第5回INAP報告書(コロンボ港)

公開日 2013年03月27日

更新日 2014年03月30日

                                   
2003年10月13日

第5回INAPシンポジウム:コロンボ港(スリランカ港湾庁)

発表者:スリランカ港湾局チーフエンジニア K.L.A カルパシラナプ

1.0 背景
スリランカは「インド洋の真珠」とも呼ばれる美しい島国です。有名な観光の名所であり、世界8不思議の1つに数えられている、シーギリヤロックはわが国にあります。
スリランカの国土の面積は、65,610km2、総人口は1,900万人です。国民の構成は、74%がシンハラ人、原住民であるタミル人は12.6%、インド系タミル人は5.5%、ムーア人は7.1%となっています。国民の69.3%は仏教徒ですが、他にもヒンズー教徒(15.5%)、イスラム教徒(7.6%)、キリスト教徒(7.5%)がおります。また人口の75%以上が離村部生活者です。識字率は高く、90%の人が読み書きをすることができます。

スリランカでは、国内で生産される産品の23%程度が農林水産製品、27%が工業製品で、サービスは50%以上を占めています。輸出入経済の影響により、サービスは常にスリランカの国内総生産の大部分を占めています。

2001年12月に新政府が樹立され、2002年2月には、タミルイーラム自由の虎(LTTE)との間で、無期限停戦についての覚書が交わされるという大きな前進が見られました。それ以来、政府、LTTE、平和協力者であるノルウェーは、非常に困難ではあるが確かな足跡で、平和に向けて歩みだしています。財界も、平和会談では好ましい結果が出るものと楽観視しており、 そのため、わが国の経済活動は回復状態にあります。

どの時代においても、平和である限りにおいては、一国における平和と発展は相互に補完しあうものであります。平和を享受している国家は、発展を最優先にして国土を開発し、経済成長をなしとげ、さらなる平和をもたらすことがなによりも重要であります。経済成長による平和の増進と高揚を得るには、両者が共に利を得るための政策が必要となります。したがって、本年のINAPシンポジウムのテーマは実に適切であり時代の要請と合致しているといえます。私たち港湾当局も、「この互いに利する」の政策にのっとり、発展の要請に対して思慮深い選択を行うことにより、国家経済に多大な貢献を行うことができます。

2.0 はじめに
島国であるスリランカは、コロンボ、ガレ、トリンコマリー、カンケサントゥライの4つの商業港を有しています。地理的な要所にあることから、これらの港は積み替え地としての役割を果たしております。この4港はスリランカ港湾局が管理しています。
わが国が推し進めている国家開発を達成するには、港湾開発が非常に重要であります。したがって、(1)わが国への製品の出入りのスムーズな流れを確保すること、(2)積み替え地としての基盤を提供すること、(3)貨物の取引量の増加と多国間の協力をすることが非常に重要となります。スリランカにおける中心的港湾であるコロンボ港は、島の西海岸に位置しており、最初は暴露錨地でしたが、しだいに近代的なコンテナ港へと発展してまいりました。コンテナ貨物の世界的な傾向と歩みを同じくして発展してきたコロンボ港は、すでに2つの近代的なコンテナターミナルを供用しております。ジャヤコンテナターミナル(JCT)はスリランカ港湾局による運営であり、クイーンエリザベス・コンテナターミナル(QCT)はSAGTという民間の企業体により管理されています。JCTは南アジアの中心的コンテナターミナルとして4つのコンテナバース、2つのフィーダーバースを持ち、埠頭には14基のコンテナクレーン(QSCC)とゴムタイヤを装着した39基のガントリークレーン(RTG)が設置されています。2004年5月にさらに3基のコンテナクレーンと8基のガントリークレーンの供用を開始するため、ジャヤコンテナターミナルにおける業務はユニティ・コンテナ・ターミナル(UCT)に移動して処理しています。

2001年7月に発生したカトゥーナヤケ国際空港(KIA、コロンボ国際空港)に対するテロリストの攻撃により、わが国、特にわが国の港湾は非常に大きな打撃を蒙りました。スリランカの港湾に寄港する船舶にWar Risk Surcharges (WRS)による割増料金が適用されたからであります。その結果、主要定期船のいくつかが、コロンボ港から近隣の港へと迂回していきました。輸出入についてもアメリカにおける同時多発テロのあおりをうけて、その量は激減してしまいました。このように港湾業務は著しく落ち込んだのであります。しかし、2002年2月の無期限停戦合意により、わが国財界全体や海運業界、さらには世界中に大きな希望の光が差し込んだのであります。

