23ページから24ページ 第3章自殺対策の基本的な考え方 1生きることの包括的な支援として推進する 「自殺は、その多くが追い込まれた末の死であり、社会の努力によって避けることができる」という認識のもと、自殺対策は、失業や多重債務、生活困窮、孤独・孤立などの社会的要因を含む様々な「生きることの阻害要因」を減らす取組に加えて、自己肯定感や信頼できる人間関係等の「生きることの促進要因」を増やす取組によって、社会全体の自殺リスクを低下させるとともに、一人ひとりの生活を守るという姿勢で展開する必要があります。 また、新型コロナウイルス感染症の影響により人との関わり合いや働き方の変化などが生じていることから、こうした社会経済情勢の変化に対応しながら自殺対策を推進していきます。 2県、市町村、関係団体、企業及び県民の役割を明確化し、その連携・協働を推進する 「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を実現するためには、県、市町村、関係団体、企業、県民等が連携・協働して県を挙げて自殺対策を総合的に推進することが必要です。 そのために、それぞれの主体が果たすべき役割を明確にし、共有した上で、相互の連携・協働の仕組みを構築できるよう取組を進めていきます。 3関連施策との有機的な連携を強化して総合的に取り組む 自殺の多くは、健康問題、経済・生活問題、人間関係の問題のほか、地域や職場のあり方の変化など、様々な要因が複雑に関係しています。そのため、制度の狭間にある人や、複合的な課題を抱え自ら相談に行くことが困難な人などを地域において早期に発見し、支援に繋げられるよう、属性を問わない相談支援、参加支援及び地域づくりに向けた支援を一体的に行う「重層的支援体制整備事業」の実施など、地域共生社会の実現に向けた取組を始めとした各種施策との連携を図ります。 4県民一人ひとりが自殺予防の主役となるよう取り組む 自殺を防ぐためには、「自殺はその多くが追い込まれた末の死である」という自殺に関する正しい認識や、自殺に追い込まれるという危機は「誰にでも起こり得る危機」であり、自殺の問題は一部の人や地域だけの問題ではなく、誰もが当事者になり得る重大な問題であるという認識を広く浸透させることが必要です。  このため、自殺対策の重要性に対する理解と関心を深めるとともに、命や暮らしの危機に陥った場合には誰かに援助を求めることが適当であるということが社会全体の共通認識となるよう、普及啓発に取り組みます。 また、自分の周りにいるかもしれない自殺を考えている人の存在に気づき、思いに寄り添い、声をかけ、話を聴き、必要に応じて専門家につなぎ、見守っていくという、誰もができることについて、広報活動、教育活動等を通じた啓発に取り組みます。  5段階ごと、支援対象者ごとの施策を効果的に組み合わせる 自殺や精神疾患等についての正しい知識の普及啓発などの「事前対応」や、自殺念慮を訴える人への支援などの「自殺発生の危機対応」、自殺や自殺未遂が生じた場合の家族への支援などの「事後対応」といった、段階ごとに実効性のある施策を推進します。 また、自殺死亡率が増加傾向にある若年層や身体的苦痛や喪失体験の多い高齢者、自殺未遂者、精神疾患のある人などの自殺リスクの高い人、自死遺族といった支援対象者ごとの効果的な施策に取り組みます。 25ページから27ページ 第4章 推進体制等 1 推進主体の基本的役割 (1)県民 県民一人ひとりが、自殺対策の重要性に対する理解と関心を深めるとともに、自殺に追い込まれるという危機は「誰にでも起こり得る危機」であって、その場合には誰かに援助を求めることが適当であるということを理解することが重要です。そのうえで、自らの心の不調に気づくとともに、周囲に心の健康を損ない自殺を考えている人がいる場合は、そのサインに気づき、適切に対処することができるようになることが必要です。  (2)家庭 家庭は、職場や学校、地域で心理的ストレスを抱え込んだ家族を温かく迎え入れ、癒し支える大切な場所です。 健康問題や職場、学校等での様々な悩みを抱える身近な家族の悩みやうつのサインに早期に気づき、適切な相談機関や精神科医等の専門家に相談することが大切です。 また、支援する家族自身も心の健康を損なう可能性があることから、悩みを抱え込まずに、誰かに相談し、援助を求めることが重要です。 (3)学校 将来のある子どもの命が自殺により失われることは、家族や周囲に大きな影響を与えるとともに社会的な損失であり、大変深刻な問題です。 自殺を予防するためには、子どもの心の健康の保持・増進への支援が適切に行われる必要があります。