高知県公文書開示審査会答申第61号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第61号

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諮問第61号


第1 審査会の結論

知事は、「高知女子大学大学院設置に係る履行状況報告書(平成10年5月1日現在)」と「高知女子大学大学院設置に係る履行状況報告書(平成11年5月1日現在)」について、開示しないこととした部分のうち、次の部分を除き開示すべきである。
  (1) 夜間の連絡先(職員の自宅の電話番号)
  (2) 生年月日
  (3) ○合、合、可の別
  (4) 未就任理由

第2 異議申立ての趣旨

本件異議申立ては、異議申立人が平成12年5月9日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「高知女子大学大学院設置に係る年次計画履行状況報告書」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が行った「高知女子大学大学院設置に係る履行状況報告書(平成10年5月1日現在)」と「高知女子大学大学院設置に係る履行状況報告書(平成11年5月1日現在)」(これらを併せて、以下「本件公文書」という。)の部分開示決定を取り消し、非開示部分の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の非開示決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。
 (1) 本件公文書について
    本件公文書は、「大学院の設置審査上留意すべき点について(昭和53年1月30日大学設置分科会総会決定、最終改正平成7年1月26日)」に基づき、大学院設置に係る年次計画が確実に履行されているかどうかを文部省に報告するためのものである。
 (2) 教員組織の概要について
    本件公文書の「3 教員組織の概要」には、大学設置審議会が大学設置認可に際して大学教員としての資格を審査し評価(判定)した結果が記載されている。この教員審査は、教員の履歴、教育研究業績、職務上の業績、社会活動などを総合的に審査し、教員の職としての適格性や授業科目を受け持つことの適格性を審査するものであって、大学設置認可を受けるときに行われるものであり、各種試験に準じたものと考えられ、その結果は、学業成績や各種試験成績と同じく当該教員の個人情報であり、条例第6条第2号に該当する。また、教員審査の結果は、公表を目的として作成した文書でないとともに公表もされていないので、ただし書ロには該当しない。更に、高知女子大学の教員は地方公務員に該当するが、教員審査は個人の評価に関する情報であって、職務の遂行に係る情報ではない。教員審査は設置者が大学設置認可を受けるとき必要とされているものであり、教員審査を受けること自体は教員の職務ではなく、ただし書ハには該当しない。以上のことから、教員審査結果に関する事項は個人情報であり、条例第6条第2号本文に該当し、ただし書のいずれにも該当しないと判断した。しかしながら、非開示とした項目のうち氏名や担当授業科目名は、異議申立人が主張するようにいくつかの方法で公表されていることから、「3 教員組織の概要」のうち、「専任・兼担・兼任の別」「職名」「氏名」「担当授業科目名」は条例第6条第2号ただし書ロに該当すると認められるので、現時点では開示してもよいと考えている。
 (3) 未就任理由その他について
    教員の未就任理由及び夜間の連絡先として記載された職員の電話番号は、私生活に関する情報であって、条例第6条第2号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと判断した。

