平成19年度研究報告 第33号 平成20年3月

公開日 2009年12月24日

更新日 2014年03月16日

1 牛力等を利用した農林地の周年管理システム実証試験
(土佐褐毛牛と電気牧柵による育林効果の検証)

【深田英久・渡辺直史】 

 牛力を利用した土地管理の省力化を実証するため、電気牧柵を設置した試験地で土佐褐毛牛(褐毛和種高知系)を放牧し、次の下刈りの省力効果、ヒノキ1年生苗木の成長、放牧による森林環境への影響などの知見を得た。  
 下刈り省力効果は、特にススキの優占する造林地でみられたが、効果を発揮し、苗木への採食および踏付け被害を抑えるためには、放牧する面積、放牧牛の頭数・体重、飼料植物量により予め放牧に必要な面積、放牧可能頭数・日数を算出する必要がある。  
 放牧圧(日数)の増加は牛の嗜好性が高いススキなどの優占種が減少・変化し、継続的な林内放牧を困難にする。また、土壌の締め固め・裸地化による森林環境への影響が懸念された。  
 電気牧柵の使用は放牧地の移設が容易であるため、牛の移動を容易にし、過放牧による優占種の減少・変化や森林環境への影響を軽減することができる。


2 モウソウチク林の管理に関する研究

【藤本浩平、渡辺直史、今西隆男、板井拓司(高知県幡多林業事務所)、山口達也(高知県中央東林業事務所)、吉井二郎(高知県森林整備公社)】

  高知県中部の管理されていないモウソウチク林の現況および伐採後の新竹発生量等について調査を行った。平均的な林分密度は5,500から7,000本/ha、生立竹は5,000から6,000本/haであった。立枯状態の竹が1から2割を、生立竹のうち新竹が1から2割を占めた。生立竹の平均胸高直径は13cm程度であった。
  稈は胸高直径12から13cmのもので生重が35から42kg、乾重が21から26kg、実材積が0.029から0.034m3であった。稈の含水率は40%(湿量基準)程度だが、1年生の夏は70%程度と高かった。胸高直径より材積および重量を推定する推定式を示すとともに、細り表を作成し、集成材の材料として利用できる本数を示した。モウソウチク林の資源量と伐採による増減を示し、標準的な林分の収穫量を推定した。3年毎の伐採で25t/ha(乾重)、33m3/ha、集成材の原料として1,312本/haの収穫が期待できる。

 
3 間伐材を用いた木製構造物による河川環境の改善に関する研究

【沖 公友、山崎敏彦、盛田貴雄、松浦秀俊(高知県水産試験場)、黒岩 隆(高知県内水面魚業センター)、堀内泰男(高知県環境研究センター)】

 地域の自然材料(間伐材、石材)を利用した木製河川構造物を試作し、魚類等の生息、生育に配慮した河川環境を復元、改善する効果と木製河川構造物の有効活用の可能性を試験施工により検証した。流れが単調な河川に木製河川構造物を施工することにより、河床地形や水流を変化させ、魚類等の生育・生息環境の形成に一定の効果があることを確認した。試験施工した木製構造物は、構造上の大きな破損、腐朽や流れによる滑動も認められず、その耐久性、安定性からも河川構造物として活用可能である。

 
4 県産木材を用いた接着重ね梁の製造・使用基準の確立

【盛田貴雄、沖 公友、山崎敏彦、政岡尚志、板井拓司(幡多林業事務所)】

 接着重ね梁を信頼性のある構造用材として活用していくために、現状の木材の乾燥技術や接着技術を生かし、接着重ね梁の製造・管理に関する技術的・試験的データを再整備した。接着重ね梁を試験的に製造し、製材、乾燥、切削、接着、仕上げなどの製造・管理に関する基礎的データを収集するとともに、製造した接着重ね梁の曲げ性能試験、接着性能試験を行って、接着重ね梁の製造・品質管理基準の基礎資料とし、それらをマニュアル化した。

 
5 海洋深層水を利用したきのこ栽培
(ミネラル調整液とミネラルトレハの利用)

【今西隆男、市原孝志】 

  海洋深層水から開発されたミネラル調整液とミネラルトレハについて、エノキタケとシイタケの菌床栽培における発生量と子実体の大きさ等に与える影響を試験した。ミネラル調整液の添加により、エノキタケ栽培では発生量の減少、栽培期間の長期化、子実体の大型化がみられ、シイタケ栽培でも発生量は減少したが、子実体は小型化する傾向がみられた。ミネラルトレハの添加では、エノキタケ・シイタケ栽培とも対照区と同程度であった。
 


この記事に関するお問い合わせ

高知県 林業振興・環境部 森林技術センター

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