令和元年6月県議会での知事提案説明

公開日 2019年06月14日

令和元年6月県議会での知事提案説明 (6月14日)

1 当面の県政運営
 (1)天皇陛下御即位
 (2)令和元年度の県政運営
 (3)公文書管理制度

2 6月補正予算

3 経済の活性化
 (1)第3期産業振興計画の着実な推進
 (2)成長に向けた「メインエンジン」をさらに強化
  ア 継続的に新たな付加価値を生み出す仕組みの構築
   (高知版Society5.0の実現に向けた取り組み)
   (Next次世代型こうち新施設園芸システムなど)
   (高知マリンイノベーションの推進)
   (情報通信基盤整備の推進)
   (情報通信基盤整備の推進)
   (起業や新事業展開の促進)
  イ 交易の範囲のさらなる拡大
   (外商活動の全国展開)
   (ものづくり地産地消・外商センターによる外商支援)
   (海外への輸出の本格展開)
 (3)成長の「壁」を乗り越える
  ア 移住促進の取り組み
  イ 漁業就業支援センターの取り組み
  ウ 新規大卒者等の県内就職促進に向けた取り組み
  エ 外国人材の受け入れ環境の整備
 (4)観光振興の取り組み
   (自然&体験キャンペーン)
   (国際観光の推進)

4 日本一の健康長寿県づくり
 (1)全国知事会社会保障常任委員会などの取り組み
 (2)日本一の健康長寿県構想の推進
  ア 地域地域で安心して住み続けられる県づくり
    (高知版地域包括ケアシステムの構築)
    (地域医療構想)
  イ 厳しい環境にある子どもたちへの支援
  ウ 少子化対策の抜本強化

5 教育の充実
 (1)教育大綱の推進
 (2)小中学校における授業改善の取り組みの徹底
 (3)高等学校における学力向上に向けた取り組みの徹底など
 (4)不登校の予防と支援に向けた体制の強化

6 南海トラフ地震対策など
 (1)第4期南海トラフ地震対策行動計画の取り組み
 (2)南海トラフ地震臨時情報への対応
 (3)要配慮者支援対策の加速化
 (4)豪雨災害対策の推進

7 インフラの充実と有効活用

8 スポーツの振興

9 行政改革の推進など
 (1)行政分野におけるデジタル技術の活用の推進
 (2)障害者雇用の推進

10 新たな管理型産業廃棄物最終処分場の整備

11 議案

 


 

 本日、議員の皆様のご出席をいただき、令和最初の定例会であります、令和元年6月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。

 

1 当面の県政運営

(1)天皇陛下御即位
 先月1日に元号が令和に改まり、国民の祝意の中、天皇陛下が御即位あそばされ、日本国及び日本国民統合の象徴として皇位を継承なされましたことは、誠に慶賀に堪えません。謹んでお祝いを申し上げますとともに、新たに始まった令和の時代が、世界の平和と我が国の繁栄が一層進展する希望に満ちあふれた時代として幾久しく続きますよう、心からお祈り申し上げます。
 また、この新たな時代の始まりを受け、県といたしましても、改めて県勢の発展と県民福祉の向上に向け、最善の努力を尽くしてまいる所存であります。

(2)令和元年度の県政運営
 本県においては、これまで、「経済の活性化」をはじめとする5つの基本政策などに全力で取り組むとともに、これらの政策を総合的に組み合わせた「高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略」を着実に実行してまいりました。
 同戦略においては、経済の活性化を図るとともに、人口の社会増減の改善や少子化の克服を目指すことにより、できるだけ早い時期に人口構成を若返らせ、将来的には人口増加に転じることを目指しております。この戦略に基づき、4つの施策群、すなわち「地産外商により雇用を創出する」、「若者の県外流出の防止と県外からの移住者の増加を図る」、「特に出生率が高い傾向にある中山間地域の若者の増加を図る」、「若い世代の結婚、妊娠・出産、子育ての希望をかなえる」に取り組んでいるところです。
 これまでの取り組みによりまして、4つの施策群それぞれにおいて一定の成果が表れ始めております。
 まず、一つ目の「地産外商により雇用を創出する」については、平成30年度の本県の有効求人倍率が1.27倍と、産業振興計画前の平成20年度の0.46倍から大幅に上昇するとともに、平成20年度には17万8千人であった雇用保険の被保険者数が平成30年度には19万7千人となり、この10年間で約1万9千人増加しております。また、県内実質GDPを産業振興計画に取り組む前後で比較してみましても、平成13年度から平成20年度が7.3パーセントのマイナス成長であったのに対し、平成20年度から平成27年度は4.3パーセントのプラス成長に転じるなど、長年にわたり生産年齢人口の減少と連動する形で減少傾向にあった様々な経済指標が、人口減少下においても増加傾向に転じております。
 二つ目の「若者の県外流出の防止と県外からの移住者の増加を図る」については、本県人口の社会減が、以前の全国的な景気回復期と比べ2分の1程度に改善するとともに、平成23年度に120組であった本県への移住者数が平成30年度には934組1,325人にまで増加しております。
 三つ目の「特に出生率が高い傾向にある中山間地域の若者の増加を図る」については、高知市、南国市及び香南市を除く31市町村、すなわち中山間の市町村の経済指標を見ても、名目GDPが、平成13年度から平成20年度は15.4パーセントのマイナス成長であるのに対し、平成20年度から平成27年度は6.7パーセントのプラス成長となるなど、中山間地域の経済も明確に拡大傾向に転じつつあります。
 そして、四つ目の「若い世代の結婚、妊娠・出産、子育ての希望をかなえる」については、先日公表されました昨年の本県の合計特殊出生率が1.48となり、平成29年の1.56を下回る残念な結果となりましたものの、中長期的な趨勢を見れば、平成21年の1.29を底に回復基調にあり、この間の伸び率は14.7パーセントと、全国の3.6パーセントを大幅に上回っております。
 このように、4つの施策群による好循環の兆しが見え始めてきており、私自身、県勢浮揚に向けたこれまでの取り組みに一定の手応えを感じているところです。今後、この傾向をより一層確かなものとできるかどうかが、県政全般にわたる大きな課題となります。
 本県においては、昭和50年代から現在に至るまで合計特殊出生率が2.0を下回る状態が続いてきたことなどによって、高齢者が若者の2倍以上多いという人口構成となっており、今後も当面の間、人口減少が続くこと自体は避けられず、今月下旬に公表する本県の推計人口は70万人を下回ることが見込まれております。
 このような中にあっても、かつてのように人口減少に伴って縮む経済に陥ることなく、先々にわたり現在の拡大基調を維持し続けられるよう、本県経済の体質強化をさらに図っていく必要があります。あわせて、少子化対策のみならず福祉や教育の一層の充実を図り、人口減少下にあっても一人ひとりの暮らしを守り、ひいては、早期に若者が増加する、若返る高知県となれるよう取り組んでいく必要もあります。
 今後とも、これら4つの施策群について、PDCAサイクルによる不断の検証や改善を重ねながら、官民協働、市町村政との連携協調の下、一連の取り組みをさらに強化してまいりたいと考えております。

