高知県公文書開示審査会答申第77号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第77号

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諮問第77号


第1 審査会の結論

 教育委員会は、部分開示とした「第1、2、4、5回の『人事管理の在り方に関する検討委員会』で使用された資料」に記載されている情報のうち、別表1対象公文書一覧表の「審査会の判断」欄中、非開示とした情報を除き、開示すべきである。

※対象公文書一覧表をご覧になりたい方は『第7 審査会の処理経過』の別表1対象公文書一覧表をクリックしてください。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づいて平成13年4月27日付けで行った「『人事管理の在り方に関する検討委員会』の会議録および使用された資料」の開示請求に対する、教育委員会(以下「実施機関」という。)の「第1、2、4、5回の『人事管理の在り方に関する検討委員会』で使用された資料」(以下「本件公文書」という。)についての部分開示決定のうち、個人に関する情報を除くその他の非開示とした部分の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の非開示決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書、意見陳述及び審査会の質問事項に対する回答の中で主張している非開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。
  1 人事管理の在り方に関する検討委員会について
 実施機関は、土佐の教育改革の大きな柱である教職員の資質・指導力の向上を図るため、教職員の人事管理の在り方全般について、具体的な方向付けを行うことを目的として、平成12年5月「人事管理の在り方に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という。)を設置した。
 10名の委員で構成された検討委員会は、高知県教育長の諮問を受けて、全5回の会議を経て平成12年10月30日に「人事管理の在り方に関する提言」(第一次)を取りまとめて答申を行った。
  2 本件公文書について
 本件公文書は、第1回、第2回、第4回及び第5回の検討委員会で使用された別表1対象公文書一覧表(以下「別表1」という。)の公文書の件名欄に記載された資料であり、便宜上別表1に記載されているとおり資料番号を付した。
  3 高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成13年3月27日条例第11号)により改正
   する前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条第2号該当性について
 検討委員会では、教職員の人事管理の在り方について具体的方策を検討することから、そのほとんどが個々の教職員の勤務状況や身体状況、私的生活におよぶ部分、あるいは人事異動や勤務評定の具体的内容など個人に関する情報が議論の対象となる。
 本件公文書は、指導力不足の教員をどのように捉えていくのかという議論を進めていくために、実施機関が問題を抱える教職員と捉えた教職員をまとめたものであり、教職員個人の評価が含まれる検討資料であって、あくまで内部管理情報であり公表することを目的に作成されたものではなく、個人のプライバシーを侵害するおそれがある。
 以上のことから、本件公文書のうち非開示とした情報は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができると認められ、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。
  4 旧条例第6条第4号該当性について
 本件公文書を開示することにより、個々の教職員が勤務する学校の保護者や関係者に動揺を与え、また、個々の教職員に対する嫌がらせの電話等といった第三者からの不測の働きかけや、個々の教職員の家族の平穏な生活を混乱させる可能性があり、個々の教職員や家族の身体、財産等の保護に支障を生ずるおそれがある。
  5 旧条例第6条第5号該当性について
 本件公文書には、自らの職務において何らかの課題を持つ教職員の構成等を記した人事管理についての細部にわたる機密の資料や、非公開を前提として各学校等から収集した資料や他の都道府県から提供された資料がある。その資料を開示することは、今後の情報収集活動に支障が生じる可能性が極めて高い。
 また、本件公文書は、教職員の人事管理の在り方全般の具体的な方向付けを行うことを目的とした検討委員会において、指導を要する教職員の制度を立ち上げるための議論を進めるための基礎資料として作成されたものである。これらの情報は、あくまで職務において何らかの課題を持つ教職員の情報であって、指導を要する教職員の認定候補者となるものではない。
 しかしながら、これらの情報が開示されると、これらの情報が指導を要する教職員の認定候補者の情報であるとの誤解が生じ、今後の人事の在り方に関する検討作業や指導を要する教員の認定作業を行うにあたって、著しい支障があることは明らかである。
 以上のことから、当該事務事業や将来の同種の事務事業に著しい支障を生じると認められる。
  6 非開示部分の再検討について
 実施機関は、高知県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)において本件公文書の審査を受けるにあたり、当初の部分開示決定から相当の期間が経過していること及びこれまでの審査会の答申事例などを踏まえて、本件公文書について、別表1の再検討欄のとおり非開示部分の再検討を以下のとおり行った。
(1) 非開示としていた資料番号1-3、1-9、2-2(3)及び(5)、2-3、4-1並びに2-2(1)のうち小中学校教職員年齢構成表及び県立学校教職員年齢構成表の情報については、既に事務事業が実施され、又は公表されているなどの情報であることから、事務事業に著しい支障が生じるとは認められず開示と判断した。

