令和5年6月22日 令和5年6月県議会での知事提案説明

公開日 2023年09月22日

令和5年6月22日 令和5年6月県議会での知事提案説明

1 県政運営の基本姿勢
2 6月補正予算

3 経済の活性化
(1)産業振興計画の推進
(2)観光振興の取り組み
(3)関西圏との経済連携の充実強化
(4)デジタル化、グリーン化、グローバル化の取り組み
4 日本一の健康長寿県づくり
(1)新型コロナウイルス感染症への対応
(2)日本一の健康長寿県構想の推進
5 教育の充実

(1)デジタル技術を活用した学力向上対策の強化
(2)不登校対策の強化

6 南海トラフ地震対策
7 インフラの充実と有効活用
8 中山間対策の充実、強化
9 少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大
10 高知工科大学新学群
11 議案


1 県政運営の基本姿勢
私は4年前、大切な故郷をもっと元気にしたい、多くの若い人が戻って来られるような魅力あふれる県にしたい、これまでの行政経験を生かして高知に恩返しがしたい、との強い思いを持って知事に就任いたしました。
しかしながら、就任早々待ち受けていたのは、世界中で猛威を振るうこととなる新型コロナウイルスとの戦いでした。この間、県民の皆さんの健康と生活を守るため、時に試行錯誤を重ねながらも臨機応変に決断を下し、全力で対策を実行してきました。
そして、先月、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い、コロナ禍への対応は大きな転換点を迎えました。現在、社会経済活動の正常化に向けた動きが急速に進んでおり、あらゆる分野で積極的に打って出るべき局面にあります。まずは、連続テレビ小説「らんまん」の放送や台湾からのチャーター便の就航といった追い風をしっかりと捉え、経済効果が県内の隅々にまで行きわたるよう、観光誘客や外商拡大の取り組みを確実に前へ進めます。
昨年来の物価の高騰に対しては、今議会に提案した補正予算の執行を通じて影響緩和を図り、併せて、省エネルギー対策の推進など社会経済の構造転換を促す施策を迅速かつ的確に講じます。
このように直面する課題に真正面から取り組み、徹底して成果にこだわりながら、12月の任期満了まで全力で駆け抜けてまいります。
また、先々の県政を展望しますと、令和7年の大阪・関西万博の開催を見据え、関西圏との経済連携の強化の取り組みをさらに進め、県勢浮揚につなげなければなりません。加えて、新たな時代の成長の原動力であるデジタル化、グリーン化、グローバル化という潮流を先取りし、産業、生活、行政の各分野にわたり、県の施策を一層進化させる必要があります。
さらに、中山間地域の再興に向けた道筋を示す新たなビジョンの提示が急務です。昨年の県内の出生数は47都道府県で最下位という衝撃的な結果が示されました。中山間対策と少子化対策を一体的に捉えて、より多くの若者を中山間地域に呼び込むなど、対策のギアを上げ、総合的な人口減少対策に取り組まなければなりません。あわせて、未来を担う子どもたちの教育の振興、健康で支え合う地域共生社会の実現、防災・減災や産業振興に資するインフラ整備といった、県勢浮揚の基盤となる取り組みを着実に進めることが必要なのは言うまでもありません。
これら中長期の県勢浮揚に向けた取り組みはいずれも道半ばです。先の2月議会で表明させていただいたとおり、再び県民の皆さんのご支持をいただけるのであれば、私は次の4年間も知事として、引き続き県政の舵取り役を担わせていただきたい。そして、山積する困難な課題に立ち向かい、私自身の手で未来を切り開いた上で、より元気で豊かな、そして温かい高知県を次の世代に引き継ぎたい。それこそが私の使命であるという決意を改めて強くしています。