2002年1月は、スリランカ港湾局として非常に大きな出来事がありました。新会長以下、役員が一新されたのであります。新しい経営陣は、ひるむことなく、停戦により生み出された平和な環境を十分に利用し、港湾の生産性をできるだけ早く向上させるべく、活発で有意義な活動に踏み出し、2002年と2003年に失われた仕事を取り戻そうとしています。また、コロンボ港における短期・長期の開発項目を明示するとともに、その実施にむけて動き出しております。ガレ、トリンコマリー、カンケサントゥライ(KKS)、オルビル、ハムバントタについても、潜在的な開発の可能性を探るために対策と計画が進行中であります。

3.0 生産性向上のための対策
ジャヤコンテナターミナル(JCT)において、生産性向上およびスループット増のために次の対策を実施しました。管理者により「互いに利する」ための政策が採られており、これらの対策に効果を挙げることができました。
(1) 船会社から荷役業者へ渡されていた「スピードマネー」が廃止され、かわって、作業能率をベースとしたターゲット・ボーナス・システムが適用されました。その結果、JCTでは、これまでにないほど生産性が向上し、たくさんの船会社から賞賛のお言葉を頂戴しました。
(2) 継続的に港湾施設の生産性向上をおこない、しかも営業間接費を抑えるために、スリランカ港湾局では、余剰人員を削減するため、ようやく早期退職計画の導入に踏み切りました。その結果、2,993名が港湾局を退職しました。第二次早期退職計画がただいま実行中であり、少なくとも1,500名から2,000名の従業員の退職を募る予定であります。
(3) 2002年、スリランカ港湾局は7つの新しい定期航路の寄港を得ることができました。また、韓進海運、ジーランド(世界最大のコンテナオペレータ。APLは世界第4位の海運会社)と3つのターミナルサービス契約(TSA)を締結することができました。これは、ジャヤコンテナターミナルが非常に能率レベルの高いターミナルであることと、スリランカ港湾局の新しい経営チームによる積極的なマーケティング活動の賜物であります。さらに今後も、ターミナルサービス契約を締結することになっています。

4.0 港湾施設開発
スリランカ港湾局では、これまで説明しました不幸な経験をしたわけですが、商業港としての戦略について検討を行い、グローバルなシッピング活動の特徴、コンテナ積み替えのハブ港としての要請、国家の地域開発に与える港湾開発の影響などを考慮しました。
スリランカは、停戦協定の締結、現在の和平交渉活動などの結果、完全な平和の道を歩んでおります。このことは、農業、工業、サービス業などわが国経済の発展に非常に大きな希望を与え、力強い推進剤となっています。わが国の地理的に恵まれた立地条件とその結果としての経済の発展の可能性を認識し、さらに港湾サービス部門を開発することにより、わが国が得ることのできる恩恵をすべて享受しようと努力を重ねております。

4.1 短期開発計画
スリランカ港湾局は常に港湾施設のアップグレードを図り、港湾流通の要請を満たすために努力を行ってまいりました。その結果、下記に示す対策が明確化され、そのいくつかはすでに完了しております。
(1)  スーパーポストパナマックス船に利用していただくため、港に入る水道部分の水深を−16mに浚渫するとともにジャヤコンテナターミナルの2つのバースの水深も−15mとすること
(2)  2つのバースに設置するコンテナクレーン(QSCC)をアップグレードし、船を横切りながら一度に18個のコンテナを積み下ろしできるようにすること
(3)  ジャヤコンテナターミナルのガントリークレーン(RTG)をアップグレードし、現在のコンテナ1個から3個の高さおよび1個から4個の高さのクレーンから、1個から5個の高さのものに改め、ヤードの容量を現在の44,120スロットから48,912スロットに増やすこと。現在、18基のガントリークレーンの能力について、高さ1個から4個の高さを1個から5個の高さに改めます。さらに15基のガントリークレーンも、さらに高速のクレーンで高さ1個から5個のものに入れ替えています。
(4)  またジャヤコンテナターミナルの取り扱い能力を増加させ、現在のほぼ2倍の450万TEUを扱うことができるようにする計画が進んでいます。
(5)  新しいコンテナ施設が作られました(ユニティ・コンテナ・ターミナル(UCT))。このコンテナターミナルでは、−11mの水深をもつ全長390mのバースを持ち、総面積は15.3ヘクタールです。この施設には、3基のQSCCと8基のガントリークレーン(RTG)が2004年5月までに設置されることになっています。

