高知県公文書開示審査会答申第136号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第136号

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諮問第136号


第1 審査会の結論

 知事が、「収納台帳」を非開示とした決定は妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が平成15年8月25日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号)に基づき行った「県営住宅の団地ごとの20万円以上の家賃滞納者の滞納額(全員分)」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成15年9月2日付けで行った「収納台帳」(以下「本件公文書」という。)の非開示決定に対し、金額の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の非開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している非開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
 高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成17年3月29日条例第14号。以下「改正条例」という。)により改正する前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第1項第2号該当性について
1  開示請求の内容は「県営住宅の団地ごとの20万円以上の家賃滞納者の滞納額(全員分)」であり、請求内容に該当する公文書は、現年度及び過年度(滞納者のみ)の団地、棟、部屋番号、名義人ごとの家賃と駐車料の調定金額、収納金額、入金日を月ごとに電算処理した帳票である収納台帳になる。
 収納台帳に記載されている情報のうち、棟、部屋番号、名義人欄は、直接特定の個人を識別できる情報に該当し、また、棟、部屋番号、名義人欄のみを非開示とした場合にも、収納台帳への入居者の記載順は古いタイプの長屋形式の住宅(62団地3,973戸中の2団地212戸)を除き、通常は、棟番号順、部屋番号順になっていることから、住宅地図や団地内の案内図、郵便受けなど他の情報と結びつけることにより、間接的に特定の個人を識別できると認められ、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しない。
2  また、判決や和解など法的措置の対象となった入居者については、措置の年月日、団地名、部屋番号、氏名、和解の場合の滞納金額が議会で公表され、判決文や和解調書には、滞納額、月額家賃、滞納明細などが記載される。
 これらの判決文や和解調書は、議会で公表された内容をもとに、裁判所で個人が自由に閲覧できることから、これらの個人が特定された情報と収納台帳の滞納金額と照合していくことで、判決文や和解調書に記載された個人のみならず、その他の個人も推測され、支払状況などが容易に把握できるため、非開示とすることが妥当である。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
 当初、県営住宅ごとに20万円以上の滞納者の滞納額の開示請求をしたが、個人が特定されるから開示できないということだったので、滞納金額だけの開示で構わないと説明した。県営住宅は多数あり、また、世帯数も多数あるので、滞納金額だけでは、個人を特定できない。
 収納台帳が順番に記載されていることは公営住宅課では分かると思うが、私達はどこの県営住宅が1番になっているのか、2番か3番か分からないので、滞納金額のみの開示だけでは、個人を特定できない。

第5 審査会の判断

 平成17年4月1日に改正条例が施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する異議申立てであるため、当審査会は旧条例に基づき、本件異議申立てを審議することとする。
1 本件公文書について
(1)  本件公文書は、現年度及び過年度(滞納者のみ)の団地、棟、部屋番号、名義人ごとの家賃と駐車料の調定金額、収納金額、入金日を月ごとに電算処理した帳票である。
(2)  また、本件公文書は、現年度分と過年度分が別冊で綴じられており、20万円以上の滞納額を確認するには、現年度分と過年度分を足さなければならない。現年度分は部屋番号順にすべての入居者が記載されているが、過年度分は滞納がある者のみが記載されているため、氏名等を非開示にすれば、現年度分と過年度分を足した20万円以上の滞納額が確認できない。
(3)  なお、本件公文書以外で滞納額が分かる資料については、督促状、明け渡し請求に関する公文書、訴訟提起に関する資料(以下「訴訟対象者リスト」という。)があるが、いずれも請求内容の20万円以上の滞納者すべては記載されていない。また、請求当時の平成15年度分は保管していないとのことである。
2 旧条例第6条第1項第2号該当性について
 本号は、旧条例第3条後段の個人に関する情報が十分保護されるように最大限の配慮をしなければならないとの規定を受け、原則公開の情報公開制度の下にあっても、特定の個人を識別することができる情報は、非開示とすることを定めている。
 これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ただし書に該当する情報を除き、非開示とするものである。
 異議申立人は、県営住宅は多数あり、また、世帯数も多数あるので、滞納金額だけでは、個人を特定できないと主張している。
 しかしながら、異議申立人が求めている開示請求時における20万円以上の滞納額については、収納台帳の現年度分と過年度分を足す必要があるが、氏名を非開示にすれば、現年度と過年度のそれぞれ足し合わせる金額を判別できず、足し合わせた滞納額を知ることはできない。また、収納台帳に記載されている情報のうち、棟、部屋番号、名義人欄のみを非開示としても、世帯数から団地が特定される可能性があり、団地が特定されると、実施機関の主張するとおり、収納台帳への記載順が、棟及び部屋番号順になっていることから、住宅地図や団地内の案内図、郵便受けなど他の情報と結びつけることにより、間接的に特定の個人を識別できると認められる。さらに判決や和解など法的措置の対象者は、氏名や滞納額が明らかになり、この情報と収納台帳の滞納額を照合することにより、法的措置の対象者以外の個人が特定されるおそれがある。
 したがって、本件公文書は旧条例第6条第1項第2号に規定する個人に関する情報に該当し、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないと認められる。
 なお、過年度分については、過年度に滞納がある者のみが記載されており、棟や部屋番号順で個人が特定されるおそれはない。
 しかしながら、滞納額20万円以上とは、現年度分と過年度分を足して20万円以上の者であり、過年度分のみを開示しても請求の目的を満たさないと判断する。
3 公文書の特定について
 県民にとって、自分の知りたい情報が、実施機関においてどのような形で保存されているかを知る機会は少なく、公文書を特定することは困難な場合が多いと考えられる。
 したがって、開示請求があった場合、実施機関は、保有する公文書を明らかにするなどして、請求者が開示請求をしようとする公文書を容易かつ的確に特定できるような情報の提供に努めなければならない。本件はそういった請求者と実施機関との確認が不足し、結果として、請求の趣旨を充足した内容の公文書の特定であったのか疑問が残る。
 旧条例及び改正条例第3条に実施機関の責務を規定しているとおり、実施機関が公文書の開示・非開示の判断をする場合だけでなく、公文書の開示請求に関する手続き等を行う場合においても、県民の知る権利を尊重し、原則公開の立場に立った適切な対応を行わなければならず、実施機関は請求者が開示請求をしようとする公文書を容易かつ的確に特定できるような情報の提供に一層努めるべきである。

第6 結論

 当審査会は、本件部分開示決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成15年11月11日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成16年1月28日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成16年2月17日 ・ 異議申立人から意見陳述申出書を受理した。
平成17年11月14日
(平成17年度第13回第三小委員会)
・ 実施機関から意見聴取及び諮問の審議を行った。
平成18年1月12日
(平成17年度第16回第三小委員会)
・ 異議申立人から意見聴取及び諮問の審議を行った。
平成18年2月6日
(平成17年度第17回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年3月15日
(平成17年度第20回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年5月9日
(平成18年度第1回公文書開示審査会)
・ 諮問の審議を行った。
平成18年7月10日 ・ 答申を行った。

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