(「共感と前進」の県政)
私自身が取り組みの現場にお伺いし、県民の皆さんと対話を行う「再び、濵田が参りました」については、令和3年5月から先月までの2年間をかけて全市町村にお伺いさせていただきました。
訪問先では様々なご意見をいただき、地域における新たな担い手の確保を求める声を各地でお聞きしたことを受けて、空き家対策の強化をはじめとして、移住者受け入れのための新たな施策を講じるなど、現場の声を県の施策に反映してきました。
今後も、県民の皆さんとの対話を通じて県政に対する「共感」を得ながら、皆さんと共に、課題解決に向けて一歩でも二歩でも確実に「前進」していくという、「共感と前進」の姿勢を貫いてまいります。

2 6月補正予算
今議会では、主に物価高騰に対応するため、総額54億円余りの歳入歳出予算の補正並びに総額7億円余りの債務負担行為の追加を含む一般会計補正予算案を提出しています。
物価高騰対策のうち、事業者に対しては、現下の影響を軽減するため、医療施設や社会福祉施設に対する給付金の支給に加え、農業者及び漁業者の燃料や飼料の購入費への支援を行います。あわせて、物流の効率化や労働環境の改善などに取り組むトラック事業者への支援制度を創設します。
また、影響の長期化を見据えた各分野の構造転換が進むよう、省エネ設備の導入や新分野への事業展開に取り組む事業者を支援します。
加えて、生活者に対する支援として、家計負担の軽減と脱炭素化の推進を図るため、省エネ性能の高い家電製品の購入を促進します。また、子育て世帯を支援するため、デジタルクーポンの付与などを通じて「子育て応援パスポートアプリ」の利用促進を図ることに加え、学校給食費や私立学校の授業料の負担を軽減します。
このほか、広域観光組織が行う観光需要喚起策に対する支援や、新型コロナウイルス感染症の外来対応を行う医療機関における資機材整備への支援などに係る予算を計上しています。

3 経済の活性化
続いて、基本政策の取り組みなどについてご説明申し上げます。まず初めに、経済の活性化についてであります。

(1)産業振興計画の推進
令和2年度にスタートした第4期産業振興計画は、4年間の計画期間の最終年度を迎えました。この間、各分野の取り組みはコロナ禍によって様々な影響を受けましたが、そうした中においても成果を上げるべく、工夫を重ねてきました。
その結果、例えば外商分野においては、地産外商公社の活動を契機とした昨年度の成約金額は、関西戦略の取り組みの効果もあり、過去最高の57億5千4百万円となりました。さらに防災関連産業は、昨年度の売上額が126億3千万円と、2年続けて100億円の大台を突破し、本県産業の柱の一つとして成長してきています。また、一次産業の分野では、IoPクラウドや森林クラウドをはじめとする情報基盤の運用が本格化し、それぞれの生産現場で多くの事業者に業務の効率化やコストの削減といった効果を実感していただける段階に進んでいます。
現在、県経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行を受けて、個人消費や観光を中心に持ち直しの動きが広がりつつあります。一方で、本年4月の高知市の消費者物価指数が前年同月比で3.2パーセント上昇するなど、物価高騰が依然として続いており、企業活動や個人消費へのさらなる影響が懸念されます。加えて、各産業分野で人手不足が深刻です。このような現状に対して、事業コスト上昇分の円滑な価格転嫁と持続的な賃金引き上げの好循環の実現を図ることが喫緊の課題であります。本年度は、こうした社会経済情勢の変化にも的確に対応しながら、第4期計画に掲げる目標達成に向けて全力で取り組み、コロナ禍でダメージを受けた県経済の本格的な回復につなげます。
加えて、急速な人口減少や脱炭素社会への移行など、本県を取り巻く環境が大きく変化している中、県経済の持続的な成長を成し遂げていくためには、先々を見据えた戦略を講じていかなければなりません。このため、本県における中長期的な産業振興戦略のあり方について、先月、有識者による検討委員会を設置しました。これまで戦略の柱として掲げてきた「地産外商」に加え、コロナ禍による社会変容を背景とした「イノベーションの推進」といった観点から議論を深め、次期計画の策定につなげます。