(2) 資料番号1-7は、第1回の検討委員会で使用された資料の一部である。この資料は、教職員自らが担当する職務において何らかの課題を持っている教職員の個人に関する情報が含まれ、さらに、何らかの課題を持つ教職員の勤務年数、年齢、性別等の構成などを記した人事管理についての細部にわたる機密に属する資料である。
 資料番号1-8は、課題教職員に対する他都道府県の対応についてまとめた資料である。この資料は、他都道府県の対応を高知県が要約したものであり、他都道府県から開示についての同意を得られていないところもある。
 資料番号2-2(1)のうち開示と判断した以外の情報及び2-2(2)については、検討委員会の委員の求めにより、資料番号1-7の資料を基礎として作成したものであり、資料番号1-7と同様、人事管理についての細部にわたる機密に属する資料である。
 以上のことから、これらの資料については、当初のとおり非開示と判断した。
 なお、当初主張していた旧条例第6条第4号該当性については主張しない。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
  1 人事管理の在り方に関する検討委員会について
 土佐の教育改革の大きな柱である、教員の資質・指導力の向上を図るため、望ましい教員像や意識改革、研修の在り方、指導を要する教員への対応などについて検討を行う検討委員会は、子どもたちの教育に直接関わる問題として、県民及び教職員にとって大きな関心事である。

  2 旧条例第6条第2号該当性について

 個人に関する情報については争わない。
  3 旧条例第6条第4号該当性について
 実施機関は、個々の教職員が勤務する学校の保護者や関係者に動揺を与え、また、個々の教職員に対する嫌がらせの電話等といった第三者からの不測の働きかけや、個々の教職員の家族の平穏な生活を混乱させる可能性があり、個々の教職員や家族の身体、財産等の保護に支障を生ずると主張しているが、個人に関する情報以外を部分開示することによって、そのようなことが起こらないことは明らかである。
 また、実施機関の言うおそれは、単なる憶測、主観に過ぎず、それらが具体的に存在することが客観的に明白でなければならず、理由とはならない。
  4 旧条例第6条第5号該当性について
 実施機関は、人事管理についての細部にわたる機密の資料や、非公開を前提として提供された資料を開示することは、今後の情報収集活動に支障が生じる可能性が極めて高く、検討委員会の運営に著しい支障が生じることは必定であり、当該事務事業や将来の同種の事務事業に著しい支障を生じると主張するが、それらの資料のどこまでを機密とするかは不明確であり、その基準もなく、これをもって部分開示とする理由とはならない。

第5 審査会の判断

 1 本件公文書及び非開示理由の適用について
 本件公文書は、平成12年度に開催された第1回、第2回、第4回及び第5回の検討委員会で使用された資料であり、別表1の公文書の件名欄に記載された資料で構成されている。したがって、非開示理由の適用に当たっては、旧条例第6条各号が適用される。
  2 本件公文書の開示、非開示の判断について
 本件公文書の審査を行うにあたって、実施機関から第3の6のように、当初の部分開示決定を再検討し、本件公文書のうち、新たに開示とする情報及び当初どおり非開示とする情報並びに旧条例第6条第4号該当性の主張をしないとの判断を行ったことについての申し出があった。
 当審査会は、実施機関の申し出を相当と認め、実施機関が開示と判断した情報については、当審査会も開示が妥当であると認めた。
  3 旧条例第6条第2号該当性について
(1) 本号は、条例第3条後段の「個人に関する情報が十分に保護されるように最大限の配慮をしなければならない。」との規定を受け、原則公開の情報公開制度の下にあっても特定の個人を識別することができる情報は、原則非公開とすることを定めたものである。
 これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ア、イ、ウに該当する情報を除き開示してはならないとするものである。
 また、本号に規定する「特定の個人を識別することができる情報」とは、住所や氏名のように特定の個人を直接識別することができる情報のほか、容易に入手し得る他の情報と結びつけることにより、間接的に特定の個人を識別することができる情報も含むと解される。
(2) 実施機関は、本件公文書のうち資料番号1-7については、第3の6のとおり何らかの課題を持つ教職員の個人に関する情報が含まれることから、当初のとおり個人に関する情報であると主張するので、以下検討する。