(3)公文書管理制度
 今議会においては、公文書等の管理に関する条例議案を提出させていただいております。本条例に基づき、県政上の意思決定に至る過程などを後世においても検証できるよう、文書の作成や保存、公文書館への移管又は廃棄など一連の公文書管理制度を創設してまいります。
 同条例議案においては、文書の作成について、知事を含め職員に対し、文書の作成義務を課しております。また、文書の保存については、文書ごとに保存期間及び保存期間満了時の措置を設定するとともに、関連する文書を公文書ファイルとしてまとめた上で管理簿を作成し、これを公表することとしております。さらに、公文書館への移管又は廃棄については、第一段階として各実施機関の判断、第二段階として公文書館長との協議、そして第三段階として新たに知事の附属機関として設置される公文書管理委員会への諮問、答申、という三重のチェックがかかることとなります。
 加えて、文書作成から公文書館への移管又は廃棄に至るそれぞれの段階において恣意的な運用がなされることのないよう、各実施機関に対して公文書管理規程の策定を義務づけており、あわせて、その策定にあたっては、公文書管理委員会に諮問することとしております。
 本議案をお認めいただきましたら、その後は、今議会でのご意見を踏まえるとともに、公文書管理委員会の意見も聴いた上で、公文書管理規程の例と留意事項を示したガイドラインを定め、年内を目途に全ての実施機関が公文書管理規程を策定できるように取り組んでまいります。その過程においては、議会に状況のご報告を随時させていただきたいと考えております。
 本制度の導入により、組織として意思決定を行う際には、文書を作成し、保存していくことが義務付けられることとなります。これにより、職員はこれまで以上に、事後に検証されるという意識を持って業務に取り組む必要がでてくるものと考えております。条例の目的にもありますとおり、この新たな制度により、先々にわたって、県政の透明性が担保され、もって現在及び将来の県民の皆様への説明責任が果たされ、県政の適正な運営がなされていくこととなるよう、的確な制度づくりに努めてまいります。

 

2 6月補正予算
 また、今議会では、経済の活性化をはじめとする基本政策などを着実に推進するため、総額4億4千万円余りの歳入歳出予算の補正並びに総額17億1千万円余りの債務負担行為の追加を含む一般会計補正予算案を提出しております。
 このうち「経済の活性化」に関しては、今般、森林資源の適正な管理を目指して創設された森林環境譲与税について、本県への譲与見込み額を新たに設置する基金へ積み立て、森林整備などに取り組む市町村の支援に活用することとしております。また、自然体験型観光資源のさらなる磨き上げを図るため、県内のサイクリングロードの整備を開始するとともに、ヤ・シィパークの活性化へ向けた調査を実施してまいります。
 このほか、高知版地域包括ケアシステムを支える「高知型薬局連携モデル」のさらなる強化や、平成30年7月豪雨により被災し、本年3月に災害査定を終えた県道川之江大豊線の早期復旧などに取り組んでまいります。

 

3 経済の活性化
 続いて、県政運営の現状に関し、まず、経済の活性化についてご説明申し上げます。

(1)第3期産業振興計画の着実な推進
 平成28年度にスタートした第3期産業振興計画も、4年間の計画期間の最終年度を迎えました。
 これまでの取り組みを通じて、本県の地産外商は着実に拡大しており、第3期計画に掲げた各分野における本年度末の目標のうち、農業産出額や漁業生産額、県外観光客入込数、食料品製造業出荷額等については、既に目標を達成するなどの成果が表れてきております。また、産業振興計画に取り組み始めた平成21年度以降の各種生産額の傾向を見ましても、先ほど申し上げましたとおり、本県経済は、人口減少に伴って縮む経済から、人口減少下にあってもむしろ拡大する経済へと構造を転じつつあるものと捉えております。
 この拡大傾向をより強固なものとし、先々にわたるまで県勢浮揚を確かなものとしていくため、目標達成に必要な施策や、5年後、10年後を見据えた施策などを大幅に強化したところです。その中においては、「高知版Society5.0」の実現に向けた取り組みのように、難易度の高い施策にも果敢に挑戦することとしております。このため、4月に開催した産業振興推進本部会議において、年間の進め方や手順、目標などを確認し、取り組みを速やかにスタートさせるとともに、今月開催した同会議において、その状況をきめ細かく点検、検証し、必要な改善を図ったところであります。
 これらの施策をしっかりと定着させることにより、経済成長の源泉である新たな付加価値の創造が交易の範囲の拡大につながり、さらに、交易の範囲の拡大が新たな付加価値の創造を促すといった好循環を生み出してまいりたいと考えております。

(2)成長に向けた「メインエンジン」をさらに強化
 続いて、各施策群の実施状況に関し、まず、「成長に向けた「メインエンジン」をさらに強化する」施策群について、ご説明申し上げます。

 ア 継続的に新たな付加価値を生み出す仕組みの構築
 これまでも、地産外商のうちの「地産」を強化する取り組みの一環として、次世代型こうち新施設園芸システムの普及や、養殖業の振興、自然体験型観光資源の磨き上げ、地域アクションプランの推進など、新たな付加価値の創造を促す取り組みを進めてまいりました。
 本年度は、この新たな付加価値の創造を促す取り組みの中でも、特に、
 IoTやAIなどのデジタル技術を生かした取り組みを加速しているところです。この取り組みを通じて、本県の地場産業の高度化を図るとともに、様々な分野の課題解決などに資する新たな産業の創出につなげてまいりたいと考えております。

 (高知版Society5.0の実現に向けた取り組み)
 デジタル技術を生かした取り組みのうち、まず、「高知版Society5.0」の実現に向けては、次の3点を柱として全力で実行しております。
 まず1点目は、IT・コンテンツ関連産業の集積の加速化であります。これまで、首都圏からの企業誘致や人材の育成確保などの取り組みを一体的に進めてきた結果、本年度も既に1社が立地を決定し、累計で立地企業数が19社、新規の雇用者数が270人を超えるなど、関連産業の集積がさらに進んできております。引き続き、IT・コンテンツ関連企業に加えて、Society5.0に関連する幅広い分野の企業立地を積極的に推進してまいります。
 また、IT人材の育成を目的としたIT・コンテンツアカデミーについては、これまでの受講者が延べ5,000人を超え、先月開催した「オープンキャンパス」には150名を超える学生や社会人に参加いただくなど、若い世代を中心に関心の高まりを実感しております。本年度は、AI技術を学ぶ講座などを新設しており、さらなる企業立地に向けて企業が求める人材の育成に努めているところです。
 さらに、首都圏の企業と連携した交流会を開催することにより、即戦力として期待される技術者の本県へのUIターンも呼びかけてまいります。
 2点目は、IoTやAIなどの最先端のデジタル技術を活用して課題解決を図るとともに、開発された製品やシステムなどの地産外商を促進する課題解決型の産業創出プロジェクトの加速化であります。この点については、現場からの「ニーズ抽出発」と企業からの「シーズ提案発」の2つのタイプのプロジェクトを推進しております。
 まず、「ニーズ抽出発のプロジェクト創出」については、これまで、第一次産業や中山間地域を中心としてニーズの抽出を行ってまいりました。本年度は、対象とする分野を医療や福祉、防災などのあらゆる分野に拡大し、「高知デジタルフロンティアプロジェクト」として、全庁を挙げて取り組んでいるところです。
 また、「シーズ提案発のプロジェクト創出」については、本県を実証フィールドとして県内外の企業などが有する技術シーズを活用して課題解決を図る取り組みを本年度からスタートいたしました。これまでに300社を超える企業にアプローチし、現在、興味を示していただいた数社との間で具体的な協議を進めているところです。
 3点目は、県内企業などのデジタル化の推進であります。県内企業が、デジタル技術を導入することにより、生産性の向上や新たなサービスの創出などを実現することを後押しするため、この4月に県庁内に「デジタル化総合相談窓口」を設置し、金融機関などと連携して、県内企業の経営や業務プロセスのデジタル化などに関する個別相談や、IT企業とのマッチングなどを行う支援態勢を整備したところです。
 これまでに20件以上のご相談をいただいているところであり、産業振興センターなどと連携しながら、県内企業へのデジタル技術の導入を着実に促進してまいります。