(2)観光振興の取り組み
観光分野では、長らく新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けてきましたが、昨年の県外観光客入込数は370万人と、感染拡大前である令和元年の8割を超える水準まで回復してきています。
本年3月の観光博覧会「牧野博士の新休日」の開幕以降も多くの観光客にお越しいただいており、牧野植物園の先月の来園者数は、月別の記録を取り始めた平成12年以降で過去最高の5万3千人となりました。また、佐川町や越知町の主要なスポットでもコロナ禍前の来客数を大幅に上回るなど、県内各地で盛り上がりを見せています。
さらに、8月には、よさこい祭りが第70回の節目の大会として4年ぶりに通常開催されます。主催団体とも連携し、祭りの成功に向けてしっかりと準備を進めます。
こうした機を捉えて国内外へのPRを精力的に行い、県内への観光誘客と周遊促進を図ることはもとより、県産品の外商拡大などの幅広い波及効果を生み出し、県経済の底上げにつなげたいと考えています。

(3)関西圏との経済連携の充実強化
関西圏との経済連携の取り組みのうち、情報発信の拠点となるアンテナショップについては、都会では味わえない「極上の田舎」を体感していただけるよう、来年7月の開設に向けて店舗のデザインや機能を練り上げています。これに先立ち、関西で有数の集客力を誇るあべのハルカスにおいて、来月28日から約半年間の期間限定の店舗を設置し、県産品のPRと販売を行います。この取り組みを通じて、アンテナショップの開設に弾みをつけたいと考えています。
また、外商分野では、先月、関西のバイヤーを対象にした県産品商談会や産地視察を行い、飲食店や量販店など19社にご参加いただきました。今回の商談会を確実に成果に結び付けられるようフォローアップも行いながら、さらなる外商拡大に向けて関西圏の企業や団体と連携した販売活動を強化します。
さらに、観光分野では、観光博覧会の取り組みの一環として、関西のメディアとタイアップしたイベントや、牧野博士ゆかりの地である神戸市と連携した周遊企画を実施し、多くの方から大変ご好評をいただいております。
今後、大阪・関西万博の開催を見据えて、県内市町村や事業者も含めたオール高知でこれらの取り組みをより一層推進し、県経済の成長スピードを加速させます。

(4)デジタル化、グリーン化、グローバル化の取り組み
次に、デジタル化、グリーン化、グローバル化という、新たな時代の潮流を指し示す3つのキーワードに関連する施策について、ご説明申し上げます。

ア デジタル化の取り組み
1つ目のキーワードであるデジタル化の取り組みのうち、農業分野では、昨年9月に本格運用を開始したIoPクラウド「SAWACHI」の利用農家数が先月末時点で1,000戸近くにまで増加しています。
本年度は、営農指導体制を強化し、「SAWACHI」に集積されるデータを最大限活用して、農家に寄り添った支援を進めています。あわせて、既存ハウスの長寿命化と環境制御装置の導入による高度化を促進し、本年度末の目標である「SAWACHI」の利用農家数3千戸を目指します。
また、水産業分野では、海水温や潮流などの情報を一元的に発信するシステム「NABRAS」について、本年1月の運用開始後、先月末時点の閲覧数が約14万回に上るなど、多くの漁業者に活用していただいています。林業分野においても、森林資源情報を搭載したシステム「Clowood」の運用が本年4月に始まり、これまでに県内の林業事業体の約半数がシステムを利用するなど、着実に普及が進んでいます。
引き続き、各産業分野におけるデジタル化をさらに加速し、生産性の一層の向上や付加価値の創出につなげます。
また、産業分野に加えて、行政分野におけるデジタル化を加速する取り組みとして、本年4月から、職員の働き方の変革を目指した「県庁ワークスタイル変革プロジェクト」を新たに開始しました。
今後、全所属で業務内容の調査分析を進め、デジタル化を前提に業務の抜本的な再構築を図ります。また、庁内のモデル職場において、9月からペーパーレスでどこでも仕事ができる環境とするよう、デジタル機器の導入をはじめ必要な整備を進めています。
こうした取り組みを通じて、職員が高い生産性や豊かな創造性を大いに発揮できる県庁を目指します。