(3) 本件公文書のうち資料番号1-7は、第1回人事管理の在り方に関する検討委員会で使用された資料の一部であり、その内容は、下記のとおりである。

ア 資料番号1-7(1)は、資料番号1-7の内容説明及び課題を持つ教職員の区分について示したものであって、その内容には個人に関する情報は含まれておらず、また特定の個人を識別できる情報も含まれていない。

イ 資料番号1-7(2)は、資料番号1-7(3)で分類された課題を持つ個々の教職員を職種別、校種別及び課題別に集計して取りまとめた表であって、その内容は、他の情報と結びつけて、特定の個人を識別することができる情報であると認められる。

ウ 資料番号1-7(3)は、課題を持つ個々の教職員の氏名、年齢、性別、所属、職名、課題、区分等が一覧表に分類された表であり、これらの情報は、個人に関する情報であって、これらの情報は、直接的又は間接的に特定の個人を識別することができると認められる。

エ 資料番号1-7(4)は、課題を持つ個々の教職員の一部について、課題別に、校種・職名、年齢、性別、状況などを取りまとめた表であって、これらの情報は、直接的又は間接的に特定の個人を識別することができると認められる。

 以上のことから、資料番号1-7のうち、イ、ウ及びエで述べた情報は、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

  4 旧条例第6条第4号該当性について
 実施機関は、当初の決定において本号該当性を主張していたが、第3の6のとおり、実施機関が本件公文書の非開示部分の再検討を行った結果、本号該当性についての主張はしないとの意見であり、審査会は、実施機関の意見が妥当であると認めた。
 したがって、本件公文書のうち非開示とした情報は、本号に該当しないと認められる。
  5 旧条例第6条第5号該当性について
(1) 本号は、県又は国若しくは他の地方公共団体その他の公共団体の機関が行う事務事業のうち、開示することにより当該事務事業の目的を失い、又は公正、円滑な執行ができなくなり、ひいては県民全体の利益を損なうことになる情報は、非開示とすることを定めたものである。
(2) 実施機関は、本件公文書について、第3の5及び6の理由を挙げ、本件公文書を開示することにより、今後の情報収集活動に支障が生じる可能性が極めて高く、また、指導を要する教職員の認定候補者の情報であるとの誤解が生じ、今後の人事の在り方に関する検討作業や指導を要する教職員の認定作業を行うにあたって著しい支障があることは明らかであり、当該事務事業や将来の同種の事務事業に著しい支障を生じると主張している。
 また、異議申立人は、非開示とした資料のどこまでを機密とするかは不明確であり、その基準もなく、これをもって部分開示とする理由とはならないと主張するので、以下検討する。

(3) 実施機関は、本件公文書のうち、資料番号1-3、1-9、2-2(3)及び(5)、2-3、4-1並びに2-2(1)のうち小中学校教職員年齢構成表及び県立学校教職員年齢構成表については、当初の決定において本号該当性を主張していたが、第3の6のとおり非開示部分の再検討を行った結果、本号該当性についての主張はしないとの意見であり、審査会は、実施機関の意見が妥当であると認めた。
 したがって、これらの情報については、本号に該当しないと認められる。

