令和4年2月22日 令和4年2月県議会での知事提案説明

公開日 2022年02月22日

令和4年2月22日 令和4年2月県議会での知事提案説明

 
 
 

本日、議員の皆さまのご出席をいただき、令和4年2月県議会定例会が開かれますことに厚くお礼申し上げます。

ただ今提案いたしました議案の説明に先立ち、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆さま並びに県民の皆さまのご理解とご協力をお願いしたいと考えております。

 知事就任後間もなく始まった新型コロナウイルス感染症との戦いは、幾度となく感染拡大と収束を繰り返しながら、2年が経過した今なお続いております。感染症の克服にはまだ時間を要するものと考えており、今後も感染拡大防止をしっかりと図りながら、できる限り社会経済活動との両立が維持できるよう全力で取り組みます。
一方、コロナ禍という逆風の中にあっても県勢浮揚へ向けた歩みを止めてはなりません。来る令和4年度は、産業振興計画や日本一の健康長寿県構想などが計画期間の後半に入ります。これまでの取り組みを土台として、今後の成長の原動力となる「デジタル化」、「グリーン化」、「グローバル化」の視点から5つの基本政策と3つの横断的な政策をさらに進化させます。
あわせて、関西戦略や中山間対策では5年後、10年後を見据えた抜本強化を図り、次なる時代の扉を開く節目の1年にしたいと考えております。
県勢浮揚に向けた取り組みの1つ目のポイントは、「デジタル化」、「グリーン化」、「グローバル化」への対応であります。
このうち「デジタル化」では、情報通信技術の発達により、距離や移動時間など本県が抱える物理的な制約がハンディでなくなる時代が到来しつつあります。こうした時代の変化を捉え、生活、産業、行政という3つの切り口であらゆる分野のデジタル化を進めてまいります。
具体的には、都市部の企業が行うテレワークなどを積極的に呼び込むほか、遠隔医療や遠隔教育といった新しい技術を導入し、中山間地域の暮らしや医療、教育を大幅にレベルアップさせたいと考えております。また、本県が誇る施設園芸農業とデジタル技術の融合などをさらに進め、あらゆる産業分野で生産性や付加価値を飛躍的に高めるとともに、行政のオンライン化を加速させ、県民生活の利便性をより一層向上させます。
「グリーン化」では、脱炭素化による持続可能な社会の実現を目指した動きが世界の潮流となっております。この世界的な大きな流れを県勢浮揚の原動力とするべく、本県の豊かな自然を生かして、県産木材の利用拡大や再生可能エネルギーの導入を進めます。あわせて、製紙業の技術などを生かしたプラスチック代替素材の活用やバイオマス資源によるグリーンLPガスの開発など、本県独自の技術や資源をベースとしたプロジェクトにも果敢に挑戦し、新たな産業の芽を創出します。加えて、自然を切り口とした体験型観光や移住促進の取り組みをさらに加速します。
「グローバル化」については、我が国が中長期的に人口減少に向かう中、県経済をさらに拡大させていくためには、海外市場へこれまで以上に積極的に打って出る必要があります。このため、近年、増加傾向にあるユズや土佐酒、養殖クロマグロといった県産品のさらなる輸出拡大に取り組みます。加えて、各産業分野における人材確保の観点から外国人材の受入対策を強化するほか、コロナ禍の収束も見極めながら、インバウンド観光客の誘致に向けた取り組みを展開します。
 2つ目のポイントは、関西との経済連携の強化であります。今後、関西圏では令和7年の大阪・関西万博などに向けた動きが本格化してまいります。このチャンスを県経済の起爆剤とするべく、「関西・高知経済連携強化戦略」に基づく取り組みを大きく前に進め、コロナ禍からの反転攻勢に打って出たいと考えております。このため、来年度は組織体制を大幅に強化するとともに、今月立ち上げた「関西圏外商強化対策協議会」を中心に、さらなる外商強化策の検討を進めます。
 3つ目のポイントは、中山間対策の抜本強化であります。本年度は10年ぶりに小規模集落を対象とした実態調査を実施しました。私自身、日常生活の不便さや高齢化の進行による深刻な担い手不足など、集落の厳しい現状を確認する一方、地域によってニーズや課題は様々であり、改めて中山間地域の生活を守り、産業をつくるためのきめ細かな取り組みの重要性を強く認識したところです。中山間地域の振興は本県の発展に不可欠です。皆さまの声をしっかりと受け止め、全庁を挙げて中山間対策をさらに充実、強化し、活力のある中山間地域を取り戻すことができるよう全力で取り組みます。
引き続き、時代の変化を先取りし、絶えず施策を進化させながら、県勢浮揚を目指して、県民の皆さまと共に一歩ずつ着実に前へ進んでまいります。
 
次に、新型コロナウイルス感染症への対応についてご説明申し上げます。
年明け以降、新たな変異株、オミクロン株による全国的な感染拡大の第6波が本県にも及び、今月に入ってからはほぼ連日200人を超える新規の感染者が確認され、病床占有率も高水準で推移するなど医療提供体制の逼迫度が高まっております。こうした中、一人でも感染者を減らし、感染の拡大を抑えるべく、12日から国のまん延防止等重点措置の適用を受け、飲食店への営業時間短縮の要請などあらゆる対策を講じているところです。
現在、新規感染者数はピークに達する兆しが見えつつある一方、医療機関や高齢者施設などでのクラスターの発生を背景に、多数の高齢者の感染が続いており、今後、重症の患者数が遅れて増えていくことが懸念されます。こうしたリスクの高い方々を何としても感染から守り、救急なども含めた医療提供体制を維持していくためには、まさに今が正念場だと考えております。県民一丸となって取り組んでいくことができるよう、私自身が先頭に立って県民の皆さまにしっかりと情報発信を行いながら、感染拡大防止対策やワクチン接種などを全力で進めます。
 