イ グリーン化の取り組み
2つ目のキーワードであるグリーン化に関しては、豊かな自然資源をはじめとする本県の強みを生かす観点から、脱炭素社会推進アクションプランにおける一連の施策をバージョンアップし、取り組みを進めています。
こうした中、本年4月、国の脱炭素先行地域として須崎市と日高村、北川村、黒潮町が新たに選定されました。既に選定されている檮原町も含め、地域の脱炭素化を目指した先駆的なプロジェクトの実現に向けて、引き続き市町村をしっかりとサポートします。
加えて、今議会に提案した補正予算では、製造業や宿泊業などの事業者における省エネ設備の導入や、家庭における省エネ性能の高い家電製品の購入について新たな支援策を講じており、オール高知で脱炭素化を進めます。
また、吸収源対策と持続可能な林業振興に向けた取り組みでは、近年40パーセント程度の再造林率を70パーセントにまで引き上げるための抜本強化策の検討を進めています。現在、施策の方向性を関係者の皆さんにお示しし、ご意見をお伺いしています。今後、いただいたご意見を踏まえて具体策を取りまとめ、9月末までに抜本強化に関するプランを策定します。

ウ グローバル化の取り組み
3つ目のキーワードであるグローバル化に関しては、県産品の輸出拡大をさらに進めるほか、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の終了を機に、インバウンド観光や外国人材確保の取り組みを本格的に展開しています。

(輸出拡大の取り組み)
輸出拡大の取り組みのうち、食品分野では、コロナ禍からの回復が進むアメリカや中国をはじめとした有望市場において、見本市への出展や商談会の開催に積極的に取り組んでいます。加えて、本年度から水産物輸出促進コーディネーターを新たに配置し、輸出に取り組む事業者の販路開拓や商品開発の支援を強化しています。
また、ものづくり分野では、本年4月、業種を問わず参加できる海外ビジネス交流会を立ち上げ、海外展開に取り組む県内事業者の裾野の拡大を図っています。加えて、今月には海外現地サポートデスクをタイとベトナムに設置し、現地における販売拡大に向けた支援を強化します。
こうした中、高知新港の活性化に向けた航路の誘致活動が実を結び、来月20日から、韓国の釜山港との間に新たな船会社による定期コンテナ航路が就航することとなりました。これにより、特に県内企業との取引が多いアジア各国との貿易がより容易になり、新港の利便性が一層向上するものと期待しています。

(インバウンド観光の取り組み)
インバウンド観光の取り組みについては、コロナ禍により延期を余儀なくされていた台湾からの定期国際チャーター便の就航が、先月10日、ようやく実現し、大変嬉しく思っています。これまでに2千人を超える観光客をお迎えし、本県の豊かな自然や魅力ある食を堪能していただいています。
今後も、より多くの台湾の方々に本県を旅行先として選んでいただけるよう、現地旅行会社と連携したプロモーションの展開や旅行商品の造成を進め、販売活動を強化します。このような取り組みを通じて、本年10月末までの期間限定で就航しているチャーター便の継続運航を図り、さらには早期の定期便化につなげます。
こうした国際線の定期便化に必要となる高知龍馬空港の新ターミナルビルについては、県が設置している検討会議において整備に向けた検討が進められています。今月12日の会議では、大阪・関西万博が開催される令和7年の供用開始を目指して、既存施設の改修などを含め、まずは国際線の受け入れに必要な最小限の整備を行うとの方向性が示され、議論が行われました。今後、具体的な整備手法について検討を深め、9月を目途に整備案が取りまとめられる予定です。県としましては、検討会議の案に沿って整備を進めたいと考えています。
また、本年度、高知新港に寄港する外国客船は過去最多となる61隻が予定されています。既に多くの客船が寄港しており、県内の観光地や商店街は外国人観光客で賑わいを見せています。引き続き、市町村や関係団体と連携しながら万全の準備をもってお迎えし、インバウンド回復の流れを着実に取り込み、さらなる誘致につなげます。