 (Next次世代型こうち新施設園芸システムなど)
 第一次産業分野においても、デジタル技術を生かした高度化を図る取り組みを加速してまいります。
 まず、農業分野においては、「次世代型こうち新施設園芸システム」にAIやIoTなどの最先端の技術を融合させた「Next次世代型こうち新施設園芸システム」の開発をスタートさせております。プロジェクトの推進にあたっては、昨年度、県内の3大学や農業団体をはじめとする産業団体、金融機関などで構成する産学官連携協議会を立ち上げ、併せて、東京大学、東京農業大学、農業・食品産業技術総合研究機構とも連携して取り組んでいるところです。現在、同協議会の下、13の研究テーマ群に100名を超える研究者が参画しております。
 また、このプロジェクトにおいては、全国初の多種多様なシステムや機器を開発する必要があることから、優れた技術を持った民間企業にも多数ご参画いただけるよう、研究者と企業とのマッチングの場を設けることとしており、先月末時点で県内企業を中心に43社に参画いただいております。
 引き続き、参画企業の一層の拡大を図りながら、収量増加や高品質化、省力化に向けた研究開発を加速させ、本県の施設園芸農業の飛躍的な発展を図るとともに、一連の取り組みにより開発されたシステムや機器の国内外への外商を通じて、施設園芸関連産業群を創出することを目指してまいります。
 加えて、国のスマート農業を推進する事業を活用し、露地栽培においてアシストスーツやドローンなどの先端技術を導入する実証事業を実施するため、関連する補正予算案を今議会に提出しております。高齢化や人手不足などによる諸問題の解決に資するよう、本県においても、積極的にスマート農業を推進してまいります。

 (高知マリンイノベーションの推進)
 次に、水産業分野に関しては、生産現場や流通においてIoTなどを活用する「高知マリンイノベーション」の推進に取り組んでいるところです。
 具体的には、水温や潮流などのデータを活用して、足摺岬周辺でのメジカ釣り漁業における漁場予測情報や、室戸岬周辺でのキンメダイ釣り漁業における出漁判断情報の提供に取り組んでおります。先月からは、試験的に運用を開始したところであり、事例を重ねることによって、さらなる予測精度の向上につなげてまいりたいと考えております。
 また、黒潮牧場の高機能化や、急潮や赤潮の発生予測手法の開発、市場における自動計量システムの導入なども進め、効率的な漁業生産体制への転換を加速してまいります。

 (情報通信基盤整備の推進)
 こうした一連の取り組みを進めるにあたっては、来年から商用サービスの開始が予定されている第5世代移動通信システム、いわゆる「5G」が重要な役割を果たす基盤となります。このため、都市部のみならず中山間地域においても同システムの基盤整備が進展するよう、全国知事会などとも連携しながら、国に対して積極的に政策提言を行ってまいります。

 (起業や新事業展開の促進)
 起業や新事業展開の促進を図ることにより、継続的に新たな付加価値の創造を促すことも重要であります。
 起業に向けた総合的支援プログラムである「こうちスタートアップパーク」においては、事業化のノウハウを学びながら、アイデアを実際の商品やサービスへと磨き上げていく連続プログラムや、起業コンシェルジュによる個別相談などを通じて、様々な段階にある起業希望者の事業の立ち上げや成長をサポートしているところです。これまでの間、延べ680人を超える方々にこのプログラムに参加いただき、会員数も365人となるなど、起業に向けた機運は着実に高まってきていると感じております。また、こうした取り組みなどを通じて、これまでに起業や事業化に至った件数は120件、新商品の開発は799件に上っております。
 本年度は、より成長性の高い事業の創出を目指すために、県内の起業希望者が都市部の実績ある起業家とチームを組み、そのノウハウを学ぶことのできる「高知ビジネスデザイン塾」を新たに実施することとしており、今月2日にはキックオフセミナーを開催したところです。この中で、本県をフィールドとして、IoTやAIといった最先端の技術を活用した試行的な事業開発などを行うこととしております。
 また、「ローカルベンチャー創出プログラム」をさらに充実し、都市部の起業希望者が、移住や起業に積極的な県内市町村の地域資源などを活用して、事業化に向けたプランを作成する一連のプログラムを実施してまいります。
 こうした取り組みを通じて、起業人材を本県に呼び込むとともに、地産外商にもつながる事業創出を図ってまいりたいと考えております。

イ 交易の範囲のさらなる拡大
 次に、交易の範囲のさらなる拡大に関する取り組みについてご説明申し上げます。
 これまでの官民一体となった取り組みにより、国内向けの「外商」の範囲は、首都圏を中心に着実に広がってまいりました。本年度は、その範囲をさらに拡大するとともに、海外への輸出の本格展開を図ってまいります。

 (外商活動の全国展開)
 まず、食品分野については、昨年度、地産外商公社において、中部地区の外商機能を強化するとともに、大手卸業者やボランタリーチェーンなどとの関係を深めるなどした結果、公社の活動を契機とした成約金額は、前年度の約1.2倍となる42億3千8百万円と大きく伸びたところです。
 また、昨年度、県と公社が支援する展示商談会への参加事業者数は、延べ737社となり、取り組みをスタートした平成22年度の約20倍にまで広がってまいりました。
 こうした成果をさらに拡大していくため、本年度は、公社の外商担当職員を1名増員して19名体制とし、その活動エリアを関東以北に本格的に広げるとともに、業務用の卸売業者や飲食店グループに積極的にアプローチするなど、販路開拓が期待できる地域や業態への「外商」を一段と強化しているところです。
 本年4月には、業務用専門の大規模展示商談会に新たに出展し、県内の13事業者が精力的に売り込みを実施しております。また、今月4日には、県内外のバイヤー116社と県内事業者124社が参加する高知県産品商談会を開催し、展示商談に加え、延べ約360件の個別商談が行われたところです。今後、地産外商公社においても、精力的に成約に向けたフォローアップに努めてまいります。
 あわせて、県内の地域商社の主体的な外商活動への支援もさらに充実するなど、官民協働による外商拡大を一層推進してまいります。

 (ものづくり地産地消・外商センターによる外商支援)
 ものづくり分野においては、平成26年に設置したものづくり地産地消・外商センターを中心として、高知発のものづくりの地産地消から外商までの取り組みを強力に支援してまいりました。
 昨年度の同センターのサポートによる成約金額は約66億8千万円となり、前年度と比べ15パーセント、約8億8千万円増加いたしております。
 本年度は、さらなる販路拡大を目指して、4月から「外商」の要である東京営業本部の体制を強化し、よりきめ細かく企業とのマッチング支援や見本市におけるサポート活動を行うとともに、首都圏エリア以外での展示商談会を拡充するなど、取り組みを一層強化しているところです。

 (海外への輸出の本格展開)
 海外への輸出の本格展開について、まず、食料品に関しては、平成29年の輸出額が10億5千万円余りとなり、第1期産業振興計画がスタートした平成21年の約20倍にまで伸びてまいりました。
 本年度は、輸出のさらなる拡大に向けて取り組みを加速させていきたいと考えており、本年3月に宿毛市に完成した大型水産加工施設はその追い風になるものと大いに期待しているところです。この夏に同施設が本格稼働することに合わせて、土佐酒やユズなど本県が強みを持つ既存の品目に加え、水産物の輸出に本格的に取り組んでまいります。
 あわせて、食料品の需要拡大が期待できるアメリカやヨーロッパの重点市場に「食品海外ビジネスサポーター」を新たに配置することにより、現地の情報収集や県内事業者のビジネス活動の支援を行う態勢を早期に強化してまいりたいと考えており、現在人選を進めているところです。
 次に、ものづくり分野に関しては、昨年度のものづくり地産地消・外商センターのサポートによる海外における成約金額は、目標を上回る8億6千万円となり、海外展開の支援を本格化した平成27年度の3倍を超える規模にまで拡大してまいりました。本年度は、県内企業の海外における営業力の強化を図るため、国内外の商社などとのマッチングの機会を一層拡充したいと考えており、産業振興センターと連携して商社との協議を進めているところです。
 以上のような両分野における取り組みに加えて、輸出に取り組む県内企業の現地でのニーズに応えるため、来月からシンガポール事務所に県内金融機関からの派遣職員を新たに受け入れることとしております。あわせて、日本貿易振興機構との連携も一段と強化し、企業の海外戦略づくりを支援するといった取り組みも進めてまいります。

(3)成長の「壁」を乗り越える
 第二に、「成長の「壁」を乗り越える」施策群に関してご説明申し上げます。
 各産業分野において、人手不足や後継者不足が一層深刻化しており、新たな付加価値の創造や交易の範囲のさらなる拡大を図る上でボトルネックとなってきております。
 この課題を克服するため、本年度は、移住促進策や各産業分野の担い手確保策、新規大卒者等の県内就職促進策などのさらなる強化に加え、新たに、外国人材の受け入れ態勢の整備にも取り組んでいるところです。

