障害者差別に関する相談窓口における個別相談事例(令和3年度) 1 不当な差別的取扱い (1) 相談者:年齢不詳、男性、精神障害 相談窓口:行政機関 相手方:事業者 相談内容:精神障害のある方の友人からの相談 賃貸住宅を探していて、不動産会社に精神的な障害があることを伝えると「精神病の方は入居できない。」と断られた。不動産会社に苦情を申し入れたが、担当者からの謝罪の電話のみで正式な謝罪はない。障害当事者はこのような扱いは何度か経験しているため、正式な謝罪は諦めていると言っている。苦情を伝えられる窓口を教えて欲しい。 対応等:全ての人々の基本的な人権は守られなければならないことを伝えた。相談者は相談窓口について業界窓口を望んでいなかったため、行政の人権擁護相談窓口とこころの相談窓口を紹介した。 事案の分析等:事業者は精神障害を理由に入居を断っており、不当な差別的取扱いの事例となる。 ※相談窓口に、これは「障害者差別に該当する」という認識があると良かった。 (2) 相談者:年齢不詳、男性、視覚障害 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:視覚障害のある男性から以下の相談があった。 ・PCRの無料検査を受けるために検査センター(自治体設置)へ行ったところ、問診票へ自署を求められた。署名はできたが問診票の自筆は難しいため、配慮(代筆)を求めたが、「自署できなければ検査は受けられない、そういう仕組みになっている」との返答で結局検査が受けられなかった。 ・受付でそれ以上言っても仕方がないと思い、帰ってきたが、家族の通う施設でクラスターが発生したこともあり、やはり検査を受けたい。検体採取の方法は保健所で習っており、やり方は分かっている。 対応等:検査センターの所管課へ受付職員の対応が不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供(代筆)となる可能性があることを説明。  事実確認を依頼したところ、検査の前提として、検体採取は医療行為であり、自身でやるか介助者にやってもらうことになっているため、受付職員が、問診票の記入ができない方は、自身で検体採取をできないものと誤った判断をしてしまった可能性があるとのこと。 その後、検査センターの所管課より相談者に代筆対応は可能であったこと等、経緯を説明の上、相談者はPCR検査を受けることができた。 検査センターでは受付職員に周知・徹底の上、HPであらかじめ、検体採取を自身で行うこと、できない場合は介助者同伴で受けることが可能であることについて周知することとなった。 事案の分析等:視覚障害により自署ができないこと(障害)を理由に検査を断ったことで、不利益が生じており、不当な差別的取扱いに該当する。 代筆の申出を断っている点については、合理的配慮の不提供にも該当するものと考えられる。 2 合理的配慮の提供 (1) 相談者:年齢不詳、男性、視覚障害 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:令和3年度に実施した地震・津波県民意識調査(無作為抽出の県民3,000人対象)において、紙の調査票を配布していたところ、調査票が届いた視覚障害のあるの方からPCの読み上げ機能が使える電子データでの送付依頼があった。 対応等:調査票の電子データを送付した。 事案の分析等:合理的配慮の提供を行った事例 (2) 相談者:60代、男性、視覚障害 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:視覚障害のある方が行政機関が管理する公園施設を視覚障害者に使いやすいものにしてほしいという意見を述べるために事務所を訪れ、帰りのバスの時間を調べてほしいと依頼があった。 対応等:足が少し不自由な方であり、貴重なご意見を述べるためにわざわざ事務所を訪問していただいたということも考慮し、職員が肩を貸して300メートル離れたバス停まで案内し、帰りのバスの時間について、当該バス停で確認し、お伝えした。 事案の分析等:合理的配慮の提供を行った事例 (3) 相談者:10歳未満、女性、聴覚・言語障害 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:入学前の教育相談等で難聴児の保護者から配慮について相談があった。 対応等:児童の状態を把握し、入学に向けて必要な対応を検討することになった。