(外国人材確保の取り組み)
外国人材確保の取り組みについては、水際対策の緩和に伴い、本県における技能実習生の受け入れが増加してきています。
こうした動きも踏まえ、本年度は、これまで多くの受入実績のあるベトナムについて、8月上旬にラムドン省との人材交流に関する覚書を締結するよう最終の調整を行っています。また、これまで関係構築に取り組んできた東ティモールについて、来月以降、日本初となる技能実習生を本県において受け入れることとしています。
さらに、昨年度から連携を始めたインドについて、新たに宿泊業における技能実習生の受け入れに向け、来月、大阪にある総領事館を訪問し、10月には、ミッション団を派遣して現地の宿泊事業者と意見交換を行う予定です。
引き続き時代の変化を先取りし、絶えず施策のバージョンアップを図りながら各産業の足腰をより強くすることで、県経済を持続可能で一段高い成長軌道に乗せていきます。

4 日本一の健康長寿県づくり
次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。

(1)新型コロナウイルス感染症への対応
新型コロナウイルス感染症については、先月8日、感染症法上の位置付けが5類感染症に引き下げられ、行政の関与を前提とした「特別な対応」から、季節性インフルエンザと同様の「通常の対応」に移行することとなりました。
これまで3年以上にわたり、県民の皆さんをはじめ、市町村、医療・福祉従事者の皆さん、医師会などの関係団体の方々には、様々な感染症対策にご理解とご協力をいただきましたことに、改めて心から感謝を申し上げます。
5類移行に際し、医療面での対応について関係者と調整を進めてきた結果、外来診療が可能な医療機関は、移行前の275機関から320機関にまで拡大しました。あわせて、ほぼ全ての高齢者施設で医療機関のサポートが受けられる体制を構築するなど、今後の感染拡大に備えて必要な医療提供体制を確立することができています。
引き続き、新規感染者数の推移や新たな変異株の出現などを注視し、感染状況に応じて県民の皆さんに対して的確な情報提供を行います。あわせて、これまでに得た知見も生かし、医療従事者をはじめ関係者のご協力をいただきながら適切に対応していきます。
加えて、本県におけるこれまでの新型コロナウイルス感染症への対応を記録として整理し、次なる感染症への対処に最大限生かします。

(2)日本一の健康長寿県構想の推進
第4期日本一の健康長寿県構想については、本年度、デジタル化や国の動向を捉えた取り組みの展開といった観点から各施策の見直しと強化を図り、3つの柱に基づく取り組みを進めています。引き続き、各施策についてPDCAサイクルによる検証を行い、次期構想の策定につなげます。

ア 健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進
1つ目の柱の「健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進」のうち、血管病重症化予防対策では、これまでの取り組みにより糖尿病性腎症患者の透析導入時期を5年程度遅らせる可能性が見えてきました。
こうした成果の表れを背景に、透析予防強化プログラムについては、先月、2つの医療機関が新たに加わり、現在12の医療機関で実施しています。今後、県内全域に取り組みが広がるよう、プログラムの効果に関する冊子を作成して周知啓発を図ることに加え、市町村や医療機関と連携してプログラムの普及に向けた計画づくりを進めます。

イ 地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化
2つ目の柱の「地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化」では、昨年度、通信・医療機器を搭載した車両、いわゆるヘルスケアモビリティを活用したオンライン診療が県内で初めて宿毛市で導入されました。導入後は、県内外の行政や医療関係者が相次いで見学に訪れるなど、高い注目を集めています。本年度は、医療機関を対象とした研修会などを通じて導入のメリットを積極的に発信することにより、さらなる普及を図ります。

