公開日 2019年08月09日
平成30年度 地域の皆さんの活動(地域支援企画員からの報告)
香美市の取り組み(物部川ブロック)
香美市で始まった、鍛冶職人育成の取り組みと課題についてご報告します。
<土佐打刃物の歴史>

土佐での打刃物の歴史は400年以上とも言われており時々の時代に即して発展してきました。
長宗我部検地帳(1590年)には、399軒の鍛冶屋があったと記載されています。農林用刃物を多く生産しており、特に斧(おの)や鉈(なた)等の林業用刃物では全国シェアーの50%以上を占める商品もあります。土佐打刃物の特徴は、自由自在な形を作る「自由鍛造」といわれる鍛造法や、3層構造の両刃の刃物などがあります。
平成10年には「高知県伝統的工芸品」として「土佐和紙」に続き経済産業大臣の指定を受けており、永い間地域の産業として根付いてきた、高知を代表するものです。
<土佐打刃物の現状>
高知県の重要な伝統的産業である土佐打刃物ですが、機械化の進展による鍬(くわ)・鎌(かま)・斧・ 鋸(のこぎり)等の農林用刃物の使用機会の減少、加工食品の増加や中食市場の増加等による家庭での包丁の使用機会の減少などが、「土佐打刃物」の需要を低下させ製造業者・生産額とも減少しています。
平成12年に行った鍛造業界への調査では、高知県下に162の鍛造業者があり、年間生産額は26億円でしたが、平成28年度の調査では68社、生産額は15億円となっております。また、従事者の70%以上が50歳以上となっており若い職人の育成が進んでいない状況です。
<和食ブーム・キャンプブーム>
ややもすれば衰退の道を歩んでいるかのように見られる刃物産業ですが、近年強烈な追い風が吹いています。一つ目は、世界的な和食ブームによる包丁市場の世界的な拡大です。日本の包丁の輸出金額は2004年には30億円程度でしたが、2015年には80億円近くまで達しています。二つ目は、「第3次キャンプブーム」とも言われるキャンプブームです。キャンプ場には多くの家族やグループが訪れ、おしゃれな刃物を使いこなすことがステータスとなっています。
鍛造業者の伝統を軸としたたゆまぬ努力と革新的な取り組みに、このような追い風も相まって、今では、注文に生産が追いつかない業者が多数出現するまでになりました。
<土佐打刃物の後継者育成のこれまでの取り組み>
伝統的工芸品としても産業としても急がれるのは後継者の育成です。従前は、親方の元へと弟子入りし、見て覚える育成が行われてきました。平成27年度からは「伝統的工芸品産業等後継者育成対策事業」を活用し鍛造業者の元での育成に対し研修生と受入事業所に補助金を出し育成を図ってきました。
平成30年度は3名の研修生が各事業所において研修に励みました。しかし、鍛造業者は小規模事業所が多く、研修生の受入れには負担が大きく、研修希望者を全て受け入れる事が出来ない状態が続いています。
また、1鍛造業者の元での研修は、親方の裁量に委ねられることや親方の手法しか学べないこと、相性が合わない場合の対処など制度自体の課題も浮かんできました。
<職人育成施設設立気運の高まり>
このようななか、職人育成施設の必要性が叫ばれるようになりました。高知県土佐刃物連合協同組合(高知県下の鍛造業者・問屋・関連業者及び任意の組合が参画し設立された組織:以下「刃物組合」)と香美市、高知県の協議も始まり平成29年には刃物組合より「(仮称)「鍛冶屋の学校」創設プラン」が策定されました。このプランは、研修生1学年5名の2年制とし製造品等の展示販売や観光も出来る施設であり周辺には鍛造団地も併設されるなど壮大な計画でした。これを受けて香美市では、物部川地域本部も委員として出席する「香美市ものづくり会議」の議題として検討具体化を目指すこととしました。これにあわせ、刃物組合でも「伝統的工芸品製造技術施設(仮称:鍛冶屋の学校)の検討委員会」(以下「仮称:鍛冶屋の学校検討委員会」)を立ち上げ、物部川地域本部もオブザーバーとして参加し、具体化の検討が始まりました。しかし、平成29年度中は、規制への対応についての検討や建設場所が定まらないこと等により、なかなか議論が進まない状況でした。
<設立に向けての取り組み>
平成30年4月16日、「仮称:鍛冶屋の学校検討委員会」において、場所を土佐刃物流通センター敷地内、事業主体は刃物組合として行う方針が承認され刃物組合、市役所、県庁一丸となった取り組みが一気に進み出しました。
まずは、現地にあった学校機能及び設備の検討等基本構想を策定するため、高知県産業振興推進支援事業(ステップアップ事業)を活用し基本構想の策定、施設の基本設計に着手しました。
また、刃物組合には、学校運営に関する専門知識を持ち合わせておりませんでしたので、兵庫県豊岡市で次世代のかばん職人育成を目指した、1年制のカバンの専門校の運営を行う豊岡カバンアルチザンアベニューの視察を行うとともに、高知県産業振興アドバイザー制度を活用したアドバイザーとしての依頼を行い、就任の快諾を受け職人育成施設設立について今後助言を頂けることとなりました。
<鍜冶屋創生塾の整備>
これらの取り組みにより、育成施設の規模・構造・運営体制が固まったことから高知県産業振興推進総合支援事業費補助金を活用し、現在施設を建設中です。
また、平成31年1月15日に開催された、「仮称:鍛冶屋の学校検討委員会」において、施設名称の検討を行い、33案より「鍛冶屋創生塾」が選出されました。
鍛冶屋創生塾の概要は以下のとおりです。
・開校予定日 : R元.11.1
・所在地 : 香美市土佐山田町 土佐刃物流通センター敷地内
・運営主体 : 高知県土佐刃物連合協同組合
・事務局 : 事務局長1名、事務局員1名
・講 師 : 組合員、外部講師及び補助講師
・定 員 : 1期3名(1期生:R元.11.1~R3.10.31、2期生:R3.4.1~R5.3.31)
・カリキュラム : 鍛造~研ぎまでの技術実習及び座学
・施 設 概 要 : 延べ床面積116㎡、研修機器4セット他
<開校へ向けて>
これから開校準備も加速します。研修生の募集は6月3日より開始しており、8月中旬に選考後、8月末には第1期生の研修生が決定します。
地域支援企画員としましても、これまでも補助金活用に関する支援や各種会議への出席を通じて効果的で魅力ある施設づくりを刃物組合、香美市役所及び関係機関と協力して行ってきましたが、今後も土佐打ち刃物のさらなる飛躍へ向けて、取り組んでまいります。
伝統産業を私が継承し発展させていくという強い志を持った若い力を鍛冶屋創生塾は求めています。
新しく出発する鍛冶屋創生塾をどうかよろしくお願いいたします。
<この記事に関するお問い合わせ>
香美市地域支援企画員 電話:0887-52-8700
連絡先
住所: | 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号 |
電話: | 企画調整担当 088-823-9333 |
成長戦略担当 088-823-9049 | |
地域産業担当 088-823-9334 | |
地方創生担当 088-823-9335 | |
ファックス: | 088-823-9255 |
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