 
感染力の非常に強いオミクロン株を中心とする今回の第6波では、家庭内に加え、医療機関や高齢者施設、さらには学校、保育所など日常のあらゆる場面で感染の広がりが見られます。このため、各施設にオミクロン株の特性を踏まえた感染防止対策を要請するとともに、高齢者施設や障害者施設の無症状の従事者を対象とした集中的検査などを実施し、クラスターの発生防止を図っているところです。
また、治療を必要とする中等症以上の方が迅速かつ確実に入院できるよう、入院病床を最大303床確保するほか、軽症者向けの宿泊療養施設についても、今月、幡多地域で新たな施設を開設し、計418室を確保しております。加えて、容体は安定したものの、介護を必要とする高齢の患者に対応するため、臨時医療施設として予定していた「やまもも」に介護人材を配置し、昨日、療養施設として開設しました。
一方、感染者の大多数を占める無症状や軽症の方については、第5波と同様に自宅療養をお願いすることとし、健康観察と相談、診療対応が24時間実施できる体制を整えております。
こうした一連の取り組みにより、これまでのところ感染者の症状に応じた適切な療養提供体制が何とか維持できているものと考えております。引き続き、入院治療が必要な患者がさらに増加する事態も想定し、医療提供体制の確保に努めます。
 
(ワクチン接種の推進)
重症化しやすい高齢の方などを感染から守るためにも3回目のワクチン接種の加速が必要です。今月20日時点の接種率は12歳以上の人口の17.6パーセントにとどまっており、市町村からは前回と異なるワクチンを接種するケースで予約が埋まっていないといった声もお聞きしております。
このため、県としてもこうした交互接種の安全性、有効性に関する情報についてあらゆる機会を通じて発信します。また、今月19日には、高知市と共同で高知新港に再び大規模接種会場を設置し、県全域を対象に接種を開始しました。今後、教職員や保育士などを対象とした職域接種についても同会場で順次実施し、接種の加速化を後押しします。
加えて、国に対しては全国知事会のワクチンチームリーダーとして引き続き関係閣僚に現場の課題を訴え、解決に向けた対応を求めてまいります。
来月から開始される5歳から11歳の子どもへのワクチン接種の対応も含め、国や市町村と緊密に連携しながら、接種が円滑に進むよう取り組んでまいります。
 
 第5波による感染が収束した昨秋以降、徐々に回復しつつあった県経済は、年明けからの急激な感染拡大に伴い、飲食店や宿泊施設においてキャンセルが相次ぎ、取引先や関連事業者の売上も減少するなど、再び大きな影響を受けております。
 このため、飲食店には、「高知家あんしん会食推進の店」の応援金を追加支給するほか、まん延防止等重点措置の適用に伴う営業時間短縮要請に協力いただいた店舗への協力金を支給します。また、今般の感染拡大の影響を直接的、間接的に受けた事業者に対しては、国の支援に加えて県独自の給付金を支給し、事業の継続を後押しします。あわせて、雇用維持の観点から事業規模に応じた支援を行います。
今後とも県民や事業者への影響をしっかりと注視し、必要な対策を迅速かつ的確に講じます。
 
次に、令和4年度当初予算案及び令和3年度2月補正予算案についてご説明申し上げます。
今回の予算編成にあたっては、新型コロナウイルス感染症への対応を着実に進めるとともに、ウィズコロナ、アフターコロナ時代の成長の原動力となる「デジタル化」、「グリーン化」、「グローバル化」の視点から、施策を一層強化するべく知恵を絞りました。加えて、感染症の影響を受けた地域経済を下支えするために必要な投資的経費を確保し、防災・減災対策などのインフラ整備を加速することとしました。
この結果、一般会計当初予算案は対前年度比186億円、4パーセント増の総額4,821億円となっております。また、投資的経費は、前年度を29億円上回る938億円を確保したところです。
このように、県勢浮揚に必要な施策を着実に実行する一方、今後の財政運営の持続可能性を確保するため、歳入歳出両面で努力を重ねました。
まず、歳入面では、臨時財政対策債を含む実質的な地方交付税が減少するものの、県税や地方譲与税の増収で生じた財源の活用などにより、必要な一般財源総額を確保したところです。加えて、地方交付税措置率の高い地方債をはじめ、国の有利な財源を最大限活用し、一般財源の負担軽減を図っております。また、歳出面においては、新型コロナウイルス感染症へ臨機応変に対応しつつも、県勢浮揚に向けた施策を着実に実行するため、事業のスクラップアンドビルドの徹底を図り、マンパワーと財源の確保に努めました。
こうした一連の取り組みの結果、来年度末時点において180億円の財政調整的基金を確保できる見込みとなっております。
また、臨時財政対策債を除く県債残高については、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を活用したインフラ整備などにより一時的に増加するものの、令和7年度をピークに逓減する見込みであり、今後必要な投資事業を実施しても安定的に推移する見通しを立てることができております。
このように、今回の予算編成においては、県勢浮揚と県財政の持続可能性の両立を図ることができたものと考えております。
しかしながら、多額の財源不足が生じていることに加え、感染症の影響が長期化していることから、当面は予断を許さない財政状況が続くことも想定しなければなりません。このため、今後も国に対し、地方交付税をはじめとする一般財源の確保について積極的に政策提言を行うとともに、歳入歳出両面から不断の見直しを行い、安定的な財政運営に努めてまいります。
 
 次に、新年度における5つの基本政策と3つの横断的な政策の取り組みについてご説明申し上げます。まず初めに、経済の活性化についてであります。
 
(第4期産業振興計画のバージョンアップ)
新型コロナウイルス感染症による影響の長期化に伴い、これまで増加傾向にあった各分野の生産額が減少に転じるなど、県経済は大きな打撃を受けております。こうした中、県経済を速やかに回復させ、再び成長軌道に乗せていくためには、社会の変化に合わせて絶えず施策を進化させていかなければなりません。
第4期産業振興計画の折り返しを迎える来年度は、こうした考えの下、「産学官民連携によるイノベーションの創出」や「関西圏との経済連携の充実強化」など、5つの重点ポイントにより各施策のバージョンアップを図り、新たな取り組みにも果敢に挑戦します。
 