聾学校から教室の整備方法について助言をいただき、令和4年度入学するお子さんのために、難聴学級を新設。教室をアコーディオンカーテンで仕切る工事を令和3年度に行った。 事案の分析等:個別具体の場面において、合理的配慮の提供を行った事例 3 環境の整備 (1) 相談者:不明、肢体不自由 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:NPO法人から、電動車椅子の充電スポットとして、庁舎の充電用コンセントの提供についての依頼があった。 対応等:庁舎内の県民室内のコンセントを利用して、充電できるよう配慮した。(充電可能時間:閉庁日を除く平日の午後8時30分から午後5時15分) 事案の分析等:環境の整備がなされた事例 (2) 相談者:複数、肢体不自由 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:NPO法人(障害者団体)から障害者の芸術文化活動に関して要望書の提出があった。 ①文化施設での車椅子席やトイレ等ハード面についての配慮。 ②障害者を受け入れる側の研修会への参加やワークショップなどの取り組みの継続等ソフト面についての配慮。 対応等:NPO法人(障害者団体)と意見交換を実施し、要望を聴取。団体の代表者と意見交換や関係機関との協議を実施。 ハード面では、ホールの車椅子席23席分(オレンジホール:8席、グリーンホール:3席、県立美術館ホール12席)確保した。また、その他のハード整備については、改修時に検討し、その際には障害者団体の意見を聴取することとした。 ソフト面では、文化施設協議会による職員研修会の実施、障害のある方とつくる演劇についてのトーク・ワークショップの継続、障害者団体からイベントチラシ作成のアドバイスなどを受けた。また、県の障害者芸術文化活動支援センターの学芸スタッフに、高知県文化芸術振興ビジョン評価委員会に就任していただいた。 事案の分析等:環境の整備がなされた事例 ■ その他(苦情や困りごとなど) (1) 相談者:年齢不詳、女性、知的障害 相談窓口:行政機関 相手方:事業者 相談内容:母が入院中の病院に対し、自身の障害について伝えた上で、入院中の母の病状説明を申し入れたところ、母の疾患について、相談者(によるストレス)が原因であると言われ、睡眠薬を多量摂取した。その際の会話を録音していたため、病院側に録音したデータを聞いて欲しいと依頼するも、カルテの方が確実と聞いてもらえなかった。 ①配慮のない言葉に対してどう思っているのか、②録音よりカルテが確実とはどういう意味かについて病院側に確認して欲しいとの相談があった。 対応等:病院に事実確認。①については、相談者が訴える発言があったかどうかについては明確な返答はなかったが、相談者を傷つけたり、差別をするような意図はなかったと返答がある。 ②については、病状説明の際に、相談者の障害や背景等も考慮し、相談員を2名同席させ、それぞれに記録をとっていたため、録音を聞く必要はないと説明したとのこと。 障害の有無に関係なく、配慮に欠けた発言ではなかったかを院内で振り返り、今後の対応にいかしてもらうようお願いし、了承を得る。 相談者には病院側の説明を伝え、了承を得る。 事案の分析等:障害者差別事例ではないが、病院側が相談者の障害特性に配慮し、寄り添った説明が必要だったのではないかと思われる事例 (2) 相談者:年齢不詳、女性、精神障害 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:婚活サポーター制度の会員として登録しようとしたところ、婚活サポーター代表者に診断書を出すよう言われた。通院先の病院からその発言は人権侵害であり、障害者差別であるため、県に連絡するよう促された。 対応等:県の所管課に事実確認。サポーター制度の会員登録に診断書を求めるといった要件はなく、実際に登録している障害者も多数いる。相談者はこれまで様々なサポーターに時間を問わず連絡しており、サポーター代表者には各サポーターから相談者に関する相談が相次いでいた。代表者の元にも複数回連絡があり、その都度、何度も登録はできないと断った結果、これまでの言動などから今回のトラブルに発展したと把握している。 サポーター代表者としては、責任を持って相談者同士を引き合わせるとの観点から、日常生活を営むことができるかといったことについての医学的な見解を知りたいという趣旨で診断書を求めたもの。 (登録については相手もいることであり、各サポーターの責任で引き合わせるため、登録の判断は各サポーターが行う。) 相談者には、上記内容を伝え、本事案が障害を理由とした不当な差別的取扱いと判断することはできないと伝える。本人からは、他のサポーターで登録しもらえそうな方がいるとの話があり、相談は終結した。 事案の分析等:相談者が差別を受けたと感じている事例 (3) 相談者:70代、女性、障害当事者の母親 相談窓口:行政機関 相手方:事業者 相談内容:現在、娘はA事業所のヘルパーを利用している。(10年程) ケアマネから事業所責任者(B氏)が新たな事業所が見つかるまではサービスに入ることを前提にサービスの提供を終了したい旨の話がある。理由として新しいヘルパーに対応してもらわないと、サービスの提供が難しくなると2年前から言われていたが、娘が断り続けていたとのこと。 母親の意向としては、B氏と2人きりで話をしたいが、話し合いの場は双方での言い分が違い実現していない。 母親としては、A事業所にサービス継続してもらうつもりはないが、10年来の付き合いがあるにも関わらず、対外的な理由で説明を終えようとしていることに立腹している。事業所へ泣き寝入りしたくないとの思いが強い。 一度頭を冷やし、第三者に入ってもらったうえでの話し合いが良いのではないかと伝え、一度冷静になって考えてみるとのことで話を終える。 対応等:市福祉事務所担当者から入電。  新たな事業所が見つからない中でA事業所が継続してサービスに入っていたが、それも限界がきており、今月中に撤退すると言っている。  福祉事務所からA事業所へ4者(市役所・ケアマネ・A事業所・本人及び母親)での協議を提案したが、A事業所から「一方的な話となるため、顔を合わせない方が良い」と言われ、話し合いが実現する見込みはない。文書、電話でのやり取りも拒否されており、A事業所の方針として謝罪もしないと主張している。 以上のことから、母親はこれまで以上に立腹しており、県に相談に乗ってもらうことは可能かどうかと、A事業所に対して指導のようなことはできないかとの問合せがある。 母親からの相談については、基本的には市町村や直接関わりのある関係機関で対応して欲しいが、話を聞くことのみであれば可能。事業所の対応に係る指導については、事業者担当者へ引き継いだが、指導等が入る事案ではなかった。その後、市福祉事務所担当者へ経過等の確認ができておらず、経過の確認が必要であった。 事案の分析等:障害者差別相談事例ではないが、相談を受ける側が相談内容の主訴やその解決に向けた道筋(役割分担等)を明確に整理できていない事例。 ■ 障害者の雇用の促進に関する法律の雇用主(事業主)の責務にあたる事例 (1) 相談者:20代、男性、肢体不自由 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:知事部局の「障害者採用選考試験」に合格し、入庁した職員を対象とし、職員研修における要配慮事項等の有無についてアンケートを行った。その結果、研修によく使用する職員能力開発センター3階研修室の出入り口扉が押し開き戸であることから、車椅子での移動における扉の開け閉めが難しく、改善を要望したいとの申し出があった。 対応等:職員能力開発センター3階出入り口扉のうち1箇所を押し開き戸から引き戸に変更する予定。※令和4年度予算取得済み。令和4年9月から10月にかけて工事実施予定。 事案の分析等:障害者の雇用の促進に関する法律の雇用主(事業主)の責務 (2) 相談者:複数、聴覚・言語障害、肢体不自由、精神障害 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:障害のある職員を対象に、職員研修を受講するに当たって配慮すべきことがないか等を調査した結果、次のような意見があった。 ①聴覚・言語障害の職員:要約筆記又は手話通訳者を手配して欲しい。 ②肢体不自由の職員:高さを調整できるテーブルを購入して欲しい。 ③精神障害の職員:気分が悪くなった時に休憩できる部屋を用意して欲しい。 対応等:各職員の障害特性に応じて、要約筆記の手配や、休憩できる部屋等を設けている。(高さを調節できるテーブルについては2台購入済み) なお、職員研修を受講するに当たって配慮を必要とする職員を一覧にしておき、障害のある職員から人事課に依頼がなくとも、自然と配慮できる体制を構築している。 