(高知型地域共生社会の推進)
地域共生社会の推進については、分野を超えた多機関協働型の包括的な支援体制の整備を「縦糸」として、地域の人と人とのつながりの再生に向けたネットワークづくりを「横糸」として展開しています。
このうち、行政が主体となる「縦糸」に関しては、全市町村で包括的な支援体制が早期に整備されるよう、市町村長を対象とするトップセミナーの開催を契機に、市町村と具体的な体制づくりについて個別協議を開始しました。今後、個別協議で明らかとなった課題への対応を含め、アドバイザーの派遣などを通じて市町村に対するきめ細かな支援を行います。
地域が主体となる「横糸」に関しては、支援ネットワークの構築に向けて、福祉専門職や地域ボランティアなどを対象に、困っている人に寄り添い支援につなぐというソーシャルワークの知識と実践を学ぶ研修を開始しました。宅配業などの民間事業者や民生委員・児童委員と連携した地域の見守り活動の拡大と合わせて、支援体制の充実を図ります。
さらに、「縦糸」と「横糸」で織りなす地域共生社会の拠点として、あったかふれあいセンターが幅広い世代に様々な用途で活用されるよう、遠隔診療などに必要となるネットワーク環境の整備を進めます。
こうした高知型地域共生社会の取り組みを県内全域で展開し、地域における重層的な支援体制の構築を図ります。

ウ 子どもたちを守り育てる環境づくり
3つ目の柱の「子どもたちを守り育てる環境づくり」では、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援体制の強化に取り組んでいます。
こうした中、市町村において母子保健部門と児童福祉部門の機能を一体化した「こども家庭センター」への移行が来年度からスタートします。今後、円滑な移行に向けて市町村への個別訪問やアドバイザーの派遣を行うなど、引き続き地域の実情に応じた支援を行います。
また、子育て家庭の孤立を防ぎ、育児不安の解消につなげるため、育児経験者による相談体制の充実や地域ボランティアの拡大など、子育て家庭に寄り添った住民参加型の支援を進めます。あわせて、産後ケア事業の利用拡大などを通じて、安心して子育てできる環境づくりを推進します。

5 教育の充実
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
第2期教育大綱の最終年度となる本年度は、デジタル技術を活用した学力向上対策の強化などの観点から施策をさらにバージョンアップしました。引き続き目標の達成に向けて全力で取り組み、あわせて、これまでの施策を検証した上で、次期大綱を策定します。

(1)デジタル技術を活用した学力向上対策の強化
教育のデジタル化に関しては、1人1台タブレットの導入から数年が経過し、現在は児童生徒が日常的にタブレットを活用して学習する段階に進みつつあります。
この流れをより確かなものにし、児童生徒の理解力や個性に応じた学びを一層進められるよう、本年度から、県内6地域の小中学校においてAIデジタルドリルの効果的な活用に向けた実証研究に取り組んでいます。また、高等学校では、AIデジタルドリルやデジタルノートなどの学習ツールを活用する学校を拡大しました。
一方、放課後をはじめ学校外におけるタブレットの活用の伸び悩みが課題となっています。このため、学校外でタブレットの活用ができる環境を一層充実すべく、放課後児童クラブや放課後子ども教室における無線LANの整備を進めます。あわせて、教員向けの研修や好事例の周知を通じて、授業や家庭学習におけるタブレットの積極的な活用を図ります。
また、中山間地域の高等学校を中心に進めております遠隔授業については、本年度から実施校を14校から16校に拡大しています。加えて、教員不足が課題となっている、プログラミングやデータ活用などについて学ぶ「情報Ⅰ」の配信を新たに開始しました。
こうした取り組みを通じて、デジタル技術を日常的に活用した学習スタイルの定着を図り、学力向上につなげます。

(2)不登校対策の強化
不登校対策については、不登校の児童生徒数が全国平均を上回るペースで増加するなど依然として厳しい状況が続く中、これまでの対策の成果や課題を踏まえ、取り組みを一層強化しています。
具体的には、不登校生徒数の減少などの効果が表れている中学校の校内サポートルームについて、設置校を7校から11校に拡大し、ICTを活用して個々の生徒に応じた学習の充実を図っています。
また、課題のある地域で集中的に対策を講じるため、校内サポートルームの設置校区内の小学校に担当教員を配置し、小中合同の校内支援会を開催するなど小学校から中学校にまたがる継続的な支援体制を構築しています。
さらに、元の学校への登校にとらわれない多様な教育機会の確保に向けて、先日、外部の有識者で構成される協議会を立ち上げ、不登校特例校の設置やフリースクールとの連携について検討をスタートさせました。
こうした一連の取り組みを着実に進め、不登校対策のさらなる充実につなげます。