1つ目のポイントは「産学官民連携によるイノベーションの創出」であります。新たな時代の成長の原動力となるデジタル化、グリーン化といった視点から、各分野の取り組みをもう一段強化することに加え、県内外から多くの人材や知恵、資本などを呼び込むことにより、産学官民が連携した新たなイノベーションを創出します。
 
ア デジタル化の促進
このうちデジタル化に関しては、これまでの取り組みを通じて各分野でデジタル技術の導入による生産性の向上などが着実に進んでおります。来年度はこうした土台の上に立って、さらなる発展を目指します。
 
(一次産業分野)
 農業分野では、IoPクラウドを核としてデータ駆動型農業を実践する農家数の拡大を図るとともに、関連する産業群の創出を目指します。具体的には、JAと連携し、データ分析に基づく営農指導体制をさらに充実させ、農家への個別指導を強化します。また、来年度中のIoPクラウドの本格運用に向けて、品目別、地域別の情報を充実させるなど機能拡充に取り組みます。さらには、産学官民の連携体制の下、クラウド内に集積された環境、気象、出荷データを活用した遠隔制御システムなどの開発を進めます。
 林業分野では、輸入材の減少に伴う国産材の需要拡大などに機動的に対応できるよう、木材生産や流通の効率化、最適化を図ります。具体的には、地形や森林資源のデータを蓄積した森林クラウドの運用を開始し、民間事業者にも活用していただくことで、施業の効率化や省力化につなげます。さらに、これまで手作業で計測していた伐採範囲や大きさ、本数といった原木の生産情報を自動で取得できるよう、機器やシステムの導入を促進します。加えて、こうして得られた生産情報と製材事業者が有する市場の需要情報を共有できるシステムを構築することにより、サプライチェーンマネジメントを強化し、県産材のさらなる販売拡大につなげます。
 水産業分野では、高知マリンイノベーションの取り組みをさらに広げます。具体的には、メジカの漁場や赤潮の発生に関する予測情報、収集した水温などのデータを一元的に発信するシステムを構築し、漁業者や研究者に広く活用していただく取り組みを開始します。加えて、より収益性の高い漁業経営の実現に向けて、出漁前に、漁獲高や燃料費などのデータから利益を見える化することにより、出漁の判断や漁場の選択などをサポートする操業効率化支援ツールの開発に着手します。
 
(商工業分野)
商工業分野では、デジタル技術を活用して生産性や付加価値の向上に取り組む企業への支援や企業のデジタル人材の育成をさらに拡大します。
具体的には、産業振興センターに設置している相談窓口の体制を拡充し、伴走支援を行う企業の目標数を15社から45社に引き上げます。さらに、モデル事業として取り組んできた企業の事例から得られた効果やノウハウをセミナーや各種広報媒体、商工会議所などの支援機関を通じて周知することにより、県内企業への横展開とデジタル化の機運醸成を図ります。
また、高知デジタルカレッジにおいて、企業のデジタル化担当者を対象とした新たな講座を開設します。加えて、商工会連合会にノウハウを有する専門人材を配置し、商工会議所や商工会の経営支援活動と一体的に事業者のデジタル化の支援に取り組むことにより、OJTを通じた経営指導員の支援力の向上を図りながら小規模事業者のデジタル化を促進します。
 
(行政分野)
 こうした各産業分野の取り組みに加え、行政分野においても、県民生活の利便性の向上と行政事務の効率化に向けて、デジタル化の取り組みをさらに加速します。具体的には、新たに電子契約システムを導入するほか、電子申請や手数料の電子納付の対象業務を拡大するなど、行政手続のさらなるオンライン化を進めます。
また、市町村においては、令和7年度末までに情報システムの標準化、共通化に対応することが求められております。このため、市町村に助言を行うアドバイザーを配置するなど支援体制を強化し、取り組みを後押しします。
 
イ グリーン化の促進
 グリーン化に関しては、本年度、有識者や関係団体など、多くの方々のご意見をお伺いしながら、脱炭素社会の実現に向けて、本県の強みを生かした具体的なアクションプランを練り上げてまいりました。来年度は、このプランに基づき、再生可能エネルギーの導入や森林吸収源対策、グリーン化関連産業の育成など、幅広い分野で取り組みを展開します。
具体的には、本県の豊富な自然資源を生かした再生可能エネルギーの拡大に向け、太陽光発電設備の導入支援の強化や地域新電力の設立支援などに取り組みます。また、森林吸収源対策として適切な森林整備や再造林の促進に加え、建築物の木造化、木質化の推進による都市の脱炭素化を図ります。
今後の産業の芽となるグリーン化関連産業の育成では、事業者の省エネルギー化に寄与する機械装置やプラスチック代替素材など、環境負荷の低減に資する製品、技術の開発を支援します。さらに、バイオマス資源を原料としたグリーンLPガスの生産技術確立プロジェクトを産学官で立ち上げ、本県の特性を生かした新たなイノベーションの創出に挑戦します。
また、本県の脱炭素化を実現するためには、市町村や事業者、県民の皆さまのご理解とご協力を得ながら、オール高知で取り組みを展開していく必要があります。このため、環境経営などに関する事業者への普及啓発を関係団体と連携して進めます。あわせて、脱炭素化に先行的に取り組む地域や市町村への支援を通じて生まれる好事例を県内各地に横展開することにより、脱炭素化の動きを県全体に波及させます。
 
