高知県公文書開示審査会答申第88号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第88号

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諮問第88号


第1 審査会の結論

知事が「押収品目録交付書及び押収品目録(協業組合モード・アバンセ又は土佐闘犬センターに対する融資問題関係)」(以下「本件公文書」という。)の公文書開示請求を不受理とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づいて、平成14年5月18日付けで行った「1.モード社関係資料で県警に押収された目録、2.土佐闘犬センター関係資料の県警押収目録」の開示請求に対して、知事(以下「実施機関」という。)が押収品目録交付書及び押収品目録(協業組合モード・アバンセ又は土佐闘犬センターに対する融資問題関係)と件名を付して不受理とした決定の取消しを求めるものである。

第3 実施機関の不受理決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述の中で主張している不受理決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。

1 本件公文書について

 本件公文書は、捜査当局の捜査の過程で、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号。以下「刑訴法」という。)第222条により準用する第120条の規定に基づき捜査当局から高知県に交付された押収品目録交付書であり、県が捜査当局から取得して保管する訴訟に関する書類である。

2 条例第17条第3項該当性について

条例第17条第3項は、刑事訴訟に関する書類及び押収物についてはこの条例を適用しないと規定している。その理由は、次の点にある。即ち、捜査・公判に関する活動の適正さは、司法機関である裁判所により確保されるべきものであり、刑訴法、刑事確定訴訟記録法(昭和62年法律第64号。以下「記録法」という。)、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律(平成12年法律第75号。以下「措置法」という。)により、それぞれの文書の性質・内容に応じ、文書を開示したことにより生ずるおそれのある各種の弊害と、開示することにより得られる公益との調整を考慮した上で、その開示の要件・方法等について独自に規律されているからである。

本件公文書は、裁判所に提出される書類そのものではないが、本件公文書中の押収品目録は、裁判所に提出される押収調書の押収品目録と記載事項が同一であるため、裁判所に提出される書類と内容を同じくする文書を県の判断で公開することは、上記の法律等の立法趣旨に反することになる。

以上のことから、本件公文書は、条例第17条第3項に定める刑事訴訟に関する書類に該当するので、条例は適用しないため不受理とした。  

第4 異議申立人の主張

異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。

  条例第17条第3項該当性について

  (1)条例第17条第3項の規定は刑事訴訟に関する書類及び押収物については適用しないというものであるが、本件公文書は警察の押収にかかる書類であって、未だ訴訟に提出された書類ではなく、裁判所に提出される書類そのものとは異なるものであり、刑事訴訟に関する書類には該当しない。刑訴法第120条の規定によって捜査当局(高知県警)が高知県に対して交付した押収物の目録である。本件公文書は押収物ではなく、押収物の目録という別個の文書である。

  (2)実施機関の本件公文書が刑事訴訟に関する書類に該当するという主張には何の根拠もなく、関係者に交付された本件公文書は刑訴法などの適用外である。

本件公文書は、捜査当局が刑訴法120条に基づき県に交付したものである。同法により、県は県民全体を代表するものとして交付を受けたはずのもので、通常の手続により情報開示されるべきものである。県民は、県の構成員として所定の手続を経て当然その開示結果を共有する資格がある。

  (3)しかも、本件公文書は書類の名前がわかるだけで、その中身までわかるというものではない。文書名の目録だけでは、プライバシーにかかわるものなど、非開示決定の理由に該当するものがあるとは到底考えられない。

  (4)以上のとおり、実施機関が主張する訴訟関係書類としてこれを公開しないという理由には何の根拠もない。捜査当局が押収した品目を県及び県民に交付し、その捜査活動の情報を開示した書類を非公開と判断するには、県単独の利害関係や公益性の判断が必要である。

 実施機関の決定理由説明には、非開示理由の説明はない。したがって、本件公文書の不受理決定の取消しを求めるものである。

第5 審査会の判断

 1 本件公文書について

本件公文書は、協業組合モード・アバンセ及び土佐闘犬センターに対する融資問題関係の被疑事件について、捜査の過程で平成12年及び13年に捜査当局(高知県警)から高知県に対して交付された押収品目録交付書であり、これに押収品目録が一体となっているものである。

押収品目録は、刑訴法第222条により準用する第120条に「押収をした場合には、その目録を作り、所有者、所持者若しくは保管者又はこれらの者に代わるべき者に、これを交付しなければならない。」と規定され、本件公文書もその規定に基づき県に交付されている。

2 条例第17条第3項該当性について

実施機関は、本件公文書は刑事訴訟に関する書類に該当するとして条例の適用はない旨を主張し、異議申立人は、刑事訴訟に関する書類に該当しない旨をそれぞれ主張しているので、以下、この点について検討する。

(1)刑事訴訟に関する書類と押収物については、刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において作成・取得されたものであり、捜査・公判に関する活動の適正さの確保は、司法機関である裁判所によって図られるべきものである。

刑訴法においては、訴訟に関する書類を公判の開廷前に公開することを原則として禁止する一方、被告事件終結後は、一定の場合を除いて何人にも訴訟記録の閲覧を認めその閲覧を拒否された場合の不服申立てにつき準抗告の手続によることとされるなど、これらの書類は、刑訴法及び記録法によって、その取扱い、開示・非開示の要件、開示手続等が自己完結的に定められている。

このため、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「情報公開法」という。)の制定に際して刑訴法に新たに第53条の2が設けられて、訴訟に関する書類及び押収物については情報公開法の規定を適用しないと類型的に定められている。

(2)これを受けて、条例第17条第3項において、刑事訴訟に関する書類及び押収物については、適用しないこととされており、ここに言う刑事訴訟に関する書類の定義については、刑訴法第53条の2と同様に類型的に解釈すべきである。

刑訴法第53条の2に定める訴訟に関する書類には、裁判所で作成される判決書や証人尋問調書及び検察官、弁護人から公判に提出された証拠書類(訴訟記録と呼ばれる)のほか、捜査段階で作成される公判に提出されない捜査書類も含まれ、保管者は限定されない。

     以上のことから、本件公文書は捜査機関から県に交付されたものであるが、条例第17条第3項に規定する「刑事訴訟に関する書類」に該当し、条例の適用除外となることから、異議申立人の開示請求を不受理とした実施機関の決定は妥当である。

第6 結論

当審査会は、高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成14年7月10日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成14年8月29日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成16年1月23日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成16年11月25日
(平成16年度第1回第二小委員会)

・ 実施機関の意見陳述を行った。
・ 諮問の審議を行った。

平成17年1月14日
(平成16年度第2回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成17年2月14日
(平成16年度第3回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。

平成17年8月3日
(平成17年度第3回公文書開示審査会)

・   諮問の審議を行った。

平成17年10月19日

・ 答申を行った。

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