高知県公文書開示審査会答申第64号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第64号

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諮問第64号


第1 審査会の結論

知事が非開示とした「モード・アバンセの決算書(平成6年度から平成11年度まで)」について、次の部分は開示すべきである。
その他の部分については知事が非開示とした判断は妥当である。
 
・ 「貸借対照表」、「損益計算書」、「利益金処分計算書」又は「損失金処理計算書」又は「損失処理計算書」又は「損失処理」、「販売費及び一般管理費」、「製造原価報告書」

第2 異議申立ての趣旨

本件異議申立ては、異議申立人が平成12年7月21日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「モード社の決算書」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が行った「モード・アバンセの決算書(平成6年度から平成11年度まで)」(以下「本件公文書」という。)の非開示決定を取り消し、開示を求めるというものである。

第3 実施機関の非開示決定理由等

実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述に代えて提出してきた意見書で主張している非開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。
 (1)本件公文書について
本件公文書は、高知県中小企業高度化資金貸付規則第20条第1項に基づく報告の関連書類として、高度化資金貸付事業の融資先である協業組合モード・アバンセ(以下「協業組合」という。)から実施機関に提出されたものである。
また、本件公文書は、地方自治法第100条に基づき高知県議会に設置された「特定の協業組合に対する融資問題等調査特別委員会」(以下「百条委員会」という。)で行われている調査の資料として提出された文書である。
 (2)百条委員会で本件公文書の一部が公開されるまでの経緯について
実施機関は、百条委員会から調査の資料として本件公文書の提出を求められたが、本件公文書を公表すると、協業組合の社会的信用を失墜させ、その競争力や事業活動に大きな影響を及ぼすことになること、また、公表することについて協業組合の同意が得られなかったこと、更に県内の他の企業が、自己の企業情報が将来公開される可能性があると解したなら、県の融資制度の活用を躊躇することになり、結果として県政の目的が果たせなくなることなどから、本件公文書の公開は公の利益を害し、公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあると百条委員会において主張した。
これに対し、百条委員会からは再度の要請があり、協業組合から本件公文書のうち諸勘定内訳書(以下「内訳書」という。)を除く部分の公表について同意を得られたので、「貸借対照表」、「損益計算書」、「利益金処分計算書」又は「損失金処理計算書」又は「損失処理計算書」又は「損失処理」、「販売費及び一般管理費」、「製造原価報告書」を百条委員会に提出した。そして、内訳書については、同委員会の委員限りの資料として配布しており、一般には公表していない。
 (3)条例第6条第3号該当性について
本件公文書は、協業組合の財務内容、取引先等が記載されたものであり、開示することにより協業組合の販売、経営及び運営状況に影響を及ぼし、協業組合の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められ、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。
ただし、内訳書以外の部分については、上記(2)で述べたとおり百条委員会の強い要請があり、協業組合の提出の同意を得たのち百条委員会に提出され、一般に公開されたので非開示の理由を失った。
このため、本件公文書を百条委員会へ提出した後の8月25日に、異議申立人から改めて「平成6年度~11年度決算書(内訳書を除く)」という開示請求書が提出され、この請求に対しては当該決算書を開示したものである。
しかしながら、内訳書については現在も公表されていないことから、内訳書全体が本号に該当し、個々の情報が条例第6条第3号に該当するかどうか、あるいは既に公表された情報ではないかといったことを個別に判断することは適当でないと考える。

第4 異議申立人の主張

異議申立人及び補佐人が異議申立書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
 (1)本件公文書は、百条委員会で真相を追求している、やみ融資や高度化資金融資事件の真相解明に重要な役割を果たす資料であり、開示することは条例第1条の目的に合致し、非開示にすることは「県民の知る権利」を侵害するものである。
実施機関は、百条委員会を秘密会にするなら本件公文書を資料として提出するとの見解であったが、百条委員会は了承せず公開の会となった。そして証人尋問が行われ、協業組合の代表者は、本件公文書の公開に同意することを明言した。
その結果、本件公文書のうち内訳書を除く部分は、百条委員会に提出され既に公になっている。
しかし、実施機関は、公表しないとの条件を付して議員には内訳書を配布しており、このことは主権者たる県民を愚弄し、情報公開制度及び条例の存在を否定する行為である。
 (2)本件公文書は、協業組合が公開することに同意したものでありながら、実施機関が本号を適用して非開示にすることは不当である。仮に、協業組合が内訳書については公表しないでほしいと言ったとしても、内訳書を含めて公表しない限り、この融資問題は解決しないし、実施機関の説明責任を果たしたとはいえない。
百条委員会での真相解明が進む中、協業組合はその成り立ちからして適法性が疑われるようになり、県の融資の対象として正当性があるかどうかも疑問が生じている。また、協業組合が県からの貸付金を返済していないため、総額26億円の焦げつきを、県民が負担しなければならない。このような事業者が、正当な利益を主張する立場であるかどうか疑問である。
したがって、協業組合の利益を保護するより、真相を究明する公益性を優先すべきである。
 (3)内訳書は、既に開示された貸借対照表などを細分化しただけの付属書類であり、非開示事項は存在しないはずである。内訳書が明らかになることによって、開示された情報が正確かどうか確認できるし、県の貸付の仕方に違法性があったかどうかを含め、当該融資問題の真相解明に役立つと考える。
内訳書には協業組合の取引相手先が記載されているかもしれないので、取引先企業名は非開示でもやむを得ない。百条委員会でも販売先は公開されていないが、取引金額などは公開されているので、本件内訳書をすべて非開示とすることはあり得ないはずだ。
なお、実施機関は、本件公文書を開示すると協業組合の販売、経営及び運営状況に影響を及ぼし、協業組合の正当な利益を害すると主張しているが、公表された部分により既に影響は及ぼされている。このうえ内訳書を開示したとしても、開示することにより正当な利益を害するとはいえない。
また、一般的に市場経済の安定のため、事業者は原則として決算書を公表すべきであり、公表したからといって正当な利益が害されるものではなく、本件公文書は開示されるべきである。