そのため、児童生徒や教職員に対し、SOSの出し方に関する教育や援助機関について普及啓発を行い、子どもが辛い思いをしたり、命の危機に遭遇した際に、一人で抱え込まず、他者に助けを求めて良いことや、どのように助けを求めればよいかについて具体的な方法を学ぶことが大切です。 また、自殺の背景には子どもが抱える様々な問題があることを踏まえ、各学校においては、子どもが悩みを抱えた際に相談できる体制や、子どもの些細なサインに気付き、早期発見・早期支援を行う体制を充実させることが必要です。 (4)職場・企業 仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者も多いことから、心理的、社会的ストレスに対応するための心の健康づくりとともに、ストレスの原因となる長時間労働や    ハラスメントの解消、職場環境等の改善が重要です。また、これらのストレスによるうつ病の早期発見・早期治療の取組などにより、自殺対策において重要な役割を果たせること、ストレス関連疾患や勤務問題による自殺は、本人やその家族にとって計り知れない苦痛であるだけでなく、結果として、企業の活力や生産性の低下をもたらすことを認識し、積極的に自殺対策に参画することが大切です。   (5)地域 ひとり暮らしで、学校・職場に属していない人の心身の不調や生活の変化に気づくことが できるのは、その人が生活をしている地域の人達です。 特に、本県では過疎化、高齢化が進んでいるなかで、高齢者の自殺も多いことから、高齢者に対する周囲の人の声かけ等、地域での見守りが大切です。       (6)関係機関・団体 医師会、薬剤師会、弁護士会、司法書士会、高知産業保健総合支援センター、教育委員会、警察等の関係団体及び機関は、相互の連携に向けた取組を進めていくとともに、それぞれの専門的な立場から、県民や家庭・学校・職場・地域における自殺を防止するための活動に積極的に参画する役割を担っています。 また、地域で活動する民間団体は、直接自殺防止を目的とする活動のみならず、関連する分野での活動もひいては自殺対策に寄与し得るということを理解して、他の主体との連携・協働の下、県や市町村からの支援も得ながら、積極的に自殺対策に参画することが大切です。    (7)市町村 市町村は、住民に最も身近な基礎自治体として、住民の暮らしに密着した相談支援等の自殺対策を推進していく中心的な役割を担うことが求められています。 また、生きづらさを抱えている人や家庭が地域で孤立することなく必要な支援が受けられるためには、市町村において包括的な支援体制が構築されていることが重要です。 (8)県 県は、自殺対策基本法の基本理念にのっとり、自殺の状況、これまでの取組の課題、自殺総合対策大綱を踏まえて自殺対策行動計画を策定し、推進していきます。 また、市町村が市町村自殺対策計画に基づいて主体的に取組を推進することができるよう支援していきます。 28ページ 2 連携・協力体制 (1)高知県自殺対策連絡協議会 関係機関が連携し、自殺対策が総合的かつ効果的に実施されるよう、各関係機関の役割と連携のあり方等について検討を行います。  (2)高知県自殺対策推進センター(精神保健福祉センター)を中心とした連携 高知県自殺対策推進センターが、自殺・依存症対策ネットワーク会議等を通じて、県全域の相談機関や支援機関などの連携を維持・強化します。 (3)各福祉保健所でのネットワーク 地域により自殺の実態や課題は異なることから、地域の実情に応じた取組を展開するため 各福祉保健所圏域において様々な関係機関が協議し、相互に連携や協働できるよう、ネットワークの強化を図り、相談や支援体制を整備します。 (4)市町村でのネットワーク 自殺は健康問題や経済・生活問題のほか、地域や職場のあり方の変化など様々な要因が複雑に関係しているため、関係機関がそれぞれの役割を理解しながら連携して支援するネットワークの整備を支援します。 (5)自殺対策庁内連絡会 自殺対策に関する施策の進捗を管理するとともに、高知県自殺対策連絡協議会からの提案等の実現を図るなど、自殺対策を全庁的に推進します。 29ページ 〈高知県 自殺対策連携・協力体制図〉 省略 30ページ 3 計画の進捗管理 取組全体の進捗管理は、日本一の健康長寿県構想推進会議や高知県自殺対策連絡協議会において、社会状況や自殺をめぐる諸情勢の変化などへの対応や、これまでの取組状況などを含め、PDCAサイクルによる検証作業を行うことで、関連施策のバージョンアップを図っていくことにより、取組を継続的に強化していきます。