「環境先進企業との協働の森づくり事業 15周年記念誌」高知県
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木と森、木造建築への思い3梼原町立図書館(雲の上の図書館)「ぼく自身がこういう空間で本を読んでみたい」という隈氏の思いが込められた図書館。「森のなかで本を読む」がコンセプトで、上から木が降ってくるかのような天井の木組みが特徴的です。素足で木の質感を味わえるのも好評。2018年竣工。隈 研吾 kuma kengo1954年生。1990年、隈研吾建築都市設計事務所設立。慶應義塾大学教授、東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授。国内外で多数のプロジェクトが進行中。自然と技術と人間の新しい関係を切り開く建築を提案。主な著書に『点・線・面』(岩波書店)、『ひとの住処』(新潮新書)、『負ける建築』(岩波書店)、『自然な建築』、『小さな建築』(岩波新書)、他多数。Photo © J.C. Carbonne事をすることの楽しさ、充実感を教わりました。 しかも、こうして生まれた木造の建築物は、地域の景観に溶け込みやすい。20世紀以森を再生すると、日本の文化も再生できる 木を生み出す森は、日本の生活の基盤です。日本人は古来より、森からエネルギーや食料などを得てきました。しかし、20世紀になるとその大切さが忘れられ、森は傷めつけられてしまった。森を再生することは、日本の文化を再生するということでもあります。高知県の「協働の森づくり事業」では一見、森と関係のない企業も参加し、山の手入れなどの活動をしています。こうした動きがどんどん広がっていくといいなと思います。ゆすはら座高知県唯一の木造芝居小屋で、隈氏が梼原町にかかわるきっかけとなりました。1948年に建築され、1995年に現在の場所に移転。大正ロマンを感じさせる和洋折衷様式で、花道や桟敷席も設けられています。梼原町との出合いが自分の人生を変えた ぼくが木造建築を手がけるようになったきっかけは、梼原町との出合いにあります。最初に訪ねたのは1992年。古い木造芝居小屋「ゆすはら座」の保存活動の応援に行き、とても素敵な木造建築だと思ってファンになったんです。そこから梼原町と交流するようになり、1994年の「雲の上のホテル(レストラン)」を皮切りに、様々な木造建築物を手がけました。実感したのは、木を使うことの面白さ。特に地元の材料を使って、地元の職人と一緒に仕降、建築物はコンクリートと鉄が主材料になり、世界中が同じようなつまらない風景になってしまいました。もう一度、それぞれの場所にある材料を使い、地元の職人が建築するようになってほしい。木を使うとCO2削減につながることも重要で、建築の流れを変えると地球温暖化対策にも貢献できると考えています。 最近、設計に携わった国立競技場は、あれほど木を多く施した大規模スポーツ施設は例がないといわれました。海外ではパリのサンドニ・プレイエル駅のプロジェクトが進行中で、これも内装に木をふんだんに使います。梼原町で教わったことを今も仕事の中で大切にしているのです。ぼくは感じる。高知の木には強い生命力があると――。建築家 隈 研吾 インタビュー〜これからの高知に期待すること〜

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