高知県公文書開示審査会答申第166号

公開日 2012年09月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第166号

諮問第166号


第1 審査会の結論

 教育委員会が「教員の生徒に対するわいせつ行為と人事異動の件に関して□□□外部(若しくは関係者)からの問題指摘に対する調査、協議の経緯が判る資料。教育委員会としての見解が判る資料。」について部分開示とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成23年4月12日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「教員の生徒に対するわいせつ行為と人事異動の件に関して□□□外部(若しくは関係者)からの問題指摘に対する調査、協議の経緯が判る資料。教育委員会としての見解が判る資料。」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成23年4月25日付けで行った部分開示決定について、その取消しを求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している本件部分開示決定理由等の主な内容は、以下のように要約できる。
1 本件部分開示決定の理由
(1) 非開示とした部分は、条例第6条第1項第2号に該当する。非開示とした部分(氏名、クラブ名、学校名、職名、経歴、性別、家族情報、経済状況、性格、能力、評価、意見、発言内容、行動内容)については、個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる、又は他の情報と結びつけることにより特定の個人を識別できることとなると認められ、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しない。
(2) 非開示とした考え方は、以下のとおりである。(1)氏名、職名、経歴、性別、家族情報、経済状況、性格、能力は、個人に関する情報であり、非開示とした。(2)クラブ名・学校名・関係教員の氏名を開示すると、調査依頼者名やわいせつ行為の相手方とされる生徒名が類推されるおそれがあり、非開示とした。(3)調査依頼者に対する他者の評価、意見は、個人のプライバシーであり、保護すべきであるので、非開示とした。(4)調査依頼者のプライバシーは保護すべきであるので、プライバシーに係る調査依頼内容が類推される箇所は、非開示とした。(5)文書中に校長、教頭、教諭等の公務員である個人に関する情報があるが、職務の遂行に係る情報ではない部分は、非開示とした。
2 異議申立人の主張に対する意見
(1) 異議申立人の主張の1について、非開示とした情報は、いずれも条例第6条第1項第2号に該当する情報であり、これらを開示しないことにより保護される利益に「明らかに優越する公益上の利益がある」とは認められない。
(2) 異議申立人の主張の2について、恣意的な運用はしていない。条例第6条第1項第2号に該当する個人情報を開示することはできない。
(3) 異議申立人の主張の3について、情報公開制度では、非開示箇所ごとに非開示理由を示すことはなされていない。また、個々に非開示理由を示すと、箇所によっては調査依頼者からの依頼内容が類推されるおそれがある。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している本件異議申立ての主な内容は、以下のように要約できる。
1 本件部分開示決定においては、事案が県教育公務員の刑法(明治40年法律第45号)及び高知県青少年保護育成条例(昭和52年高知県条例第32号)に違反する疑惑に係るもので調査等の経緯の説明に高度の透明性が求められているのに条例第6条第2項の「公益上の理由による開示」の適用が全く考慮されていない。
2 本件部分開示決定の理由として条例第6条第1項第2号の「個人に関する情報」を恣意的に適用し、条例の目的である県民の知る権利の行使を侵害した。
3 非開示部分が多数あるが、非開示とされた各部分が個人情報の何に該当するかの説明がない。これは、非開示決定の理由は「第6条第1項各号の規定を適用した根拠を具体的に示したものでなければならない」と定める条例第10条第4項に違反する。「情報公開事務の手引」では、「判断の基礎となった事実関係について、請求者が具体的に知り得る程度に示すことを実施機関に義務付ける」と明記され、この理由付記は、「適法に非開示決定をするための要件であり、理由を付記していないとき又は付記された理由が十分でないときは、瑕疵ある処分」と記載しているが、非開示とされたどの部分が「いかなる個人情報に当たるか」全く理解できず、条例運用上の重大な瑕疵がある。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について
