高知県公文書開示審査会答申第174号

公開日 2012年12月17日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第174号

諮問第174号


第1 審査会の結論

 教育委員会は、「課長補佐事務引継書」及び「USBメモリ管理台帳」について非開示とした部分のうち、「USB管理台帳」の登録番号5、9から14のUSBメモリの「保管場所」の欄を除き開示すべきである。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成24年1月4日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「公文書主任任命に係る書類(平成23年度)」、「USBメモリ管理台帳」、「課長補佐事務引継書」及び「出勤簿(平成23年)」の開示請求に対し、教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成24年1月18日付けで行った部分開示決定を取り消し、「USB管理台帳」及び「課長補佐引継書」(以下「本件公文書」という。)について非開示とした部分の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している主な内容は、以下のように要約できる。
1 課長補佐事務引継書について
 課長補佐事務引継書は、平成22年度末の人事異動に伴う事務引継書であり、A課及びBセンターの組織体制、関係機関、関係する会議、平成23年4月から5月にかけての当面の動きなどが記載されている。このうち、組織体制に係る記述の中には、人事構想や人員配置要求に関する経緯などが含まれている。こうした人事情報を公にすることは、人事異動の経緯を何人も知りえる状態に置くことを意味することになり、将来移動する職員を特定することにもつながるなど、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがある。
 こうした観点から、課長補佐事務引継書のうち非開示とした人事に関する情報は、条例第6条第1項第6号アの規定に該当する。
2 USBメモリ管理台帳について
 個人情報等を含む重要なデータを記録したUSBメモリは、電磁的記録取扱要綱等により、施錠できる書庫等に保管するものと定め、各課がUSBメモリ管理台帳を備えて使用状況を適切に把握することとされている。
 この台帳には、登録番号、登録年月日、製品名、重要情報の有無、保管場所、使用中止年月日等が記載されている。記録内容の中には、個人情報など重要な情報を有するUSBメモリの保管場所についても記載しているが、こうした情報の保管場所を何人も知りえる状態に置くことは、セキュリティ面で大きな問題がある。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している本件異議申立ての主な内容は、以下のように要約できる。
1 課長補佐事務引継書についての非開示部分は、A課の人員配置要求等の内容が記載された部分であり、このことを開示しても、何ら県に影響を与えない。また、あくまでA課内のことであり、非開示にしなければならないほどの理由は存在しない。
2 USBメモリ等外部記録媒体の保管場所については、A課が自ら定めた「電算システム情報セキュリティ実施手順書」(以下「実施手順書」という。)に規定され、このことはすでに開示されており、今回非開示にしたことは条例第1条の目的に反する行為である。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について
 (1)本件公文書は、平成22年度末の人事異動に伴いA課の課長補佐から引き継いだ事務引継書(以下「本件公文書 1」という。)及びA課のUSBメモリ管理台帳(以下「本件公文書2」という。)である。
 本件公文書1は、「1 課の体制」、「2 総括」、「3 人権教育、生徒指導」、「4 Bセンター」、「5 関係機関、会議等」、「6 当面の動き」の各欄から構成されている。
 また、本件公文書2には、USBメモリ毎に登録番号、登録年月日、製品名、用途・保有者等、重要情報の有無、保管場所、使用中止年月日、備考の各欄が設けられており、登録番号1から19のUSBメモリが記載されている。
 (2) 実施機関は、本件公文書1のうち、(1)「1 課の体制」欄の「8月から1名経過措置としてCセンターへの配置」の次の行の部分(以下「非開示部分1」という。)、(2)「1 課の体制」欄の「総務・奨学金担当4(チーフ1主任2主事1)が行政職員」から以下の部分(以下「非開示部分2」という。)、(3)「2 総括」欄の「総括・組織定数(総務の人員増)については」から以下の部分(以下「非開示部分3」という。)、(4)「4 Bセンター」欄の「センターに常駐の事務職員がいないので」から以下の部分(以下「非開示部分4」という。)を非開示にしている。
 また、実施機関は、本件公文書2のうち、重要情報を含む登録番号5、9から14のUSBメモリの「保管場所」の欄(以下「非開示部分5」という。)及び重要情報を含まない登録番号15から19のUSBメモリの「保管場所」の欄(以下「非開示部分6」という。)を非開示にしている。
 ただし、実施機関は、非開示部分6については誤って非開示にしたものであり、異議申立人には開示の用意があることを伝えていると主張している。
