高知県公文書開示審査会答申第104号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第104号

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諮問第104号


第1 審査会の結論

知事が、「香北町土地改良事業施行認可申請書(香北町新田地区)に係わり、認可後に県が取得した町からの報告書」を部分開示とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成14年10月2日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号)に基づき行った「町営土地改良事業施行認可申請書(香北町新田地区)に係わり、認可後に県が取得した町からの報告書」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成14年10月16日付けで行った部分開示決定を取り消し、非開示とした権利関係調査簿中の「所有者名」欄の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
 高知情報公開条例の一部を改正する条例(平成17年3月29日条例第14号。以下「改正条例」という。)により改正する前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第1項第2号該当性について
 本件公文書のうち、権利関係調査簿に記載されている所有者名及び権原に基づき使用収益する者の氏名は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであると認められ、本号本文に該当するため、非開示とした。
 また、本件公文書を作成した香北町に確認したところ、当該調査簿は香北町新田地区の水利組合の台帳から転記作成されたものであり、この台帳は、組合員以外の者は閲覧できないことから、本号ただし書のいずれにもに該当しない。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
1 旧条例第6条第1項第2号該当性について
(1)  本件公文書のうち、権利関係調査簿に記載されている所有者名は、「法令等の規定により何人も閲覧できるとされている情報」に当たり、非開示とはならない。
(2)  権利関係調査簿は、香北町長が実施機関に提出した本件土地改良事業施行認可申請書の一部であり、町長の責任において土地の権利関係を調査し、作成すべきものである。よって、当該調査簿が水利組合の台帳から転記作成されたというのは、非開示の理由にならない。
(3)  異議申立人が行った別件の開示請求に対して、実施機関は、平成12年3月3日付けで本件土地改良事業施行認可申請書に添付された当初の権利関係調査簿について全面開示しているのだから、本件公文書も開示すべきである。
2 権利関係調査簿の不備について
 本件土地改良事業施行認可申請書に添付された当初の権利関係調査簿に記載された受益面積の48%は、受益資格のない宅地等の非農地であった。その中には、戦前からの宅地や当該調査簿を一見しただけで非農地と思われるものが多数含まれている。町が当該調査簿を作成する過程でチェックできるものであり、それを受理した実施機関でも疑問を持たなかったとは考えられない。

第5 審査会の判断

 平成17年4月1日に改正条例が施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する異議申立てであるため、当審査会は、旧条例に基づき、本件異議申立てを審議することとする。
1 本件公文書について
 本件公文書は、平成10年に修了した香北町営土地改良事業(以下「本件事業」という。)において、事業終了後、実施機関に以前に提出した本件事業施行認可申請書に添付された当初の権利関係調査簿(以下「当初調査簿」という。)中の受益に誤りがあることが判明したため、平成14年9月18日付けで同町から実施機関に提出された報告書である。
 本件公文書は、「報告書」と題する表紙と、訂正後の権利関係調査簿(以下「本件調査簿」という。)から構成されている。
 本件調査簿には、受益の対象となる土地の地番・地目及び地積等の欄と、その土地の所有者名及び権原に基づき使用収益する者の氏名等の欄が設けられている。
 本件異議申立ては、本件調査簿について、実施機関が非開示とした「所有者名」及び「権原に基づき使用収益する者の氏名」欄のうち、「所有者名」欄の開示を求めるものである。
2 旧条例第6条第1項第2号該当性について
 旧条例第6条第1項第2号は、旧条例第3条後段の個人に関する情報が十分に保護されるように最大限の配慮をしなければならないとの規定を受け、原則開示の情報公開制度の下にあっても、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができると認められるものは、本号ただし書に該当する情報を除き非開示とすることを定めたものである。
 本件調査簿中の「所有者名」は、個人の財産に関する情報であって、特定の個人を識別することができると認められるものであり、本号本文に該当することは明らかである。
 しかし、異議申立人は、この「所有者名」は、本号ただし書アに該当すると主張しているので、以下、検討する。
 本号ただし書アは、本号本文に該当する個人に関する情報であっても、「法令等の規定により何人も閲覧できるとされている情報」は公開することを定めている。
(1) 登記簿と本件調査簿について
 まず、本件調査簿に記載された土地の所有者名が、仮に登記簿上の土地の所有者であれば、旧不動産登記簿法第21条により法務局で何人も閲覧できる情報であるといえる。
 しかしながら、実施機関によれば、香北町が水利組合の台帳から転記して当初調査簿を作成し、その内容の一部に誤りがあったとして、それを訂正したのが本件調査簿であり、どちらの調査簿も水利組合の台帳を基に作成されたものであるとのことである。実施機関によれば、権利関係調査簿は、一般に登記簿台帳を利用して作成するが、それが真の権利関係と一致しないこともあるため、後に関係者から負担金を徴収する必要上、水路の維持費を日常的に徴収している水利組合の台帳から転記する方法を取ったものと思われるとのことである。
 してみると、本件調査簿中の所有者名は、登記簿から得られる情報と全く同一のものと認めることは困難である。
(2) 土地改良法に基づく公告について
 また、土地改良法第96条の2第2項により、土地改良事業を行おうとする市町村は、土地改良事業の計画の概要その他必要な事項を公告することが義務付けられており、権利関係調査簿についても、公告期間中、何人も閲覧することができるようになっている。
 しかしながら、実施機関によれば、本件調査簿は、既に本件事業が終了していたことから、同町において公告に供されていないとのことである。
 なお、仮に公告に供された権利関係調査簿の場合であっても、公告期間は短期間であり、その公告期間経過後は、何人も閲覧できるという状態ではなくなることを考慮すれば、過去に公告に供されたことのみをもって直ちに、ただし書アの定める「何人も閲覧できるとされている情報」に該当すると言うことはできない。
 以上のことから、本件調査簿中の「所有者名」は、本号ただし書アに該当するとは認められない。
3 その他
(1) 当初調査簿の開示について
 実施機関によれば、異議申立人からの別件の開示請求を受けて実施機関が当初調査簿を所有者名及び権原に基づき使用収益する者の氏名の欄も含め全面開示したのは、本件調査簿と異なり、当初調査簿は、本件事業の施行手続きを行う過程で、一定期間公告に供され、誰でも閲覧可能であったからとのことである。
(2) 現在の権利関係調査簿等について
 実施機関によれば、平成13年10月1日に高知県個人情報保護条例が施行され、個人情報の保護を図るため実施機関は市町村に協力を求めるものとされたことから、市町村に対し、土地改良事業の施行手続を行う場合、(1)権利関係調査簿中の「所有者名」欄を「登記簿名義人(所有者)」とする、(2)公告に際しては、登記簿等に記載されていない情報である「権原に基づき使用収益する者の氏名」及び「権原の種類」の欄は削除して行うとの考えを通知しているとのことである。

第6 結論

当審査会は、本件部分開示決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日

処理内容
平成14年12月12日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成15年3月24日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成18年2月21日
(平成17年度第8回第一小委員会)
・ 実施機関及び異議申立人からの意見を聴取した。
・ 諮問の審議を行った。
平成18年3月31日
(平成17年度第9回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年5月15日
(平成18年度第1回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年7月4日
(平成18年度第2回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年11月28日
(平成18年度第3回公文書開示審査会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年12月12日 ・ 答申を行った。

 


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