高知県公文書開示審査会答申第75号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第75号

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諮問第75号


第1 審査会の結論

 教育委員会が、「『指導を要する教職員』14名の認定に関わる本人への通知文書」について非開示と判断したことは妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づいて平成13年4月27日付けで行った「『指導を要する教員』14名の認定に関わる決済の文書及び本人への通知文書」の開示請求に対する、教育委員会(以下「実施機関」という。)の「『指導を要する教職員』14名の認定に関わる本人への通知文書」(以下「本件公文書」という。)についての非開示決定のうち、個人に関する情報を除くその他の非開示とした部分の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の非開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書、意見陳述及び審査会の質問事項に対する回答の中で主張している非開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。
  1 指導を要する教職員の認定制度について
 実施機関は、土佐の教育改革の大きな柱である教職員の資質・指導力の向上を図るため、平成12年10月の「人事管理の在り方に関する検討委員会」からの第一次提言を受けて、その趣旨に沿って、いわゆる指導を要する教職員を認定したうえで、個々のケースに応じたプログラムに基づく研修等を実施し、認定を受けた者の早期復帰・課題解消に向けた支援をする取組を行っている。
 また、指導を要する教職員の認定は、指導を要する教職員の認定、復帰及び条件付採用に関すること等について具体的な意見具申を行うことを目的に設置された「資質・指導力向上調査研究会議」(以下「研究会議」という。)の答申を受けて、教育委員会が行っている。
  2 本件公文書について
 本件公文書は、研究会議の答申を受けて実施機関が決定した指導を要する教職員(以下「認定者」という。)に対しての通知文書である。
  3 高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成13年3月27日条例第11号)により改正する前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第2号該当性について
 本件公文書の情報は、認定者の勤務状況などの評価や現在の状況に至った背景や原因、例えば病歴など個人のプライバシーに係る情報を含むものであり、また、個々の認定者の身体状況、さらには私的生活に及ぶ部分、あるいは勤務評定の具体的内容などに係る個人に関する情報が含まれている。さらに、認定者一人ひとりの保有する課題にあわせた研修内容や改善しなければならない課題、その研修先や研修方法などを記載している。これらは特定の個人に関する情報であって、開示することにより、個人の身体状況等の情報が明らかになると認められる。
  4 旧条例第6条第4号該当性について
 本件公文書を開示することにより、認定者が勤務する学校の保護者や関係者に動揺を与え、また、認定者に対する嫌がらせの電話等といった第三者からの不測の働きかけや、認定者の家族の平穏な生活を混乱させる可能性が強く、認定者や家族の身体、財産等の保護に支障を生ずるおそれがある。
  5 旧条例第6条第5号該当性について
(1) 指導を要する教職員の認定制度は、個々の教職員の課題を克服し、職場復帰を目指すものであるにもかかわらず、現状では教職員不適格者の認定制度としての受け止めが一般的である実情がある。このことから、認定者は、教職員不適格者としてのレッテルを貼られ、課題克服後の円滑な職場復帰及び復帰後の教職員としての信頼回復に極めて大きな障害となる。
 こうした障害をできる限り回避するために、認定者に関する情報管理は慎重に行っているところであり、この的確な情報管理がなされなければ、認定解除後の職場復帰について大きな困難が伴うことになる。円滑な職場復帰がなされなければこの制度の根幹を揺るがし、制度自体の存続が困難となる。
(2) また、認定者以外にも自己の資質指導力の向上を目指し、校外で研修している者や校内で学級担任以外の校務分掌を担当している者がいる。そうした認定者でない者から、認定者の研修場所が明らかになることによって、認定者ではないにもかかわらず、認定者として学校や学級を離れて研修をしていると誤解されることについての不安には到底耐えることができないといった意見が出されている。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
  1 旧条例第6条第2号該当性について
 条例第3条の「個人に関する情報については、十分に保護されるように最大限の配慮をしなければならない」ことは当然である。しかし、非開示とした内容について実施機関は、認定者の個人に関する情報が含まれると主張しているが、どのような項目が含まれるかは不明である。
  2 旧条例第6条第4号該当性について
 実施機関は、認定者が勤務する学校の保護者や関係者に動揺を与え、また、認定者に対する嫌がらせの電話等といった第三者からの不測の働きかけや、認定者の家族の平穏な生活を混乱させる可能性が強く、認定者やその家族の身体、財産等の保護に支障を生ずるおそれがあると主張しているが、それは単なる憶測、主観に過ぎず、それらが具体的に存在することが客観的に明白でなければならず、理由とはならない。
 また、個人に関する情報以外を部分開示することによって実施機関の言うおそれに該当することにならないことは明らかである。
  3 旧条例第6条第5号該当性について
 実施機関は、認定者が復帰できる状況となったときに、不当な差別や阻害された状況に立ち至ることが容易に想像され、ひいては、本事業が目的とする認定者の復帰が困難となる状況を生じさせるおそれがあると主張しているが、それは単なる憶測、主観に過ぎず、それらが具体的に存在することが客観的に明白でなければならず、理由とはならない。
 また、個人に関する情報以外を部分開示することによって実施機関の言うおそれに該当することにならないことは明らかである。

