第四章 南海地震等の災害への備え 写真 タイトル「集中豪雨の中の動かない車達」 作「浜田一彦」 七十一ページ 第一節 南海地震等の災害対策 地震や台風、集中豪雨などの自然災害から県民の生命・財産を守る対策をとることが大変重要です。 高知県では、「高知県地域防災計画(※九十二)」を定め、とりわけ人命を守るための対策を重視して、防災関係機関、事業者、住民が一体となって、人的被害の発生を未然に防ぐ予防対策や応急対策を推進してきました。 また、切迫度が高まってきている上に東海や東南海地震などとの連動発生も危惧されている南海地震に対しては、「高知県南海地震による災害に強い地域社会づくり条例(※九十三)」に基づいて作成した「南海地震対策行動計画(※九十四)」により、事前に実施すべき対策や目標などを定め、被害軽減に向け、取り組んでいます。 想像を絶する被害をもたらした東日本大震災では、障害のある人の死亡率が被災地全体の死亡率に比べて高かったと言われています。この計画では、障害のある人にとって特に重要なことについて取り上げます。 南海地震に備えた対策を、官民一体となって加速化・強化する必要があります。 七十一ページの語句の説明 (※九十二)高知県地域防災計画 防災活動の総合的かつ計画的な推進を図り、県民の生命、身体及び財産を災害から守り、県土の保全と県民生活の安定確保を目的として、各種の災害に対処するため県や市町村などの責任と処理すべき事務等を定めたものです。 (※九十三)高知県南海地震による災害に強い地域社会づくり条例 南海地震による災害から県民の生命、身体及び財産を守ることを目的に、予防から応急・復旧・復興までの総合的な対策を計画的に行うため、県、市町村、防災関係機関、県民、事業者、自主防災組織、社会貢献活動団体等が、相互に連携しながら南海地震対策を推進していくために必要なことを定めた条例(平成二十年制定)です。 (※九十四)南海地震対策行動計画 南海地震からの被害の軽減や、発生後の応急・復旧・復興のための事前の準備など、県、市町村、事業所をはじめ県民それぞれの立場で実施すべき取組をまとめた南海地震対策のトータルプランです。 七十二ページ グラフ 災害が起きた時に不安なことの説明 平成二十四年高知県障害児者等アンケート調査より 災害に関する情報を得られるか 身体障害十六点六パーセント、知的障害十五点一パーセント、精神障害二十点八パーセント、難病患者十四点七パーセント、発達障害十六点四パーセント、高次脳機能障害十八点一パーセント 安全な場所に避難できるか 身体障害五十四点七パーセント、知的障害五十四点三パーセント、精神障害五十八点零パーセント、難病患者五十九点六パーセント、発達障害六十二点三パーセント、高次脳機能障害四十九点五パーセント 家財が被害を受けないか 身体障害五点一パーセント、知的障害四点七パーセント、精神障害十三点二パーセント、難病患者四点五パーセント、発達障害四点九パーセント、高次脳機能障害六点七パーセント 避難先等で十分な食料や衣類が得られるか 身体障害十九点一パーセント、知的障害二十二点一パーセント、精神障害二十三点一パーセント、難病患者十一点三パーセント、発達障害二十二点六パーセント、高次脳機能障害二十一点零パーセント 必要な医薬品や医療が受けられるか 身体障害二十五点六パーセント、知的障害十七点一パーセント、精神障害三十一点九パーセント、難病患者四十三点零パーセント、発達障害十七点六パーセント、高次脳機能障害二十一点零パーセント 避難所の設備が障害に対応しているか 身体障害二十一点二パーセント、知的障害十五点零パーセント、精神障害八点二パーセント、難病患者十八点五パーセント、発達障害二十一点九パーセント、高次脳機能障害十五点二パーセント 避難所で必要な介助を受けられるか 身体障害十九点八パーセント、知的障害十三点六パーセント、精神障害五点六パーセント、難病患者十四点七パーセント、発達障害十二点零パーセント、高次脳機能障害二十一点九パーセント 衛生的な避難生活ができるか 身体障害五点九パーセント、知的障害六点四パーセント、精神障害五点五パーセント、難病患者九点八パーセント、発達障害七点七パーセント、高次脳機能障害六点七パーセント 障害や疾患が悪化しないか 身体障害九点七パーセント、知的障害七点四パーセント、精神障害十八点八パーセント、難病患者二十六点四パーセント、発達障害十三点五パーセント、高次脳機能障害六点七パーセント 他の避難者とうまく生活できるか 