バージョンアップの2つ目のポイントである「関西圏との経済連携の充実強化」では、ウィズコロナ、アフターコロナを見据え、関西・高知経済連携強化戦略に基づく各プロジェクトの取り組みを強化します。
まず、観光推進プロジェクトについては、関西からの周遊モデルルートの旅行商品化を図るなど、将来のインバウンド観光の回復を見据えた取り組みを進めます。また、本県の強みである自然・体験型観光の基盤を生かし、SDGsにも寄与する旅行商品づくりを進めるほか、県内のスポーツツーリズムに関する情報を一元化したサイトを立ち上げ、効果的なプロモーションを展開することで本県への誘客を図ります。
食品等外商拡大プロジェクトについては、これまで培ってきた農産物や水産物の卸売市場関係者との関係を生かし、量販店や飲食店での販売促進活動を強化します。あわせて、食品関係のバイヤーが多く来場する大規模展示会への新規出展や、県産木材の商談拠点の大阪市への設置などにより、県産品のさらなる外商拡大につなげます。
加えて、関西圏における外商の取り組みをもう一段レベルアップさせるため、県内事業者と有識者からなる「関西圏外商強化対策協議会」を今月新たに立ち上げました。今後、この協議会や関西・高知経済連携強化アドバイザー会議を通じてご意見、ご助言をいただきながら、外商拠点設置の有効性を含め、効果的な外商強化策の調査、検討を進めます。
万博・IR連携プロジェクトについては、大阪・関西万博といった大規模プロジェクトの開催準備が来年度から本格化することが見込まれます。このため、まずは関連施設での県産木材や県内企業の技術の活用に向けた営業活動などを機を逸することなく行います。
こうした施策の強化に加え、産業振興推進部内に関西戦略推進監及び関西戦略室を設置するなど庁内の組織体制を大幅に強化し、関西戦略の取り組みをさらに加速させます。
 
3つ目のポイントは、「輸出を見据えた地産外商のさらなる推進」であります。今後は、人口減少に伴う将来的な国内マーケットの縮小が避けられません。このため、海外への輸出を見据え、地産と外商の両面から取り組みを強化します。
まず地産の強化では、食品製造事業者の生産性や衛生管理の向上を図るため、デジタル技術を活用した機器やシステムの導入、HACCPへの対応に向けた施設改修を支援します。あわせて、取引先が求める衛生管理の手法を学ぶため、新たにオンラインでも研修を受講できるようにするなど、対応を拡充します。加えて、今後のさらなる輸出拡大に向け、輸出先が求めるロットや品質などに対応するための設備投資について支援を強化します。
外商の強化では、引き続き、アメリカ、中国、ヨーロッパといった重点市場に配置した食品海外ビジネスサポーターと連携し、食品事業者の外商活動を支援します。
加えて、ものづくり企業の海外挑戦を後押しするため、新たにフランスの国際見本市への出展やインドへの経済ミッション団の派遣などを行うほか、海外展開に取り組む企業の掘り起こしを強化します。さらに、本県で就労した外国人技能実習生などに各種研修を通じたスキルアップの機会を提供し、帰国後は海外展開に取り組む本県企業の展示会や現地法人で活躍いただける仕組みを構築します。
 
4つ目のポイントは、「新しいひとの流れを捉えた中山間地域の振興」であります。コロナ禍を契機としたテレワークの普及や地方暮らしへの関心の高まりを背景に、都会から地方へと向かう人や企業の流れを本県に呼び込むための施策を強化し、その効果を県内全域に広げることで中山間地域の振興につなげます。
具体的には、現在、大都市部から企業やテレワークを実践する方を高知市中心部に開設したシェアオフィス拠点施設に呼び込む取り組みを進めているところです。こうした企業や人の流れを県内各地に波及させていくことができるよう、市町村のシェアオフィス整備に対する支援を強化し、受け入れ態勢の充実を図ります。また、移住促進の取り組みにおいても、中山間地域への移住者を増やすべく、希望者のニーズに応じた多様な仕事の掘り起こしや情報発信を強化するほか、庁内に空き家対策の専門チームを設置し、住宅確保策を強化します。
 
5つ目のポイントは、「SDGsの広がりによる持続可能な地域社会づくり」であります。世界的なSDGsに対する関心の広がりを背景に、持続可能性に配慮した取り組みの重要性が高まっております。
こうした動きを捉え、本県においても脱炭素社会の実現に向けた施策を拡充するほか、観光分野では、地球環境や地域の社会文化などに配慮する「サステナブルツーリズム」を推進します。また、「こうちSDGs推進企業登録制度」の活用と併せて、推進アドバイザーの派遣による支援やセミナーの開催などの情報発信を行い、県内事業者のSDGs達成を目指した取り組みを一層拡大させます。
 
こうした5つの重点ポイントによる各施策の強化のほか、10年目を迎える高知家プロモーションでは、これまで積み上げてきた財産を大いに活用しながら、関西圏をはじめ県内外において集大成となるプロモーションを展開し、本県の露出拡大と高知家の認知度向上につなげます。
 
観光分野では、年明け以降の急激な感染拡大を受け、現在、観光リカバリーキャンペーンなどが再び一時休止を余儀なくされています。本県の観光需要の回復に向けて即効性の高いこうした事業については、感染状況や国の動向などを注視しながら適切なタイミングでの再開を目指します。
加えて、コロナ禍の収束も見据えて本県観光の抜本的な魅力向上を図るため、デジタル化、グリーン化といった時代の潮流を捉え、「つくる」、「売る」、「もてなす」という3つの施策群の取り組みを一段と強化します。
まず「つくる」取り組みでは、観光客の移動経路や滞在時間といったデータを分析し、エリアごとにターゲットを意識したイベントの展開やモデルルートの造成を行うなど、戦略的な観光地域づくりを進めます。
「売る」取り組みでは、先月スタートさせた「食」をテーマとした観光キャンペーンにおいて、それぞれの季節で誘客効果の高い素材や、その食に携わる人など、本県ならではの貴重な資源にスポットを当てたプロモーションを展開します。さらに、旅行を通じて地域の自然や暮らし、文化などへの理解を深める「サステナブルツーリズム」のニーズが国内外で高まりつつあります。このため、日曜市をはじめとする街路市や路面電車など、今後強みとなり得る観光素材を生かしたプロモーションや商品造成を進めます。
「もてなす」取り組みでは、観光客が宿泊施設での滞在時間の満足度を重視する傾向が高まっていることを踏まえ、専門家による食事や接客などへのアドバイスを行い、宿泊施設の魅力向上を図ります。
 また、本県出身の牧野富太郎博士をモデルとしたNHK連続テレビ小説が来年春から放送されることが決定しました。大変うれしいニュースであり、本県の魅力を全国に伝える絶好の機会であると同時に、観光活性化の起爆剤となることが期待されます。本県にお越しいただいた観光客の皆さまに牧野博士ゆかりの地に訪れていただくことはもちろん、本県の素晴らしい自然、食、歴史も存分に楽しんでいただけるよう官民が一体となって取り組み、このチャンスを最大限に生かしてまいります。
 
