか?なければ最後に知事から一言お願いします。

【橋本知事】
 先ほどお話がありましたウェブサイトもですね、是非前向きに検討していきたいと思います。先ほど何人かが言われましたように、せっかくINAPの活動も、みんなの気持ちが1つになって盛り上がってきましたので、年に一度のお祭りで終わるのではなくて、日常的にどう繋がりをもっていくかということが一番大切ですし、そのため具体的な手段としては、ウェブサイトというのは、最も現実的な具体化できる手法だと思っています。そのためには、チェ社長が言われましたように、予算をどうやって確保して、そして誰がそれを管理していくのかということを、お互いきちんと話をしていかなくてはならないと思います。
 これまでのINAPでは、会費を集めていて、実はなかなか有効な使い方がなかったために、昨日の総会で、いったん会費の制度は廃止をしましょうということで合意をしたのですが、こうした具体的な活動のご提案がでると、それをもう一度どういうふうに考え直していくかということも、検討課題ではないかと思いました。また事務的に少し詰めて議論をしてはどうかと思います。
 いずれにしても、年に一度の集まりではない、お互いの関係、コミュニケーションをとっていくのも大切ですので、今のウェブサイトのことを繰り返しになりますが、積極的に検討してはどうかと思いますし、それから私が先ほど言いましたような経済ミッションのようなものを、これも年に一度の会議に合わせるのではなくて、いろんな機会にそういう人の行き来が起きてくれば、これもまた日頃からのコミュニケーションという意味で、とても良い成果を生むのではないかと期待をします。
 話は少し変わりますが、最初にこのINAPという組織を提案された、スリランカの当時港湾大臣をされていたアシュラフさんの思いというのは、このアジア諸国には政治的また宗教的にいろんな課題や問題があり、そういうものを港同士のつき合いによって、その壁を取り除いていこう、もっと友好関係を作っていこうという大きな理念がありました。そのビジョンは今もとても大切ですが、そうしたビジョンを1つの目標として活動しているなかで、この10年の間に、お互いに経済交流を具体的にしていこうということが、非常に前向きな課題として話し合われるようになってきました。このことはとても心強いことだと思っています。
 特にこの組織は、港と港との1対1の関係ではなくて、いくつかの国の様々な港が、ネットワークを組んでいることに一つの大きな特長がありますし、それから青島港のように、世界的にも非常に大きな港と高知港のように日本国内でも小さな港、そういう港が国際的な場で一緒にネットワークを組んでいくことに、大きな特徴があると思います。そうしたなかに、今回新たに韓国から木浦新港にもご参加いただいたことは、INAPのウェブサイト組織そのものの強化や充実のためにも、とても意味のあることだと思っています。これからもこうした形で交流を広げて、そしてこのお互いの交流が、各地域の発展に繋がっていくように、是非努力をしていきたいと思います。どうもありがとうございました。

【段田座長】
 知事、ありがとうございました。みなさんの協力を感謝します。良い結論がでてきたと思います。まだまだ議論をしたいですが、時間がございませんので、これでお開きとして、次に昼食の時に、また引き続いていろんな話ができればと思っています。どうもお忙しい中ご参加いただきましてありがとうございました。


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