◆◇◆ 小中学校課学校教育担当メールマガジン「パートナー」 ◆◇◆◇◆◇                              H23.2.25 第96号    県教育委員会HP http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/310000/    小中学校課HP   http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/310301/ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇        高知県教育委員会事務局 小中学校課学校教育担当 編集・発行 ------------------------------------------------------------------------  新しい年になり、50日が過ぎようとしています。時の経つのは、早いもので、 3月ももうすぐ。  各校では、子どもたちの新しい進路に向かって、総仕上げの段階に入っている ことだと思います。  すべての子どもたちの夢に向かって、喜びあふれる季節になることを願ってい ます。  子どもたちの笑顔のために、確実な「一歩」を共に踏み出しましょう。 ------------------------------------------------------------------------ 【メッセージ】 <人権が尊重された温かい学校づくりの応援を>                    心の教育センター 所長 横田 隆  【教育実践】 <新教育課程拠点校研究発表会~香南市立野市小学校~>東部教育事務所 【挑戦と成果】 (1)第11回ポッシブル・ミッション(中学校学力向上推進チーム) (2)心を「耕す」教育の総合的な推進   ①道徳の部屋  ②学校図書館の部屋 【お知らせ】 ≪第8回白木谷国際現代美術館企画 花・花・花とコレクション展 ―雪割桜、梅、李王、イクリ、桃の花につつまれて―≫ ≪「青少年赤十字(JRC)への加盟登録」について≫ 【銀杏だより】「艱難」(かんなん)小中学校課長 ------------------------------------------------------------------------ 【メッセージ】 <人権が尊重された温かい学校づくりの応援を>  心の教育センターでは、「人権教育を基盤とした温かい学校づくりをサポート する」というテーマを掲げ、心の教育担当(人権教育)と、こどもサポート担当 (教育相談)が協働で、学校支援の研究を進めています。  県内の小中学校には、教育事務所や市町村教育委員会と連携しながら、温かい 学校をつくるためのサポートをしています。また、高等学校に対しては、「予防 的支援に焦点を当てた校内支援体制づくり」を進めるために教育相談担当者等を 対象としたコーディネーターの養成を行っています。  今日的課題である不登校やいじめ、学級崩壊等は、家庭や地域・社会の変化を 背景に、学校生活の中で生じています。このことは、様々な要因から学校・学級 環境との折り合いをつけることが困難な子どもたちが増えていることが考えられ ます。このような子どもの姿は、家庭状況や発達的な課題が起因している場合も ありますが、学校風土や学級集団の状態が大きな影響を与えています。  今、日本型の学級指導(学級経営)は、過渡期にあると言われています。  Q-Uを開発した河村茂雄さんは、「日本の学級集団と学級経営」(2010 年)という著書の中で、日本型学級指導の特徴として、次の3点を挙げています。 1 最低1年間固定されたメンバーで構成されている。 2 生活共同体の特性を持ち、その集団内でさまざまな活動を展開しながら学習  活動を行っている。 3 教師が学習指導と生徒指導を統合して指導・援助にあたっている。    このように日本の学級は、運命共同体的な性格を持っているので、日々の学級 集団の状態によって、子どもたちの学校生活を送るうえでの意欲が大きく左右さ れることになります。  そこで、個々の子どもや学級の状態に合わせて、教師自身が学級集団のつくり 方や子どもへのかかわりを変えていくことが求められています。換言すれば、今 の子どもの実態に応じた学級集団づくりや学級経営を創造していくことが求めら れているのです。そのために高知県では共通のツールとして、「楽しい学校生活 を送るためのアンケートQ-U」の活用を推進しています。このアンケートは、 子どもたちが教師のかかわり方や学級経営の方法をどのように受け止めているか を私たちに教えてくれるものだからです。    文部科学省は、「人権教育の指導方法等の在り方について」として、平成16 年度から順次「第一次・第二次・第三次とりまとめ」を発表し、人権尊重の視点 に立った学校づくり(人権教育の進め方とともに、人権尊重の理念に立った生徒 指導・学級経営・学力向上の視点)の重要性を述べています。