 次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
第4期日本一の健康長寿県構想では、「県民の誰もが住み慣れた地域で、健やかで心豊かに安心して暮らし続けることのできる高知県」の実現を目指し、3つの柱からなる各施策に数値目標を定め、取り組みを進めております。
今般、これまでの成果や課題を検証した上で、デジタル化などの視点から各施策の見直しと強化を図り、同構想を改定することとしました。
 
1つ目の柱の「健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進」については、重症化のリスク要因を持つ人、いわゆるハイリスク層に対するアプローチを強化するとともに、県民全体の健康増進を図るポピュレーションアプローチに引き続き取り組みます。
ハイリスク層に対するアプローチでは、昨年度から、3つの地域で糖尿病性腎症患者に対し、透析予防強化プログラムに基づく保健指導などの介入を行ってきたところです。その結果、修了者の約5割で腎機能の維持改善が見られるなど一定の効果が表れており、本年度実施する非介入者との比較による効果検証も踏まえ、新たな地域に取り組みを広げます。加えて、より初期の段階における発症及び重症化予防を進めるため、新たに糖尿病予備群や発症間もない患者を対象に、ICT機器を活用した血糖状態のモニタリングと遠隔での保健指導に取り組みます。
 
 2つ目の柱の「地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立
とネットワークの強化」では、地理的な制約や制度の縦割りといった壁を克服し、サービスが切れ目なくつながるよう体制の強化を目指します。このため、デジタル技術を活用した在宅療養体制の充実や、地域共生社会の実現に向けた包括的な支援体制の整備などを進めます。
 
(在宅療養体制の充実)
 このうち在宅療養体制の充実に関しては、地域のあったかふれあいセンターなどと薬局をオンラインで結び、薬剤師による服薬支援に取り組むほか、モニターや医療機器を搭載した車両を活用してオンライン診療を行う医療機関を支援します。これにより、中山間地域にお住まいの方の通院時間や往診に係る医師の移動時間などの負担軽減を図ります。
さらに、医療病床や介護施設が少ない東部地域において、訪問看護支援センターや看護師養成所などの機能を持った多機能支援施設の整備を進めることとし、令和6年度の開設を目指して実施設計に着手します。
 
(包括的な支援体制の整備など)
近年、いわゆる「ひきこもり」や「ヤングケアラー」など、障害や介護、子育てといった行政分野ごとに独立した支援では、十分に対応できない横断的な問題が増加しています。さらに、地域から孤立し、必要な支援が十分に届かずに問題が深刻化するケースも多く見られます。
こうした課題の解決には、学校や地域の連携による早期発見の取り組み、専門分野を越えた多機関の協働による支援、さらには孤立を防ぐ居場所づくりなどを一体的に実施する包括的な支援体制の整備が必要です。また、このような支援体制は、地域共生社会の実現を目指した社会福祉法の改正により、住民に身近な市町村において構築を図ることが求められております。
県としましては、全市町村における支援体制の構築を目指し、アドバイザーの派遣を行うほか、体制整備を推進する国の新たな事業の活用を促すなど、市町村の取り組みをしっかりとサポートします。あわせて、特に対策が急がれるヤングケアラーについては、県内の中高生を対象とした実態調査を実施することに加え、市町村に対して助言を行うコーディネーターを配置するなど、支援体制を強化します。
 
(医療的ケア児への支援)
医療的ケア児とその家族への支援につきましては、本年度、相談支援の拠点となる医療的ケア児支援センターを新たに設置したところです。来年度はセンターに新たに看護師を配置して、相談支援体制の充実強化を図るほか、医療的ケア児に対応できる看護師の育成などにも取り組みます。
 
3つ目の柱の「子どもたちを守り育てる環境づくり」については、妊娠期から子育て期までを切れ目なく総合的に支援する高知版ネウボラの取り組みを推進し、子どもに関わる各部門の連携強化と子育て支援のさらなる充実を図ります。
具体的には、子育て家庭の様々な相談に対応する「子ども家庭総合支援拠点」の設置を進めるとともに、妊娠、出産、子育てに関する多様な支援サービスを一体的に提供する体制の整備に取り組む市町村を支援します。また、市町村の児童福祉部門と学校のスクールソーシャルワーカーとの情報共有体制の構築を進め、個々の家庭に寄り添った切れ目のない支援を行います。加えて、県の出産・育児応援サイトのリニューアルを行い、母子保健や子育て支援の取り組みを動画を交えて紹介するなど、情報発信を強化します。
 
 次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
急激に変化する時代においても、子どもたちが知・徳・体の調和のとれた「生きる力」を身に付け、持続可能な社会の創り手となることができるよう、各施策を強化していく必要があります。
このため、質の高い教育の実現に向けた学校における組織的な取り組みの強化をはじめ、デジタル技術を活用した学習スタイルの充実、多様な子どもたちへの支援の充実、学校における働き方改革の加速化などの観点に立って、教育大綱を改訂したいと考えております。
 
