高知県公文書開示審査会答申第73号

公開日 2019年08月05日

 

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諮問第73号

 

 

第1 審査会の結論

 

 教育委員会は、「教育委員会会議録及び資料」について、開示しないこととした部分のうち、別紙「諮問第73号 非開示情報一覧表」の「審査会の判断」中「非開示とすべき情報」欄の情報を除き、開示すべきである。

※諮問第73号非開示情報一覧表をご覧になりたい方は『7 審査会の処理経過』の「別紙諮問第73号非開示情報一覧表」をクリックしてください。

第2 異議申立ての趣旨

本件異議申立ては、異議申立人が平成13年4月27日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成12年度開催された教育委員会の議事録(定例・臨時を含む)およびその時の資料」の開示請求に対し、教育委員会(以下「実施機関」という。)が部分開示とした「教育委員会会議録及び資料」のうち、「人事に関する議案」について高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成13年3月27日条例第11号)による改正前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第2号に該当する情報を除くその他の部分の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。

(1) 異議申立ての対象公文書について

    当初、異議申立人からの上記2の開示請求に対して、平成12年度に開催された教育委員会定例委員会及び臨時委員会(以下「委員会」という。)17回分の会議録及び資料を特定し、うち1回分については開示決定を、残りの16回分については、旧条例第6条第2号及び第5号アに該当する情報を非開示とする部分開示決定を行った。 

    その後、異議申立人から、「人事に関する議案」の旧条例第6条第2号に該当する情報を除くその他の部分の開示を求める旨の異議申立てがなされたことから、その趣旨を踏まえ部分開示決定をした16回分の委員会の会議録及び資料のうち、次の9回分に係るものを今回の異議申立ての対象公文書(以下「本件公文書」という。)として特定した。

  ア 平成12年6月定例委員会 平成12年6月20日
  イ   同 6月臨時委員会 平成12年6月27日
  ウ   同 7月定例委員会 平成12年7月28日
  エ   同 8月定例委員会 平成12年8月25日
  オ   同 9月臨時委員会 平成12年9月26日
  カ   同 11月臨時委員会 平成12年11月14日
  キ 平成13年2月定例委員会 平成13年2月15日
  ク   同 2月臨時委員会 平成13年2月27日
  ケ   同 3月臨時委員会 平成13年3月18日

(2) 教職員の懲戒処分に係るものについて

  ア 旧条例第6条第2号該当性

    懲戒処分に係る公文書は、被処分者個人の内心に関する情報、処分事由に該当する非違行為の内容、非違行為に関わる個人の生活状況などが記載されている個人に関する情報であり、旧条例第6条第2号に該当し、かつ、同号ただし書のいずれにも該当しない。

  イ 旧条例第6条第5号ア該当性

    懲戒処分は、地方公務員法上、職員が同法第29条第1項各号に定める事由に該当する場合に、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分を行うことができることとされている。

    懲戒処分を行うかどうか及び懲戒処分を行う場合にいずれの処分を行うかについては、任命権者の裁量によって決定すべきものと解されているが、地方公務員法第13条に定める「平等取扱の原則」及び同法第27条第1項に定める「公正の原則」に照らして、適切かつ妥当な決定を行うことが求められている。

    このため、任命権者として懲戒処分を行うに当たっては、法律に定める処分事由に該当する非違行為があったか否か、その内容や程度がどのようなものであったかといったことについて、ありのままの事実をできるだけ具体的かつ正確に把握することが必要となる。

    こうしたことから、教育委員会においては、懲戒処分を検討すべき事案が発生した場合には、まず、被処分者を含む関係者に対する詳細な事情聴取を行っている。そして、これに基づく調書を作成したうえで、人事議案として教育委員会に付議し、内容を十分に検討して、最終的に懲戒処分を行うかどうか及び懲戒処分を行う場合にいずれの処分を行うかの決定をしている。

    これらの内容が開示されるということが前提になれば、事情聴取を行うべき関係者への心理的な負担を増大させる結果、ありのままの事実が聴取できなくなることから、調書の作成にも支障を生じる。