 ア 移住促進の取り組み
 まず、移住促進については、移住促進・人材確保センターを中心に、市町村や関係団体との連携の下、オール高知の体制で取り組んできた結果、昨年度の本県への移住者は、前年度比で14パーセント増の934組1,325人となり、目標の900組を上回ることができました。
 しかしながら、本年度の目標である年間移住者1,000組の達成とその定常化に向けては、移住促進策をもう一段強化するとともに、より戦略的に展開する必要があると考えております。
 このため、本年度は、本県への移住に関心を持つ層をさらに広げるため、先月からSNSを活用した関東在住者などとのネットワークづくりを開始するとともに、都市部の相談者のニーズに、年間を通じて切れ目なく、かつ、きめ細かく対応できるよう、相談会を質的、量的に拡充しております。現在、東京や大阪において、既に相談会などを10回開催し、約80人が参加したところであります。
 今後は、全国の求人検索サイトも活用して、本県の求人情報をさらに積極的に発信するとともに、相談に来られた方を確実に移住につなげるため、相談者の状況に応じた的確なアプローチを行ってまいります。
 加えて、地域に潜在する人材ニーズの一層の掘り起こしを図るため、先月から移住促進・人材確保センターに3名の求人支援コーディネーターを新たに配置いたしました。今後、商工会など地域の支援機関との連携をさらに深め、求人情報の一層の掘り起こしと磨き上げを進めてまいります。

 イ 漁業就業支援センターの取り組み
 本県の強みである第一次産業分野における担い手確保に向けては、これまで、農業担い手育成センターや林業大学校などを設置するとともに、移住促進策とも連動させるなどといった取り組みを進めてまいりました。
 さらに、水産業分野においては、昨年10月、漁業就業者のさらなる確保に向けて、漁業就業支援センターを立ち上げ、多岐にわたっていた相談窓口を一元化することにより、漁業就業希望者への円滑な情報提供を図ってまいりました。
 また、本年4月には同センターを一般社団法人として組織化するとともに、長期研修修了後の生活支援策や漁業後継者の就業支援策などを抜本的に強化するなど、就業相談から就業後のフォローアップまでを一貫して行う全国トップクラスの支援態勢を整えました。
 この結果、本年度の短期研修には、前年同期を大きく上回る9名の研修生が参加しており、漁業者の確保、育成に向けて順調なスタートが切れたと手応えを感じているところです。
 今後は、同センターにおいて、漁業就業を目指す移住希望者の掘り起こしにも取り組むこととしております。具体的には、求人や住居などの具体的な情報を盛り込んだ漁村からの提案書の作成を支援するとともに、同提案書も活用しながら、東京や大阪で開催される移住フェアなどにセンター自らが参加するなどしてまいります。

 ウ 新規大卒者等の県内就職促進に向けた取り組み
 大学生の県内就職の促進に関しては、学生の就職につながりやすいとされるインターンシップの実施企業の拡大を図るため、昨年度から企業訪問を通じた掘り起こしなどを進めてきた結果、新たに50社から実施する意向が示され、本年度は100社を超える企業で実施されることとなりました。
 また、県内企業の魅力を学生に十分伝えるため、「高知求人ネット」などで閲覧できる企業のPR動画の作成を支援するとともに、Web版の就職セミナーを拡充するなど、インターネットを活用した情報発信の取り組みを強化しております。現在、20社を超える企業が、専門家から助言を受けながら動画の作成や企業情報の積極的な発信に取り組んでいるところです。
 課題となっている、新規大卒者等の県内就職の促進に向けて、一連の取り組みを着実に進めてまいります。

 エ 外国人材の受け入れ環境の整備
 外国人材の就労を目的とする新たな在留資格などを盛り込んだ出入国管理及び難民認定法が本年4月1日に施行され、全国的に外国人材の受け入れが広がりつつあります。
 本県においても、外国人の方々に安心して生活していただけるよう、先月、「高知県外国人生活相談センター」を開設いたしました。同センターにおいては、本県で生活をされる外国人の方々に対し、生活に関わる様々な情報提供や相談などのサポートを行っております。
 また、同センターの運営をバックアップするため、国や県、外国人の受け入れや生活に関わる機関など官民24の機関からなる協議会を設置しており、今後、センターの活動などを通じて得られた知見をもとに、関係機関が連携して、さらなる支援態勢の構築や受け入れ環境の整備などを進めることとしております。

(4)観光振興の取り組み
 次に、観光振興の取り組みについてご説明申し上げます。

 (自然&体験キャンペーン)
 本年2月1日から、「リョーマの休日~自然&体験キャンペーン~」がスタートいたしました。
このキャンペーンのスタートに合わせて開設した特設Webサイトには、これまで、「志国高知 幕末維新博」第一幕の同時期と比べて約80パーセント増となる44万件を超えるアクセスがありました。
 また、本年2月から4月までの県内66の観光施設の利用者数は78万人を超え、過去最高の県外観光客入込数を記録した昨年を5.6パーセント上回ったところです。
 さらに、ゴールデンウィーク期間中における主要な観光施設の利用者数は対前年比30パーセント増の約35万人を記録しました。特に東部地域の施設については70パーセント増となり、西部地域の施設についても30パーセントを超えるなど大きく伸びており、本キャンペーンの目的の一つである中山間地域への誘客も着実に進んでおります。
 このように、本キャンペーンにつきましては、これまでのところ順調なスタートが切れたものと受け止めております。
 引き続き、旅行商品を「つくる」「売る」「もてなす」という一連の取り組みについて、PDCAサイクルによる検証と改善を重ねながら、さらなる観光客の誘致に努め、本県における自然体験型観光の定着と振興を図ってまいります。
 具体的には、まず、旅行商品を「つくる」取り組みについては、本年4月に土佐清水市で、今月には越知町において全国トップクラスの大手アウトドアメーカーが運営する観光拠点施設がオープンし、本山町でも来月7日の「土佐れいほく博」の開幕と同時に、メイン会場となるアウトドア施設がオープンする予定であるなど、中山間地域に多くの観光客などを呼び込む新たな施設整備が着実に進んできているところです。
 さらに、香南市においても、ヤ・シィパークを核とした総合的なアクティビティ拠点の整備に向け、本年3月、県と市、地元関係者からなる協議会により「ヤ・シィパークグランドデザイン」が策定されたところです。本施設は、中部地域における自然体験型の観光拠点施設としての役割のみならず、東部の観光施設に観光客を周遊させる機能も期待されているところであり、施設整備を進めるための調査に係る補正予算案を今議会に提出しております。
 また、旅行商品を「つくる」観光人材の育成に関しては、本年度の「土佐の観光創生塾」に、現時点で既に昨年を上回る251人の方々から申し込みをいただいており、今月11日には最初の講座がスタートしたところです。今後、コーディネーターによるきめ細かな伴走支援を行うなど、各地域における旅行商品の造成や磨き上げに向けて一貫した支援を行ってまいります。
 次に、旅行商品を「売る」取り組みについては、先ほど申し上げました特設WebサイトやSNSを活用して、効果的な情報発信を行うとともに、首都圏や近畿圏に向けて、様々なメディアを通じ、訴求力のあるプロモーションに取り組んでおります。
 あわせて、先月、旅行会社の商品企画担当者などを本県に招へいし、観光商談会やモニターツアーを実施するとともに、今月には名古屋と福岡において旅行商品の説明会を開催するなど、積極的なセールス活動を展開しているところです。
 さらに、「もてなす」取り組みにつきましては、来県された観光客のニーズにきめ細かく対応するため、多言語表記の整備やスキルアップ研修の実施などにより、観光案内所の機能強化を図るほか、利用者へのヒアリング調査などにより得られた評価を観光事業者にフィードバックすることなどを通じて、観光客に対するサービス向上に努めているところであります。