昨年1月の中央教育審議会の答申を受けて、来年度から小学校高学年を対象に、特定の教科を専任の教員が受け持つ「教科担任制」が導入されます。本県においても、学校規模に応じて加配教員を配置するほか、中学校の教員が小学校も兼務して授業を行うなどの取り組みを進め、義務教育9年間を見通した教科指導体制を構築してまいります。
また、本年度から少人数学級編制を小学校6年生にまで拡充したことにより、小学校の全学年で35人以下の学級が実現し、よりきめ細かな指導が可能となりました。来年度は、中学校においても全学年で35人学級を実現し、生徒一人ひとりに応じた指導の充実につなげます。
高知市との連携による学力向上の取り組みについては、県から派遣した指導主事などによる学校支援を通じて、国語や算数・数学の学力に伸びが見られるようになりました。こうした成果を踏まえて、来年度は指導教科を社会科、理科にも拡充するなど、取り組みを一層強化します。
高等学校においては、タブレット端末などのデジタル機材を効果的に活用し、生徒一人ひとりの学力に応じた学習活動を実践するとともに、指導方法の改善などに向けた実践研究を行い、基礎学力の定着などにつなげます。
また、本年4月1日から成年年齢が満18歳に引き下げられることを踏まえ、主権者教育や消費者教育をさらに充実させます。
 
デジタル技術を活用した学習については、学校規模や地域間における教育機会の格差解消を図るため、教育センターを配信拠点とした遠隔授業などの取り組みを進めています。来年度は、複数校への同時配信も含め、対象校や授業時間数を拡充したいと考えております。さらに幡多地域などにおいては、各校の強みを生かした専門的な授業を他校へ配信するといった学校相互型の遠隔授業にも取り組むこととしております。こうした取り組みを通じて教育水準の向上を図るとともに、地元の自治体や経済団体と連携し、地域課題の解決にも資する探究的な学習を実践してまいります。
また、県内の多くの中学校では、特に美術や技術の授業において免許教科外の教員が指導を行わざるを得ない状況にあります。このため、授業の専門性を高められるよう、遠隔教育システムを活用し、免許を持った教員が授業に関わって免許教科外の教員を支援します。
 
発達障害などを有する子どもへのきめ細かな対応が求められる中、教職員の専門性の向上と早期から指導、支援を行う体制づくりが必要となっております。このため、拠点校における自閉症・情緒障害特別支援学級の授業づくりを強化し、地域の小中学校の教員が共に学び合う場を拡充するとともに、外部専門家と連携した支援に引き続き取り組みます。このほか、医療的ケア児の教育の充実に向け、市町村などと連携し、学校に配置している看護職員の専門性向上のための研修や巡回看護師配置などの取り組みを進めます。
また、知的障害特別支援学校の狭あい化解消に向けて、日高特別支援学校高知しんほんまち分校を4月に開校します。新たな分校は、基礎的な職業教育に取り組むことを特色としており、企業の協力を得ながら、生徒が卒業後の社会参加に向けて意欲的に学べるよう取り組みます。
 
(不登校への重層的な支援体制の強化)
不登校の子どもたちへの支援については、各学校に不登校担当の教員を配置するとともに、心の教育センターを土曜日、日曜日にも開所するなど相談支援体制の充実に努めてまいりました。しかしながら、本県の児童生徒における不登校の割合は全国と比較していまだ高く、新規の発生も増加傾向が続いております。加えて、今後はヤングケアラーなど新たな課題への対応も必要です。こうした状況を踏まえ、不登校対策の取り組みを一段と強化します。
具体的には、学校において、欠席が3日間続いた生徒への家庭訪問などの初期対応を徹底するとともに、コーディネーターの教員が常駐して個別支援を行う校内適応指導教室の設置校を拡充するなど、校内支援体制のさらなる強化を図ります。あわせて、県や市町村の児童福祉部門とスクールソーシャルワーカーとの連携による支援体制を強化します。
また、より低年齢の段階から不登校の未然防止を図るため、市町村単位で保幼小中の連携を強化し、就学前教育、学力向上などと合わせて総合的に推進する取り組みを支援します。
 
学校における働き方改革については、教員の負担軽減を図り、子どもたちと向き合う時間を確保するため、業務の効率化や外部人材の活用などを進めてまいりました。来年度は、これらの取り組みに加え、小学校における教科担任制の実施などにより学校組織体制の強化を図るほか、デジタル技術をさらに活用して業務の効率化を推進し、働き方改革を加速させます。
 
以上のような取り組みについて、私も参加する総合教育会議において進捗状況を確認し、必要に応じてさらに施策を強化するなど、引き続きPDCAサイクルをしっかりと回しながら、教育の振興を図ります。
 
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
第4期までの南海トラフ地震対策行動計画の取り組みにより、住宅の耐震化や津波避難空間の整備が大きく前進し、緊急輸送道路の地震対策や浦戸湾の地震津波対策などのハード整備も順調に進捗しております。また、最大クラスの地震で想定される避難者数21万7千人に対して、県全体で21万9千人分の避難所を確保したほか、発災時に県外からの支援を円滑に受け入れるための受援計画の策定が、県では40計画のうち37計画、市町村では14業務のうち12業務について完了する見込みです。さらに、「事前復興まちづくり計画策定指針」の取りまとめなど、市町村が発災後速やかに復興に着手し、住民の生活再建を図るための対策も進んでまいりました。
このように様々な対策を進めてきた結果、想定死者数は東日本大震災後に想定した約4万2千人から約8千8百人へと79パーセント減少する見込みとなりました。一方、津波からの避難意識の向上など、ソフト面を中心にいまだ多くの課題が残されており、死者数を限りなくゼロに近づけるためには、さらなる取り組みの充実、強化が必要です。
 