その中では、「児 童生徒が多くの時間を過ごすそれぞれの学級の中で、自他のよさを認め合える人 間関係を相互に形成していけるようにすることが重要であり、このような観点か ら学級経営に努めなければならない」と、子どもたちの学習指導・生徒指導の基 盤となる学級経営力の向上が明記されています。  今後、高知県でも教師の大量退職時代が訪れ、学校では教師の世代交代が一気 に進みます。それだけに、地域や子どもの特性に合わせ、『不易と流行』を意識 した学校文化・学校風土をつくり、次世代の教師に引き継ぐことが求められてい ます。そして、その鍵を握るのは、これから数年間の各市町村教委や学校の創意 工夫を凝らした取り組みではないかと思います。  心の教育センターでは、来年度から「温かい学級づくり応援事業」を継続する とともに、学級経営の基本を身に付けた小中学校のリーダーを養成する研修会を 実施する予定です。学級経営力の向上が、高知県の喫緊の課題である学力や体力 の向上、不登校やいじめ等の生徒指導上の課題を解決するために不可欠であると 思うからです。  実際、毎年のように荒れていた状態から立ち直り、しっとりと落ち着いた雰囲 気の中で、子どもたちの学びが保障されている学校が増えてきています。これか らも心の教育センターでは、人権が尊重された温かい学校づくりを応援していき ますので、よろしくお願いいたします。                   【心の教育センター 所長 横田 隆】 ------------------------------------------------------------------------ 【教育実践】 <新教育課程拠点校研究発表会~香南市立野市小学校~>  新しい年が明け、3学期がスタートして間もない平成23年1月18日(火)、 香南市立野市小学校において、「新教育課程拠点校研究発表会」が開催されまし た。  「新教育課程拠点校指定事業」は、教育課程の編成や実施、評価において、組 織的にOJTに取り組み、教員研修の拠点校としての役割を担う学校づくりを行 い、その先進的な取り組みを県内に普及することにより、県内教員の指導力向上 を図ることを目的とするものです。野市小学校は、その指定校として、研究テー マを「生きてはたらくことばの力の育成―児童主体の言語活動を重視した授業の 創造―」とし、国語科を中心に据えた取り組みを進めています。  指定1年目の今年、「校内研究体制づくり」と「新学習指導要領に基づいての 授業改善」を重点的に取り組んできました。  1学期、標準学力調査やQ-U等の客観的データを基にして児童の実態を丁寧 に見取った先生方は、夏季休業中に、その実態認識を踏まえて学年目標を設定、 共有し、2学期からの授業改善に向けた実践を本格的にスタートさせました。  学級数27という規模の野市小学校は、校内研究体制を学年主体とし、その中 での自律的教育改善を図るとともに、要所要所で「縦割り交流」の場を設けて学 年間の情報を交流することで、研究を全校的なものにしています。  また、授業改善については、「国語科で付けたい力」や「単元構想」について 講師招聘研修や他校の授業参観等を通して理解を深めながら授業実践を積み重ね ています。さらに、「授業検討会の手順」や研究授業を参観する際の「視点一覧 表」の作成等授業検討会の工夫・改善にも取り組むことによって、成果と課題を 明確にし、それを次の授業につなぎながら、「言語活動を重視した授業に関する 実践知の蓄積と共有」が図られていました。  このように、実践と改善を積み重ねて迎えた研究発表会では、「重点指導事項」 を「言語活動例」を通して指導することを意識した単元構想の中の1時間を、各 学年1学級ずつ公開しました。学年団の運営による学年別分科会の中では、本時 に至るまでの学年研究の歩みも紹介されました。  全体会では、広島大学大学院の吉田裕久教授から「生きてはたらくことばの力 を育む」と題して「生きてはたらく学力とは」「ことばの力とは」「思考力・判 断力・表現力等の育成とは」等基本に返ってのご講話をいただきました。これら の内容は、これまでの実践を改めて理論と結び付けて振り返る貴重な機会となっ たのではないかと思います。また、吉田裕久教授からは、来年度に向けての「注 文」として「課題は第三次。表現を頑張ろう。」というご示唆もいただきました。    この研究発表会の前に、野市小学校では既に本年度の実践を振り返る場がもた れ、成果と課題が「授業改善の具体策集約一覧表」という形で取りまとめられて いました。それと併せて、研究発表会で講師や参会の方々からいただいたご意見 も反映させた次年度の研修計画が着々と立てられています。  本年度、児童の実態の見取りというR(Research)から始まった野市 小学校のR-PDCAサイクルは、日々一人一人のPDCAと学年・学校のPD CAを積み重ね、今、大きく一回転しようとしています。                      