身体障害十三点五パーセント、知的障害二十九点三パーセント、精神障害十八点零パーセント、難病患者十二点一パーセント、発達障害四十三点五パーセント、高次脳機能障害十八点一パーセント 避難所で手話や要約筆記などのコミュニケーション支援を受けられるか 身体障害五点九パーセント、知的障害一点九パーセント、精神障害一点零パーセント、難病患者二点三パーセント、発達障害三点一パーセント、高次脳機能障害零点零パーセント 避難後に生活できる場所が確保できるか 身体障害十七点四パーセント、知的障害二十点一パーセント、精神障害十七点二パーセント、難病患者二十点四パーセント、発達障害二十三点二パーセント、高次脳機能障害二十一点九パーセント わからない 身体障害七点六パーセント、知的障害十一点零パーセント、精神障害八点五パーセント、難病患者二点三パーセント、発達障害四点一パーセント、高次脳機能障害八点六パーセント 特に不安に思うことはない 身体障害一点四パーセント、知的障害一点三パーセント、精神障害三点六パーセント、難病患者零点八パーセント、発達障害零点五パーセント、高次脳機能障害六点七パーセント その他 身体障害二点七パーセント、知的障害二点六パーセント、精神障害四点二パーセント、難病患者二点三パーセント、発達障害二点八パーセント、高次脳機能障害二点九パーセント 不明 身体障害十一点三パーセント、知的障害九点一パーセント、精神障害四点三パーセント、難病患者十点九パーセント、発達障害五点七パーセント、高次脳機能障害七点六パーセント 七十三ページ 一 被害を減らすための事前の備え 【現状と課題】 これまで、災害発生時に何らかの支援が必要な人(「災害時要援護者」という。)の身を守るための事前の備えとして、社会福祉施設の地震防災対策マニュアルや、災害時要援護者支援の手引きを作成し、災害前後の対応について啓発してきました。 しかし、大変大きな被害をもたらした東日本大震災や、国から出された「南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高」などを受けて、地震対策の抜本的な見直しが必要となりました。 今後は、高知県版第二弾震度分布・津波浸水予側やそれに基づく被害想定を反映し、「高知県地域防災計画」や「南海地震対策行動計画」に沿った、より実効性のある地震防災対策を急ぐ必要があります。 各市町村では、国から示された災害時要援護者の避難支援ガイドラインに基づき、避難支援プランの策定や要援護者台帳の整備などを進めていますが、個人情報保護の観点から、地域の自主防災組織等の要援護者台帳の共有が十分に進んでいないところもあります。 避難支援プラン個別計画の策定にあたっては、要援護者本人も参加し、日ごろから避難支援者や避難場所・方法について話し合うことが重要です。 七十四ページ 図とグラフ 市町村別最大震度と最大津波高(最大震度及び最大津波高は、発生しうる最大クラスの地震・津波を推計したもの)の説明 資料 南海地震対策課「[高知県版第2弾]南海トラフ巨大地震による震度分布・津波浸水予測」 市町村別最大震度 震度六強 大川村、本山町、土佐町、仁淀川町、越知町、津野町、梼原町、宿毛市の八市町村 震度七 震度六強以外の二十六市町村 最大津波高 東洋町十九メートル、室戸市二十四メートル、奈半利町十六メートル、田野町十三メートル、安田町十四メートル、安芸市十六メートル、芸西村十四メートル、香南市十五メートル、南国市十六メートル、高知市十六メートル、土佐市二十四メートル、須崎市二十五メートル、中土佐町二十二メートル、四万十町三十一メートル、黒潮町三十四メートル、四万十市二十二メートル、土佐清水市三十四メートル、大月町二十七メートル、宿毛市二十五メートル 七十五ページ @災害時要援護者等への啓発の推進 日ごろから南海地震に備えるため、ホームページや広報紙、パンフレット等により幅広く周知します。 要援護者避難支援プラン個別計画の策定を通して、要援護者本人や家族と避難支援者や避難場所・方法の情報を共有するように取り組み、要援護者本人や家族の防災意識の向上に取り組みます。 A障害のある人本人が行う防災対策の促進 災害時に被害を最小限に抑えるために避難訓練への参加を促すとともに木造住宅の耐震診断や耐震改修補助制度の利用、家具の転倒防止や窓ガラスの飛散防止、自家発電装置の整備など、障害のある人本人が行うことができる防災対策を促進します。 