(第5期南海トラフ地震対策行動計画の取り組み)
来年度からの第5期計画では、アドバイザーの方々からの意見も踏まえながら、「命を守る」、「命をつなぐ」、「生活を立ち上げる」対策を強化し、想定死者数を令和6年度末に約4千3百人まで減少させることを目標に取り組みます。あわせて、数値目標を設定した上で定量的に評価を行うなど、進捗状況の可視化を通じて取り組みの成果を県民の皆さまに分かりやすくお伝えするとともに、PDCAサイクルを一層徹底します。
まず、「命を守る」対策では、想定死者数のさらなる減少に向けて、早期避難意識の向上や室内における安全対策の実施など、自助の取り組みが非常に重要です。このため、事業者団体や量販店を通じて啓発を行うなど、県民の皆さまへの働きかけを強化してきましたが、早期避難意識率は約73パーセント、家具や家電の固定率は約38パーセントにとどまっています。今後は、情報発信手段の多様化やデジタル技術の活用により、意識啓発に係る取り組みを一層充実、強化します。あわせて、引き続き住宅の耐震化を促進するとともに、要配慮者などの確実な避難に必要となる津波避難タワーの整備に向けてスピード感を持って取り組みます。
「命をつなぐ」対策については、県全体での避難所の確保に一定の目途が立ったものの、市町村別では高知市を含む7市4町で不足が生じております。このため、さらなる避難所の確保に取り組むとともに、周辺市町村への避難を可能とするよう広域避難の取り組みを進めます。また、受援態勢の強化では、残る計画を早期に策定した上で、訓練などによる計画の検証と見直しを進め、より実効性を高めます。
「生活を立ち上げる」対策については、「事前復興まちづくり計画策定指針」を踏まえ、個々の市町村がスムーズに計画を策定できるよう技術的、財政的支援を行います。あわせて、被災者の個別支援体制や庁内における復興業務手順の検討を進めるなど、早期の復旧や復興、生活再建に向けた取り組みを充実させます。
 
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
 地域の経済活動を支え、南海トラフ地震といった大規模災害に備える上で重要なインフラの整備については、国の5か年加速化対策などを最大限活用し、全力で取り組んでおります。
このうち、高知海岸の地震・津波対策では、平成24年3月の着手以降、国と県が連携してスピード感を持って整備を進めた結果、南国市久枝から土佐市新居までの区間約18キロメートルの堤防の耐震補強工事が完成し、県土を津波から第一線で守る海岸堤防の対策が大きく前進しました。引き続き、その他の区間についても着実に整備が進むよう取り組みます。
また、高規格道路の整備では、四国8の字ネットワークの残る未事業化区間である「宿毛~内海」間と「奈半利~安芸」間の早期事業化について、先月、関係市長と共に国に対して強く訴えてまいりました。他方、来年度には国道33号越知道路において新たなバイパス区間の開通が予定されており、異常気象時における通行規制区間の解消や、仁淀川流域への観光誘客など、様々な効果が期待されるところです。
今後も必要なインフラ整備が着実に進むよう、引き続き、関係市町村や他県とも連携し、国などに対して積極的に政策提言を行います。
 
(建設業活性化プランの見直し)
 建設業は地域のインフラの維持や防災力の確保、さらには雇用の受け皿といった面で重要な役割を果たしています。しかしながら近年、従事者の高齢化が進行し、次世代を担う若者の入職者が少ない状況が続くなど、人材の確保が課題となっています。加えて、時間外労働の上限規制といった働き方改革への対応や、生産性向上を図るためのデジタル技術の活用も不可欠です。
このため、本年度、人材確保策の強化や建設現場のデジタル化による生産性向上の推進を柱に、建設業活性化プランの見直しを行いました。新たなプランをもとに、県と建設業界が一体となって、建設業の魅力発信の強化、女性の活躍推進や外国人材の確保、デジタル技術の導入といった取り組みの一層の充実を図ります。
 
次に、中山間対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
本年度、10年ぶりに県内全域で集落実態調査を実施しました。これまでの取りまとめ結果では、人口の流出によって多くの集落において活力が奪われ、集落機能の低下や地域の産業の衰退を招くなど、中山間地域での暮らしがさらに厳しい状況に置かれている実態が改めて明らかとなりました。
一方、前回調査と同様に、多くの方々が地域への愛着や誇りを感じ、今後も住み続けたいという意向をお持ちであること、また、地域のリーダーやグループが中心となって活発に活動されている集落があることも改めて確認できました。さらに、集落活動センターの取り組みについては、多くの集落から「以前と比べて地域が良くなった」、「取り組みに満足している」との回答をいただくなど、成果が確認されました。
 
 
(新たな中山間対策)
こうした調査結果を踏まえ、集落の維持、活性化を後押しし、地域で暮らし続けたいという希望を叶えることができるよう、来年度以降の新たな中山間対策では、「地域に活力を生む」、「くらしを支える」、「しごとを生み出す」の3つの柱と関連施策により、これまでの取り組みを抜本的に強化します。まず、直ちに取り組むべき対策として、地域に活力を生むための体制と、それを動かす人に着目した仕組みづくりを進めるとともに、デジタル技術を活用して中山間地域の課題解決を図ります。
具体的には、中山間対策の核となる集落活動センターについて、引き続き新たな開設を後押しするとともに、持続的な運営に向けて、次なるリーダーの育成や新たな事業展開に係る支援を拡充します。また、センターが設置されていない地域についても、既に設置されている近隣のセンターとの連携も視野に入れながら、「小さなにぎやか集落」としてそれぞれの集落で活動が継続、発展できるような仕組みづくりを進めます。
加えて、地域おこし協力隊などの地域の担い手となる人材の確保や育成を強化します。また、日常生活の不便さや人手不足といった中山間地域に共通する課題の解決を目指し、ドローンなどのデジタル技術を活用した実証事業に取り組みます。
 
(移住促進)
移住促進の取り組みは、中山間地域における担い手不足解消の観点からも重要です。このため、本県で実現できる暮らしや働き方の魅力に関する情報発信を一層充実するほか、移住に向けた検討の熟度を上げるためのセミナーや交流会を開催するなど、「移住検討初期層」へのアプローチを強化します。
また近年、住宅が見つからないことで移住を断念するケースが多く発生しております。その一方、県内では空き家が増え続け、居住環境や防災面からも課題となっているところです。これらの課題を解決するため、庁内に空き家対策チームを設置し、市町村や関係団体と連携した取り組みを進めます。
具体的には、空き家所有者に、売る、貸すといった方針の決断を促すために市町村が行う啓発や働きかけを支援するなど、積極的な掘り起こしを進めます。また、空き家に関する総合相談窓口を新たに設置するほか、改修や荷物整理への支援を拡充し、空き家の活用とマッチングを促進します。
これらの取り組みにより、移住者の住宅確保策などを強化し、来年度の目標である年間移住者1,225組の達成を目指します。
 
