高知県公文書開示審査会答申第93号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第93号

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諮問第93号


第1 審査会の結論

知事が、「用地調査図の作成年月日、作成者が分かるもの」を、不存在とした決定は妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が平成13年12月22日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。)に基づき行った「高知県知事に行った公文書開示請求(受付番号130056、13高用管起000132)にて、用地調査図の開示があった。この図の作成年月日、作成者(部所、または民間企業名、作成が民間企業者であれば依頼した部所)が分かるもの。」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成14年5月16日付けで行った「用地調査図の作成年月日、作成者が分かるもの」の不存在決定の取消しを求めるというものである。

第3 実施機関の不存在決定理由等

 実施機関が、決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。

1 諮問に至った経緯
(1) 平成13年11月4日   開示請求
「平成11年1月28日、高知県知事が建設大臣に事業認定申請(10用第910号)を行った。申請書の4.事業の認定を申請する理由の中で、『これらの事業に必要な土地の面積は、収用の部分及び使用の部分併せて5,124平方メートルであり土地所有者及び関係人は20名であり、平成6年度から用地取得の協議を開始し、平成10年11月現在で事業に必要な土地の面積のうち4,134平方メートル(80.6%)、土地所有者及び関係人のうち10名(50.0%)については円満に協議が成立しているものである』と記載されている。『土地所有者及び関係人を20名』とした高知県の資料。」
(2) 平成13年11月19日  部分開示決定「用地調査図」
(3) 平成13年12月22日  開示請求  「用地調査図の作成年月日、作成者が分かるもの」
(4) 平成14年1月21日   開示決定  「平成9年度住小改第1-12号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務(用地測量)、平成10年度工事費決算調書」
(5) 平成14年4月5日    (4)に対して異議申立てがなされる
(6) 平成14年4月23日   開示決定した「平成9年度住小改第1-12号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務(用地測量)、平成10年度工事費決算調書」は、誤りであり、(3)の開示請求に対する公文書は存在しないことが判明
(7) 平成14年5月16日   (4)の開示決定を取り消し、不存在決定
(8) 平成14年6月18日   (4)の開示決定に対する異議申立てを却下
(9) 平成14年7月11日   (7)の不存在決定に対しての異議申立て
(10) 平成14年8月6日   (9)の異議申立てについて諮問 
(1)の開示請求、(2)の部分開示決定を受けて、異議申立人からなされた(3)の開示請求に対し、当初(4)のとおり開示決定を行った。これに対し、異議申立人から(5)のとおり異議申立てがなされた後、あらためて調査した結果、(6)のとおり、用地調査図は、「平成9年度住小改第1−12号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務(用地測量)」により作成されたものではなく、また、用地調査図の作成年月日、作成者に関して分かる公文書は存在しないことが判明した。このため、(7)のとおり当初の開示決定を取り消し、不存在決定を行ったものであり、この不存在決定に対して、(9)のとおり本件異議申立てがなされ、(10)のとおり諮問したものである。
なお、(5)の異議申立てについては、(8)のとおり却下した。
2 異議申立人は、「用地調査図はいずれの年に作成されたとしても不合理である。」と述べる一方で、「用地調査図は『平成9年度住小改第1−12号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務(用地測量)』に存在するものと考える。」と主張している。
前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務は、確認できる限りでは、【1】昭和59年度から複数年度にまたがって平成9年度まで、同一の業者に委託されていること、【2】同業者は測量業務の実施に当たっては、過年度の成果品を参考資料として可能な範囲で使用してきたことの2点が判明した。
しかし「平成9年度住小改第1−12号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務(用地測量)」の成果品には、「用地調査図」は含まれていないことを確認した。
また、平成8年度までの成果品のすべてについても調査を行ったが、いつ、だれが、何の業務により「用地調査図」を作成したかを特定できる公文書は確認できなかった。このため、1の(7)の不存在決定を行ったものである。

第4 異議申立人の主張

異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
不存在決定を取り消し、開示することを求める。
1 用地調査図はいずれの年に作成されたとしても不合理である。
 ア 用地調査図では買収地地番「朝倉甲字○○○○○○○」の地権者名が○○○○○氏になっているが、平成2年7月27日に○○○○、○○に所有権が移転されている。用地調査図の作成はその日以前の作成と考えられる。

 イ 「土地売買に関する契約書、及び権利消滅に関する契約書」の部分開示によると、買収地地番「若草南○○○○○」は測量済、調査済で買収済ではない。平成6年11月29日に売買契約がなされているので、用地調査図の作成はその日以前の作成と考えられる。

 ウ 買収地番「若草南○○○」は、未測量、未調査となっている。地権者への用地交渉は平成7年8月18日(当日、本人不在)より始まり、平成11年2月10日に売買契約がなされている。用地調査図はその間に作成されたものと考えられる。
2 用地調査図は、業者に委託し作成されたか、または県の職員が作成したのか。いずれにしても作成に税金が使われている。業者委託の成果品の中に用地調査図が入っていないのであれば、高知河川事務所が作成したものである。何らかの会議で提示し、説明するための用地調査図であったと想像される。
3 実施機関は、当初第3の1の(2)のとおり開示決定した「平成9年度住小改第1−12号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務(用地測量)」を取り消し、第3の1の(7)の不存在決定を行っているが、用地調査図は「平成9年度住小改第1−12号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務(用地測量)」に存在するものと考える。
  平成9年度の高知河川事務所長は既に退職し、当時高知河川事務所に配属されていた職員は、現在その部署を離れており、河川事務所で調査しても不明である。退職者を含めて作成者、作成年月日の調査をすべきであるが、当時の担当者すべてに問い合わせを行った上での判断であろうか。その上で、「だれ某が、某日、だれだれに命じて作成した」と証明すれば公文書になると考える。
4 公文書開示制度は、県行政を説明するためのものである。
 この用地調査図を、いつ、だれが、何の目的で作成したのかを知るのが目的であり、それを説明することにより、開示請求の目的が達せられるものである。