 (国際観光の推進)
 国際観光に関しましては、これまで、旅行商品の販売促進や情報発信の強化などに取り組んできた結果、本年1月から3月までの外国人延べ宿泊者数の速報値が前年同期より約20パーセント増の約2万3千人泊となるなど、取り組みの成果が一定見え始めてきたものと感じております。しかしながら、第3期産業振興計画に掲げる目標である年14万8千人泊の達成に向けては、取り組みをなお一層強化していく必要があります。
 このため、インバウンドにも適した「自然&体験キャンペーン」などを生かしながら、次の4つの対策を柱として、外国人観光客のさらなる誘客拡大に取り組んでおります。
 第一は、「海外セールスの強化」であります。これまでの台湾、香港、シンガポール、タイに加え、本年4月からは中国や韓国において新たに本県観光のセールス拠点を設置し、団体や個人向けの旅行商品の販売促進を図っております。特に、中国市場においては、私自身、本年4月に旅行会社へのトップセールスを実施し、その結果、中国最大のオンライン旅行会社との間で中四国では初めてとなる連携協定の締結を行う運びとなりました。また、2月には台湾市場において、さらに先月には香港市場においても旅行会社などへのトップセールスを実施したところであり、本県への誘客拡大に手応えを感じております。
 第二は、「個人旅行者向け商品づくり及び情報発信の強化」であります。本年4月から外国人向けの旅行商品づくりを促進する「プロジェクト・ディレクター」を新たに委嘱し、個人旅行客のニーズに沿った多様な旅行商品の造成に取り組んでいるところです。あわせて、外国人に対して訴求力の高い観光地の情報を、SNSなどを通じて効果的に発信する取り組みなども進めております。
 第三は、「アクセス環境の充実とチャーター便の誘致拡大」であります。本県へのさらなる誘客に向け、台湾や韓国市場などからのチャーター便の誘致に精力的に取り組むとともに、四国内の他の空港と連携した旅行商品の造成に努めているところです。あわせて、高知龍馬空港の国際化も視野に入れ、その機能の拡充に向けた検討を進めております。
 第四は、「四国4県の連携推進」であります。本年3月に日本版DMOとなりました四国ツーリズム創造機構と四国4県がしっかりと連携し、海外における四国の認知度向上を図ってまいります。
 こうした一連の取り組みを通じまして、本県のインバウンド観光のステージアップを図り、外国人の延べ宿泊者数の大幅な増加を目指してまいります。

 

4 日本一の健康長寿県づくり
 次に、日本一の健康長寿県づくりについてご説明申し上げます。

(1)全国知事会社会保障常任委員会などの取り組み
 昨年7月の全国知事会議で決議された「健康立国宣言」に基づき、私が委員長を務める全国知事会社会保障常任委員会を中心に、全都道府県参画の下、持続可能な社会保障制度の構築に向けた取り組みが精力的に進められております。
 具体的には、有識者を招いた会議を延べ10回開催するとともに、血管病の重症化予防や、在宅医療及び介護連携の推進など、同種の取り組みごとにカテゴリー分けした21のワーキングチームを立ち上げ、お互いに学び合いながら、先進事例や優良事例の全国的な横展開の取り組みを進めてまいりました。その結果、全都道府県で合わせて369の新規もしくは拡充した事業に本年度より取り組むこととなり、本県においても、糖尿病に関する保健指導の強化など17の新たな取り組みに着手したところです。
 また、全国的に横展開を進めるにあたっての課題の解消を図るなど、取り組みの実効性を高めるために、今般、国と地方の意見交換会を立ち上げました。まず、政務レベルでの会合を先月16日に開催し、以降、「重症化予防」や「在宅医療・介護連携」など4つのテーマにおいて実務者同士による意見交換を実施したところです。今後、国と地方の政策形成の基盤として、この意見交換会を継続的に開催してまいりたいと考えております。
 持続可能な社会保障制度の構築を目指して、国と地方が互いに方向性を共有しながら、適切な役割分担の下で取り組んでいくこととなるよう、引き続き努力を重ねてまいります。

(2)日本一の健康長寿県構想の推進
 次に、日本一の健康長寿県構想の取り組みについてご説明申し上げます。
 平成28年に策定した第3期日本一の健康長寿県構想の取り組みにより、目標に掲げる5つのがん検診と特定健診の全ての受診率が向上するとともに、高知家健康パスポートの取得者も3万7千人を超えるなど、県民の皆様の健康意識は確実に高まってきているものと感じております。また、サテライトを含め約290カ所に広がったあったかふれあいセンターをはじめとして、中山間地域への訪問看護や訪問介護サービス、高知版ネウボラなど、地域地域で医療、介護、福祉のサービス資源の整備が進んできております。
 第3期構想の最終年度にあたる本年度は、5年後、10年後を見据え、地域における医療、介護、福祉サービスのさらなる量的拡充に取り組むとともに、これらの各資源のネットワーク化を図り、それぞれが有効なシステムとして機能することとなるよう、取り組んでいくこととしております。 

 ア 地域地域で安心して住み続けられる県づくり
 (高知版地域包括ケアシステムの構築)

 地域地域で安心して住み続けられる県づくりの実現に向けては、高知版地域包括ケアシステムの構築を目指して、昨年度から各福祉保健所に配置している地域包括ケア推進監と、市町村や関係者の皆様とが連携して、それぞれの地域におけるネットワークづくりを進めているところです。
 昨年度は、県内6ブロックに「地域包括ケア推進協議体」を設置し、地域ごとの課題の抽出やその対応策、支援が必要な高齢者を把握する仕組みづくりなどについて協議を行い、その具体化を図ってまいりました。
 本年度は、さらにネットワークを広げるため、新たに5ブロックにおいて、関係者の皆様と協議体の設置に向けた協議を行っているところです。
 また、各サービスの接続部を担うゲートキーパーの役割が重要であることから、あったかふれあいセンターなどの機能の充実をさらに進めるとともに、地域のネットワークの核となる地域包括支援センターの一層の機能強化にも取り組んでおります。本年4月から5月にかけては、地域包括支援センターの現状や課題、取り組み状況などについて、全ての市町村と地域包括ケア推進監などが意見交換を行ったところであり、今後は、各センターの実情に応じた事業戦略が策定できるよう支援してまいります。
 引き続き、県民の皆様が県内のどの地域に住まわれても、医療、介護、福祉のサービスを切れ目なく受けることができることとなるよう、高知版地域包括ケアシステムの構築を力強く進めてまいります。

 (地域医療構想)
 次に、医療分野においては、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を見据え、地域の実情に応じた効率的かつ質の高い医療提供体制の構築を目指して、地域医療構想の推進を図っております。
 具体的には、各圏域に設置した地域医療構想調整会議において、それぞれの医療機関が担う機能や必要な病床数などに関して関係者間で協議を行い、まずは県内に16ある公立、公的医療機関の今後の方針について合意を得たところです。
 今後、厚生労働省から各地域における全医療機関の診療実績データなどの分析結果が示される予定となっており、これらを活用しながら、それぞれの地域において公立、公的医療機関の担う機能などについて、さらに検討を深めてまいります。
 また、慢性期の医療や介護ニーズに対応するため、新たな介護保険施設として昨年4月に介護医療院が制度化されました。本県においては、先月1日時点で既に436床が療養病床などから転換したところであり、引き続き、高齢者の生活の質、いわゆるQOLの向上にもつながるよう、介護医療院への円滑な転換を支援してまいりたいと考えております。

 イ 厳しい環境にある子どもたちへの支援
 厳しい環境にある子どもたちへの支援については、妊娠期から子育て期までの切れ目のない総合的な支援体制である高知版ネウボラの取り組みを、少子化対策にも資する施策として積極的に進めているところです。
 例えば、これまで先行して取り組んできた吾川郡いの町や高知市に加え、新たに香南市においても「ネウボラ推進会議」を立ち上げました。先月には第1回目の会議を開催し、妊婦や子育て家庭への支援に関わる機関が一堂に会して、地域における現状や課題のほか、取り組みの方向性や今後の進め方について協議を行ったところです。
 さらに、子育て家庭のニーズに応じた適切なサービスが地域地域において提供されるよう、各市町村の子育て世代包括支援センターや地域子育て支援センターをはじめとする支援機関の機能の強化を図ってまいります。