    こうしたことは、今後の懲戒処分に関する事実調査及び公正な処分の決定に著しい支障を生ずることが客観的に明白であり、旧条例第6条第5号アに該当するものである。

 (3) 人事異動に係るものについて

    人事異動については、人事異動に関する議案を教育委員会に付議、決定後、一定の時期に公表をしている。

    教育委員会に付議する人事異動に関する議案は、人事異動作業における決定前の案であり、この内容が開示されることになれば、職員に対する評価等について、職員本人、教育関係者さらには保護者等の関係者から様々な憶測を呼ぶこととなり、併せて、それに基づいて人事当局、学校等関係機関に対して各方面からの意見が出されること、さらには、当該職員本人の心情への影響も大きいことから、人事異動の事務作業への影響のみならず、学校現場での教育活動等への影響が大きい。

    こうしたことから、事務事業の円滑な執行に著しい支障を生ずることが客観的に明白であり、旧条例第6条第5号アに該当するものである。

    なお、本件公文書のうち人事異動に係る資料については、人事異動発表後は決定したものが公表されるが、本件公文書は、あくまで付議した案であり、教育委員会の審議により変更を生じることもあることから、全体として非開示とすべきと判断した。

 (4) 教育委員会の公開等について

    教育委員会の会議については、県民に開かれたものとするため、従前より非公開とする議決があった場合以外は、公開してきたところである。

    また、先般、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)の改正では、新たに「教育委員会の会議は公開する。ただし、人事に関する事件その他の事件について、委員会又は委員の発議により、出席委員の3分の2以上の多数で議決したときは、これを公開しないことができる。」の規定も設けられたところである。

    これらに基づき、人事に関する議案については、議決を得た上で非公開で審議しているが、公文書開示請求があった場合には、非公開で審議したものについても、条例の規定により開示することのできない公文書以外は、同条例制定の目的に照らして積極的に開示するように努めている。

 (5) 報道機関への公表との関係について

    県民への情報提供の充実を図るため、必要に応じて新聞社等報道機関への情報提供を行っている。これは、事務の公正、円滑な執行に著しい支障を生じない範囲で内容を整理して行っているものである。

    一方、会議録等を公開することは、懲戒処分や人事異動の決定に関する過程が明らかになり、事務の公正で円滑な執行に著しい支障を生じることから、新聞等への結果の公表とは切り離して考えるべきものである。

 (6) 結論

    以上のことから、本件公文書は、個人に関する情報が含まれているとともに、開示することにより事務の公正、円滑な執行に著しい支障を生ずるものであり、部分開示とすることが適当である旨の答申を求める。

第4 異議申立人の主張

異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。

 (1) 教育委員会制度の在り方についての国の動向等

  ア 平成10年9月に出された中央教育審議会の答申「今後の地方教育行政の在り方について」の中では以下のように述べられている。

  イ 教育委員会は執行機関の一つであり、議会の同意を得て首長が任命する5人の教育委員から構成される合議制の行政委員会として設置され、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条に規定される職務権限を管理執行している。その職務権限は、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務など極めて広範にわたっている。

    教育委員会の現行制度とその運用については、教育委員会会議では議決を必要とする案件の形式的な審議等に終始することが多く、様々な教育課題についての対応方針等について十分な話し合いや検討が行われていないなどの指摘もなされている。

    それらの指摘に応え、地域における教育施策の実施主体である教育委員会が教育、文化、スポーツ等の幅広い分野においてますます多様化する地域住民の要望に的確に対応し、きめ細やかな教育行政を主体的かつ積極的に展開できるようにするため、4つの視点から見直しを行い、改善を図る必要がある。

    その一つとして「地域住民の意向の積極的な把握・反映と教育行政への参画・協力」の視点として、教育行政に地域住民の要望を把握・反映する方策
や地域住民の教育行政への参画・協力を促進する方策について一層の努力が必要である。このためには、教育委員会が教育行政に関する説明責任の意義や重要性を十分に認識して、地域住民に対して幅広く積極的な情報提供を行うとともに、地域住民の教育行政に対する意見や苦情に積極的に対応することが強く求められている観点から、教育委員会会議の公開・傍聴を推進するとともに、積極的な広報に努めるなど、関連する施策等について見直し、改善を図ることが必要である。

  ウ この答申を受ける形で、平成13年6月に地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正され、「教育委員会の会議は公開する。ただし、人事に関する事件その他の事件について、委員長又は委員の発議により、出席委員の3分の2以上の多数で議決した時は、公開しないことができる。」とされた。

    なお、「公開しないことができる。」とは、会議そのものを公開しないことができるとしたものであり、会議録を開示してはならないとしたものではない。したがって、会議後の内容については、公表することにより事務事業の実施の目的が失われ、公正若しくは円滑な執行に著しい支障を生じることがなければ、積極的に開示すべきである。

