1−3 賃金と損害賠償の相殺

公開日 2012年10月25日

更新日 2014年03月16日

【相談内容】 (徳島県労働委員会)


 私は、陶器店に勤めていますが、商品の並び替えの作業中、不注意で商品を壊してしまいました。会社からは、次期賃金支払期から、賃金の一部を、弁償に充ててもらうと言われました。

 どのように対応したらよいのでしょうか。


【お答え】


 使用者は、労働基準法第24条第1項の規定により、賃金の全額を労働者に支払わなければなりません。いわゆる、「賃金の全額払いの原則」と呼ばれるものです。
 ただし、これには例外があり、

(1) 給与所得税の源泉徴収、社会保険料の控除など法令に別段の定めがある場合

(2) 労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面による協定(賃金控除協定)がある場合(社宅の家賃、組合費など)

は、賃金の控除が認められています。


 そして、「賃金の全額払いの原則」は、使用者による賃金債権の「相殺」も「控除」の一種として禁止する趣旨というのが、判例・通説であります。
 最高裁は、「労働者の賃金は、労働者の生活を支える重要な財源で、日常必要とするものであるから、・・・使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することを許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは、その債権が不法行為を原因としたものであっても変わりはない。」と判示しています。(日本勧業経済会事件・最大判昭36.5.31)
 相談者の事例にあてはめると、使用者が労働者に対して有する損害賠償債権を自働債権として、賃金と相殺すること(民法第506条)はできないと解されるわけです。
 もっとも、賃金債権の合意による相殺に関して最高裁は、「その同意が労働者の自由な意思に基づいてされるものであると認めるに足る合理的な事情が客観的に存するときには、賃金からのかかる合意の範囲内の相殺は有効である。」としています。(日新製鋼事件・最二小判平2.11.26)


 したがって、会社による一方的な相殺はできませんので、損害賠償額、支払時期などについて会社と十分話し合い、納得がいかない場合や賃金から控除されてしまった場合は、労働基準監督署や法テラスなどに相談されることをお勧めします。
 また、労働委員会には、個々の労働者と使用者との間の個別労働関係に関するトラブルの解決を援助する「あっせん」制度もありますので、お気軽にご相談ください。
 なお、労働者への求償額は制限されるのが一般的ですが、この点については、当労働相談事例集の「業務上の損害賠償」(香川県労働委員会)を参照してください。



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