(1) 本件公文書は、(1)関係教員から聞き取り調査した内容をとりまとめたメモ4枚(以下「本件公文書1」という。)及び(2)校長から報告のあった内容を記録したメモ1枚(以下「本件公文書2」という。)から構成される。
(2) 実施機関は、本件公文書作成の経緯について、以下のように説明している。
実施機関は、県民等から教職員の不祥事に関する調査依頼があった場合、明らかに虚偽の情報であると判断される場合を除き、原則として事実関係の調査を行うことにしている。
高校の教員(以下「調査依頼者A」という。)が来庁し、前任地での本人の事柄についての調査依頼(以下「調査依頼1」という。)があった。その翌日、調査依頼者Aの親族である県民(以下「調査依頼者B」という。)から、他の教員(以下「教員C」という。)の生徒に対するわいせつ事案のうわさについての調査依頼(以下「調査依頼2」という。)があった。そこで、調査依頼1に関する調査と同時に調査依頼2に関する調査を行った。関係教員の事情聴取を行った上で、調査結果を調査依頼者A及び調査依頼者Bに報告した。
本件開示請求に係るわいせつ事案の調査は、調査依頼2に基づくものであるが、調査の結果、調査依頼のあった内容は事実であると確認されなかったため、関係者の処分等は行っていない。
本件公文書1は、実施機関の職員が関係教員から聞き取り調査した内容をとりまとめたメモである。本件公文書2は、本件調査後に校長から実施機関に報告のあった内容を記録したメモであるが、調査依頼2に関する内容が含まれているため、本件開示請求の対象である本件公文書に加えたものである。なお、本件公文書には、本件開示請求に係る調査依頼2に基づく聞き取り調査等の内容とそれ以外の調査依頼1に基づく聞き取り調査等の内容が混在している。
(3) 実施機関は、本件公文書について、条例第6条第1項第2号本文に該当する情報が含まれているとして部分開示決定を行っているので、以下検討する。
2 条例第6条第1項第2号該当性について
(1) 条例第6条第1項第2号本文は、個人に関する情報であって、「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述により特定の個人を識別することができると認められるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」については、本号ただし書に該当する場合を除き非公開とすることを定めている。
実施機関が説明するように、調査依頼1と調査依頼2に基づく調査が同時に行われたため、本件公文書には、調査依頼1に関する関係教員の聞き取り調査等の内容(以下「調査依頼1に関する部分」という。)と、調査依頼2に関する関係教員の聞き取り調査等の内容(以下「調査依頼2に関する部分」という。)が混在しており、両者の部分は必ずしも明確に判別できるものではないが、各調査依頼の内容が異なることから、各部分ごとに条例第6条第1項第2号該当性について検討する。
(2) 調査依頼1に関する部分の非開示情報について
本件公文書中の調査依頼1に関する部分について、実施機関は、おおよそ以下の情報を非開示にしている。(1)氏名(調査依頼者A、関係教員及び調査依頼1に関連するその他の者の氏名)、(2)クラブ名(調査依頼者Aの担当クラブ名)、(3)学校名(調査依頼者Aの勤務校、調査依頼1に関連する学校名)、(4)職名(調査依頼者A及び調査依頼1に関連するその他の者の職名)、(5)経歴(調査依頼者A及び関係教員の経歴)、(6)性別(調査依頼者A及び関係教員の性別)、(7)家族情報(調査依頼者Aの家族情報)、(8)経済状況(調査依頼者Aの経済状況)、(9)性格(調査依頼者Aの性格)、(10)能力(調査依頼1に関連する関係教員の能力)、(11)評価・意見(調査依頼者Aに対する評価・意見)、(12)発言内容・行動内容(関係教員の発言内容・行動内容)である。
調査依頼1は、高校の教員である調査依頼者A本人のいわば職場環境に関わる事柄に関する調査依頼であり、それゆえ、その調査内容は秘匿する必要性の極めて高い情報であって、その取扱いには格別の慎重さが求められるべきものである。そして、本件で非開示とされた情報は、いずれも、調査依頼者Aを識別することができる情報、あるいは、必ずしも調査依頼者Aを識別することはできないが、調査依頼1に基づく調査内容の詳細が明らかになる情報であって、公にすることにより、調査依頼者Aの権利利益を害するおそれがあるものに該当すると認められる。
したがって、調査依頼1に関する部分の非開示情報は、条例第6条第1項第2号本文に該当し、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないと判断する。
