第6回INAP報告書(セブ港)

公開日 2013年03月27日

更新日 2014年03月30日

2004年10月20日

第6回INAPシンポジウム:セブ港

港湾民営化または港湾事業における民間部門の役割
−公共サービス向上のための動機としての利益−

I. はじめに
皆さん、おはようございます。ようこそセブ島へ。

民営化は、それぞれ見方によりさまざまな定義をすることができます。しかし、今日は、民営化を「資産の所有権の公共から民間への移転、あるいは、民間資本を港湾施設や装置、システムへの投資に活用すること」と定義することにしましょう。民間所有や港湾の資産やサービスへの民間資本の導入という考え方なくして、港湾の民営化はありえません。

実際、フィリピンでは、すでに、全国民営化政策(National Privatization Policy)が存在しています。この政策によりいくつかの法律が制定され、民間によるインフラへの財政投入、建設、運営、メンテナンスが認められています。

中期フィリピン開発計画(the Medium Term Philippine Development Plan, 1999−2004)では、次のように、海上運輸に関する政策や戦略が規定されています。

a) 規制機能を独立した機関に委譲し、すべての港湾を管轄させる。
b) 民間の参加と投資を最大限に奨励する。
c) 安全な運営と施行強化のための政策立案およびプロジェクトの実施

II.背景
港湾およびその施設は、貿易の重要なゲートウエイとして、国の競争力や健全な経済をもたらす重要な役割を負っています。また、国の貿易を促進しますが、より重要なことは、港湾は、非常に大きな投資が行われた結果であるということです。港湾は国にとって非常に重要な資産なのです。

政府が保有し運営する港湾はさまざまな問題を抱えています。完全な商業的競争の圧力を受けない公営の港湾は、効率的な運営へのインセンティブは低いかもしれませんし、往々にして政治的な介入を受けます。公営港湾は、地方自治体が持つわずかな資金を吸収し、地方経済を衰弱させます。その一方、効率的に運営されている港湾は、余剰資金を使いたいという都市が目を向けてくれます。

世界では、港湾の運営や資産を政府の手から民間への移転がトレンドになっておりますが、これは、公営の港湾施設が、民間参入を拡大することで恩恵を受けることができることを示唆しております。

このトレンドの推進力は、一般的に政府による港湾運営や港湾資産の所有は、市場の要求に対応する効率の高い港湾運営とは合致しないということが、ますます認識されてきた事実であります。

しかも、世界の国々は、貿易を促進し、経済を発展させるために、運輸インフラの開発に対する非常な要求に直面していますが、維持・近代化には大きな資本投下を必要とするため、必要な資源が不足している状態なのであります。

国際競争力という圧力により、荷主や運送会社は、産業の要求する貨物量をコスト競争力の高い技術と陸・海・空の輸送調整能力を有する港湾に貨物を集中させています。このような港湾とは、民間の管理者が大きな管理の自由を持ち、技術の変化に迅速に対応することができ、効率的な労力を提供するインセンティブを持つ港湾であることが多いのです。

このようなインセンティブを向上させ、民間による管理や資本に大きく依存することにより、公営港湾の自律性、効率性、競争力を強化することになります。

民営化は、必ず効率性を改善することができます。なぜならば、企業はそれにより民間所有という強いインセンティブの利点を持ち、政治介入の可能性を低減させ、資本市場のすべての分野にアクセスすることができるとともに、さまざまな資金調達のオプションを得ることができるからです。

III 民営化の目的
A.一次的な目的
i. 港湾の役務提供の質的向上
ii. 公的機関の財務負担の軽減
iii. ユーザーに提供するサービスの質的向上

B.二次的な目的
i. 国や港湾に新しい貿易やビジネスの誘致、拡大
ii. 公的機関と民間機関による商業、経済、技術、管理に関するリスクの共有化
iii. 民間の起業家の出現や投資の奨励
iv. 先進の機械や装置の導入、あるいは、最新の運営システムの導入による技術移転

IV. 民営化で恩恵を受ける人々
民営化計画で恩恵を受ける人は、まず、港湾当局、ターミナルオペレータ、そして、港湾を利用する顧客であります。その恩恵とは、一般的には、マクロ経済的な恩恵(一般的には、世界経済、国家経済、あるいは政府のレベルで発生)と、ミクロ経済的な恩恵(全体的には、上記に列挙した3者)に分けることができます。