第5 審査会の判断

(1)本件公文書について
ア 非開示理由の適用について
本件公文書は、協業組合の平成6年度から平成11年度までの決算書であり、非開示理由の適用に当たっては、平成10年9月30日以前に取得した平成6年度から平成9年度の決算書には、高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成10年3月30日条例第5号)による改正前の条例(以下「旧条例」という。)第6条が、平成10年10月1日以降に取得した平成10年度及び平成11年度の決算書には、条例第6条が適用されることになる。
イ 諮問第51号との関わりについて
本件公文書は、「貸借対照表」、「損益計算書」、「利益金処分計算書」又は「損失金処理計算書」又は「損失処理計算書」又は「損失処理」、「販売費及び一般管理費」、「製造原価報告書」(以下、これらを併せて「主要部分」という。)と内訳書から構成されている。
なお、平成7年度から平成9年度分は、諮問第51号に関わる異議申し立ての対象となった公文書の一部をなしていた文書であり、当審査会は平成12年12月14日付け答申において、主要部分については公表されていることを理由に開示、内訳書については旧条例第6条第3号該当として非開示妥当との判断を示している。
 (2)旧条例第6条第3号及び条例第6条第3号該当性について
ア 条例の規定の趣旨について
旧条例第6条第3号は、法人又は事業を営む個人の権利及び利益の保護と事業活動の自由を保護し、公正な競争秩序を維持する観点から、開示することにより、法人等又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められる情報は、非開示とすることができると定めたものである。
また、ただし書は、人の生命、身体等を保護するため開示することが必要であると認められる情報又はこれに準じる情報で公益上必要と認められる情報は、開示することとしたものである。
条例第6条第3号本文及びただし書は、上記で述べた旧条例第6条第3号と同様の趣旨であるが、公益上必要と認められる場合は、非開示事項に該当する情報であっても開示することとした規定は、条例第6条第3号ではなく条例第6条本文ただし書に定められている。
イ 本件公文書の主要部分について
本件異議申し立ては、異議申立人が平成12年7月21日に行った開示請求に対し実施機関の行った非開示決定に対し行われたものであるが、本件公文書のうち主要部分は、実施機関の主張のとおり、既に同年8月14日百条委員会に提出され傍聴人に対しても閲覧に供されていることから公表された情報であると認められる。
さらに、この主要部分に対しては、本件異議申立人から平成12年8月25日付けで開示請求がなされ、既に同人に開示されている。
以上のように主要部分は、既に公表された情報であり、開示することにより条例第6条第3号に該当するとは認められないので、以下においては内訳書についての非開示決定の当否を検討することとする。
ウ 内訳書の本号該当性について
本件公文書は、法人の経理運営状況を表す決算書類であり、本来このような財務関係書類は、法人等の内部管理に関する情報であって、これを明らかにするか否かは、法人等自らが選択すべきものであり、その同意なくして開示することは当該法人等の利益を害し、公正な企業間競争の妨げとなると認められる。
本件内訳書に記載された情報は、協業組合の取引先のみならず、協業組合の収入や支出の詳細な構成、資産及び負債の明細などの財務状況が明らかになる情報であり、これらを協業組合の同意なくして開示することは、当該法人等の利益を害し、公正な企業間競争の妨げとなると認められる。
さらに、本件内訳書は、主要部分と異なり委員のみに提示されたものであり公表された情報には当たらない。
以上の理由により、内訳書は協業組合の内部管理情報として保護する利益は失われていないと認められる。
当審査会は上記のように答申第51号の判断と同様に、本件内訳書の非開示の当否について検討したところであるが、異議申立人は、百条委員会で真相を追求している事件の資料を非開示とすることは、県民の知る権利を侵害するものだと主張している。
確かに県民の知る権利は充分に尊重されるべきものであるが、一方で協業組合の内部管理情報に当たる内訳書が当該協業組合の意思に反して開示されることの支障にも配慮すべきであり、本件内訳書に関しても答申第51号の判断を変更するに足る理由は見当たらず、内訳書は本号に該当すると認められる。

第6 結論

当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成12年8月18日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成12年9月8日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成12年11月7日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成12年12月19日
(平成12年度第14回第一小委員会)
・ 異議申立人及び補佐人の意見陳述を行った。
平成13年1月19日
(平成12年度第16回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年2月14日
(平成12年度第17回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年2月23日
(平成12年度第20回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年3月30日
(平成12年度第9回審査会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年5月7日 ・ 答申を行った。

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