ニホンジカの生態と被害対策について

公開日 2024年01月31日

生態や特徴

 ニホンジカ(以下シカとする)にはエゾシカやヤクシカなどの亜種があり、四国に分布するシカはキュウシュウジカで大きさは約60kg、オスにはツノ(角)があります。夏毛の白い斑点や大きな白い尻斑が特徴です。

 シカは群れで生活をしており、繁殖期を除き通常はオスの群れとメスの群れとに分れています。交尾期の秋にはオスは山に響き渡る特有の泣き声を発します。メスはふつう1年半で性的に成熟し、約220日の妊娠期間を経て5から7月頃に一頭を出産します。オスの小鹿は母親とともに1から2歳までともに行動し、その後他のオスと群れを作ります。

 野生のシカは主にイネ科の草や木の葉、ドングリ、ササなどを食べていますが、有毒なシキミやアセビなど一部を除きほとんどの植物を食べることができます。シカは反芻動物で、2から4時間ごとに食べては休んで反芻するということを繰り返し、昼夜を問わず活動をしています。

 シカの生息域は低山や里山の森林や草原であり、一般に「林縁の生活者」と呼ばれていますが、このことは農林業被害を起こしやすいことを物語っています。近年、温暖化による暖冬や過疎化高齢化による人間活動の低下、ハンター人口の減少や肉の利用価値の問題による狩猟圧の低下などにより、シカの生息頭数は増えており、農林作物に深刻な被害をもたらしています。

オスジカに興味を示す野生のメスジカ。 (*高知県香美市)

 

被害状況(被害作物など)

 シカの被害については、糞や足跡などのフィールドサインのほか、ツノ研ぎの跡である樹木の剥皮状況などからもシカの被害を特定することができます。また、シカの口が届く高さ約2m以下の葉が一様に食べ尽くされたディアラインなどもシカの被害を特定する判断材料となります。


 シカは食性の幅が広くほとんどの農作物が被害対象になります。また、スギやヒノキの苗木や成木の樹皮が食害を受けたり、ツノ研ぎをする習性のために幹の皮が剥げて樹木が枯死するなど、深刻な林業被害がもたらされています。また、最近ではシカの頭数が増えたこともあり、里に出没したシカが田んぼに入りイネの葉を食べたり、高知県特産のユズの樹皮を剥いだりする被害も増えています。

 

水田におけるイネの食害と、ユズ園での剥皮被害(*ともに高知県馬路村)


   また、農林被害だけではなく、剣山系ではキレンゲショウマなどの希少植物やクマザサなどが食害にあったり、森のダムであるブナやミズナラ、モミ、ツガなどの天然性林での剥皮被害など、生態系へのインパクトも大きな問題になっています。なかでも四万十市黒尊の県境付近や香美市物部の県境付近では深刻な被害が発生し、森林が裸地化して大規模な崩壊など生態系の破壊につながるおそれがあります。

 

 

被害対策

 シカの被害は食害、剥皮被害、踏み荒らしによる被害など様々ですが、その対策について現在までのところ抜本的な対策が確立されているとはいえません。ここでは農林作物にシカを物理的に近づけない防護柵などを中心に取り上げてみました。みなさまの中で、ユニークな被害対策をご存じの方がおいでましたら、ぜひ教えてください。

 
1.まず、できることから・・・・試してみましょう。

 
スギやヒノキの苗木はヘキサチューブやツリーシェルターなどで保護したり、樹木の剥皮被害防止には荒縄やプロテクターなどを使用する方法も広く普及しています。ただし農作物には適用が難しいと思われます。
植林をする場合は1.5m以上の大きな苗を植える事も検討してみましょう。また、シカの餌場を増やすことにつながる皆伐や林地造成はできるだけ止めましょう。
間伐した伐倒木をそのまま林地に放置したり、下刈りの高さを30cmにすると、シカは腹を擦るのを嫌って林地に侵入しにくくなるといわれています。そのような手段を、放置された植林に手を入れる機会としてとらえてみるのも良いでしょう。
木酢液や林業で使われているジラム水和剤などの忌避剤については局所的、一時的ながら効果が認められます。しかし、農業への使用については作物ごとにその薬剤が登録されていない限り使用することはできません。また、食品衛生法に基づく残留農薬のポジティブリスト制(農薬の飛散防止に関する対策など)にも注意が必要です。
臭いや音や光(たとえば爆竹やラジオなど)による追い払いは馴れにより効果が減衰はしますが、一時的な対策には使用を検討してみましょう。手をこまねいているよりは何らかのアクションを起こすことが大切です。ただしシカは夜間も活動するため、大きな音のする爆音機などを夜間に使用する場合は注意が必要です。
もともとシカの天敵は人とオオカミでした。オオカミが絶滅した現在、その血をひくというイヌに注目が集まっています。モンキードッグ同様、シカなどの獣害に対してもイヌによる追い払いの研究が兵庫県などですでに始まっています。しかし、シカは夜間も活動するため充分な効果が得られるかはまだ未知数です。

 
2.本格的に・・・・シカの侵入を防ぐ柵を設置してみましょう。

  
シカの侵入を防ぐ防護柵には様々な種類があります。よく使われている柵にはネット、金網、トタン、フェンス、電気柵などがあります。
農地の場合はイノシシの防護柵などと併用すると良いでしょう。ただし柵の高さは1.5m以上必要なのでトタンの場合は2段に重ねるなどの工夫が必要です。一般的には、強度面や通風性に優れ設置やメンテナンスも比較的容易なワイヤーメッシュ(溶接金網)など金属製のフェンスが良いでしょう。その場合、上部を外側に折り返す「忍び返し柵」が飛び越し対策に有効なのはイノシシと同様です。(「忍び返し柵」についてはイノシシの生態と被害対策についてをご覧ください)
広範な森林の場合は比較的安価なネットが普及しています。しかし、噛み切られたりオスジカのツノがネットに絡んで壊れる場合も多く、特にツノが絡んだシカが暴れている時は危険なので注意が必要です。そのような事故はステンレス線の編み込まれたネットを使用したり、目合いの細いネットを使用することで少なくすることができます。

シカ用防護ネットの例

防護柵については市町村から補助のある地域もあります。詳しくは最寄りの市町村にお尋ねください。

3.シカの捕獲も・・・・検討してみましょう。

 
防護柵などの対症療法だけでは効果が得られないと思ったときには、被害を与えている個体を捕獲することも考えてみましょう。特に防護柵などで農地や植林を囲うと、柵の設置されていない場所に思わぬ被害が発生する場合もあります。したがって、増えすぎたシカを適正な生息密度にまで管理するためにはシカを捕獲することも考えなければならないでしょう。シカの捕獲については北海道などではエサの少ない冬季に大規模な囲いワナを設置している例もありますが、年中エサの豊富な高知県の場合はエサによる誘因が難しく、囲いワナや捕獲オリによる効果は望めませんので、銃による捕獲が主になります。有害鳥獣の捕獲については最寄りの市町村にご相談ください。
 なお、高知県ではシカ個体数調整事業や特定鳥獣保護管理計画などにより、増加したニホンジカの個体数管理に取り組んでいます。
 

 

この記事に関するお問い合わせ

高知県 総合企画部 中山間地域対策課

所在地: 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号(本庁舎3階)
電話: 088-823-9739(企画調整担当)
088-823-9600(集落活動担当)
088-823-9602(人づくり支援担当)
088-823-9622(生活環境担当)
088-823-9039(鳥獣対策室 被害対策担当)
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