B障害者支援施設(※九十五)等における防災対策の推進 全ての障害者支援施設等で実情に応じた防災対策が講じられるよう、各施設等のマニュアルの見直しや安全対策シートの作成を支援するとともに定期的に避難訓練等が行われるよう取り組みます。 安全対策シートに基づき、避難器具や自家発電装置、装備品の整備を支援します。 沿岸部にあり津波被害を直接受ける恐れのある施設の高台等への移転や、長期浸水区域内の施設の高層化や改築などの対策を支援します。 C津波等からの避難対策 市町村と連携し、津波等からの避難に関する情報を入手できる情報提供装置や避難誘導標識等の環境整備を行うとともに障害のある人が安全に避難できる避難路の整備を促進します。 市町村の避難施設の整備を支援するとともに国の施策として地震防災対策を行うよう積極的に働きかけていきます。 七十五ページの語句の説明 (※九十五)障害者支援施設 障害のある人に施設入所支援を行うとともに、生活介護などの日中活動系サービスを行う施設のことをいいます。 七十六ページ 二 応急・復興のための事前の備え 【現状と課題】 災害時要援護者は、避難等に関する情報を得ることや一人で避難することが困難であったり、医療的処置を必要とする場合もあり、より深刻な被害を受ける恐れがあります。こうした人たちが災害時に深刻な被害を受けないため、行政や地域による支援体制を整備することが必要です。 東日本大震災により、これまで以上に県や市町村と災害ボランティアセンター(※九十六)との連携強化が必要であることなどが明らかになりました。 平常時の地域ボランティア活動の重要性を認識するとともに、災害発生時に地域において自力で災害ボランティアセンターを設置・運営することができるようにすることが必要です。 地震などの災害により被害を受けた施設に対して、他の施設が職員の派遣や物資の供給、利用者の受け入れなどの支援を迅速に行うことができるよう、あらかじめ複数の施設が相互応援の協定を結んでおくことなどが必要です。 避難所においては、障害のある人や高齢者など、様々な状態の人が長期間生活することになります。このため、避難所には福祉避難スペースを確保するなど、避難者の特性に配慮した機能を持たせることが必要です。 七十六ページの語句の説明 (※九十六)災害ボランティアセンター 被災者のニーズ収集やボランティアの受け入れ、派遣調整など、災害による被害からの復旧と生活を支援するボランティア活動を円滑に行うための拠点をいいます。 七十七ページ また、一般の避難所での生活が困難な人を受け入れる福祉避難所は、これまで、市町村において四十九施設が指定されていますが、依然として不足している状況であり、また、中には、津波による長期浸水区域に含まれる施設もあるため、さらなる指定の促進が必要です。併せて、広域的な避難者の受け入れ調整や、福祉避難所運営に携わる専門的な人材の確保について検討する必要があります。 避難所等で、手話や要約筆記などによリコミュニケーション支援や情報提供支援を行う、災害時聴覚障害者情報支援ボランティアの登録制度を創設しましたが、ボランティアがいない地域への対応や、市町村及び災害ボランティアセンターとの連携についてさらに検討することが必要です。 災害時の心身の反応や心のケアに関する基礎知識をまとめた「災害時のこころのケアマニュアル」を作成し、マニュアルを活用した人材育成に取り組みました。東日本大震災により、心のケア活動をコーディネートするための拠点の必要性が明らかになってきたことから、この教訓を踏まえたケア体制の整備が必要です。 災害発生後、被災した障害のある人等の心身の健康のためにも、少しでも早く障害福祉サービスの提供を再開する必要があります。また、それまで障害福祉サービス等を利用していなかった人にも、サービスが必要となることも考えられます。こうしたときに、迅速かつ柔軟にサービスが提供できるよう、対策を検討しておく必要があります。 七十八ページ @災害時要援護者の支援体制整備 各市町村での災害時要援護者対策をさらに進めるため、東日本大震災の教訓や、「南海トラフの巨大地震による被害予測」等を踏まえ、災害時要援護者支援の手引きのバージョンアップを行います。 医療を必要とする障害のある人が、災害時においても必要な医療が継続して受けられるよう、「高知県災害時医療救護計画」に基づき医療提供体制の整備を進めていきます。 A互いに支え合う仕組みづくり 高知県ボランティア・NPOセンターと連携して、災害時に迅速な対応ができるよう、災害ボランティアセンターの速やかな設置と円滑な運営を行うための継続的な支援を行います。 