【東部教育事務所 米倉 由佳】 ------------------------------------------------------------------------ 【挑戦と成果】 (1)第11回ポッシブル・ミッション(中学校学力向上推進チーム) <中学校学力向上推進チーム学校支援訪問                   (高知市教育委員会管内)について>  本年度は高知市内12校の中学校に継続して訪問を行いました。  学校教育第二担当の学校支援訪問は、各学校が作成している「学力向上のため の学校改善プラン」が具体的にどのように進行しているのかの進捗状況の確認に あります。その確認のための手段として、授業公開や研究授業に参加し、先生方 と一緒に協議を行い、また、時には管理職の先生や研究主任の先生方との協議を 行う等、継続的な訪問をさせていただきました。現在は、どの学校も1年間の総 括を行っている時期となります。  高知市内の中学校の多くは、高知県内では規模の大きい学校が多く、全ての先 生が授業公開をするためには多くの時間が必要になります。そうした条件にあっ ても、全ての先生が公開をしていくという方針のもと、1年間の研究実践がなさ れました。その中で、特に成果が見られた事例をいくつか紹介します。 ○高知市立大津中学校  全教員が研究・公開授業を行い、その度に学校支援訪問として訪問を行いまし た。必ず授業後の協議を設定し、その協議を繰り返す中で、3学期には授業の三 つの視点を確認しています。 その視点は  ① 課題が明確に伝わる授業  ② 全ての子どもが参加できたと実感できる授業  ③ つなげる・関わらせる授業 です。これは、授業を参観する視点であると同時に、授業づくりの視点にもなり ます。  授業公開を継続する中で、組織として確実に授業改善が進んだ成果の表れだと 考えています。次年度以降はさらにこの視点を深めていくことを確認しています。 ○高知市立三里中学校  1年間に9教科全てで授業公開をすることができました。教科の担当教員が複 数名いる教科は、互いに参観することで、授業後の協議についても共有しながら 進めることができました。  特筆すべき点は、校内の研究主題に基づき、目指す生徒像と学年段階ごとに身 に付けさせたい力を教科ごとに明確にしている点です。まだ1年目の取り組みで すので、各教科の学習指導要領の目標との整合性等については、今後さらに検証 し、改善していくことが必要です。今後も校内研究という視点にたって組織的な 授業づくりに取り組んでいくことを期待しています。    【中学校学力向上推進チーム 島内 啓介、森田 やよい】    ------------------------------------------------------------------------ (2)心を「耕す」教育の総合的な推進 <①道徳の部屋> 道徳推進リーダー14名 誕生  平成22年度第2回「高知県道徳教育推進協議会」及び「道徳推進リーダー育 成事業」第10回公開集合研修が、2月10日(木)に開催され、約70名の参 会者により、道徳教育についての研鑽を深めました。  午前中は、指定校15校からの実践報告、午後は、「道徳推進リーダー」によ る模擬授業が行われました。  小学校の模擬授業は、資料名「モムンとヘーテ」、主題名「友だちと仲よくし、 助け合う」(内容項目2-(3))、中学校の模擬授業は、資料名「いつわりの バイオリン」、主題名「弱さの克服」(内容項目3-(3))でした。  小学校、中学校とも授業のポイントとして「中心発問の工夫とねらいに迫るた めの切り返し」を挙げていました。  その模擬授業後の事後研究の際、フロアから出された意見に、「道徳推進リー ダー」たちは、「どきっ」としました。  その意見は、「切り返しとは、具体的に模擬授業のなかのどの言葉で、どのよ うな役割を果たすものなのか」という意見です。  学習指導要領解説道徳編には、「切り返し」という言葉は出てきません。けれ ど、道徳の授業研究において、「切り返し」の言葉はよく出されます。「切り返 しで意見を深めて」とか「切り返してわけをさぐって」などです。しかし、授業 者が、「切り返し」たつもりの言葉が本当に「切り返し」になっているかどうか は、再考すべきことだと気付かされたのです。「切り返し」は、一般的には「自 分に向けられた質問や発言に対して、適切な応答を返すこと」と辞書などでは説 明されています。道徳の授業で適切な応答といえば、まさにねらいに迫るために 必要な応答を返すことです。したがって、やみくもに、「なぜ」「どうして」「 わけは」・・・と応答することではありません。  児童生徒がどういう考えを述べているのかしっかりと聞くこと、そのうえで、 ねらいに迫るための応答を返すことが大切だと、この日の事後研究で再確認しま した。  そして、そうした切り返しを行うためには、学習指導案に書く、「発問と予想 される反応」はとても重要だと考えされられました。たとえ学習指導案には書き きれなくても、予想される反応を少なくとも五つは考え、その反応にどう切り返 せばねらいに迫ることができるか考えておくことが大切だと思いました。  