事案の分析等:障害者の雇用の促進に関する法律の雇用主(事業主)の責務 (3) 相談者:複数、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:①視覚障害又は聴覚障害のある教職員が研修を受講する際に、不利益が生じないように環境を整える必要があった。 ②研修日当日に、車椅子を利用する受講者(肢体不自由のある教職員)がいることが判明し、研修室への移動の負担を軽減する必要があった。 対応等:①本人の意向を確認した上で、講義資料の拡大、手元で資料を見ることができるための端末の準備、研修の記録を本人が入力しやすいように様式の変更、座席の工夫を行った。(視覚障害の方) 本人の意向を確認した上で、UDトークの導入を行った。(聴覚障害の方) ②教育センター3階の研修室への移動に階段昇降機(以前から設置)を使用。また、研修室入り口の段差を乗り越えるため、簡易のスロープを作成して一時的に設置し、入り口近くに座席を配置した。 午後からは同センター内の入り口に段差がない研修室に変更して実施した。後日移動式のスロープを購入した。 事案の分析等:障害者の雇用の促進に関する法律の雇用主(事業主)の責務 障害者差別に関する相談窓口における個別相談事例(令和4年度)※高知県が受けたもの 1 不当な差別的取扱い (1) 相談者:精神障害のある人等の自助グループ 相談窓口:行政機関 相手方:行政機関 相談内容:「長年放置されている精神障害を理由とする制限条項の撤廃を求める要請書」が高知県障害者差別解消支援地域協議会会長あてに提出された。 ※要請書の内容(詳細は別添参照) 高知県内市町村の条例・規則等に、精神障害者の入場・利用制限条項が存在しており、精神障害者差別に該当する。 県内市町村の制限条項の存否を確認のうえ、精神障害者の利用制限条項の撤廃に向け、障害者差別の解消に関する関係機関等による連携、周知・啓発の取組を求めるもの。 対応等:精神障害を理由とする制限条項の有無について全市町村に照会したところ、11市町村16件の規則等に制限条項が存在していることが判明した。これまで残っていた理由としては、「改正漏れ」や「制限条項が残っていることを把握できていなかった」であった。 該当の市町村からは、早急に改正をする旨の回答があった。県としては、全市町村に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の趣旨について、改めて周知を図り、「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」の徹底と職員対応要領の策定と障害者差別解消支援地域協議会の設置の促進を図る。 事案の分析等:精神障害者の入場・利用制限条項が存在しており、不当な差別的取扱いの事例となる。 2 合理的配慮の提供 (1) 相談者:年齢不詳、男性、精神障害2級 相談窓口:行政機関 相手方:飲食店 相談内容:感覚過敏があり、マスクの着用が難しい方が、高知市内の飲食店(観光施設)において飲食中、鼻マスク状態となっていた際、警備員から「鼻マスクで入場するなら診断書を提示してください。」と言われた。障害者手帳とヘルプマークを提示した上で、「感覚過敏であるため着用が難しいこと」を伝えるも、警備員は「医師の診断書がないと判断ができない」として、総合案内所へ誘導。総合案内所では、「理由があってマスクの着用ができない」旨を明記したカードを首からかけるよう指示があった。 対応等:該当の飲食店に確認したところ、以下を確認。 ・マスク着用が困難な方には、着用を強要していない ・着用が困難であることは、障害者手帳などにより客観的に証明できるものを見せていただいて対応しているが、診断書の提示は義務となっていない ・「理由があってマスクの着用ができない」旨のカードは、他のお客様等から指摘を受け、不快な思いをされることを防ぐために施設内でルール化しているもの うえのことを相談者に伝えるとともに、同様のことがないように、ヘルプマークやマスクの着用が難しい方への配慮に関する呼びかけを県HPの他、観光関連の各HPにもリンク設定した。 事案の分析等:合理的配慮の不提供の事例。 ※警備員が診断書の提示を必須と誤解していたため、生じた事例ではあるが、ヘルプマークや手帳の提示、また口頭での申し出(感覚過敏)があったにも関わらず、着用を求めたことは、合理的配慮の不提供に該当する。