 (2) 教育委員会の公開の責務

    民主的国家において、「開かれた行政」であることは、不断に追求されなければならないことは当然である。わが国では、議会制民主主義という間接代表制をとっており、選挙で選ばれた議員で構成される議会を通してその意志を反映させるほかに、国民が随時に様々な方法を通じて行政を民主的にコントロールしていくことを目指し、かつ、行政当局側がそれに積極的に応えていくことを意味している。教育委員は、議会の同意を得て、首長が任命することになっているが、この趣旨に沿ったものには変わりがない。

    したがって、教育委員会も、積極的・直接的に公開されるべきものであり、傍聴できない県民にも会議録という形で公開されなければならない。

 (3) 人事に関する議案について

    実施機関は、人事に関する議案に関しては、一貫して会議を非公開とし、議事録や資料も非開示としている。そのため、その内容が理由書に示す「教職員の懲戒処分に係るもの」なのか「人事異動に係るもの」なのか、それとも「その他」のものなのかも不明である。議事録ではその内容すら分からないものである。

 (4) 旧条例第6条第5号該当性について

   実施機関は、「教職員の懲戒処分に係るもの」及び「人事異動に係るもの」を旧条例第6条第5号アに該当し、非開示としている。

   しかしながら、非開示とするためには、どのような支障をきたすか具体的、個別的に、かつ明白な説明がなければ非開示とする根拠とはなり得ないのは、判例からも明らかである。

   実施機関は「容易に予想され」としているが、それでは十分な説明とはならない。

 (5) 報道機関への公表との関係について

   懲戒処分、人事異動に係る教育委員会の会議は非公開で行っており、会議録が開示されても事務事業の実施の目的が失われ、公正若しくは円滑な執行に著しい支障を生じることはない。

   平成12年8月26日の地方新聞の記事からも、懲戒処分の内容を同年8月25日の8月定例委員会で決定したことは明らかである。報道機関には公表し、会議録については非開示とする理由はなく、会議録のうち報道機関に公表した内容に沿うものを開示しても事務事業の実施の目的が失われ、公正若しくは円滑な執行に支障を生じることにはならない。

   さらに、会議は非公開で行われていても、会議録については個人情報を除いて開示されているものであり、一概に、懲戒処分及び人事異動に係るものを非開示とする理由はない。

 (6) 結論

   以上のことから、実施機関が決定理由説明書で述べた部分開示決定理由には合理的根拠はなく、旧条例第6条第5号アには該当しない。よって、旧条例第6条第2号の個人に関する情報を除くその他の部分の本件公文書の開示を求める。

第5 審査会の判断

 (1) 本件公文書及び適用条例について

    本件公文書は、平成12年度に開催された教育委員会定例委員会及び臨時委員会のうち、実施機関が異議申立ての対象公文書として特定した9回分に係る会議録及び資料であると認められる。

    非開示理由の適用に当たっては、本件公文書は平成13年3月31日以前に作成された公文書であり、旧条例第6条が適用される。

 (2) 「人事に関する議案」の中の情報について

    「人事に関する議案」のうち非開示とされた情報は、別紙「諮問第73号 非開示情報一覧表」の「実施機関が開示しないこととした部分の情報」中「情報の内容」欄のとおりであるが、その性質により「懲戒処分に係るもの」、「人事異動に係るもの」及び「その他」の別に分類すると、次のとおりとなる。

  ア 懲戒処分に係る情報について

   (ア) 会議録に記載された被処分者の姓、所属・職名及び処分の内容、処分事由等

   (イ) 委員会資料に記載された被処分者の氏名、所属・職名、経歴及び処分の内容、処分事由、事件の概要(非違行為の内容、被処分者の顛末書の記述)等

  イ 人事異動に係る情報について

   (ア) 会議録に記載された対象者の氏名、新旧所属・職名、経歴、異動の理由等

   (イ) 委員会資料に記載された対象者の氏名、新旧所属・職名、経歴等

  ウ その他の情報について

   (ア) 平成12年6月定例委員会会議録のうち、事務局職員の辞任承認議案に記載された退職者の年齢、退職理由等

   (イ) 平成12年6月定例委員会資料のうち、高知県社会教育委員の委嘱議案に記載された新任委員の住所及び事務局職員の辞職承認議案に記載された退職者の退職理由

   (ウ) 平成13年2月定例委員会資料のうち、平成14年度使用小学校及び中学校教科用図書採択のための基本方針及び選定基準に関する議案に記載された「平成12年度高知県教科用図書選定審議会委員」の中の「委員の区分」(二)及び(三)に該当する委員の住所

