高知県公文書開示審査会答申第150号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第150号

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諮問第150号


第1 審査会の結論

 知事は、「大阪神戸米国総領事館担当領事からの電子メール(5月16日付)及び「大阪神戸米国総領事館担当領事からの電子メール和訳文(5月16日付)」について、部分開示とした決定を取り消し、開示すべきである。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が平成18年5月18日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「イージス艦の宿毛港寄港に関する【1】県と国(外務省他)との間の文書のやり取りの内容が分かる資料、【2】米側からのメール文書等意思伝達の関係資料」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成18年6月1日付けで行った「大阪神戸米国総領事館担当領事(以下「担当領事」という。)からの電子メール(5月16日付)」及び「大阪神戸米国総領事館担当領事からの電子メール和訳文(5月16日付)」(以下「本件公文書」という。)の部分開示決定を取消し、本件公文書の全部開示を求めるというものである。

第3 実施機関の決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 本件公文書について
 本件公文書は、米国海軍に所属するイージス艦が、平成18年5月24日から5月27日までの間、宿毛湾港に入港するにあたり、県と在大阪神戸米国総領事館(以下「総領事館」という。)との折衝の過程で、担当領事から5月16日付けで県あてに送信された電子メール及びその和訳文である。
 イージス艦の入港にあたっては、核兵器の搭載のないことが入港許可の前提であることから、県は、外務省及び総領事館に対して、核兵器の搭載の有無について、文書で照会を行った。
 このうち、総領事館については、5月2日に照会文書を持参し、5月12日までに回答が欲しい旨要請するも、難色を示したため、5月15日に再度訪問したところ、口答により「総領事館は、イージス艦寄港に関して言及しないので、外務省に聞いて欲しい。総領事館の方針としては、文書回答はしていない。」という説明を受けた。
 このことを、文書によって回答するよう要請したところ、担当領事から県あてに、5月16日付けで送られてきた電子メール及びその和訳文が、本件公文書である。
2 条例第6条第1項第6号ウ該当性について
 公文書開示請求については、原則公開を基本としており、異議申立人からの本件開示請求に対しても本件公文書以外の14件の公文書は、全面開示を行っている。
 また、本件公文書である「大阪神戸米国総領事館担当領事からの電子メール(5月16日付)」について、その要旨を和訳したもの(以下「要旨和訳文」という。)を、総領事館とも調整したうえ、マスコミに公表し、また、異議申立人にも開示している。
 しかしながら、本件公文書について、公開するべく、総領事館に確認したところ、担当領事は、「県からの再三の要請を受けて、個人として発信した私文書であり、公文書として公開することは信じられない。」と、非常に立腹の様子であった。
 このため、本件公文書については、総領事館の意向を無視して開示すれば、今後の協力関係、信頼関係が著しく損なわれることが明らかであり、ポートセールス等に支障が生じることから、条例第6条第1項第6号ウに定めた「県と国等との協力関係又は信頼関係が著しく損なわれるもの」に該当すると判断し、部分開示としたものである。

第4 異議申立人の主張

異議申立人が、異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
1  本件公文書について、実施機関は、条例第6条第1項第6号ウによる「県と国等との信頼関係が著しく損なわれる」として、部分開示決定としているが、これは、公文書の発信先である総領事館が、私文書として発信したと位置づけ、公開することを拒否しているという、実施機関の主観的判断によるものに過ぎず、条例第10条第4項に定めた「非開示決定においては、条例第6条第1項の各号の規定を適用した根拠を具体的に示したものでなければならない。」に違反している。
2  港湾空港局は、5月15日に、総領事館において、担当領事、副領事と具体的な協議を行っている。
 この中で、港湾空港局は、「核搭載の有無に関して、総領事館は、文書回答ができないことは理解したので、外務省に問い合わせるべきとの担当領事の返事を、文書で回答していただけないか。このことについて、総領事と話をしていただき、5月16日までに文書による回答ができるかどうか、返事をもらいたい。」と公式に記録している。この総領事館からの返事が、本件公文書の「大阪神戸米国総領事館担当領事からの電子メール(5月16日付)」であり、私文書とは認められない。また、港湾空港局は、このメールの要旨を和訳した要旨和訳文を、マスコミに公表したうえ、異議申立人にも開示している。このことは、本件公文書であるメールは、公務上取得した文書で、公文書である証拠といえる。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について
 異議申立人は、平成18年5月18日付けで、イージス艦の宿毛湾寄港に関する本件開示請求を行い、実施機関は、この請求に対して、14件の文書を開示し、2件の文書を部分開示としているが、この2件の文書が、本件公文書である。
 また、実施機関が開示決定を行った14件の中には、本件公文書の要旨を和訳した要旨和訳文が含まれており、この和訳文は、マスコミに公表のうえ、異議申立人にも開示されている。
 実施機関は、本件公文書について、条例第6条第1項第6号ウに定めた「県と国等との協力関係又は信頼関係が著しく損なわれるもの」に該当する情報であると主張し、部分開示決定としているので、以下検討する。
2 条例第6条第1項第6号ウ該当性について
(1)  条例第6条第1項第6号ウは、県又は国等が行う事務事業に関する情報であって、開示することにより、県と国等との協力関係又は信頼関係が著しく損なわれることが「明らかなもの」である場合が、該当すると規定されている。
 この「明らかなもの」とは、「協力関係又は信頼関係が著しく損なわれる」ことが客観的に明白でなければならないとされ、単におそれがあるというだけでは、条例第6条第1項第6号ウを適用することはできないとされている。 
(2)  本件公文書について、実施機関は、担当領事が個人として発信した私文書であり、公表を強く拒否しているという担当領事の意見をもとに、公表すれば信頼関係が損なわれる情報として、条例第6条第1項第6号ウを適用し、部分開示決定としているが、単に損なわれるおそれがあると主張するだけであって、損なわれることが客観的に明白であるとは認められない。
 また、本件公文書の要旨を和訳した要旨和訳文が、既に、マスコミに公表のうえ、異議申立人にも開示されており、本件公文書が開示されたとしても、県と総領事館との信頼関係が著しく損なわれる情報とは認められない。
 このため、実施機関が主張する「県と総領事館との信頼関係を損なうこと」が、結果として、条例第6条第1項第6号ウに定められた「県と国等との信頼関係を損なうこと」になるのか判然としないところもあるが、いずれにしても、本件公文書は、同号ウの「開示することにより、県と国等との信頼関係が著しく損なわれることが客観的に明白」である情報とは、認められない。
  以上のことから、実施機関は、本件公文書について、部分開示決定とした決定を取り消し、開示すべきである。

第6 結論

当審査会は、本件部分開示決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容

平成18年6月22日

・ 実施機関から諮問を受けた。

平成18年6月30日

・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成18年7月20日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。

平成19年5月1日
(平成19年度第1回第三小委員会)

・ 実施機関及び異議申立人からの意見聴取及び諮問の審議を行った。

平成19年3月26日
(平成19年度第2回第三小委員会)

・ 諮問の審議を行った。

平成19年5月1日
(平成19年度第2回第三小委員会)

・ 諮問の審議を行った。

平成19年6月14日
(平成19年度第2回第一小委員会)

・ 諮問の審議を行った。

平成19年7月30日
(平成19年度第1回公文書開示審査会)

・ 諮問の審議を行った。

平成19年8月29日

・ 答申を行った。


この記事に関するお問い合わせ

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