受益者と考えられる利点

港湾当局
1. 政府の管理からの開放度が大きくなる(あるいは、完全に政府の管理下から離れる)ことができるため、組織としての優先目的を決定する自由度が向上する可能性がある。
2. 特に人材管理、予算見直し、上級機関への裁可の必要、行政による足かせ、機材やサービスの調達という面で、公的機関による締め付けから開放度が大きくなる。
3. 正確な財務目標が立てやすくなる。
4. 設定した財務目標に対する説明責任の増大
5. コスト透明度の拡大、コスト連動的な使用料設定の自由化、相互支援リスクの低減
6. 特にサービスポートにおいて、港湾使用料や税金の公平配分。船舶には低コスト、荷物には高い費用をかけることができる。
7. 業務遂行に必要なインフラストラクチャー投資について、民間の投資家への責任の増大

ターミナルオペレータ
1. 必要な外国の運営や技術の専門家を導入する機会
2. さまざまな活動をする機会の増大
3. 企業が行うことができない(あるいはうまく実行することができない)活動を第三者の企業に下請けさせる自由
4. 運営や財務達成に関する説明責任を負う
5. 料金表によるコストの透明性とクロス補助金による経費削減

顧客
1. 欲しい品質のサービスを入手することができる
2. ユーザーのサービス要件に迅速かつ効果的に対応できる
3. 港湾サービス料金の低減。競合サービス提供業者が値下げ努力を行い、競合港湾から顧客誘致ができる。

国内経済、世界経済
1. 市場構造や需要の変動への対応が可能
2. 海運技術や複合運送の変更への迅速な対応が可能

政府
1. 政府の財政・行政的な負担の軽減
2. 民間企業からの税収入増(公営の港湾の場合は、税金逃れをしがち)と、ビジネスレベルの向上

結論
明らかに、民営化は潜在的な理由はありますが、それだけではなく、深刻な欠陥や危険もあります。そのもっとも顕著な例を次に示します。

1) 民間の運営者や投資家は利益の最大化とコスト削減を望むため、公的港湾管理局が全般的に任せていた公的サービス機能が省みられなくなる恐れが増大する。
2) したがって、民間の運営者や投資家は、経済性、社会性、環境性などの基本的な価値の低い施設、民間セクターに資しない施設、あるいは、支出ばかりで大きな利益をもたらさない施設を切り捨てる傾向がある。(これは、利益の私物化と損失の社会化をもたらす)
3) 競争のまったく存在しない、あるいは、限定的な競争しか存在しない場合には、一定の独占権を持つ港湾のほとんどが、「競争力」がない理由で、「公共的独占」を「民間」に移す可能性がある。しかも、現代の港湾施設を運営することからくる規模の経済は、大規模港湾のみが、それらの1つ以上(コンテナターミナル、鉱石ターミナル、穀物ターミナル)を保有することができることであり、これは、当然、港湾やターミナルの独占を増幅させる。
4) 公共と民間の業務分担は、相互に補完する運送経路への必要な投資調整を妨げる(たとえば、民間と公共が運送経路のそれぞれ異なる部分に投資する責任を負う場合には、高速道路や鉄道を民間港湾ターミナルに接続することができにくくなる)。
5) 論理的には民間の運営者は、所有者や持ち株会社の事業利益を求める。これは、アウトサイダーを差別することにつながる(実際の顧客であれ、潜在的な顧客であれ)。また、共有使用を目的として作られた港湾施設が独占使用される。

このような民営化計画におけるマイナス要素は、民営化の形態、使用する手段、適用方法を注意深く選択することにより、対処することができます。

特に、政府や公的行政機関が大衆に対して特別の義務を負っている場合には、公共の利益を得るためには、民営化を確固とした法的基盤のうえに構築することを必要とします。そのためには、効率や効果の妨げとなるほどの規制を加えることなく、公共の運営者と民間の運営者の利益のバランスを保つことを必要とします。


この記事に関するお問い合わせ

高知県 土木部 港湾振興課

所在地: 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号
電話: 総務担当 088-823-9882
ポートセールス第一担当(貨物・高知新港振興プラン) 088-823-9888
ポートセールス第二担当(客船対応・企業誘致) 088-823-9890
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