   (エ) 平成13年2月定例委員会資料のうち、平成12年度高知県児童生徒表彰の決定議案に記載された「平成12年度高知県児童生徒表彰(後期)選定結果」の中の不選定となった個人の学校名、学年及び氏名

   (オ) 平成13年2月臨時委員会資料のうち、平成13年秋の叙勲候補者(教育功労)推薦専決処理報告に記載された叙勲候補者の氏名、生年月日、住所、教育関係従事年数、略歴、功績の概要、賞罰、推薦団体等

 (3) 旧条例第6条第2号該当性について

    本号は、条例第3条後段の「個人に関する情報が十分に保護されるように最大限の配慮をしなければならない。」との規定を受け、原則公開の情報公開制度の下にあっても、特定の個人を識別することができる情報は、非公開とすることを定めている。

    これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ただし書ア、イ、ウに該当する情報を除き開示してはならないとするものである。

    なお、公務員に関しては、職務の遂行に係る情報に含まれる職名及び氏名は、本号ただし書ウに該当し開示されることとなるが、個人のプライバシーの保護に関しては、公務員も個人として保護されるプライバシーは有するものである。

   ア 懲戒処分に係る情報について   

     実施機関は、部分開示決定通知書では懲戒処分に係る情報について本号該当性を明確に記載していなかったが、その後の決定理由説明書では上記3実施機関の部分開示決定理由等の(2)アのとおり主張している。一方、異議申立人は本号に該当する情報を除くその他の部分の開示を求めると主張しており、懲戒処分に係る情報の本号該当性については具体的には述べていない。

     懲戒処分については、処分を行う任命権者の行為は職務遂行情報であるが、処分を受ける側からすれば、原因となった行為が職務に関係するしないにかかわらず、処分を受けたこと自体は「職務の遂行」ではなく、被処分者個人の資質や評価にかかわる当該個人固有の情報というべきものである。

     したがって、処分を受けた者に係る上記5(2)アの情報については、個人に関する情報であると認められ、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

   イ 人事異動に係る情報について

     人事異動議案として委員会に付議された異動対象者の氏名、所属・職名は、案の段階では当該個人に関する情報であると認められるが、委員会において決定され、異動の発表があった後は公表された情報であり、本号ただし書イに該当し、また、異動業務に伴う公務員の職務の遂行に係る情報でもあるので、本号ただし書ウにも該当する。

     なお、異動の発表後であっても、委員会で決定されなかった異動対象者の情報については、当該個人に関する情報であると認められるが、本件公文書の中にはそのような情報は見受けられない。

    ただし、以下の情報については、個人に関する情報であると認められ、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

    (ア) 平成12年6月定例委員会会議録3ページ下から19行目の転入者の年齢

    (イ) 平成12年6月臨時委員会会議録1ページ下から16行目の転入者の年齢

    (ウ) 平成12年7月定例委員会会議録3ページ下から9行目14文字目から8行目30文字目までの退職理由及び同ページ下から3行目以降4ページ2行目までの新任者の私生活上の情報

    (エ) 平成12年8月定例委員会会議録7ページ下から28行目20文字目から21文字目までの退職理由

    (オ) 平成12年8月定例委員会資料付議第5号別紙2ページの新任者の経歴

    (カ) 平成12年11月臨時委員会会議録1ページ下から14行目24文字目から13行目7文字目までの前任者の退任理由及び2ページ4行目から9行目までの転入者の職名に関する情報等

   ウ その他の情報について

  上記5(2)ウの情報のうち、(ア)の退職者の年齢、(イ)の新任委員の住所及び退職者の退職理由及び(ウ)の委員の住所の情報は、氏名が明らかになっている個人に関する情報であり、(エ)の不選定となった個人の学校名、学年及び氏名は、特定の個人を識別できる情報であるとともに個人の評価に関する情報でもあると認められる。したがって、(ア)から(エ)の情報は本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