 ウ 少子化対策の抜本強化
 少子化対策につきましては、本年度、一連の取り組みを一段と強化することとしており、加えて、今回の人口動態調査の結果を詳細に分析し、さらなる改善を図ってまいりたいと考えております。
 まず、出会いと結婚については、支援を希望される方々に対するサポートを一層強化することとしております。具体的には、婚活サポーターの活動強化をさらに図るとともに、こうち出会いサポートセンターによるマッチングシステムの出張登録閲覧会の開催や、集落活動センターを活用したイベント開催への支援を行うことなどにより、中山間地域も含めて、県内における出会いの機会をこれまで以上に数多く創出してまいります。
 また、妊娠期から子育て期においては、高知版ネウボラの推進により、安心して妊娠・出産、子育てができる環境づくりに向けて取り組みを進めてまいります。
 さらに、働きながら子育てしやすい環境づくりに向けては、先月末時点で約400社となった「育児休暇・育児休業の取得促進宣言」に賛同する企業数をさらに拡大するとともに、育児に関する休暇などを取得しやすい職場環境の整備が進められるよう、時間単位の年次有給休暇の導入をはじめとして、企業の働き方改革の取り組みを支援してまいります。
 あわせて、ライフステージの各段階に応じた対策をさらに強化することにより、県民の皆様にとって一層暮らしやすい、子育てしやすい社会の実現を目指してまいります。

 

5 教育の充実
 次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。

(1)教育大綱の推進
 平成28年に策定した教育大綱に基づき、子どもたちの知、徳、体のさらなる向上を図るため、学校の組織力を高め、外部や地域の人材も活用して組織的に課題の解決を図る「チーム学校の構築」や、「厳しい環境にある子どもたちへの支援」などの取り組みを強力に進めてまいりました。
 こうした結果、スクールカウンセラーなどの外部人材の活用や、学校と地域との連携協働が大いに進み、さらに教員同士が組織的に授業改善や生徒指導の充実を図る取り組みも確実に浸透してまいりました。あわせて、この3年間で児童生徒の基礎学力は着実に改善しております。
 本年度は、4年間の取り組みの最終年度となりますことから、教育大綱に掲げる目標の達成を目指して、全力で取り組んでまいります。中でも、学力向上に向けた授業改善や、依然として課題である不登校児童生徒への支援などについては、特に取り組みを充実することとしております。

(2)小中学校における授業改善の取り組みの徹底
 このうち、まず、中学校における授業改善に関しては、複数の教員が学年をまたがり同じ教科を担当する「教科のタテ持ち」や、小規模校における教科の枠を越えた教員同士の学び合いの取り組みを、本年度は全ての市町村立中学校103校に拡大して実施しているところです。
 また、小学校においては、本年度からメンター制度を導入し、ベテラン教員と若手教員などがチームを組み、学級経営や授業づくりに関する指導や助言により若手教員の育成を図るといった、組織的に人材育成を図る取り組みを着実に進めてまいります。
 あわせて、高知市の学力向上推進室に対し、昨年度から派遣している7名と県教育委員会で兼務する3名に、新たに3名を加え、合計13名の指導主事を派遣するなどしているところです。この取り組みにより、指導主事一人あたりの担当教員数は、学力向上推進室が設置される前の平成29年度は、県教育事務所が65人に対して高知市が181人であったものが、本年度は、県教育事務所が61人に対して高知市が57人となるなど、大幅に減少し、高知市においても、よりきめ細かな訪問指導が可能となっております。先月末までに課題の見られる学校を中心に、延べ399回訪問するなど、授業内容や学校経営などに関する指導、助言を行い、授業改善に向けた取り組みを徹底しているところです。

(3)高等学校における学力向上に向けた取り組みの徹底など
 高等学校における学力向上の取り組みに関しては、授業改善の取り組みをさらに広げるため、学校支援チームを4月から3名増員して15名体制とし、これまでの英語、数学、国語の3教科に地歴公民も加え、各校への訪問指導を行っているところです。
 4月には全ての県立高等学校を訪問し、本年度の学校支援チームの取り組みについて周知を図るとともに、先月からは、授業改善に向けた訪問指導をスタートしております。あわせて、各校の管理職に対しても、先月から学校経営計画の進捗管理やカリキュラムマネジメントに関する指導、助言を行っており、引き続き、学校全体で組織的に学力向上に取り組む態勢づくりを推進してまいります。
 また、地域間における教育機会の格差の解消を図り、中山間地域の小規模校の生徒が地元を離れることなく、県中心部の大規模校と同様に希望する進路を実現できるようにすることを目指して、本年度からICTを活用した遠隔教育を本格的にスタートしてまいります。
 まずは、既に遠隔教育システムを整備している檮原高校など5校において、今月下旬から順次、国公立大学への進学を希望する生徒を対象とした放課後の進学補習講座の配信を開始いたします。次いで、全10校へのシステム導入が完了する2学期からは、各学校の生徒のニーズに応じて、進学補習講座や資格試験講座などを配信してまいります。
 さらに、来年度からは、通信環境のさらなる整備などにも取り組むとともに、より本格的に、教育課程上に位置づけられた授業としての配信も行うこととしております。

(4)不登校の予防と支援に向けた体制の強化
 厳しい環境にある子どもたちへの支援のうち、不登校対策については、本年度、県内全ての市町村の教育委員会にスクールソーシャルワーカーを配置するとともに、学校に来ることのできない子どもたちへの訪問支援を行うアウトリーチ型のスクールカウンセラーを全ての市の教育支援センターに配置するなど、支援態勢の充実を図っております。あわせて、こうした専門家などを活用した校内支援会のさらなる充実、強化にも取り組んでいるところです。
 中でも、不登校の児童生徒の割合が高い22の小中学校に対しては、スクールカウンセラーのスーパーバイザーや指導主事などで構成する不登校対策チームが継続的に訪問し、各学校の組織的な対応状況を把握した上で課題を掘り下げ、不登校の未然防止や早期対応に向けて具体的な指導、助言を行っております。
 特に、不登校児童生徒の約半数を抱える高知市については、同市が新たに配置した不登校対策アドバイザーと県の不登校対策チームが連携して学校訪問を実施するとともに、県市による合同会議を新たに立ち上げ、訪問結果に基づいた対策の検討をスタートしたところです。
 今後、こうした取り組みを通じて得られた具体的な改善策を県内各校に横展開してまいりたいと考えております。

 

6 南海トラフ地震対策など
 次に、南海トラフ地震対策及び豪雨災害対策についてご説明申し上げます。

(1)第4期南海トラフ地震対策行動計画の取り組み
 昨年度までを計画期間とする第3期南海トラフ地震対策行動計画では、「命を守る」、「命をつなぐ」、「生活を立ち上げる」対策の推進に、市町村との連携の下、全庁を挙げて取り組んでまいりました。中でも、地震対策の入口である住宅の耐震化については、目標としていた4,500棟の耐震改修を達成したほか、津波避難空間の整備についても、1,445カ所の避難路、避難場所の整備を完了し、津波避難タワーも111基完成しております。こうした様々な対策を着実に進めてきた結果、最大クラスの地震、津波が発生した場合の想定死者数は第2期当初の約4万2千人から約1万1千人へと約74パーセント減少する見込みとなりました。
 本年度からスタートした第4期行動計画におきましては、これまでの取り組みを土台に、対策の時間軸をこれまで以上に長く捉え、復旧期をも視野に入れた取り組みを進めていくこととしております。
 この中では、南海トラフ地震の発生可能性が相対的に高まったと評価された場合に気象庁が発表する臨時情報への対応や、過去の大規模災害時に多くの方々が犠牲となった要配慮者への支援対策の加速化といった、難易度の高い2つの課題にも取り組むこととしております。
 こうした取り組みにより、令和4年3月までに想定死者数をまずは5,800人にまで減少させ、さらには限りなくゼロに近づけていくため、引き続き全力で対策を推進してまいります。