(4) 本件公文書のうち、資料番号1-7に記載されている情報の内容は、第5の3(3)のとおりである。
 また、資料番号2-2(1)及び(2)の情報は、「第1回人事管理の在り方に関する検討委員会で求められた資料等」と題する一連の資料であり、資料の内容を示した目次と資料番号1-7の情報を基に、人事異動上配慮を要する教職員について、校種別、男女別、職種別などの分類を行った表やグラフで構成されている。

(5) 資料番号1-7(1)のうち、資料番号1-7の資料の内容やその取扱いについての注意を記載している部分及び資料番号2-2(1)で実施機関が第3の6(2)において非開示とした情報(以下「資料番号2-2(1)の非開示情報」という。)のうち、人事異動上配慮を要する教職員の人数と委員名を除いた情報については、実施機関が主張する人事管理についての細部にわたる機密に属するものは、含まれていない。
 したがって、これらの情報は、今後の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生じることが明らかであるとは認められない。

(6) 資料番号1-7及び2-2(1)の非開示情報のうち、上記(5)の情報を除いた情報並びに2-2(2)の情報は、検討委員会において指導を要する教職員の定義を定めるための基礎資料として、実施機関が問題を抱えた教職員を一定の区分により分類したものであり、その後の検討委員会の提言に基づいて制度化された「指導を要する教職員」として認定される者と一致するものではない。
 したがって、これらの情報を開示すると、これらの情報が指導を要する教職員の認定候補者に関する情報であるとの誤解が生じることとなる。
 また、人事に関する作業は、様々な角度から多くの情報を収集し、利用することによって行われる作業であり、これらの情報は本来機密性を要するものであるが、これらの情報を開示することが前提となれば、利用する情報が制限されることになる。
 このことは、今後の人事の在り方に関する検討作業や指導を要する教職員の認定作業を公正に行うことが困難となるばかりでなく、高知県の公教育に対して著しい不信感を与えることとなる。
 さらに、検討委員会は、教職員の人事管理の在り方全般について、具体的な方向付けを行うことを目的として設置されており、委員等の忌憚のない意見交換により、具体的な方向付けを行っているが、委員個人の質問内容が開示されると、反復継続する今後の同種の会議においても委員等が忌憚のない意見を述べにくくなることから、十分な議論を行うことができなくなる。
 以上のことにより、これらの情報は、これを開示すると今後の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生じることが明らかであると認められる。

(7) 本件公文書のうち、資料番号1-8の情報は、課題教職員に対する他の都道府県の対応に対する内部資料を実施機関がまとめたものである。
 これらの情報は、他の都道府県の内部資料を実施機関が入手した時点の内容であり、当該都道府県が現在実施している事業内容とは異なる場合もあり得る。また、当該都道府県が実施している事業内容については、実施機関には分からない部分もある。
 これらの情報が、実施されている事業内容と異なる場合においては、開示することにより、これらの情報が当該都道府県の事務事業の内容であるとの誤解が生じることとなり、当該都道府県との信頼関係が損なわれ、今後の情報収集が困難になることは明らかである。
 したがって、これらの情報は、これを開示すると県と他の都道府県との協力関係又は信頼関係が著しく損なわれると認められる。

(8) 以上のことから、上記(6)及び(7)の情報は、本号に該当し、上記(3)及び(5)の情報は、本号に該当しない。

第6 結論

 当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、別表2のとおり。

別表1 対象公文書一覧表[EXCELファイル/21KB]

別表2

年月日 処理内容
平成13年8月10日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成13年10月4日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成14年4月15日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成15年2月14日 
(平成14年度第15回第一小委員会)
・ 実施機関の意見陳述を行った。
平成15年 4月21日 
(平成15年度第 1回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年 5月29日 
(平成15年度第 2回第一小委員会)
・   実施機関の意見陳述を行った。
平成15年 6月30日 
(平成15年度第 3回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年 7月30日 
(平成15年度第 4回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年 8月18日 
(平成15年度第 5回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年 9月 1日 
(平成15年度第 6回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年10月28日 
(平成15年度第 7回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年11月28日 
(平成15年度第6回公文書開示審査会)
・   諮問の審議を行った。
平成16年2月25日 ・ 答申を行った。

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