高知県における言語としての手話の普及等の推進に関する条例について 言語としての手話に係る現状 ・手話は、聞こえる人にとっての音声言語と同様に、音声が聞こえない、あるいは聞こえにくい人にとって、思考、感情及びコミュニケーションの基盤となる母語であって、日常生活や社会生活を営む上で必要不可欠なものとして、大切に育まれてきた。 ・障害者基本法第3条では、「言語(手話を含む。)」と明記されている一方 で、「手話が言語である」という認識は県民に普及しておらず、社会の中で手話を言語として使える環境や習得する機会が十分に整備されていない。 地域社会において、手話を日常的に使うろう者は、外出時や就労する際、母語とする手話を安心して使用することができなかったり、災害時に必要な情報を取得できないなど、日常生活の多くの場面で、不安や不便さを感じている。 このため、言語としての手話の認識の普及、手話の習得の機会の確保その他の、手話を使用しやすい環境の整備に関する条例の制定が必要 (参考) (1)全国の状況:38都道府県、21区、360市、123町、7村    計549自治体で条例を制定済(高知県内 11市町村) (2)超党派の国会議員連盟が手話の普及に向けた環境整備を後押しする法案を提出する動きあり    内容:手話の日の設置(9月23日)、国や自治体の責務等(R7秋のデフリンピックまでの成立を目指している) (条例制定に向けた検討状況) ・関係団体等への意見聴取(R6年2月からR6年5月) ・第1回、2回条例検討委員会を開催し、各委員からの意見を踏まえて、条例案を作成(R6年7月4日、9月11日) ・高知県障害者施策推進協議会において審議(9月18日) ・ 9月議会常任委員会において報告(10月4日) ・第3回条例検討委員会において条例案をとりまとめ(10月15日) ・第4回条例検討委員会において施策への意見聴取(12月5日) ※条例検討委員会は聴覚障害のある当事者や手話通訳者、教育関係者、事業者代表等9名で構成 目的、定義、基本理念、県の責務、県民・事業者の役割等 目的 (第1条) この条例は、手話が言語であるという認識に基づき、手話の普及等に関し、基本理念を定め、県の責務、県民及び事業者の役割等を明らかにするとともに、手話の普及等に関する施策の基本となる事項を定め、もって、ろう者を含む全ての県民が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。 基本理念 (第3条) 手話の普及等は、ろう者を含む全ての県民が相互に人格と個性を尊重し、手話が意思疎通を行うために必要な言語であるとの認識の下に、図られなければならない。 県の責務(第4条)、市町村との連携(第5条) ・手話の普及等に必要な施策を策定し、推進する責務 ・基本理念に対する県民の理解を深めるための必要な啓発 ・市町村との連携 県民の役割(第6条) ・手話が言語であることを認識し、手話に対する理解を深める ・県又は市町村が実施する施策への協力 事業者の役割(第7条) ・ろう者に対しサービスを提供する際に、手話その他の方法により、必要な情報を取得することができるよう配慮する ・ろう者が働きやすい環境整備に努める ・県又は市町村が実施する施策への協力 施策の推進体制 手話の普及等に関する基本的施策の策定及び推進(第8条) ・障害者計画において、手話の普及等に関する基本的施策を定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。 ・施策の推進に当たっては、ろう者及び手話通訳者等関係者の意見を聴くための協議の場を設ける ・協議の場で聴取した意見を踏まえ作成した基本的施策の案等に関し、高知県障害者施策推進協議会の意見を聴く 基本的施策 手話を学ぶ機会の確保(第9条) ・県民が手話を学ぶ機会の確保 ・手話を必要とする人が乳幼児期からその家族等と共に手話を学ぶ機会の確保 ・県職員が手話を学習するための取組を推進 手話を用いた情報発信(第10条) ・ろう者が県政に関する情報を速やかに取得するための手話を用いた情報発信 手話通訳者等及びその指導者の確保、養成等(第11条) 学校における手話の学習等(第12条) ・聴覚障害のある人のうち、手話を必要とする者が通学する学校における、  教職員の手話に関する技術の向上への支援 ・学校において基本理念及び手話に対する理解を深めるために必要な支援 事業者への支援(第13条) ・事業者が行う取組への情報提供その他の必要な支援 手話に関する調査研究(第14条) ・関係団体等が実施する手話に関する調査研究及びその成果の普及への協力 条例に基づく施策(案) ・県の広報媒体(広報誌・HP・SNS等)による普及啓発 ・手話動画の配信(日常生活で活用できる手話) ・親子手話教室の開催 ・県職員向け手話研修の開催 ・県広報紙の手話版の作成・配信等 ・手話通訳者養成講座の開催 ・デジタル技術を活用した意思疎通支援の促進(遠隔手話通訳・電話リレーサービスの利用促進) ・教職員向け手話研修の開催 ・「総合的な学習の時間」等を活用した手話の理解促進(動画・啓発資材の提供) ・手話動画の配信(接客などの際に活用できる手話) ・事業者向け手話研修の開催 その他 財政上の措置(第15条) 附則 公布日から施行