第4 異議申立人の主張

  異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
 (1) 条例の趣旨について
    条例は、第1条に規定されているとおり、憲法で保障された知る権利を具体化したものである。第3条に規定されているとおり、実施機関は公文書の開示を請求する権利が十分に尊重されるよう、原則公開の立場に立って条例の解釈運用をしなければならない。
 (2) 大学院設置基準について
    平成11年9月14日、大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)が改正され、第1条の2第1項において、大学院は、教育研究活動等の状況について自己点検・評価を行い、その結果を公表することを義務づけられた。自己点検、評価すべき項目は多岐にわたり、各項目について詳細に自己分析することが求められている。特に教育活動の中心となる教員組織や教員の研究活動が、情報開示において大きな比重を占めることは言うまでもない。また、同基準同条第3項で点検及び評価の結果について、他者評価を受けるべき努力義務も規定した。
    更に、同基準第9条において大学院を担当できる教員の資格は明確に定められており、高知女子大学大学院担当教員が、大学院担当者にふさわしい経歴や教育研究業績を持っているか否かは、高知県民のみならず、受験者等にとって重大な関心事であると同時に、当該大学院自ら点検評価しなければならない事項である。
 (3) 年次計画の履行状況調査について
    本件公文書は、「大学院の設置審査上留意すべき点について(前出3(1))」において、「九 年次計画の履行状況等の調査」として定められているとおり、本件大学院が設置されて以降、年次計画を確実に実施しているかどうかを文部省に報告するためのものである。
 (4) 条例第6条第2号該当性について
    本件公文書の中で非開示とされた情報は、本号本文に定める個人情報であることは認めるが、ただし書ロ又はハに該当するため開示しなければならない。
    ア ただし書ロ該当性について
      実施機関は、教員組織の概要のうち非開示とした事項には教員判定結果を記載しており、この情報はただし書ロには該当しないと主張しているが、以下のように誤りである。
      (ア) 大学院所属教員の氏名と担当科目は、公刊されている入試情報誌「1999年度版医学歯学系大学院案内」等により公表されており、開示しても当該教員のプライバシーを侵害するとは考えられない。
      (イ) 教員判定結果は、設置後の各教員の担当科目を見ればある程度は判断できるのであり、開示したとしてもプライバシーの侵害にはあたらない。また、県民の税金で設置された大学院が、適切な資格を持った教員によって運営されているかどうかは、県民や関係者にとっては重大な関心事であり、教員判定の結果も当然開示されてしかるべきものである。
    イ ただし書ハ該当性について
      職務の遂行に係る情報には、当該公務員が職務として作成した公文書に記載した自己に関する情報も含まれると解するのが相当である。
      実施機関は、高知女子大学の教員は地方公務員に該当するが、教員資格審査の結果に関する情報は個人の評価に関する情報であって、職務の遂行に係る情報ではないと主張する。
      しかし、本件公文書は、大学院設置に係る年次計画が確実に履行されているかどうかを文部省に報告するためのものであり、当該教員が実際に就任し職務を遂行しているかどうかを確認するためのものであるから、記載されている職名及び氏名は、当該教員の地方公務員としての職務の遂行に係る情報であることは明白である。
    ウ その他
      実施機関は、未就任理由が個人情報でありただし書のいずれにも該当しないと主張するが、大学院設置に係る年次計画は確実に実行しなければならないものであり、就任予定日に就任できないことは問題である。
      条例の目的に照らせば、県が文部省に提出した認可申請が確実に履行されているかどうか、出来ていないとすればその理由は何かを明らかにすることは当然のことであり、未就任理由を開示されたとしても当該教員にとって受忍すべき範囲と考えられる。