4.2 長期開発計画
コロンボ港
長期的な計画としては、18mから22mの喫水をもつ船を入港させることです。コロンボにある港は、喫水の深い船を入港させることができず、港湾外周の開発が急務でした。この目的のため、2003年5月に、コンサルタント会社と、港湾外周開発工事詳細設計デザインに関する契約を締結しております。

ガレ港
ガレ港の開発は、地域港との位置づけで、現在同様、今後も貨物を取り扱うことになっています。また、コロンボ港のコンテナ取扱能力を増強させるため、コロンボ港からガレ港に一般貨物のシフトも視野に入れられております。

トリンコマリー港
トリンコマリー港は非常に大きな潜在性を持っており、したがって、土地使用計画には綿密な計画が必要です。現在、港湾地域を共有港湾活動地域として位置づけたマスタープランを作成中です。

オルビル港
地域港としてのオルビル港の開発は、デンマーク政府の支援で行われてきました。3つの地域からなる後背部はこれまで目が向けられてきませんでしたが、この地域の開発が可能となります。

ハムバントタ港
ハムバントタ港の魅力は、広大な未利用地を持つことと、国際定期航路に近接していることです。現在、ハムバントタ港の港湾施設の開発が検討されており、その実現性の評価が行われております。もし、開発可能ということになれば、将来の必要を満たすための大規模開発のためのグランドマスタープランが作成されることになります。

スリランカ港湾局は、港湾流通のための港湾施設の開発とそれによるわが国への非常に大きな経済的恩恵のため、大きな責任を負っています。スリランカ港湾局は、国家のため、そして国際海運のために、わが国の港湾開発を慎重に実行してまいります。


5.0 コンテナ取扱量の増加―コロンボ港(2003年8月まで)
スリランカ港湾局は、2001年に発生したカトゥーナヤケ国際空港(KIA)へのテロリストによる攻撃のため、国内のコンテナ取扱量に大打撃をうけました。2001年の国内コンテナ取扱量は、その結果、−6.8%とマイナス成長となりました。2002年には状況はさらに悪化しました。これは、コロンボに入港する船舶にWar Risk Surcharges(WRS)による割増料金が適用されたためです。その結果、コロンボに入港する船舶数が減少しました。スリランカ港湾局では、これを機会として、ジャヤコンテナターミナルの2つのバースの水深を深くする浚渫工事にとりかかりました。バースは2ヶ月間閉鎖されることになりました。2002年のこのマイナス成長は、国内および積み替えコンテナにも波及したのです。
しかし、スリランカ港湾局による作業効率化対策および停戦合意により2003年には状況は大きく好転し、2003年8月には、国内コンテナ取扱量4.2%増、積み替え18.3%増、総コンテナ取扱量14.1%増という記録的な増加を達成しました。興味深いことに、スリランカ港湾局は、積み替えコンテナ取扱では、民間のSAGTよりも成績がよく、増加率は前者18.3%に対し、後者12.9%であったのです(添付書類参照)。


6.0 姉妹港間の協力推進の提案
今回のINAPシンポジウムを生産性ある実り多きものとするために、お互いの利害関係に関わる活動について、姉妹港間で協力する態勢を構築することが極めて必要であります。
まず、会員各港の強み(長所)を見いだすことにより、その長所をお互いの利益のために用いることが必要になるでしょう。さらに研修の機会を与え合うことも、会員各港間でよく知り合うためにも必要でしょう。このアイデアをスリランカ港湾局からの提案として受け入れてくださり、姉妹港間の協力関係がさらに増進されるよう希望します。

スリランカ港湾局のウェブサイト:http:// www.slpa.lk

ジャヤコンテナターミナルにおけるコンテナ取扱
2002年と2003年に、スリランカ港湾局が取り扱うコンテナ量は劇的に増加しました。2003年8月全体の成長率は13%以上、一方、コンテナ積み替えでは、17%に迫る勢いで増加しました。国内コンテナ取扱も5.6%の増加でした。スリランカ港湾局が管理するジャヤコンテナターミナルにおける成績の向上は、結果的に起こったものではありません。その経緯は上記のパラグラフで説明しました。

この記事に関するお問い合わせ

高知県 土木部 港湾振興課

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