第5 審査会の判断

1 本件異議申立てについて
 本件異議申立て以前に、異議申立人から、第3の1の(1)のとおり開示請求があり、これに対して実施機関は、第3の1の(2)のとおり「用地調査図」を部分開示決定している。
 第3の1の(3)の開示請求は、その「用地調査図」の作成年月日、作成者が分かる公文書の開示請求であり、第3の1の(4)のとおり、「平成9年度住小改第1-12号前田川小規模河川(住宅促進関連)改修用地測量委託業務(用地測量)、平成10年度工事費決算調書」を開示決定していた。
 しかし、第3の1の(6)のとおり、第3の1の(3)の開示請求に対する公文書が存在しないことが判明したため、第3の1の(7)のとおり、第3の1の(4)の開示決定を取り消し、不存在決定を行った。この不存在決定に対して異議申立てがなされたものである。
 
2 公文書不存在決定の妥当性について
 当審査会は、高知河川事務所会議室において審査を行い、当時の関係者の意見聴取及び書類調査を行った。
 (1)実施機関は、用地調査図の作成年月日、作成者が分かる公文書は存在しないと主張している。
  異議申立人は、用地調査図はいずれの年に作成されたとしても不合理である、当時高知河川事務所に配属された職員は、現在その部署を離れており、高知河川事務所で調査しても不明であるから、退職者を含めて当時の担当者すべてに作成者、作成年月日の調査をすべきであるが、問い合わせを行った上での判断であるのか、また用地調査図を、いつ、だれが、何の目的で作成したのかを知るのが目的であり、それを説明することにより、開示請求の目的が達せられると主張する。
また、異議申立人は、第4の1のとおり、用地調査図がいずれの年に作成されたとしても不合理であると主張している。
(2)当時の担当者の説明によると、用地調査図は、平成7年度から新たに住宅宅地関連公共施設整備促進事業を行うに当たって、現段階でどのくらいの残地権者がいるのか、どれくらいの事務量になるか、どのくらい費用がかかるのか等を算出するために、またそれが一目で分かるものが必要であることから、用地課と工務課の担当者が、前田川区域の測量を委託している業者に作成を依頼することとした記憶があるということであった。
しかし、だれが業者に作成を依頼したかは、正確に記憶していないということであり、また、作成時期については、平成7年度から住宅宅地関連公共施設整備促進事業が開始されることとなっており、関係地権者との交渉もなされていることから、それ以前の平成6年に作成されたものと推測されるが、正確な日付は記憶していないとのことであった。
なお、用地調査図は、当時、前田川の測量等を委託していた業者の元には図面の原図があり、平面図の下に枠の線を引き、簡単に作成できるようなものであったため、業者に代金は支払わずに作成を依頼したのではなかったかということであった。
また、当時、この区間の地権者名等についての最新の調査は行われておらず、かつ10年以上継続している事業のため、平成2年以前の過去のデータがあり、そのデータで作成させたということも十分に考えられるとのことであった。過去のデータを使用しても、買収時の調査で地権者名等は容易に分かるので、全く支障はなかったということであった。
 (3)当審査会は、これらの意見陳述をもとに、用地調査図について調査したところ、現在高知河川事務所に保管されている図面の中に、下部の枠内に金額が記載された図面が存在することを確認した。
また、高知河川事務所職員が当時の請負業者に問い合わせたところ、当時の業者が用地調査図の作成を請け負ったことが確認された。
用地調査図は、(2)で述べたとおり、請負業者に依頼して作成させたものであるとほぼ推測される。
また、用地調査図のデータに更新されていない情報が入っていたことの事情も確認できた。
しかし、作成から相当の年月が経過しており、いつ請け負い、だれが作成したのかまでは判明せず、業者に原図も残っていないとのことであった。なお、高知河川事務所で書類調査をしたが、用地調査図の作成年月日が分かる公文書は存在しなかった。
 
したがって、実施機関が行った不存在決定は、妥当であると認められる。

第6 結論

当審査会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。
 なお、当審査会の岡村会長、稲田委員、溝渕委員及び山下委員は、現在の高知県収用委員会委員又は当該案件に関する事業が実施されていた当時の高知県収用委員会委員であったことから、本件の審査には加わっていない。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成14年8月6日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成14年8月30日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成14年10月7日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成15年 9月11日 
(平成15年度第4回第三小委員会)
・ 実施機関の意見陳述及び諮問の審議を行った。
平成15年10月14日 
(平成15年度第5回第三小委員会)
・ 高知河川事務所において関係者の意見聴取及び書類調査を行った。
・ 諮問の審議を行った。
平成15年11月26日 
(平成15年度第7回第三小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成15年12月15日 
(平成15年度第7回公文書開示審査会)
・ 諮問の審議を行った。
平成16年2月25日 ・ 答申を行った。

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