こうした一連の取り組みに加え、集落実態調査の成果を地域独自の対策に活用いただけるよう、市町村へ調査結果のフィードバックを行うほか、来年度、調査結果のさらなる分析と施策づくりを進め、全庁を挙げて中山間対策の充実、強化を図ってまいります。
 
次に、少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大についてご説明申し上げます。
核家族化の進展や地域でのつながりの希薄化を背景に、結婚や妊娠、出産、子育てに対する不安感や負担感が高まっております。このため、少子化対策推進県民会議に新たに設置した若い世代の部会を中心に、結婚された方や子育て中の方の声を集めた事例集の作成や、イベントの開催などにより、若い方の不安感の払拭に努めます。加えて、県民会議の構成団体のネットワークや広報媒体を活用し、子育て支援サービスなどの広報を県民運動として展開します。
また、令和2年の県内企業における男性の育児休業取得率は15.8パーセントと、2年前と比べて約2倍になるなど、働きながら子育てができる環境づくりが徐々に進みつつあります。引き続き、令和6年の目標である取得率30パーセントの達成に向け、県庁の事例なども紹介しながら、企業の取り組みを後押しします。
 
女性の活躍の場の拡大については、子育てしながら働く女性を社会全体で支援する仕組みづくりを進めます。
このうち、地域の支え合いによる子育て支援の仕組みであるファミリー・サポート・センターにつきましては、現在13市町で取り組みが展開されています。県内全域への普及に向けて、来年度は、会員数20人未満の小規模なセンターの開設が可能となるよう支援を拡充します。
 
次に、文化芸術とスポーツの振興についてご説明申し上げます。
文化芸術の振興につきましては、デジタル化の進展や長引くコロナ禍といった文化芸術を取り巻く環境の変化を踏まえ、現在、文化芸術振興ビジョンの改定を行っています。
この改定では、既に取り組んでいるまんが甲子園や文化人材育成プログラムのオンライン開催をはじめ、図書館資料の電子化など、「デジタル技術の活用による文化芸術を身近にする環境づくり」を新たな施策として追加します。今後も改定後のビジョンに基づき、文化芸術活動の継続や文化芸術に触れる機会の確保、充実に努めます。
また、新たな県史の編さんに関しては、昨年策定した基本方針を踏まえ、来年度は、まず近世、近代、民俗の3つの専門部会を立ち上げ、県内外に残されている資料の調査を実施します。本事業は20年という長期にわたることから、概ね5年ごとの計画を策定して進捗管理を行います。あわせて、令和7年度までの第1期では歴史資料や調査内容を紹介する刊行物を発刊するなど、早期に成果をお示しできるよう取り組みます。
 
スポーツの振興につきましては、ウィズコロナ、アフターコロナに対応した環境づくりなど、スポーツに対するニーズの変化を踏まえて第2期スポーツ推進計画を改定し、取り組みを強化します。
具体的には、デジタル技術を活用してオンラインによりスポーツ教室の開催や技術指導を行うほか、高知県スポーツコミッションが行う指導者派遣などの取り組みを支援することにより、地域のニーズに応じたスポーツ機会を充実させます。加えて、さらなる競技力の向上を目指し、県スポーツ科学センターにおいて、スタッフの資格取得促進などの体制強化に取り組みます。
このほか、スポーツを通じた交流人口の拡大や地域活性化に向け、関西圏を中心にスポーツ合宿の誘致を強化するとともに、県内のスポーツツーリズムに関する情報を一元化したサイトを立ち上げ、効果的なプロモーションを展開します。さらには、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーを生かして、国際的なスポーツ交流の推進や、子どもたちがパラスポーツに出会う機会の拡充などに取り組み、本県のさらなるスポーツ振興につなげます。
 
 次に、とさでん交通への対応についてご説明申し上げます。
現在、とさでん交通が策定を進めている中期経営計画の案では、コロナ禍の影響の長期化などから、今後、収支改善の取り組みを行っても、極めて厳しい経営状況となることが見込まれています。県としましては、とさでん交通において収益の確保や経費の削減など経営改革の取り組みを進めていただいた上で、県民にとって欠かすことのできない移動手段である公共交通を守ることは重要であると認識しております。このため、中央地域の公共交通の維持に向けた方策について関係自治体と共に検討を進めているところです。
今議会では、その一環として路面電車に対する追加支援の予算を提案しており、引き続き、中期経営計画を踏まえたさらなる対応について、とさでん交通や関係自治体と協議を重ねてまいります。
 
次に、高知工科大学の新学群については、県が設置した検討会がこれまで5回開催され、新学群の必要性や、求める人材像、期待される効果などに関し、各分野を代表する方々へのヒアリングが行われました。このヒアリングでは、「どの産業分野においてもデジタルトランスフォーメーションを進めるために新学群は必要であり、その取り組みに期待している」、「高校生が入学したいと思えるよう新学群の魅力を中高生や保護者に周知することが重要」など様々なご意見をいただいたところです。
今後は、検討会において、施設整備のあり方や収支見通しなどについても議論を行った上で、来年度の早い段階で最終報告書を取りまとめていただきたいと考えております。
 
続きまして、今回提案しました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和4年度高知県一般会計予算など43件です。
条例議案は、高知県動物愛護基金条例議案など22件です。
その他の議案は、県が行う土地改良事業に対する市町村の負担の一部変更に関する議案など6件です。
報告議案は、令和3年度高知県一般会計補正予算の専決処分報告など3件であります。
 
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

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