平成20年度研究報告 第34号 平成21年3月

公開日 2009年05月14日

更新日 2014年03月16日

1 中山間地域における森林バイオマス資源の有効利用技術開発事業

【三好和広、市原孝志、山崎敏彦、政岡尚志、松岡良昭、高野定雄(高知県中央西林業事務所)、吉井二郎(高知県森林整備公社)、板井拓司(高知県幡多林業事務所)山口達也(高知県中央東林業事務所)、鈴木保志(高知大農)】

 木質チップ(以下「チップ」という)を園芸ハウス用加温ボイラの燃料として利用するため、本研究では木質バイオマスの乾燥法とチップ供給コストについて検討した。
 木質バイオマスの乾燥として、丸太では、平積み乾燥、はえ積み乾燥、割り材乾燥について、チップでは自然乾燥、送風乾燥、回転ドラム式乾燥について試験を行った。平積み乾燥では屋根の下にりん木を敷いて丸太を乾燥させると乾燥が速く進んだ。また、りん木を敷くことでアスファルトと地面の乾燥速度の差がほとんどなくなった。チップ乾燥では攪拌と送風が有効であった。回転ドラム式乾燥ではハウス内において最大19.68%/時の乾燥速度で乾燥した。チップ供給コストは、集積土場、林道端、作業道端に放置されている残材を収集、運搬、土場で乾燥、チップ化、園芸サイロに運搬投入コストについて試算した。最も安いのは集積土場の残材をダンプで運搬し、チップをダンプで配送するコスト、最も高いのは作業道端の残材をフォワーダで収集・運搬し、チップを袋詰めして配送するコストであった。


2 巻き枯らし間伐木から発生する昆虫相および林内への影響調査

【宮田弘明、深田英久】

 ヒノキ人工林の時期別巻枯木および伐倒木に掛かる作業功程時間と、それらから発生する昆虫類を調査した。また、スギ・ヒノキ巻枯木の枯損状況、残存木の成長を調査した。巻き枯らし間伐は、夏季では伐倒間伐より作業効率がよく、それらの間伐木から発生した昆虫類は、前者から樹皮下キクイムシ類、後者からヒメスギカミキリ等が多く発生したが、生立木には穿孔しないものが大半であった。林内環境への影響は、伐倒間伐に比べて緩やかであり、残存木の成長や下層植生の生育状況とも劣るものではなかった。これらのことから、巻き枯らしによる間伐は、間伐の一方法として有効なものと考えられた。


3 強度間伐が残存木の成長および材質等に与える影響

【深田英久、渡辺直史、宮田弘明、山崎敏彦】

 近年、林業経営コストの低減や混交林化を目指した森林育成施業として、強度間伐が増加しているが、残存木の材質に与える影響等の未解明の点を残したまま実施されている。そこで、強度間伐施業が残存木の成長および材質等に与える影響について調査・検討し以下の知見を得た。
 ヒノキ林では、間伐率が高くなるほど間伐後5年間の樹高およびha当たりの材積成長量が減少し、特に本数間伐率47.7%以上の間伐区で形状比が低下するウラゴケ型化が確認された。また、ヒノキの樹脂流出木本数や個体当たりの樹脂流出個所数は無間伐林分であまりみられず、間伐率の上昇に伴って増加した。また、樹脂流出木の割合は、北向き斜面と夏期に比較的冷涼な標高1000m以上で低くなった。
 間伐後7年を経過したヒノキから採取した胸高直径位置の「間伐後に成長した材/間伐前に成長した材」の密度比は、60%間伐区が無間伐、20%間伐、40%間伐区に比べて高くなる傾向を示し、丸太(1.5から4.5m高、4.5から7.5m高:3m材)の動的ヤング係数も60%間伐区が最も高くなった。


4 間伐施業と台風被害との関係に関する調査

【深田英久、宮田弘明、山崎敏彦、渡辺直史】

 近年、概ね本数間伐率40%以上の強度間伐が増加しているが、森林の急激な環境変化による風倒木の発生等の不安材料を残したまま実施されている。そこで、間伐と平成16(2004)年台風16号・18号台風被害との関係について調査・検討し以下の知見を得た。
  谷沿いのヒノキ林調査地1個所で20%、40%、60%間伐区に各1本ずつ被害木が発生していたが、他のヒノキ林調査地4個所の15プロット(50から75%間伐区9プロットを含む)では間伐の有無にかかわらず被害木は発生していなかった。
  施業団地(津野町北川147.8ha)内の、間伐施行地24個所(20ha)には台風被害がなかったが、無間伐のスギ、ヒノキ林に被害木が発生していた。被害林分の土壌は被害のない林分に比べて、スギでは0から50cm深までの土壌が硬く、ヒノキでは0から100cm深までの土壌が軟らかい傾向を示した。
 県下の台風被害林分371個所の斜面方位は直近の気象観測所の台風当日の風向と概ね一致しており、斜面への吹付けによる被害が多いものと推測された。また、1ha以下の局所的被害が多く、放射状に近い倒伏状態を示した被害林分の存在や県内観測所の突風率(最大瞬間風速/平均風速)が2.4から5.7と高いことなどから、局所的に大きな被害をもたらす局所下降流の可能性も考えられた。


この記事に関するお問い合わせ

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