第8回INAP報告書(セブ港)

公開日 2013年03月27日

更新日 2014年03月30日

2006年11月14日

第8回INAPシンポジウム:セブ港

企業化と民営化 −将来の競争に勝つ持続的港湾を創造する方法−

I – セブ港湾局 (パワーポイントによるプレゼンテーション)


II – 背景

 セブ港湾局の創設以来10年がたち、その間、職員の精励と潤沢な資金を背景に順風満帆の運営を続けてきた。しかし、国家港湾システムとは独立した、独自の運営を続けている輝かしい10年間ではあったが、国際船舶輸送における国家の中枢的役割を担うまでにはいたっていない。その多くは、民間港湾(マニラのMICTやサウスハーバー)の手に委ねられてきた。
 フィリピンの港湾は、よりよい運営、技術や管理体制など、船舶会社による要求を満たすため、新港の開港や既存港湾施設の拡張が行われ、これまでよりも熾烈な競争にさらされている。グローバリゼーションの波及、急速に進歩する輸送技術、近年の船舶輸送業界の進化などが、港湾の運営に影響を与えてきた。
 このような環境にあって、セブ港湾局がその目的の追求を成功させるには、国内外の港湾との競争に対処し、将来的に、よりよい市場の割り当ての獲得の遅れを取り戻さなければならない。
 対処するとは、主にコンテナ操業のための国際的な港湾の建設、最も効果的かつ効率的な設備の購入、港湾利用料の改定などを行うことである。これらすべてを行うには、多額の投資を必要とする。セブ港湾局は、その投資資金を必ずや捻出する決意である。現在、フィリピン経済は、過去5年で最もよい状態にある。わが国の政治の安定性に対しては、これまでに見られないほどの信頼を海外の投資家から受けており、適切なインセンティブと刺激を与えることにより、非常に多額の民間資本が注入され、さまざまな開発ベンチャーが利用できるようになった。
セブ港湾局も、その方向で企業化と民営化の努力を続ける決意であり、これについて、ここで説明させていただく。 この資料は、セブ港湾局が将来的にとる方向性と選択肢を紹介している。すなわち、その最大の目標は、フィリピンの港湾のなかで、その地位を確立した港湾となることであり、究極的にはASEAN地域のなかのより大きな市場へのルートを確立することにある。


III – 事実と議論

 港湾の持続的発展を阻害する要因の1つに、あまりに官僚的で投資家に魅力を与えない政府とその行政による規制がある。また、他にも、特に港湾に隣接する都市への人口の流入や密集も、港湾の将来的拡張と運営を阻害する要因となっている。
 フィリピンの港湾の多くの整備は、住居の建設を呼び寄せてきた。そのため、港湾が拡張するには、既存の土地での拡張ではなく、新しい、人の居住していない地域で新港を建設するという、非常に費用のかかる選択肢しか残されなくなったのである。大統領令による特区などの指定を受けている港湾は、多くはない。
 また、他にも、拡張による環境の影響に起因する問題もある。港湾と都市が共通の利害関係を持っていた時代、また、海上輸送や海上貿易の影響に対する考え方が自由であった時代は、経済発展の経済的影響は、大きな問題ではなかった。しかし、今日では、港湾の拡大や拡張に対する反対意見は、近隣の海岸線や直近の環境を汚染するからという理由に基づいている。
 他方、世界の他の開発途上国では、港湾地域の進歩にとって、技術的発展は大きな意味を持ってきたが、では、フィリピンの港湾も、同じパターンを経験するのかという質問が、よく投げられかけているのである。
フィリピン政府が管理する港湾に限っていえば、“急性的な港湾の混雑”が現在の状況であり、これは、セブ港湾局が管理する港湾も含む。したがって、港湾拡張戦略のごく最初の段階での選択肢は、常に港湾の能力の拡大の必要なのである。
 セブ港の場合は、緊急に対処すべき運営上の問題として提起されたものがいくつかある。特にベースポート付近における港湾道路と都市道路の交差地点が、大きな障害となっていること、港湾へのアクセス道路は狭く、さまざまな障害となるものがあること、セブ-マカタン海峡に沿った航行水路のさまざまな地点で海底の浅いところがあり、バースに沿った水深は、元の構造設計のために浅くなっていること、船回し場は浅く狭窄しており、ドッキングやアンドッキングを行うには、船舶にとっても、港湾設備にとっても、危険なことが多いこと、既存のベースポートでは、運営拡張を行うには、使用できる土地がないこと、土地を使用するには、政府が民間の所有地を、現存する港湾の周辺から、後背地側に少なくとも500mにわたって収用する必要があることである。
 これらの行政・技術・運営上の問題点を解決し、セブ港湾局がASEAN地域において競争するには、内国や国際的な海上輸送を収容できるよう、新しい港湾施設を建設することを真剣に考えなければならない。現在のところ、セブ港湾局は、過去20年間におけるフィリピン国際市場のシェアを拡大できるまでには至っていないのである。
 セブ港では、民間の海外貨物輸送サービス業者により、今日もとめることができる最新の効率的な岸壁クレーンやヤードクレーンが設置されている。また、国内貨物サービス業者も、セブ港湾局との役務契約を履行するため、機器購入計画を実施している。しかし、計画されている数量や種類の貨物が港湾で取り扱われないとすると、調達された機器類は無駄になるのではないだろうか。
 過去3年を見ると、コンテナ取扱量はわずかに上昇しているとはいえ、国際船舶の寄港数は減少の一途をたどっている。これは、マニラなど他の港湾からの国内船舶によるコンテナの積み替えが理由であろう。セブ-マカタン海峡と周辺のバースの水深が浅いことも、セブ港に直接寄港する船舶が少なくなっている理由である。その他の理由としては、港湾内外におけるコンテナデポがないことも、寄港数の減少の要因の1つである。セブはフィリピン列島の中心という戦略的要衝に位置しており、フィリピンでも上位2位の船会社の拠点となっていることから、理想的な輸送センターになる要素を備えている。
 ベースポート施設のほぼ85%にわたって、国内輸送と操業に用いられているが、同時に、より効率的な操業バランスをとるため、国際船舶輸送を補完するためには、この国内輸送と操業に対処しなければならない。国内船舶は、ますます巨大化を続けており、これらの船舶を誘導し、格納するためのバックアップエリアの整備の必要は、これまでにもまして大きい。他の国内の船会社も、所属する船舶数の拡大を続けており、ユニット化した操業を進めている。 ここでも、効率的で効果的な操業のためのスペースの拡大が必要になっている。
 もう1つの重要な要素は、セブ港湾局全体の組織再編である。役員会組織の構成を再編して、セブ港湾局のミッションやビジョンに対応できるようにすることも含まれている。さまざまな部署の規模の適正化、あたらしい運営部署の開設、一貫性のある統一したサービスの提供のための人員の再訓練による知識やスキルの醸成が必要となっている。
 しかし、いかにして、これらの問題を適切に対処するかは、セブ港湾委員会委員、セブ港湾局管理体の中でも、常に、喧々囂々、侃々諤々の議論が行われている議題である。それ以上に、上級運営管理委員会でも、大きな問題点として議論が行われているのである。現行の政府官僚の規則や制限の中で、これらの問題点に、迅速かつ公平な解決策を見出していくことは、不可能に近い。議論するたびに、この官僚的迷路に落ち込み、袋小路に追い込まれていくかのような経験をするのである。したがって、セブ港湾局は、より積極的、持続的、また、恒久的な解決策を、このジレンマに見出さなければならないのである。