この日は、道徳推進リーダーにとっては、最後の集合研修でしたが、最終回に も大きな収穫をいただき、第1期14名の「道徳推進リーダー」が誕生しました。                         【小中学校課 森 有希】 ------------------------------------------------------------------------ <②学校図書館の部屋>  今月は新聞紙上も高校入試の話題が多く、中学校では高等学校の入学者選抜に 向かって心身両面に気遣いのする季節を迎えています。児童生徒の巣立ちを前に、 各校では忙しい時を過ごされていることと思います。  先月20日に、第2回学校図書館活動推進事業連絡協議会が開催されました。 県内20校の学校図書館活動推進校の管理職や推進教諭の方々、学校図書館担当 者、市町村教育委員会の学校図書館担当者など、約70名の方が熱心に参加をし ていました。  この連絡協議会の講話を荒川区立第三中学校清水隆彦校長先生にお願いし、中 学校での先進的な実践と取り組みについてお話をしていただきました。先生のお 話からは、「学校を取り巻く状況を生かす」「校長のリードで学校を変える・学 校は変わる」等、多くのことを伝えていただきました。特に学校図書館について は、「人がつながる・学びがつながる・組織がつながる・地域がつながる」とい うコンセプトを持ち、学校図書館活用を学校経営方針に反映させていました。第 三中学校では、学校図書館の学習センター化を促進することを、学校経営方針の 大きな柱に据えたということでした。  また、学校経営の重点項目の具体策を示し、各教科の授業において図書館支援 員とのコラボレーション授業を推進するなど魅力あふれる授業づくりに取り組ま れ、更に、「図書館生徒利用数を年間累積12,000人以上」「貸出し冊数を 累積1,800冊以上」「図書館開館日を220日以上」を目指す等、重点項目 を踏まえた数値目標を設定し、取り組んでいるとのことでした。これらの数値目 標を達成されているということにも、実際に各教科の先生方が学校図書館を活用 した授業に取り組んで、積極的に授業をされていることにも驚かされました。  また、清水隆彦校長先生は、「東京だからできる、お金があるからできる、荒 川区だからできる、ではありません。皆さん勘違いしないでください。私は、ど こへ赴任してもやりますよ!」と熱いメッセージを送っていただきました。  さて皆さんいかがでしょうか。清水隆彦校長先生のお話からも、学校図書館を 図書資料を活用することは、子どもたちの心の耕しと学びの広がりにつながるの だと、思わずにはいられません。無限の可能性がそこにはあるのだと確信してい ます。  今現在、県内20校の推進校の3回目の学校訪問をさせていただいていますが、 負けず劣らず、取り組みを進めていただいている学校があります。次回は本年度 の最終号として、その授業の数々をお伝えしたいと考えています。  子どもと本をつなぎ、心と学びをつなぎたいものです。学校図書館から、たく さんの本から、きっと私たちの願いが、思いが、実現することでしょう。                        【小中学校課 須内 康雄】 ------------------------------------------------------------------------ 【お知らせ】 ≪第8回白木谷国際現代美術館企画 花・花・花とコレクション展≫ ―雪割桜、梅、李王、イクリ、桃の花につつまれて― ◆日時  平成23年2月1日(火)~4月24日(日)  AM10:00~PM5:00(休館日:水曜日) ◆観覧料(ドリンク付き)  大人500円 中学生250円 小学生無料 ◆無料送迎あり(2名様~7名様まで)  JR後免駅前、JR高知駅北入り口、高知県交通・一宮営業所から美術館まで の往復を無料送迎いたします。(TEL090-7624-4811 武内まで) ◆問い合わせ先  〒783-0058  白木谷国際現代美術館 代表者 武内 光仁  南国市白木谷36  TEL 088-862-3513  URL http://shirakidani.jpn.cx/                        【小中学校課 武内 幸子】 ------------------------------------------------------------------------ ≪「青少年赤十字(JRC)への加盟登録」について≫ 1 青少年赤十字について  青少年赤十字では、「健康・安全」、「奉仕」、「国際理解・親善」という三 つの実践目標を掲げています。  この目標は、平成18年12月に改正された教育基本法の教育の目標の「生命 や自然の尊重」、「我が国と郷土を愛するとともに他国を尊重する」といった理 念に結びつくものであると考えます。  また、平成21年9月に高知県教育委員会が策定した「高知県教育振興基本計 画」の基本方針の一つである「心の教育の推進」にも資するものです。  