第5 審査会の判断

第5 審査会の判断
  1 本件公文書及び非開示理由の適用について
 本件公文書は、実施機関が高知県教育長名で認定者に対して平成13年4月1日付けで通知した公文書の写しであり、その作成は、平成12年度になされたものである。したがって、非開示理由の適用に当たっては、旧条例第6条各号が適用される。
  2 旧条例第6条第2号該当性について
 本号は、条例第3条後段の「個人に関する情報が十分に保護されるように最大限の配慮をしなければならない。」との規定を受け、原則公開の情報公開制度の下にあっても特定の個人を識別することができる情報は、原則非公開とすることを定めたものである。
 これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ア、イ、ウに該当する情報を除き開示してはならないとするものである。
 また、本号に規定する「特定の個人を識別することができる情報」とは、住所や氏名のように特定の個人を直接識別することができる情報のほか、容易に入手し得る他の情報と結びつけることにより、間接的に特定の個人を識別することができる情報も含むと解される。
 実施機関は、本件公文書について認定者の個人に関する情報が含まれると主張しているが、異議申立人は、どのような項目が含まれるかは不明であると主張するので、以下検討する。
 本件公文書は、認定者の一人ひとりに対して高知県教育長が平成13年4月1日付で通知した文書の写しであり、以下の内容で構成されている。
  (1) 「文書日付」、「発信者」及び「研修期間」の情報について
 「文書日付」、「発信者」及び「研修期間」の情報は、認定者に対して文書の発信日付、発信者名及び研修期間を明示したものであり、全ての認定者に対して同じ情報が記載されており、それ自体は個人に関する情報とは認められない。
  (2) 「あて名」の情報について
 「あて名」には認定者の学校名、職名及び氏名が記載されている。氏名は、特定の個人を明らかに識別することができる情報であり、学校名及び職名は、他の情報と結びつけることにより間接的に特定の個人を識別することができる情報であると認められる。
  (3) 「通知文」の情報について
 「通知文」の情報は、認定者一人ひとりについて所属名、職名、勤務状況などの評価、身体状況、改善しなければならない課題などの情報が記載されている。
 こうした情報は、認定者の個人に関する情報であって、他の情報と結びつけることによって間接的に特定の個人を識別することができる情報であると認められる。
  (4) 「研修場所」の情報について
 「研修場所」の情報は、認定者の一人ひとりについて研修場所が記載されており、他の情報と結びつけることにより間接的に特定の個人を識別することができる情報であると認められる。
  (5) 「研修内容」の情報について
 「研修内容」の情報は、認定者の一人ひとりについて身体状況、改善を要する課題、研修方法などの情報が記載されている。
 こうした情報は、認定者の個人に関する情報であって、他の情報と結びつけることにより間接的に特定の個人を識別することができる情報であると認められる。
 以上のように本件公文書のうち、(2)、(3)、(4)及び(5)で述べた情報は、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

  3 旧条例第6条第4号該当性について
 実施機関は、本件公文書の情報のうち非開示とした部分を開示することにより、認定者が勤務する学校の保護者や関係者に動揺を与え、また、認定者に対する嫌がらせの電話等といった第三者からの不測の働きかけや、認定者の家族の平穏な生活を混乱させる可能性が強く、認定者や家族の身体、財産等の保護に支障を生ずるおそれがあると主張するので、以下検討する。
 本号は、開示することにより、人の生命、身体、財産等の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他公共の安全の確保と秩序の維持に支障を生ずるおそれがある情報は非開示とすることを定めたものである。
 本号に規定する「人の生命、身体、財産等の保護」とは、人の生命、身体、財産等を犯罪等の危険から保護し、又は危険を除去することであり、また、「人の生命、身体、財産等の保護に支障を生ずるおそれのある情報」とは、次のような情報をいう。
(1) 開示することにより、犯罪の被疑者、参考人及び情報提供者が特定され、その結果これらの人々の生命若しくは身体に危害が加えられ、又はその地位若しくは平穏な生活が脅かされるおそれがある情報。