 また、(オ)の叙勲候補者の氏名、生年月日、住所、略歴、賞罰等の情報は個人に関する情報であるが、そのうち、受賞が決定し公表された受賞者の情報は、本号ただし書イに該当する。しかしながら、委員会に提出された叙勲候補者の資料には推薦順位が付されており、たとえ氏名等が公知の情報であっても、開示することによって個人の評価につながる情報が明らかになることから、結果として、(オ)の情報は非開示とすることが適当である。

 (4) 旧条例第6条第3号該当性について

     本号は、法人等又は事業を営む個人の権利及び利益の保護と事業活動の自由を保護し、公正な競争秩序を維持する観点から、開示することにより、法人等又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められる情報は、非開示とすることを定めている。

     また、本号ただし書は、人の生命、身体等を保護するため開示することが必要であると認められる情報は、開示することとしたものである。

     「人事に関する議案」のうち非開示とされた情報に関して、実施機関及び異議申立人とも本号の該当性については主張していない。しかしながら、審査会で内容を検討したところ、「平成12年6月定例委員会会議録4ページ1行目28文字目から3行目20文字までの退職理由等」の情報は、法人の人事等内部管理に属する情報であり、開示することによって当該法人の事業運営上の地位を害すると認められることから、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

 (5) 旧条例第6条第5号該当性について

     本号は、県又は国等が行う事務事業のうち、開示することにより県民全体の利益を損なうことになる情報は、非開示とすることを定めたものである。

   ア 懲戒処分に係る情報について

     実施機関は、懲戒処分を行うに当たっての事情聴取の内容を開示することは、事情聴取を行うべき関係者への心理的な負担を増大させる結果、ありのままの事実が聴取できなくなり、今後の懲戒処分に関する事実調査及び公正な処分の決定に著しい支障を生ずるとして、本号の該当性を主張している。

     確かに、事情聴取の内容が開示されることが前提となると、事情聴取がやりにくくなることは一定理解できる。

     しかしながら、本号は、行政の透明性を高めるため、県等の事務事業に関する情報は、開示することにより、実施の目的が失われ、又は公正若しくは円滑な執行に著しい支障を生ずること等が客観的に明白である情報に限り、非開示とすることを定めたものである。

     このような規定の趣旨に従い判断すると、うえの実施機関の主張は、事情聴取における一般的な支障を述べるにとどまっており、具体的な支障や事情聴取によらなければ事実の調査及び公正な処分に著しい支障を生ずることについての十分な説明がなされていないことから、この主張だけでは本号の該当性を認めることはできない。

   イ 人事異動に係る情報について

  実施機関は、教育委員会に付議する人事異動に関する議案は決定前の案であり、この内容が開示されることになれば、職員に対する評価等について、職員本人、教育関係者さらには保護者等の関係者から様々な憶測を呼び、それに基づいて人事当局、学校等関係機関に対して各方面からの意見が出されること、さらには、対象職員本人の心情への影響も大きいことから、人事異動の事務作業への影響のみならず、学校現場での教育活動等への影響が大きいことを主張している。

 確かに、教育委員会に付議される議案は、意思形成過程の情報であり、決定する前に案の段階の人事異動情報が明らかになるとすれば、実施機関が主張するような支障は十分考えられる。

 しかしながら、本件の人事異動に関する情報については、付議した案のとおり決定され、公表もされていることから、公表されているものと同じ情報を開示することによって事業実施の目的が失われ、又はこれらの公正若しくは円滑な執行に著しい支障を生じるとは認められず、本号には該当しない。

 (6) その他

     実施機関が開示しないこととした部分のうち、会議録中の会議の進行に係る委員長等の発言や、委員会資料中の付議文書に記載された議案説明の記述などについては、開示することによって特定の個人が識別されたり、事務事業に支障を生ずることも認められないことから、旧条例第6条第2号及び第5号には該当せず、別紙の「非開示とすべき情報」には当たらない。

第6 結論

  当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3  項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。
 

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成13年8月2日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成13年12月25日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成14年2月1日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成14年2月14日
(平成13年度第15回第一小委員会)
・ 実施機関の職員から部分開示決定理由等を聴取した。
・   諮問の審議を行った。
平成14年4月25日
(平成14年度第3回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年5月21日
(平成14年度第5回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年7月16日
(平成14年度第8回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年8月12日
(平成14年度第10回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年 8月29日
(平成14年度第3回公文書開示審査会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年12月24日 ・ 答申を行った。

別紙諮問第73号非開示情報一覧表[PDF:89KB] [その他のファイル/35KB]

 

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