(2)南海トラフ地震臨時情報への対応
 本年度から対策を抜本強化することとした2つの課題のうち、まず、南海トラフ地震臨時情報への対応に関しては、本年3月に、国から自治体や事業者向けのガイドラインが公表され、さらに、先月末には、災害対策基本法や南海トラフ地震対策特別措置法に基づく国の基本計画が改定されました。これに基づき、市町村や事業者は、津波避難計画などそれぞれの計画を見直し、臨時情報に対応した具体的な防災対策を新たに盛り込んでいくこととなります。
 県としましては、一人でも多くの県民の皆様の命を守るため、市町村がスムーズに臨時情報を生かした防災対応を検討できるよう支援を行うほか、事業者に対しても、説明会を開催するとともに専用の相談窓口を設置するなど、きめ細かく支援を行ってまいります。

(3)要配慮者支援対策の加速化
 次に、要配慮者への支援対策に関しては、災害時に自力で避難することが困難な方々が迅速に避難できるよう個別計画の策定の加速化を図るとともに、福祉避難所のさらなる指定促進や、一般避難所で要配慮者を受け入れるための環境整備、避難所運営マニュアルのバージョンアップなどに取り組んでまいります。あわせて、災害時において社会福祉施設の機能を維持し、施設の早期再開を可能とするため、事業継続計画の作成も進めるなど、「命を守る」、「命をつなぐ」、「生活を立ち上げる」の全てのステージにおいて、要配慮者対策を充実強化してまいります。
 このうち、個別計画の策定の加速化に向けては、本年度、各市町村への支援策を拡充するとともに、沿岸の5地区をモデル地区として悉皆的に個別計画の策定に取り組むこととしております。現在、この5地区において自治体や地元の防災、福祉関係者との協議を進めているところであり、今後は、各地区で関係者によるワーキンググループを立ち上げた上で、個別計画の策定に着手することとなります。さらに、このモデル地区における取り組みが終了した後は、モデル地区において得られたノウハウを、県内全域に横展開してまいりたいと考えております。

(4)豪雨災害対策の推進
 昨年の7月豪雨やその後の台風による甚大な被害に関しては、既に一連の応急対策を完了させたところであり、災害からの復旧についても、夏の出水期までにできるだけ多くの箇所で終了させることができるよう全力で取り組んでいるところであります。
 特に甚大な被害が発生した中小河川については、国の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を最大限活用し、河床掘削や樹木伐採などの予防的な対策をスピード感を持って進めているところです。あわせて、本県などの政策提言により、国において中小河川における事前防災対策を実施するための事業が新たに創設されたことから、この制度も活用して、これまでに大きな浸水被害が発生した河川の改修に取り組むなど、治水対策の強化を着実に図ってまいります。
 こうしたハード面の対策に加え、ソフト面の対策として、本年4月、これまでの度重なる災害対応の経験を踏まえ、実践的な行動を時系列で示した「台風やゲリラ豪雨に対する高知県災害対策本部タイムライン」を新たに策定いたしました。今後は、このタイムラインを積極的に活用して、事前の準備や先を見越した行動などといった早め早めの防災行動につなげてまいりたいと考えております。
 引き続き、全庁を挙げて、「インフラ未整備箇所の予防的措置」、「被災箇所のダメージ除去」、「急激に悪化する事態への対応」といった3つの視点で対策を着実に実行し、県の災害対応力を向上させてまいります。

 

7 インフラの充実と有効活用
 次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
 四国8の字ネットワークは、自然災害への備えを高める上で不可欠な基盤であるとともに、経済活動を支える重要な社会資本であることから、これまで、他県の知事と連携するとともに、全国高速道路建設協議会の会長として、その整備促進に向けて国などに対して積極的に政策提言を行ってまいりました。
 これまでの取り組みの結果、四国8の字ネットワークの県内の供用延長は、平成19年度末の86キロメートルから、本年度末には152キロメートルとおよそ1.8倍にまで伸びる見通しとなっており、観光や産業振興など様々な面において効果が表れてきております。
 さらに、本年度は、四国横断自動車道の大方四万十道路と阿南安芸自動車道の海部野根道路が新規に事業化されるとともに、未事業化区間の阿南安芸自動車道の野根-安倉間について、国による権限代行実施の検討を行うための調査が着手されることになりました。
 引き続き、四国8の字ネットワークの早期完成に向け、事業中の箇所の早期開通や未事業化区間の早期事業化が図られるよう、国などに対して積極的に政策提言を行ってまいります。
 また、昨年の7月豪雨で流失した高知自動車道立川橋については、夏休み前までに大豊-新宮間の対面通行が解消されるよう、西日本高速道路株式会社により着実に工事が進められているところです。県といたしましても、引き続き、復旧工事の円滑な実施に向けて、同社や関係機関と連携して取り組んでまいります。

 

8 スポーツの振興
 次に、スポーツの振興についてご説明申し上げます。
 第2期高知県スポーツ推進計画に基づくスポーツ振興の取り組みについては、本年3月に同計画をバージョン2へと改定し、「スポーツ参加の拡大」など3つの柱を中心として、施策を展開しております。
 一つ目の柱である「スポーツ参加の拡大」については、新たに室戸市、香南市を加えた6市町において、地域のスポーツ活動の拠点である地域スポーツハブの取り組みが始まっており、子どもたちのニーズに応じたスポーツサークルや高齢者の健康増進につながるスポーツ教室が開催されるなど、幅広い年代の方々にスポーツ活動の機会を提供する取り組みが広がってきております。
 今後は、Webサイトの開設など、スポーツ関連情報の発信を強化し、スポーツを「知る」、「始める」機会の拡充に一層努めてまいります。
 二つ目の柱である「競技力の向上」については、現在、12の競技団体で全高知チームを立ち上げ、特別強化コーチによる指導や県外遠征の充実など、計画的かつ効果的な強化を進めております。
 また、4月に開設した高知県スポーツ科学センターでは、すでに7種目の全高知チームを対象に体力測定結果に基づくトレーニング指導を行うなど、スポーツ医科学面からのサポートも行っているところです。
 さらに、競技力の全体的な底上げのためには、優れた指導者によるジュニア期からの系統的かつ計画的な育成、強化が重要であることから、民間クラブチームなどの指導者を対象に、指導力向上などの研修を実施するとともに、競技団体などにも協力を求め、県内の指導者のリスト化や、学校の部活動とのマッチングなどにも取り組んでいるところです。
 三つ目の柱である「スポーツを通じた活力ある県づくり」については、本年2月からスタートした「自然&体験キャンペーン」と連動して、自然環境を生かしたスポーツツーリズムを推進するなどしております。このうち、サイクリングについては、より安全で魅力のあるコースづくりを目指して、全県的にサイクリング環境の磨き上げを図ってまいりたいと考えております。まずは香南市のヤ・シィパーク周辺のサイクリングコースの整備を行いたいと考えており、今議会に関連する補正予算案を提出しております。
 これら3つの柱に横断的に関わる施策である「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会などを契機としたスポーツ振興」についても、今後、取り組みを加速することとしております。今月1日には、「東京2020オリンピック聖火リレー」のルートが公表されたところであり、また、ラグビーワールドカップ2019に出場するトンガ王国をはじめ、オリンピック・パラリンピックに向けた各国の事前キャンプの受け入れ準備も進めております。
 今後とも、市町村と連携して、これらの大会に向けた県内の機運醸成を図るとともに、この機会に高知の魅力を全世界に向けて発信し、大会終了後もレガシーとして各国との国際交流や経済交流などが引き継がれていくこととなるよう取り組んでまいります。

 