6 南海トラフ地震対策
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
第5期南海トラフ地震対策行動計画の2年目となる本年度は、想定死者数を約8千8百人から約4千3百人に半減させる目標の達成に向けて、取り組みを一層強化しています。
このうち、津波からの早期避難意識の向上については、テレビCMやSNSによる広報などを通じた啓発活動に取り組んでいます。加えて、防災への関心が薄い30歳代から40歳代をターゲットにしたイベントや防災学習会を新たに開催します。こうした機会を通じて、早期避難の必要性を県民の皆さんに直接訴えかけていきます。
また、事前復興まちづくり計画の策定に向けては、市町村に直接出向き、先行事例の紹介や計画策定の進め方などについてアドバイスを行っています。その結果、昨年度策定に着手した黒潮町と高知市において、地域住民との意見交換を行うなど策定に向けた作業が進んでおり、年度内には宿毛市をはじめ5市町が新たに着手する予定となっています。
令和6年度末までに沿岸19市町村の全てで計画の策定に着手されるよう、引き続き地域の実情に沿ったきめ細かな支援を行います。
加えて、津波浸水予測区域にある住居や事業所の高台移転を促進するにあたり、市街化調整区域における開発規制が厳しいとの声を市町村などからお聞きしています。このため、先月、県と市街化調整区域を有する高知市など4市町で構成する協議会を開催し、地域の現状や課題について情報共有を行いました。今後、関係市町とともに検討を深め、年内に市街化調整区域における規制緩和の方針をお示ししたいと考えています。

7 インフラの充実と有効活用
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
今月2日の台風や前線の影響による大雨により、国内各地で土砂崩れや住宅の浸水といった被害が発生しました。本県においても同様の被害が生じており、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
こうした中、今月1日、日高村において国が整備を進めてきた3本目となる日下川放水路と、四万十市において国、県、市が整備を進めてきた楠島川放水路などの運用が開始されました。これに伴い、両地域における浸水被害の大幅な軽減が見込まれます。
また、今月10日、国道33号越知道路において新たなバイパス区間が開通しました。これにより、異常気象時における通行規制区間の解消に加え、仁淀川流域の観光振興といった様々な効果が期待されます。
今後も、国に対する積極的な政策提言を行うなど、関係市町村と連携して災害に強い県土づくりを進めていきます。

8 中山間対策の充実、強化
次に、中山間対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
中山間対策については、本年度、喫緊の課題である担い手不足への対応や集落活動の活性化といった観点から各施策の強化を図っています。
具体的には、地域おこし協力隊のさらなる増員に向けて、SNSを活用した募集活動を開始したことに加え、協力隊のネットワーク組織とも連携して隊員を対象とする研修会を行いました。あわせて、コロナ禍で活動が停滞している集落活動センターの再始動や、安定的な雇用環境づくりに資する特定地域づくり事業協同組合の設立に向けた市町村への支援を強化しています。
また、中山間地域が再び活力を取り戻すための道しるべとなる中山間地域再興ビジョンについては、年度内の策定に向けて、4月に庁内のプロジェクトチームを、今月7日には有識者などで構成する外部委員会を設置しました。あわせて、より具体的な中山間地域の課題やニーズを把握するため、市町村や各産業団体などへのヒアリングを行っています。
こうした中でいただいたご意見も踏まえ、地域の再興に向けて、中山間地域の目指す姿や中期的な目標について検討を進め、9月上旬ごろには外部委員会にビジョンの骨格案をお示ししたいと考えています。