 そこで、実施機関が開示する旨主張している非開示部分6を除く非開示部分の条例第6条第1項第6号ア該当性について、以下検討する。
2 条例第6条第1項第6号ア該当性について
(1) 条例第6条第1項第6号アについて
条例第6条第1項第6号アは、県の機関が行う事務事業に関する情報であって、開示することにより、「監査、検査、取締り、試験、入札、交渉、争訟その他すべての事務事業若しくは将来の同種の事務事業の実施の目的が失われ、又はこれらの公正若しくは円滑な執行に著しい支障を生ずるもの」に該当することが明らかなものについては非開示とすることを定めている。
(2) 本件公文書1中の非開示部分について
 ア 非開示部分1について
  本件公文書1中の非開示部分1には、A課における平成24年度の人員配置の構想が記載されており、当該情報は、本件開示請求のあった平成24年1月時点においては、行政組織内部においても職務上限られた職員以外は目に触れることができない機密性の高い内部管理情報であって、これが開示されればその後の人事管理に係る事務事業の執行に著しい支障が生じる可能性があったと推測される。
 したがって、本件部分開示決定において、非開示部分1について、本号アに該当するとして非開示としたことは妥当であると判断する。
 ただ、非開示部分1に記載されている人事配置の構想は平成24年度にすでに実施され、実施機関も、当審査会の意見陳述において、今の段階であれば、非開示部分1の開示に支障はないと主張しているところであり、本件異議申立てに係る決定においてこれを開示すべきである。
 イ 非開示部分2及び非開示部分3について
本件公文書1中の非開示部分2及び非開示部分3には、総務における将来に及ぶ人員配置の構想が記載されているが、当該情報は組織編成の担当課によってすでに全職員に公表されている情報であり、これが開示されたとしても将来の人事管理に係る事務事業の執行に著しい支障が生じるとは認められない。
 したがって、非開示部分2及び非開示部分3は、本号アに該当しないと判断する。
 ウ 非開示部分4について
本件公文書1中の非開示部分4には、Bセンターにおける過年度の人事配置要求の経緯が記載されているが、当該情報は過年度のものであり、これが開示されたとしても将来の人事管理に係る事務事業の執行に著しい支障が生じるとは認められない。
 したがって、非開示部分4は、本号アに該当しないと判断する。
(3) 本件公文書2中の非開示部分5について
  実施機関によれば、本件公文書2中の「保管場所」の欄について、「重要情報の有無」の欄に重要情報有りの場合は非開示、重要情報無しの場合は開示という方針に基づき、非開示部分5を非開示にしたとのことである。
 本件公文書2中の欄外の注意書きによれば、重要情報」とは、条例第6条の規定により開示してはならない情報をいうものとされており、それゆえ、重要情報を含むUSBメモリの運用管理におけるセキュリティの保全は極めて重要であるといえる。
 非開示部分5には、重要情報を含む登録された各USBメモリの具体的な保管場所が記載されている。これが開示されると、すでに開示されている本件公文書2中の情報と照合すれば、どのような重要情報を含むUSBメモリが具体的にどこに保管されているかが明らかになり、当該USBメモリのセキュリティに問題が生じる可能性が十分考えられ、それゆえ、A課の今後の事務事業の執行に著しい支障が生じることが予測される。
 なお、異議申立人は、USBメモリの保管場所については、A課が定めた「実施手順書」に規定されており、実施手順書はすでに開示されていると主張している。
 しかしながら、実施手順書は、外部記録媒体の保管方法として、一般的に、バックアップテータの保管場所をキー13キャビネット、収納管理用個人テータの保管場所を金庫と規定するにすぎず、どのような重要情報を含むUSBメモリが具体的にどこに保管されているかまでは記載されていない。
 したがって、非開示部分5は、本号アに該当すると判断する。

第6 結論

 当審査会は、本件部分開示決定について以上のとおり検討した結果、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断したので、答申する。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成24年2月6日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成24年2月13日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。

平成24年5月18日
(平成24年度第2回第三小委員会)

・ 実施機関から意見聴取を行った。諮問の審議を行った。

平成24年6月29日
(平成24年度第3回第三小委員会)

・ 諮問の審議を行った。

平成24年8月3日
(平成24年度第4回第三小委員会)

・ 諮問の審議を行った。

平成24年9月4日
(平成24年度第5回第三小委員会

・ 諮問の審議を行った。

平成24年11月29日
(平成24年度第5回公文書開示審査会全体会)

・ 諮問の審議を行った。
平成24年12月12日 ・ 答申を行った。

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