県教育委員会としましても、様々な人との交わりを通じて、国際的な視野を広げ、 自己肯定感や自尊感情、他人を思いやる気持ちや規範意識などを子どもたちに育 むことは重要なことであると考えております。こうしたことからも、今後、多く の学校が青少年赤十字に加盟され、人間性豊かな子どもを育てる教育活動の一つ として活動されることに大きな期待を寄せております。  ついては、別途、日本赤十字社高知県支部から未加盟校の学校長あてに、加盟 登録の依頼がありますので、加盟について御協力をお願いします。 2 加盟することによって  ・赤十字の出前講座(救急法、防災学習、平和・人権学習等)や資材(ビデオ   等)が利用できます。  ・赤十字が主催するいろいろな研修会に参加できます。  ・学校、年代を超えた交流ができます。  ◆経費は無料です。 3 問い合わせ先  〒780-0850  高知市丸ノ内1-7-45 総合あんしんセンター1階  日本赤十字社高知県支部 事業推進課 JRC担当まで  TEL 088-872-6295  FAX 088-872-6299  メール jigyo@kochi.jrc.or.jp                        【小中学校課 今城 純子】 ------------------------------------------------------------------------- 【銀杏だより】 「艱難」(かんなん)  仁淀川町の秋葉祭り。鳥毛棒が霙(みぞれ)交じりの空に舞う頃は、南国土佐 もさすがに寒くなります。またこの冬の寒さは格別で、先月下旬にはとうとう耐 えかね、暖房器具を一つ居間に足すため電気屋さんに走りました。  教室はどうでしょうか。県内の小中学校、大半の教室で暖房器具は完備されて はいません。かじかむ手に白い息を吹きかけながらチョークを持ち黒板に刻む。 掃除の時間ともなれば、氷水と化した水道水で雑巾を絞って子どもたちと床を拭 く。こんな先生たちの姿が浮かんできます。でも厳冬の中、教室に張り詰める空 気もいいものです。  古くから「艱難汝を玉にす」という言葉があります。一代で世界的電器メーカ ーを育てた松下幸之助氏が好んで使ったことば。私も手帳の裏側に書き込んでい ます。どのようなことが艱難なのかは、人によってそれぞれです。子どもには子 どもの艱難が、大人には大人の艱難があり、その艱難も人それぞれの受け止めと 受け入れの度合いがあります。「何だこれくらいのことで」と人様から揶揄され ることであっても、その人にとっては、抜き差しならぬ苦難、困難である場合も 多いのです。とにかく、生きていくうえでの苦難に立ち向かい逃げないことで、 自己を高めることができれば、自身の「玉」を磨き切ることができる。また自身 が玉に昇華することができるということでしょうか。  厳冬の秋葉祭りのころから、春を呼ぶ奈良東大寺二月堂のお水取りがあるころ までは、仕事上、年度のまとめと次年度の展望をしっかり持たなければいけない 時期です。課内では新人もベテランも、この世界での艱難にぶつかり喘ぎ、もが きます(私は年中ですが・・・)。またそうでないと誠実な仕事はできません。 特に人事担当者は、学校に携わる様々な方々の評価と、多岐にわたる条件を勘案 しながら、いい学校をつくるための人事はこれでいいのかと問い続け、寡黙にな っていきます。私は、顔面蒼白になり時に眠れぬ夜を過ごす人事担当者を傍らで 見ながら、声には出しませんが、これを乗り越えてくれることをいつも期待して います。またそうでなければ、本人の玉も磨けず、さらに高知県の教育水準の維 持、向上もありません。  政治学者の姜尚中さんは、人の価値は態度で決まると話しています。「人は人 を評価するとき、どれだけ新しいことを創造したか、どんなすばらしい体験をし たかということを問いがちですが、本当はそんなことではない」、「人の価値を 決めるのは、その人が『周囲にどんな態度をとることができるか』ということ」 と言います。  これまでの自分の振る舞いが、俗に云う自らまいた種で艱難となる場合であっ ても、また、何の前触れもなく突然に降り注ぐ大津波のような艱難であっても、 これらに直面した時の自分の処し方、態度はその人自身の価値を現すということ ですから、年を重ねれば重ねるほど気をつけなければいけません。自戒をこめて。                         【小中学校課長 永野 隆史】 ------------------------------------------------------------------------- ◆「パートナー」の内容は自由に引用、転載してもかまいません。   ◆バックナンバーは小中学校課ホームページでも読むことができます。   http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/310301/ ◆御意見・お問い合わせはこちらまで TEL 088-821-4638 FAX 088-821-4926 mail 310301@ken.pref.kochi.lg.jp 担当:武内/ 発行責任者:小田