(移住促進)
昨年度の本県への移住者数は1,185組と、統計を取り始めた平成23年度以降で過去最多となりました。一方で、新規相談者数は伸び悩んでいることから、本年度は相談者の獲得に向けた取り組みを強化しています。
具体的には、これまで十分にアプローチできていなかった移住関心層やUターン希望者に対し、デジタルマーケティングの手法を活用してイベントなどの情報発信を積極的に行い、相談窓口への誘導を図っています。あわせて、移住コンシェルジュが移住から就職の相談までをワンストップで対応できるよう体制を整えました。
また、移住者向けの住宅確保などを目的とした空き家対策では、昨年7月に開設した空き家相談窓口における相談件数が500件を超えました。本年度は、出張相談会の開催回数を増やすほか、設計事務所、建築会社、不動産会社の3者で構成する専門家グループとの連携を強化するなど、相談体制をさらに充実しています。加えて、4月からSNSによる情報発信を新たに開始し、来月には著名人によるセミナーの開催を予定するなど、空き家の掘り起こしに向けた広報啓発活動を一層強化しています。
こうした取り組みを通じて、第4期産業振興計画に掲げる目標である年間移住者数1,300組の達成を目指します。

9 少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大
次に、少子化対策の充実・強化と女性の活躍の場の拡大についてご説明申し上げます。
昨年の本県の出生数は、前年比で369人減の3,721人と、47都道府県で最少となりました。
こうした中、今月、国において、「次元の異なる少子化対策」の実現に向け、来年度から集中的に取り組む施策を示した「こども未来戦略方針」が決定されました。この中には、児童手当の拡充や保育所の柔軟な利用をはじめ、必要な対策が包括的に盛り込まれており、本県がこれまで提言してきた内容も数多く反映されています。
このような国の方針に呼応して、少子化の傾向を何としても反転させるべく、これまでの取り組みの成果や課題をしっかりと分析、検証した上で、全庁を挙げて本県の特性に応じた新たな施策の展開を図ります。あわせて、国の施策が本県の取り組みの大きな後押しとなるよう、全国知事会などとも連携して、引き続き積極的に政策提言を行っていきます。

(女性の活躍の場の拡大)
出生数の激減の一因は若い女性人口の流出にあると指摘されています。少子化対策の強化の観点からも、若い女性が職場や地域で活躍できる環境の整備が必要です。こうした環境整備が進むよう、現在、本年3月に策定した女性活躍推進計画アクションプランに基づき取り組みを行っています。
具体的には、4月から、高知家の女性しごと応援室の開室日を拡大したほか、デジタル人材の育成や起業に向けたサポートを充実するなど、女性の就労支援を強化しています。加えて、男性の育児休業の取得促進に向けた取り組みなどを通じて、男女の性別役割分担意識の解消を図ります。
引き続き、こうした施策を着実に実行し、オール高知で職場や地域における女性の活躍を後押しします。

10 高知工科大学新学群
高知工科大学の新学群については、来年4月に「データ&イノベーション学群」として開設することが正式に決定しました。新学群の特色は、データ活用力とビジネス実践力を併せ持つ文理統合型の教育を行うという点と、学生が県内企業などをフィールドにして様々な課題解決に挑戦するという点にあります。まさにアフターコロナ時代の社会経済を牽引するデジタル人材を輩出する学群が本県に誕生することとなります。
また、卒業生の就職先は、情報通信業や製造業をはじめ、一次産業、金融業、サービス業など多岐にわたる分野が想定されており、県内産業界における活躍が大いに期待されます。
新学群の開設が県内事業者の課題解決と学生の県内就職の拡大につながり、ひいては県経済の発展に資するよう、県としても大学と連携した取り組みを一層推進します。

11 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和5年度高知県一般会計補正予算の1件です。
条例議案は、職員の給与に関する条例及び警察職員の給与に関する条例の一部を改正する条例議案など11件です。
その他の議案は、権利の放棄に関する議案など5件であります。

以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

お問い合わせ

総合企画部 広報広聴課
TEL:088-823-9046
FAX:088-872-5494
Topへ