第5 審査会の判断

(1) 本件対象公文書について
    ア 実施機関及び異議申立人は、本件公文書について条例第6条のみを適用しているが、本件公文書のうち、平成10年5月1日現在の高知女子大学大学院設置に係る履行状況報告書(以下「甲文書」という。)については旧条例第6条が、平成11年5月1日現在の高知女子大学大学院設置に係る履行状況報告書(以下「乙文書」という。)については条例第6条が適用される。
    イ 甲文書について、実施機関は次の部分を非開示としている。
      (ア) 実施機関職員の夜間電話番号(自宅電話番号)及び職員名
      (イ) 教員組織の概要のうち、専任・兼担・兼任の別、職名、氏名、生年月日、担当授業科目名、○合・合・可の別
      (ウ) 教員組織の概要の備考欄に記載されている未就任理由
    ウ また、乙文書について、実施機関は次の部分を非開示としている。
     教員組織の概要のうち、専任・兼担・兼任の別、職名、氏名、生年月日、担当授業科目名、○合・合・可の別
 (2) 条例第6条第2号及び旧条例第6条第2号該当性について
    本号は、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ただし書イ、ロ、ハに該当する情報を除き開示してはならないとするものである。
    ア 甲文書について
     甲文書については、旧条例第6条第2号が適用されるので、旧条例の規定に基づき、以下検討する。
      (ア) 本号本文該当性について
         実施機関が非開示とした、上記(1)イ(ア)、(イ)、(ウ)は、いずれも個人に関する情報であり、特定の個人を識別できると認められるので、本号本文に該当する。
      (イ) 本号ただし書該当性について
        a 本件公文書に関しては、何人も閲覧できるとする法令上の規定はなく、また、法令等の規定による許可、免許、届出等に際して作成し、又は取得した情報であって公益上開示することが必要な情報ではないので、本号ただし書イ、ハに該当しない。
        b 本号ただし書ロは、公表を目的として作成し、又は取得した情報は開示することとしたものである。
          「公表を目的として」とは、積極的に公表を目的としていなくても、結果として同じ効果をもたらす場合を含むものであり、個人が自主的に公表した資料等から何人でも知り得る情報や、公にすることが慣行となっており、公表しても社会通念上、個人のプライバシーを侵害するおそれがないと認められる情報等が該当する。本件公文書に記載されている大学院所属教員の専任・兼担・兼任の別、職名、氏名及び担当授業科目名は、既に設置認可を受けた大学院の教員体制から何人でも知り得る情報であり、本号ただし書ロに該当する。
          生年月日については、高知女子大学が発行する「高知女子大学研究者総覧」により公表している教員がいるが、公表しているとしても、なお慎重に取り扱うべき個人情報の最たるものであるから、非開示が妥当である。また、○合、合、可の別には、3(2)でいう教員審査を受審した教員について、大学院設置審査基準要項の四 教員組織の規定に基づく大学設置審議会の最終的な教員判定結果が記載されている。
          これについては、設置後の各教員の担当授業科目からある程度は推測できるとしても、推測できるに過ぎず、明らかになっているわけではないので、本号ただし書ロに該当しない。なお、教員判定結果につき、異議申立人は、適切な資格を持った教員によって大学院が運営されているかどうかは県民や関係者にとって重大な関心事であると主張しているが、適切な資格を持った教員による運営は、文部省への履行状況の報告や、大学院設置基準に基づく大学院側の自主的な公表等の、制度的な担保によって図られるべき問題である。
          教員判定結果は授業科目を受け持つことの適格性を審査するもので、あくまで個人の評価に関する個人情報であり、個人情報として最大限に保護すべきである。また、実施機関職員の夜間電話番号については、職員の自宅電話番号であり、個人の私生活に関する情報であり、公表を目的とした情報とは認められないので、本号ただし書ロに該当しない。
        c 旧条例においては、公務員の職務の遂行に係る職名及び氏名を開示するという規定はないが、実施機関の職員の氏名については、従来から開示してきており、本件公文書において非開示とする理由は認められない。
      (ウ) 未就任理由について
         (1)イ(ウ)の未就任の理由は、個人の私生活に関する情報であり、本号ただし書のいずれにも該当しない。
         異議申立人は、大学院設置に係る年次計画が確実に履行されているかどうか、出来ていないとすればその理由を明らかにするのは当然であると主張するが、プライバシーに関する情報は最大限保護しなければならないものであり、未就任理由を開示することは当該教員にとって受忍すべき範囲であるとは認められない。
         以上から、甲文書において実施機関が非開示とした部分のうち、実施機関職員名、専任・兼担・兼任の別、職名、氏名、担当授業科目名は開示すべきである。
    イ 乙文書について
     乙文書については、条例第6条第2号が適用されるので、条例の規定に基づき、以下検討する。
      (ア) 本号本文該当性について
         実施機関が非開示とした、上記(1)のウは、個人に関する情報であり、特定の個人を識別できると認められるので、本号本文に該当する。
      (イ) 本号ただし書該当性について
         a 本件公文書に関しては、何人も閲覧できるとする法令上の規定はなく、本号ただし書イに該当しない。
         b 本号ただし書ロは、公表を目的として作成し、又は取得した情報は開示することとしたものである。
         上記(2)ア(イ)bで述べたとおり、大学院所属教員の専任・兼担・兼任の別、職名、氏名及び担当授業科目名は、本号ただし書ロに該当する。
         同じく、生年月日については、非開示が妥当である。
         また、同じく○合、合、可の別については、本号ただし書ロに該当しない。
         なお、教員判定結果について、異議申立人は、適切な資格を持った教員によって大学院が運営されているかどうかは県民や関係者にとって重大な関心事であると主張している。
         このことにつき、条例第6条ただし書では、開示をしないことにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があると認められるときは、開示をするものと規定されているが、
         適切な資格を持った教員による運営は、(2)ア(イ)bで述べたような制度的な担保によって図られるべき問題であり、個々の教員の判定結果という個人情報を保護する利益に明らかに
         優越する公益上の理由があるとまでは言えず、異議申立人の主張は認められない。
         c 本号ただし書ハは、公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該者の職名及び氏名は開示することとしている。
         本件公文書は、大学院設置に係る年次計画が確実に履行されているかどうかを文部省に報告するためのものであり、報告書作成日現在、各教員がどういう体制で職務を行っているかを記載したものである。
         したがって記載されている職名及び氏名は職務の遂行に係る情報であり、本号ただし書ハにも該当する情報である。
         以上から、乙文書において実施機関が非開示とした部分のうち、専任・兼担・兼任の別、職名、氏名、担当授業科目名は開示すべきである。

第6 結論

 当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。なお、橋本委員は、県立高知女子大学の教員であることから、本件の審査には加わっていない。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

別紙1

以下の「別紙」をクリックすると当審査会の処理経過がダウンロードできます。
「別紙」 [その他のファイル/12KB]


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