9 行政改革の推進など

(1)行政分野におけるデジタル技術の活用の推進
 「高知版Society5.0」の実現に向け、県としても、あらゆる行政サービスのデジタル化に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 このため、昨日、庁内に「高知県行政サービスデジタル化推進会議」を立ち上げ、全庁的な取り組みを開始したところであり、本年度中に推進計画をとりまとめることとしております。
 具体的には、行政事務の効率化を図るため、AIやRPAなど新たな技術の活用を進めるとともに、県民サービスの向上を目指して、まず、民間における対行政コストを縮減するために行政手続きのオンライン化を進めてまいります。加えて、スマートフォン向けアプリによるプッシュ型通知やSNSの活用など、県庁と県民の皆様との双方向の情報アクセスの向上を進めてまいります。あわせて、その効果を最大限に発揮するため、これらの各種システムの連携、統合を図ってまいります。
 さらには、県の持つデータなどのオープン化を進めることにより、民間部門における新たな研究やサービスの創出などにもつなげてまいりたいと考えており、今後、プライバシー保護など、個人情報と行政の関わりのあり方などにも留意しながら、検討を進めてまいりたいと考えております。
 こうした取り組みを進めていくことにより、本県社会全体のデジタル化を促すとともに、産業振興計画における取り組みとも連動させ、県内のデジタル産業の振興にもつなげてまいりたいと考えております。

(2)障害者雇用の推進
 障害者雇用に関しましては、障害のある方の活躍の場や機会を拡充するとともに、昨年国が示した厳格な基準の下でも、早期に法定雇用率を達成するよう取り組みを進めているところです。
 知事部局においては、本年度、障害種別を要件としない追加募集による2名を含め、正職員4名を新たに採用いたしました。また、非常勤職員につきましても、障害のある方を雇用する所属を増やすとともに、定型的な業務を集約して行うワークステーションを設置し、知的障害や精神障害のある方も含め23名を雇用いたしました。
 こうした取り組みにより、既に、昨年度末時点において法定雇用率の達成に必要と考えていた人数を上回って職員を雇用できたところです。本年度の障害者雇用率については、現在、算定作業を行っているところであり、結果がまとまり次第、お示しさせていただきたいと考えております。
 また、先月24日には、所属長をはじめとする職員を対象に、障害の特性に応じた指導や接し方などに関する実践的な研修を行ったところであります。今後とも、国や関係機関とも連携しつつ、障害のある職員が働きやすい環境づくりに努めてまいります。

 

10 新たな管理型産業廃棄物最終処分場の整備
 県が新たな施設整備に向けて取り組んでおります管理型産業廃棄物最終処分場は、県内事業者の経済活動を下支えする大変重要な施設であり、仮に、現在のエコサイクルセンターの埋立てが終了する時点までに後継となる施設が完成していなければ、県経済、ひいては県民生活に多大な支障を来すことが懸念されております。
 このため、現施設の埋立てが終了する時期を見据え、リサイクルの推進などにより施設の延命化に取り組むとともに、新たな施設整備に向けて長年検討を進めてきたところです。
 現段階の予測によると、現在のような廃棄物の搬入状況が続けば、3年10カ月後の令和5年3月末にも埋立てが終了する見通しとなっており、一方で、新たな施設の建設には最低でも4年程度を要することから、新たな施設の完成時期は、現施設の埋立てが終了する見通しの時期を既に越えてしまっている状況にあります。
 こうした中にあっても、県としましては、住民の皆様のご理解を第一に考え、これまで、昨年12月、本年2月、5月と3巡にわたり、住民の皆様に対して丁寧なご説明を行うための取り組みを重ねてまいりました。
 まず、昨年2月に選定された3カ所の最終候補地について、現地調査の結果などから絞り込みを行い、その結果、佐川町加茂において進入道路を新設する案が最も有力ではないか、と昨年の12月定例会において表明させていただきました。その後、議員の皆様から絞り込みの時期や考え方について一定のご理解を示していただきましたことから、閉会後、佐川町に施設整備の受け入れについて申し入れを行いますとともに、昨年末には、加茂地区の皆様に絞り込みの考え方などを速やかにお伝えするために説明会を開催させていただきました。
 また、本年2月には、候補地選定の過程や施設の安全性などについて改めて整理した資料を加茂地区の各戸にお配りさせていただいた上で、住民の皆様との話し合いの場を設けるとともに、個別にお話をお伺いする場を開かせていただきました。あわせて、加茂地区以外の4地区においても説明会を開催させていただきましたほか、エコサイクルセンターの見学会や最終候補地の現地見学会などの取り組みも重ねてまいりました。
 加えて、先月には、住民の皆様のご不安やご心配の声にさらに丁寧にお答えさせていただくため、3巡目の取り組みとして加茂地区の皆様との話し合いの場を設けるとともに、再度、エコサイクルセンターの見学会や最終候補地の現地見学会、個別にお話をお伺いする場なども設けさせていただいたところです。
 こうした一連の取り組みにおいては、住民の皆様のご理解が最優先であると考え、誠意を持って対話を重ね、できる限り丁寧な説明を行うよう努めてまいりました。
 その結果、先月の話し合いの場におきましては、2月に比べ、施設の安全性などに対するご不安の声は少なくなりました。また、その場でいただいたご心配の声に対しても、県としては十分にお答えをさせていただいたものと考えております。さらに、その後の個別にお話をお伺いする場においても、反対のご意向を示された方はごくわずかにとどまったところです。
 このため、県としましては、現時点において、住民の皆様が抱いてこられた様々なご不安やご心配の声に対する県の説明に対して、一定のご理解が得られつつあるのではないかと受け止めさせていただいております。
 他方で、引き続き河川の増水や地下の空洞の有無などに関するご不安の声も多く残っていることは重く受け止めております。これらへの対処策を詳細に検討し、住民の皆様のご不安をしっかりと解消していくためには、ボーリング調査などの詳細な調査や、建設予定地の個別の地形の状況に対応した設計など相応の予算を伴う対応が必要となります。
 以上のように、現施設の埋立てが終了する時期が迫ってきていること、施設の安全性について一定のご理解が得られつつあること、さらには残るご不安を解消するためにも建設予定地を定めて詳細な検討を行う必要があることの3点に鑑み、佐川町加茂を新たな管理型産業廃棄物最終処分場の建設予定地として決定させていただき、先月31日、私から、佐川町及び佐川町議会に対しまして、施設整備の受け入れについて、正式に申し入れを行わせていただきました。
 今月7日に開会した佐川町議会では、様々な視点から真摯にご議論をいただき、一昨日開かれた全員協議会においては、賛成多数で新たな施設を受け入れる方針を決定されたとお伺いしております。
 今後、佐川町においては、加茂地区の住民の皆様に対する説明会を今月16日に開催し、施設の受け入れの可否などについて説明をされる予定であるとお聞きをしております。
 県としましては、今後、仮に有り難くも、町から受け入れを承諾する旨の回答をいただけましたならば、施設整備に向けて、測量調査や地質調査、基本設計などに着手してまいりたいと考えております。これらの調査の結果は住民の皆様にも節目節目に明らかにするとともに、仮にも、同調査の結果、施設整備にとって致命的な事項が明らかになった場合には、同地区における整備を中止することも想定しております。
 あわせて、加茂地区の皆様の施設整備に伴うご不安を解消するための取り組みとして、国道33号の交通安全対策とともに、長竹川の増水対策や建設予定地の周辺地域における上水道の整備への支援といった周辺対策を、速やかに進めていく必要があると考えております。
 このため、仮にも、町から受け入れを承諾いただいた場合には、速やかに、以上の施設整備や周辺対策に関連する補正予算案を県議会に提出させていただきたいと考えているところです。
 加えて、住民の皆様のご意見を反映した地域振興策についても、並行的に検討を進めていく必要があるものと考えており、県と佐川町により確認書を交わした上で、両者による協議の場を設置することを想定いたしております。
 引き続き、新たな管理型産業廃棄物最終処分場の整備については、その都度、進捗状況を県議会にご報告させていただき、議員の皆様方のご意見をお伺いするとともに、佐川町、佐川町議会、加茂地区の皆様にご理解とご協力を賜りながら、丁寧に取り組んでまいる所存であります。

 

11 議案
 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
 まず予算案は、令和元年度高知県一般会計補正予算の1件です。
 一般会計補正予算は、先ほど申し上げました経済の活性化などの経費として、4億4千万円余りの歳入歳出予算の補正などを計上しております。
 条例議案は、高知県公文書等の管理に関する条例議案など9件です。
 その他の議案は、県有財産の出資に関する議案など4件です。
 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。  

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