(3) 調査依頼2に関する部分の非開示情報について
本件公文書中の調査依頼2に関する部分について、実施機関は、おおよそ以下の情報を非開示にしている。(1)氏名・性別(教員Cの氏名、聞き取り調査の対象である関係教員の氏名、調査依頼2に関連するその他の教員の氏名・性別及び生徒の氏名)、(2)学校名(生徒の通学する学校名)、(3)クラブ名(生徒の所属するクラブ名)、(4)評価・発言内容・行動内容(教員Cに対する評価及び調査依頼2に関連する発言内容・行動内容)。
調査依頼2は、県民である調査依頼者Bからの教員Cの生徒に対するわいせつ事案のうわさに関する調査依頼であり、しかも実施機関によれば調査の結果その事実は確認されなかったというのである。それゆえ、その調査内容は秘匿する必要性の極めて高い情報であって、その取扱いには格別の慎重さが求められるべきものである。そして、本件で非開示とされた情報は、いずれも、教員C及び生徒を識別することができる情報、あるいは、必ずしも教員C及び生徒を識別することはできないが、調査依頼2に基づく調査内容の詳細が明らかになる情報であって、公にすることにより、教員C及び生徒の権利利益を害するおそれがあるものに該当すると認められる。
したがって、調査依頼2に関する部分の非開示情報は、条例第6条第1項第2号本文に該当し、かつ、本号ただし書のいずれにも該当しないと判断する。
なお、条例第6条第2項は、公文書に非開示情報が記録されている場合であっても、「当該公文書の開示をしないことにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があると認められるときは」開示することを定めている。
異議申立人は、教育公務員の刑法違反等の疑惑に係る調査等の経緯の説明には高度の透明性が求められるにもかかわらず、本件部分開示決定において条例第6条第2項の「公益上の理由による開示」の適用が全く考慮されていないと主張している。
しかしながら、すでに述べたように、実施機関によれば、調査の結果、調査依頼2に係る事実は確認されなかったというのであり、個人の権利利益に明らかに優越する公益上の理由があるとは認められない。
3 本件部分開示決定の理由付記について
条例第10条は、公文書を開示するかどうか等の決定の通知は書面によるものとした上で(第3項)、非開示決定の理由は「当該非開示決定において第6条第1項各号の規定を適用した根拠を具体的に示したものでなければならない」とし(第4項本文)、「ただし、当該根拠を具体的に示すことにより、開示しないこととされた情報が明らかになるときは、当該情報が明らかにならない限度で示すものとする。」(第4項ただし書)と定めている。
異議申立人は、本件部分開示決定通知書において、非開示とされたどの部分がいかなる個人情報に当たるかが示されておらず、理由付記としては不十分であり、条例第10条第4項に違反すると主張している。
しかしながら、本件においては、条例第6条第1項第2号本文に該当するとして非開示とされた部分以外の部分は開示されており、本件公文書中のどの非開示部分がいかなる個人情報であるかが示されれば、開示されている部分の情報と照合することにより、非開示部分の内容が推測される可能性は十分考えられる。
したがって、条例第10条第4項ただし書の規定に照らし、本件部分開示決定の理由付記について妥当性を欠くとまでは言うことができない。

第6 結論

 当審査会は、本件部分開示決定について以上のとおり検討した結果、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断したので、答申する。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成23年6月15日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成23年6月23日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。

平成23年9月9日
(平成23年度第2回第一小委員会)

・ 実施機関から意見聴取を行った。諮問の審議を行った。

平成23年11月7日
(平成23年度第3回第一小委員会)

・ 異議申立人から意見聴取を行った。諮問の審議を行った。

平成24年1月25日
(平成23年度第5回第一小委員会)

・ 諮問の審議を行った。

平成24年2月1日
(平成23年度第6回第一小委員会)

・ 諮問の審議を行った。

平成24年2月6日
(平成23年度第3回公文書開示審査会全体会)

・ 諮問の審議を行った。
平成24年2月28日 ・ 答申を行った。

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