高知県公文書開示審査会答申第60号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第60号

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諮問第60号


第1 審査会の結論

知事は、「(1)高知女子大学大学院設置認可申請書 (2)大学院設置申請等関係資料 (3)教員判定結果 (4)高知女子大学大学院設置認可に係る補正申請書 (5)教員判定結果(補正)」について、開示しないこととした部分のうち、別紙1の「開示してはならない情報」欄に該当する部分を除き、開示すべきである。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ては、異議申立人が平成12年4月13日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「高知女子大学大学院の設置認可申請に際して文部省に提出した一切の公文書並びに同申請に対する文部省の指導内容及び教員資格審査の結果がわかる公文書」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が行った「(1)高知女子大学大学院設置認可申請書(以下「申請書」という。) (2)大学院設置申請等関係資料(以下「関係資料」という。) (3)教員判定結果 (4)高知女子大学大学院設置認可に係る補正申請書(以下「補正申請書」という。) (5)教員判定結果(補正)」(これらを併せて、以下「本件公文書」という。)の部分開示決定を取り消し、非開示部分の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の非開示決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。なお、本件公文書はいずれも平成10年9月30日以前に作成し、又は取得した文書であるので、高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成10年3月30日条例第5号)による改正前の高知県情報公開条例(以下「旧条例」という。)第6条が適用される。実施機関及び異議申立人は条例第6条を適用しているが、その趣旨を旧条例に当てはめて、主張を整理した。
  (1) 本件公文書について
 本件公文書は、実施機関が大学院設置認可に際して文部省に提出した申請書並びに一連の関係書類であり、大学設置審議会が教員の適格性を審査する部分と、それに付随する関係資料等からなっている。
   (2) 旧条例第6条第2号本文該当性について
ア 本号本文に該当する個人情報とは、職業、学歴、所属団体等個人の経歴及び社会活動に関する情報その他一切の個人に関する情報であるが、履歴書や学業成績、各種試験成績などが一般的な事例として考えられる。
 申請書及び補正申請書中の履歴書や教育研究業績書等、教員審査に関する書類は、教員審査が各種試験に準じたものと考えられることから、個人に関する情報である。
 また、教員判定結果及び教員判定結果(補正)についても、学業成績や各種試験成績と同じく、個人情報である。
イ 関係資料には、大学の主な役職者等について、年齢、最終学歴、略歴、留学歴等、個人に関する情報が記載されている。
ウ 申請書と補正申請書中には、それぞれの情報を結びつけることにより、間接的に特定の個人の教員判定結果を識別することができる情報が含まれる。これには、判定カード、専任教員一覧、審査対象教員一覧等が該当する。
   (3) 旧条例第6条第2号ただし書ロ該当性について教員資格審査に関する情報は、大学設置審議会の行う教員資格審査に必要な書類として作成したもので、公表を目的として作成した書類ではなく、公表もされていないので、本号ただし書ロに該当しない。個人調書の中の教育研究業績書については、著書や論文を個々に見れば公表しているものもあるが、個々に公表されているかどうかを判断するのは困難であるし、著書や論文の総数についても他の資料からは分かり得ない重要な個人情報であるので、公表を目的にしたものではない。なお、異議申立人が主張するように、高知女子大学では、高知女子大学研究者総覧(以下「総覧」という。)という冊子が作成されており、その中で、教員によっては学歴を公表しているが、各教員の合意の下に作成、公表されている総覧とは様式や内容等が異なり、職歴には過去のこの教員審査の受審歴まで記載することとなっているなど、公にすることが慣行になっているとまではいえない。