(2) 開示することにより、特定の個人の行動予定、家屋の構造等が明らかにされ、その結果これらの人々が犯罪の被害者となるおそれがある情報。

(3) 開示することにより、違法又は不正な行為の通報者又は告発者が特定され、その結果これらの人々の地位又は平穏な生活が脅かされるおそれがある情報。

 さらに、「その他公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防又は捜査活動のほか、これらには該当しないが社会生活に必要な法規範等のルールが害されないように保護するとともに、その障害を除去することであると解される。
 したがって、実施機関が主張する本件公文書の開示によって認定者が勤務する学校の保護者や関係者に動揺を与えたり、認定者に対する第三者からの不測の働きかけや認定者の家族の平穏な生活を混乱させるといったことについては、本号を適用して非開示とする理由には該当しない。
 以上のことから、非開示とした情報を開示することによって認定者や家族の身体、財産等の保護に支障を生じるおそれがあるとの実施機関の主張は認められない。
  4 旧条例第6条第5号該当性について
 本号は、県又は国若しくは他の地方公共団体その他の公共団体の機関が行う事務事業のうち、開示することにより当該事務事業の目的を失い、又は公正、円滑な執行ができなくなり、ひいては県民全体の利益を損なうことになる情報は、非開示とすることを定めたものである。
 実施機関は、本件公文書について「第3 実施機関の非開示決定理由等」5の理由を挙げ、本件公文書を開示することにより、指導を要する教職員認定制度の存続が困難になると主張している。
 しかしながら、認定制度を設ける以上、実施機関が主張する認定者の課題克服後の職場復帰や信頼回復に極めて大きな障害が生じ、また、同時期に認定者と同様の研修を行っている者が認定者であるとの誤解を受けるといったことは、公文書の開示、非開示に関係なく予想されることである。
 また、実施機関は、認定制度の趣旨を十分に周知し、事業の実施にあたっての配慮など必要な措置を講ずることにより事業に支障を来すことがないように対応すべきものである。
 以上により、指導を要する教職員の認定事務の実施の目的が失われ、又はこれらの公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生じることが明らかであるとの実施機関の主張は認められない。
  5 条例第7条該当性について
 本条は、公文書の開示の請求に対して、当該公文書の一部に開示できない部分がある場合であっても、当該公文書全部を非開示とするのではなく、開示できない部分を除いた残りの部分の開示により請求の趣旨の全部又は一部を充足するときは、当該その他の部分を開示すべきことを定めたものである。
 本条に規定する「請求の趣旨」とは、公文書開示請求書の「請求する公文書の件名又は内容」欄、「請求の目的」欄等の記載事項に基づき判断するものと解される。
 異議申立人は、本件公文書にどのような項目が含まれるかは不明であり、個人に関する情報を除き、条例第7条に基づく部分開示を主張している。
 確かに、公文書非開示決定通知書のうえでは、本件公文書に記載されている情報についての説明がなされていないことから、異議申立人は本件公文書の性質や様式さえも知り得ず、公文書の件名だけからその内容を想像せざるを得ない状態に置かれている。
 当審査会が見分したところ、本件公文書には上記2(1)から(5)までの情報が記載されており、そのうち(1)の「文書日付」、「発信者」及び「研修期間」の情報については、開示が可能な情報である。しかしながら、(2)から(5)の直接的又は間接的に特定の個人が識別できる情報を非開示とすると、本件公文書の大部分は非開示となってしまう。
 以上のことから、異議申立人の請求の趣旨を「請求する公文書の件名又は内容」欄及び「請求の目的」欄から判断すると、たとえ非開示部分を除いた残りの部分の開示を行ったとしても、異議申立人の請求の趣旨を充足することはできないものと認められるので、本条には該当しないと判断する。

第6 結論

 当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成13年8月10日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成13年10月4日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成14年4月15日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成14年12月17日 
(平成14年度第12回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年12月26日 
(平成14年度第13回第一小委員会)
・ 実施機関の意見陳述を行った。
平成15年1月21日 
(平成14年度第14回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年3月17日 
(平成14年度第16回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年4月21日 
(平成15年度第1回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年6月19日 
(平成15年度第3回公文書開示審査会)
・   諮問の審議を行った。
平成16年 2月25日 ・ 答申を行った。

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