第8回INAP報告書(高知港)

公開日 2013年03月27日

更新日 2014年03月16日

2006年11月14日

第8回INAPシンポジウム:高知港

高知港の戦略

 日本には、貿易など国の政策にも関わる重要な港、いわゆる重要港湾が128港と地域の物流や交通を支える港、地方港湾が942港あります。

 そのうち、高知県には3つの重要港湾と16の地方港湾があります。また、この他にも漁業専用に使われる88の漁港があり、約710kmの海岸線に、合わせて107の港がありますので、海岸線を走れば約7km毎に何らかの港が見えます。INAPのメンバーになっているのは、高知県の中心部、県都高知市に位置する高知港です。

 ここで、日本全体の視点で高知県の港を紹介します。取扱貨物量を見てください。高知県の主要な鉱産物は石灰石と蛇紋岩です。大変品質のいい石灰石です。鉄を造るとき、鉄鉱石1に対して副資材として0.4の石灰石が必要です。あと400年分の埋蔵量があります。また、石灰石を主原料としてセメントの製造が行われています。
 高知の地場産業が鉱産品ですので、日本全国128ある港のなかで、須崎港は全国の取扱貨物量で47位、1600万トン、高知港は66位、900万トンとなっています。高知港は、日本の経済の中心である首都圏や関西圏とフェリー航路で結ばれていましたが、モータリゼーションと本四架橋や高速道路の延伸で海上航路が休止状況です。このため、200万トン程貨物量が減り、順位を10位程度下げています。
 一方、コンテナ貨物で見てみますと、コンテナを取り扱っている港が日本には63あります。そのうち、高知港は54位で約7000TEUの取扱です。釜山港の関係者に云わせると大型コンテナ船1隻分の貨物量。ですので、このグラフの縦軸、取扱量は、少量を分かり易く表示するため、対数目盛になっていますので、実際の高知港の取扱貨物量は、東京港の500分の1です。見た目でごまかされないように見て下さい。

 次に、港の役割を、県の勢いを表す主要な指標と比べてみました。
 日本の輸出入貨物の99.7%は、港湾で取り扱っています。エネルギーの97%、食料の60%を海外からの輸入に頼っています。高速道路などの基盤整備が進んだ現在でも、高知県の移出入貨物の75%は、海運に頼っています。こんなことを言っても多くの県民に港の役割が理解されていません。
 一般的に、人々が日常毎日、自ら使う、道路や上下水道などと違って、港の役割が県民に深く認識されていません。そこで、貿易という点に着目し、定量的に県の主要な指標と比較してみました。
 これも、各指標により大きく桁が違うので、縦軸の金額は対数目盛にしてあります。高知県の県民総生産額が20,663百万USドル、製造品出荷額が4,765百万USドル、農業産出額が850百万USドル、漁業生産額が445百万USドル、林業産出額が69百万USドル。
 これら全ての指標が右肩下がりの状況の中、貿易額は順調に回復して、2004年は372百万USドル、2005年には433百万USドルとここに来て伸びを見せ始めています。世界の経済がグローバル化する中、地域の港湾の果たす役割は、貿易額からみても大きなものがあるのではないかと思っています。

 これが、高知港の空撮写真です。ここは生鮮品の卸売り市場、県内生鮮食料品の40%がここで扱われています。ここは、オイルターミナル。県内需要の98%をここからタンクローリーで供給しています。港周りの大きな企業はこのあたりに集中しています。今は、石灰石を主原料とする化学工場やセメント工場です。通称“港4社”と呼ばれています。一昔前は、これらの企業に加え、2つの製鉄所が立地し“港6社”と呼ばれていましたが、港の開発が遅れ、5000トンクラスの船舶しか入港できなかったこともあり、鉄鋼不況の兆しが見えた最初の段階で、真っ先に高知から撤退しています。それに伴い、鉄を原料とする造船会社の撤退が続き、現在では大きな造船会社は高知県で1社になっています。やはり、産業を支えるためには、物流コスト削減に向けた船舶の大型化や効率化に対応できる港の整備が必要です。
 しかし、現実には港の整備が遅れ、大きな企業が撤退してしまいました。時期を逸しない港の整備が必要でした。
 遅ればせながら、高知港では15年程前から大型岸壁を持つ港を外洋に整備しています。
1999年に、3万トンクラスの船舶が接岸でき、コンテナも取り扱える港として一部供用しました。その時が、このINAP会議の第一回目の年です。現在は、5万トンクラスの船舶が接岸できるように防波堤の整備を進めています。

 INAP会議とこうしたシンポジュウムや民間企業の参加する経済ミッションを重ねる中で、高知の新しい港も徐々に使われるようになりました。開港当時は13万トンだった貨物量も17年には96万トンになるなど、時間は要していますが、順調に取扱貨物量を伸ばしています。入港する貿易船の数も増えています。国内貨物では、3万トンクラスの貨物船の接岸が可能となり、遠くの製鉄所にまで安価に石灰石を販売できることになりました。
 私どもの知事の弁を借りれば、「高速道路は、注射のような即効薬だが、港湾は漢方薬のようにじわと効いてくる」と言うことで、INAPの機会を捉えて経済交流を進めていきたいと思います。

 今年のINAPのテーマは‘Creating A Sustainable Port to Win the Future Competition’です。高知港を持続可能な(Sustainable)港とするために、高知県ではINAP会員港がある国との間の経済交流にたいへん力をいれています。
 昨年のINAPコロンボ会議開催時には、友好港交流を通じて知り合った高知県の企業とスリランカの企業が建設機械メンテナンスを行う合弁会社を設立しました。この合弁会社の設立パーティーにも昨年参加させていただきましたが、INAP会議を通じて、両国のビジネスが拡大していくことをたいへんうれしく思いました。
 今年のINAPタンジュンペラ会議でも、高知県でスラバヤ経済ミッション団を編成し、高知県企業7社がここスラバヤ市に同行し、昨日まで商談を行ってきました。個別の品目名を紹介しますと、東ジャワで栽培されているサツマイモや砂糖、有機肥料等の農業用資材の買い付けの商談が行われました。また、高知県は紙産業が盛んで、いろいろな種類の高付加価値の紙製品が生産されていますが、紙製品のインドネシアへの輸出の商談も行われています。

 現在のINAP各港とのコンテナ取扱量はこの円グラフのようになっています。今後もINAP会議の機会をとらえ、高知県内企業を交えた経済交流を強力に推し進め、相互の貿易振興に繋げていきたいと思っています。

※スービック港については、パワーポイントによるプレゼンテーションのため原稿無し。


この記事に関するお問い合わせ

高知県 土木部 港湾振興課

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