新採職員辞令交付式知事挨拶

公開日 2007年12月06日

更新日 2014年03月16日

新採職員辞令交付式知事挨拶

平成13年4月2日

 みなさんお早うございます。 また入庁、誠におめでとうございます。
 今年は21世紀のスタートの年という節目の年ですけれども、役所の仕事の区切りからいえば4月の最初の月曜日。今日が21世紀のスタートということになりますので、この記念すべき日に、皆様方をお迎えできましたことを大変嬉しく思っています。と同時に、皆様方も21世紀のスタートの時に県職員の仲間入りをしたということをずっと思い出としてもっていただくことと思います。
が、それだけではなくて2001年の4月にこの高知県庁に入ったということを、皆様方はまた別の形で思い出されることがあるのではないかと思います。と言いますのも、皆様方もマスコミの報道などでご承知のように、今県が行った融資に対して県議会の中に調査特別委員会という委員会ができて調査が進んでいますし、また警察や検察庁での捜査も進んでいます。
先日は県庁も含め関係者の自宅などが家宅捜索を受けるという事態になりました。このため、ちょうど昨日から僕も地域を廻ってこの一連の事件をどう受け止めるか、またそれにどう対応していこうとしているか、そういうことを地域の住民の皆様方にお話をしていく機会を持つ、そんな取り組みを始めたばかりですけれども、皆様方もこうした一連の事件の報道を聞いて、いったい県庁はどうなっているんだろうか。県庁は大丈夫だろうかという心配や不安を持たれたのではないかと思います。
ですから、本当ならばそういう経過についてもお話をできればいいんですけれども、今日はそういう場ではありません。ですからそのかわりにこの一連の事件を通じて何を感じたか、別の言い方をすれば、この一連の事件が私たちに何を突きつけているんだろうかということについて、少しだけお話をさせてもらいたいと思います。

 その一つは情報公開の徹底ということです。というのも、この一連の出来事での一番の問題点、反省点は、県民の皆様への十分な説明ができていなかったという点にあると思います。一昔前ならば県庁の職員、公務員が情報という言葉で連想したことは、情報の管理とか守秘義務という言葉であったと思います。
が、今、今日県庁に入られる皆様方には情報というのは勝手に管理をしたり、また役所の都合で守ったりするものではなくて、あくまでも県民の皆様方に公開をしていくべきものだということを、是非認識をしていただきたいと思います。
もちろんそうは言っても法律上の守秘義務というものは最低限残っています。けれども、それはあくまでも例外であって情報公開ということが大前提、大原則になっているということ。そのことを是非知っておいていただきたいと思いますし、たぶん将来は守秘義務という言葉も死語になっているかもしれません。さらに守秘義務ということに絡んで義務と権利というふうな関係に言い換えて考えてみれば、私たちには情報を管理したり勝手に守秘したりする権利はありません。そうではなくてむしろ県民の皆様方に情報公開条例にも書かれたような知る権利のほうが優先をするんだということをこの入庁の機会にきちんと肝に銘じておいてもらいたいと思います。

 もうひとつは公益性の判断とか裁量権の範囲といった問題です。というといきなり抽象的で少し難しいなと思われるかもしれませんけれども、明治以来私たち役所は、自分たちのしている仕事が社会のために役立つものかどうかという公益性の判断は、自分たちの裁量に任されているという前提の上で仕事をしてきました。
言い方を換えれば、公益性の判断は私たちの裁量権の範囲にあるというのが私たちの仕事の大前提でした。しかもその判断の基準、またその正当性というものはブラックボックスの中で県民や皆さんには明らかにされていなかったと思います。
例えばと言って、人の仕事を例をあげて大変恐縮ですが、今有明海で海苔が死滅をした、その原因があの干拓事業にあったのではないかということが大きな問題になっています。この諌早湾の干拓もあれだけ大きな議論や反対論があるなかで事業が進められてきました。その背景には農林水産省がブラックボックスの中でなさった公益性の判断というものがあったと思いますが、今その公益性の判断がどうであったのかということが問われているのではないかと思います。ということを考えると、公益性の判断は私たちの裁量権に委ねられているんだという大前提そのものがもはや揺らいできているのではないか、見直しが求められてきているのではないかということを感じます。
 先日ある方とお話をしていましたが、千葉県の我孫子市が補助金を公募制にして市民5人の公益性の認定委員会というものを作ってそのなかで、補助金が公益性があるのかどうかということを認定をして交付をする。そんな仕組みを始めたという話を引き合いに出して、これからは各県にも公益性の認定委員会が必要になるのではないかという話をしておられました。いきなりそうなるかは分かりませんが、こうした考え方をしていっていい、またすべき時代になってきたのではないかということを一連の事件を通じて感じています。

 いきなり少し重苦しい話になりましたけれども、先日の県議会でも、僕はこの一連の事件を通じて県庁の改革がいっそう進めば、これからの時代を担っていく若い職員の皆様方にはもっともっと仕事のしやすい県庁になっていくのだ、という話をしました。また、そうした働きやすい県庁にしていくことをこの場でお約束をしておきたいと思います。
 もうひとつ、先月3月21日に高知工科大学の初めての卒業式が行われましたけれども、これを機会に工科大学の学長が交代をしました。新しく学長になられた方は、岡村先生といって、高知のご出身ですが、東大の野球部で活躍をして、東大としては今も最多勝利の記録をお作りになられていますし、また東大の野球部の監督を経験をした、そういう方です。
その岡村先生と話をしたら、こんなことを言っておられました。それは何かと言いますと、東大生はもちろん勉強では優秀な人ばかりが集まっている。だけど、野球ではもうまったく素人と同じで、一年の時にはどうにもならないけれども、4年まで一生懸命やると3試合に1試合は必ず勝てるようになる。また、ホームランも、三振してもいいという条件でホームランを打てという話をして、その打ち方を教えれば必ず誰でもホームランが打てるようになる、という話をしておられました。

 今、県庁の試験がどれだけ難しいか分かりませんけれども、皆さん方は多分難関を突破されるために、大変難しい勉強をしてこられたのではないかと思います。ですから、その勉強の延長線上にある、書類を整理したりという仕事は得意かも知れません。けれどもこれからの県庁というものは、それだけでは十分仕事のできる職員ではないということを知っていただきたいと思います。
 たとえば先日も、深層水の利用をめぐってアサヒビールとの間にひと悶着がありました。それについては、アサヒビールからもお詫びの言葉をいただきました。が、一方、私たちの仕事ということを考えてみますと、企業の最前線、毎日毎日死闘を繰り広げていく、そういうビジネスマンと渡りあっていくだけの交渉能力、また、その力を持っていただろうか、ということは反省点として考えなければいけません。
東大の野球部の例ではありませんけれども、勉強の延長線上の仕事だけではなく、野球でも3試合に1試合くらいは勝てる、また日頃は三振ばかりしていても時には打とうと思えばホームランも打てる、そういう選手を育てられるような県庁になっていかないと、そういう試合のできる県庁になっていかないといけないと思います。そのために自分も一生懸命努力をしていきたいと思います。

 改めて皆様方に入庁おめでとうということをお伝えしますと共に、これからの皆様方のご活躍を祈って、私からの挨拶を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

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