IV – 取るべきオプション

 セブ港湾局が、この10年間の運営のなかで行ってきたのは、港湾の利害関係者のためのインフラと基本的なアメニティという、すでに機が熟しきっている必要に対処するための、小規模な港湾開発プロジェクトのみであった。したがって、セブ港湾局の企業化、民営化を行うことは、港湾利害関係者に対する最小限の基本的な安心を与えるのみならず、将来の競争にあって優位な地位を獲得して、維持する新しい可能性と機会を創出することを意味するのである。
 港湾管理や操業で競争的環境を高揚しつつ、世界の多くの港湾は、企業化、民営化の道に転じてきた。その背景には、民間部門を港湾の所有、操業、管理に加わらせることにより、操業の効率化をもたらし、港湾もより柔軟的になるという信念がある。これは、特に、資本不足が深刻化し、技術へのアクセスが限られているアジアの開発途上国の港湾にあっては、真である。
 民営化とは、共通して認識されているように、国営企業を民間に売却すること、あるいは、一般的には、経済の実質的シェアを民間部門に与えることを意味する。世界の多くの港湾は、商業化、港湾産業の自由化、あるいは、港湾資産の売却の方法で民間部門に売却されてきた。効率的な事業慣例を導入することにより、必要な資本、最新技術、効率的な管理にアクセスすることは、民間部門を介入させることから得られる恩恵である。
 しかし、民営化は、港湾が持つすべての問題点を解決する魔法のカギと解釈してはならない。民営化については、さまざまな考え方があり、世界各地で行われているフォーラムでも議論が繰り返されているのである。オーストラリア海上大学(Australian Maritime College)のホセL.トンゾン(Jose L.Tongzon)博士が行ったシンガポールにおける経験についての研究でも示されている、シンガポール港は既存の世界クラスのインフラ、最新の情報技術、労働者へのモチベーションの高揚など強調することで、世界でも最も効率的なハブ港という名声を得たのである。


V – 結論

 民営化と企業化は、世界の多くの港湾において功を奏し、恩恵を与えた。その意味とその信念において、セブ港湾局は、より効果的で効率的な港湾となるという、他の港湾もとってきた道を歩んでいる。“時間は重要である”といわれるように、セブ港湾局も、特にフィリピンにおいて、また、ASEAN地域全体として、主要港となるという、地位ある立場にたつという希望をもって、船出をしたのである。


この記事に関するお問い合わせ

高知県 土木部 港湾振興課

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