東日本大震災の教訓を生かし、高知県ボランティア・NPOセンターが平成二十四年度に改定した「災害ボランティアセンター活動支援マニュアル」に基づいたボランティアセンターの設置・運営を支援します。 高知県ボランティア・NPOセンターと連携して、災害ボランティアセンターがより有効に機能するよう、必要なスペースやアクセス条件を考慮しながら、津波による長期浸水区域内の災害ボランティアセンター候補地の代替施設を検討します。 B災害時における社会福祉施設の相互支援 各施設団体と災害時における相互応援の協定を締結し、災害により大きな被害を受けた施設に対して、他の施設が職員の派遣や物資の供給、利用者の受け入れなどの支援を迅速に行うことができるよう取り組みます。 C福祉避難所の整備 社会福祉施設等に加え、今後ホテルや旅館などの宿泊施設や盲・ろう学校を福祉避難所として指定することも含め、障害等の特性に応じた福祉避難所の指定に努めます。 福祉避難所における広域的な受け入れの仕組みを検討するとともに、介護等の専門的人材を確保するための関係団体との調整を進めます。 七十九ページ 図 福祉避難所指定(協定)状況(平成二十四年十二月一日現在)の説明 資料 地域福祉政策課 高知市十一か所 施設種別、高齢者施設三か所、障害者施設一か所、保健センター五か所、特別支援学校一か所、その他一か所 安芸市四か所 施設種別、高齢者施設三か所、障害者施設一か所 南国市五か所 施設種別、障害者施設二か所、広域協定による他市の障害者施設三か所 須崎市三か所 施設種別、高齢者施設二か所、保健センター一か所 香南市十か所 施設種別、高齢者施設三か所、障害者施設一か所、児童福祉施設一か所、広域協定による他市の障害者施設五か所 香美市五か所 施設種別、障害者施設三か所、広域協定による他市の障害者施設二か所 東洋町一か所 施設種別、保健センター一か所 北川村一か所 施設種別、保健センター一か所 芸西村二か所 施設種別、高齢者施設二か所 大豊町五か所 施設種別、広域協定による他市の障害者施設五か所 佐川町一か所 施設種別、保健センター一か所 越知町三か所 施設種別、高齢者施設三か所 日高村四か所 施設種別、高齢者施設三か所、障害者グループホーム一か所 四万十町三か所 施設種別、高齢者施設二か所、保健センター一か所 黒潮町六か所 施設種別、高齢者施設四か所、障害者施設二か所 D情報伝達に特に配慮を要する人への避難支援体制整備 高知県聴覚障害者情報センターや高知県聴覚障害者協会と連携し、聴覚障害のある人へのメール等による安否確認や情報提供の仕組みを検討します。 災害時聴覚障害者情報支援ボランティア登録制度へのボランティア登録を促進するとともに、ボランティアがいない地域への支援方法や、市町村及び災害ボランティアセンターと連携した効果的な支援方法を検討し、避難所等におけるコミュニケーション支援と情報提供支援の体制を整備します。 避難所等において、視覚障害などの障害の特性に応じた情報提供支援や、避難生活の支援が適切に実施できる仕組みを検討します。 八十ページ E災害時こころのケア対策 心のケア体制整備検討会を設置し、災害発生時に緊急に対応できる精神科医療の確保や、心のケアチームの編成、他県等からの支援の受け入れ体制づくり等についての検討を行い、心のケア体制の整備を進めます。 F復興期の障害福祉サービスの提供 東日本大震災時に、障害福祉サービス利用者の支給決定や利用者負担、障害福祉サービス事業所の報酬算定等について実施された弾力的な措置などを参考にしながら、サービス提供の円滑な再開のために必要な措置を検討、整理し、市町村や事業所と情報共有を図ります。 アンケート結果の説明 平成二十四年度県民意識調査結果より 質問 災害発生時に(備えも含めて)障害のある人のためにどういう支援ができると思いますか 回答 日ごろの声かけなどによる見守り四十九点零 避難生活時における障害のある方への配慮四十一点零 災害時の避難支援(避難所までの誘導)三十五点八 町内会などの場における支援方法などの話し合い二十七点九 防災訓練への参加の呼びかけ二十二点七 障害に関する知識の習得十八点零 不明十点八 家財の転倒防止器具の取り付けなどの手伝い九点一 その他五点零 県民意識調査によると、「日ごろの声かけなどによる見守り」が最も多く、五割近い人が選択しています。 次いで、「避難生活時における障害のある方への配慮」「災害時の避難支援(避難所までの誘導)」と続いています。