棚田米のブランド化
四国山地の中央、清流吉野川の上流域に位置する本山町には、棚田での米づくりが代々受け継がれています。この棚田米は昔から評判がよく、おいしい米の産地として知られています。
大久保さんは、「棚田での米づくりはとても手間がかかるうえ、米の値段も安いため、棚田を次代に受け継ぐことが難しくなってきて、農家は大きな危機感を抱いていました。そこで、取り組み始めたのが米のブランド化です」と、きっかけを話してくれました。
ブランド化には、本山町の歴史、環境、そして米の品質という3つを柱にして売り出していくことにしました。『土佐 天空の郷』というネーミングは、司馬遼太郎さんの歴史小説『夏草の賦』で、本山町を「要害の厳しい地でありながら、大河が流れ、田畑も多い桃源郷」と紹介していることにヒントを得た町民の方が名付けてくれたそうです。
心に残る米にしたい
米づくりには、標高が高く寒暖の差がある地理的な条件を生かしながら、環境に配慮すること、室戸海洋深層水を散布して、独特の甘味を実現することなど、品質にも徹底的にこだわっています。
「土佐天空の郷は、『大粒で甘味と香りがいい。こんなおいしいお米は食べたことがない』と都会でも非常に高い評価をいただいています。昨年作った米は、今年6月には売り切れてしまいました」と和田さん。
大久保さんは「品質を維持しながら量産体制を確立していく必要があります。そして棚田を守り、若い人たちが米づくりを頑張っていけるだけの価格にしていきたいですね」と、今後の課題を語ってくれました。
土佐天空の郷を、心に残る米にしていくために、田に稲で龍馬の絵を描き、収穫体験祭を行ったり、コンサートを行うなど、ユニークな取り組みもスタートさせています。本山町発のブランド化への挑戦は、今後ますます目が離せません。

田んぼに描かれたアート、坂本龍馬のキャラクター

当初23戸の生産者は、27戸に増えました

「土佐天空の郷」は10月から、「旬菜工房もとやま」のホームページや、本山町の「さくら市」で販売予定