   (4) 公務員の職名及び氏名について審査の対象となる教員のうち、認可申請当時高知女子大学の教員である者の職名及び氏名については、地方公務員の職名及び氏名であるが、教員資格審査を受けることは、大学設置認可を受けるときのみに必要とされている評価であって、職務の遂行に係るものではないので、職名及び氏名は開示しない。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
   (1) 条例の趣旨について
 条例は、第1条に規定されているとおり、憲法で保障された知る権利を具体化したものである。第3条に規定されているとおり、実施機関は公文書の開示を請求する権利が十分に尊重されるよう、原則公開の立場に立って条例の解釈運用をしなければならない。
   (2) 大学院設置基準について
 平成11年9月14日、大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)が改正され、第1条の2第1項において、大学院は、教育研究活動等の状況について自己点検・評価を行い、その結果を公表することを義務づけられた。自己点検・評価すべき項目は多岐にわたり、各項目について詳細に自己分析することが求められている。特に教育活動の中心となる教員組織や教員の研究活動が、情報開示において大きな比重を占めることは言うまでもない。
 また、同基準同条第3項で点検及び評価の結果について、他者評価を受けるべき努力義務も規定した。更に、同基準第9条において大学院を担当できる教員の資格は明確に定められており、高知女子大学大学院担当教員が、大学院担当者にふさわしい経歴や教育研究業績を持っているか否かは、高知県民のみならず、受験者等にとって重大な関心事であると同時に、当該大学院自ら点検評価しなければならない事項である。
   (3) 大学院設置認可について
 学校教育法第4条第1項の規定及び、これに基づき定められた大学院設置審査基準要項(昭和49年9月27日大学設置審議会大学設置分科会決定。)によると、新設の大学院においては、大学院担当資格があると文部大臣が認定した者が研究指導や講義を担当できる。
   (4) 旧条例第6条第2号該当性について
 本件公文書の中で非開示とされた情報は、本号本文に定める個人情報であることは認めるが、本号ただし書に該当するため開示しなければならない。
    ア 本号ただし書ロ該当性について
 実施機関は、教員審査の資料となる書類はただし書ロには該当しないと主張しているが、以下のように誤りである。
(ア) 大学院所属教員の氏名と担当科目は、公刊されている入試情報誌「1999年度版医学歯学系大学院案内」等により公表されており、開示しても当該教員のプライバシーを侵害するとは考えられない。
(イ) 更に、総覧において、看護学部教員についても年齢、電話番号、最終学歴、略歴、主な研究業績等詳細に個人情報を開示している。これらの情報は、上述した大学院の情報開示義務に照らしても、最低限必要な情報公開といえ、少なくとも当該冊子に掲載されている情報を非開示とすべき理由は見当たらない。
 また、看護学部以外の教員についても、少なくとも総覧に記載されている部分は開示すべきである。
(ウ) 実施機関は、教育研究業績書について個々に公表されているかどうか判断するのは困難であると主張する。しかしながら、「大学の設置等の認可申請に係る書類の様式及び提出部数(1994年7月20日文部省告示第116号)」様式第4号その2の(注)によると、「担当授業科目等に関連する主要な著書、学術論文等(発行又は発表が予定されているものを含む。)について作成すること。」となっており、明らかに公表された業績を記載することが前提となっている。また、教育研究業績の本質的性格上、公になっているものでなければ業績とはいえない。
 更に、実施機関は教育研究業績を開示すると個人情報である著書や論文の総数がわかるので「『公開を目的として』には該当しない」と主張する。
 しかしながら、条例にいう個人情報は特定の個人が識別できる情報である場合であり、著書や論文の総数からは特定の個人を識別できるとは通常考えられないことから、この主張は失当である。
(エ) また、同様式第4号には、当該教員が「上記のとおり相違ありません。」と署名捺印する欄があり、一種の自己申告書とみなせること、個人調書であっても情報開示請求の対象となることは当該教員に当然了知されているはずであることから、当該教員の不利益になるような情報が記載されているとは考えられず、開示しても支障はないと考えられる。
(オ) 教員判定結果は、設置後の各教員の担当科目を見ればある程度は判断できるのであり、開示したとしてもプライバシーの侵害にはあたらない。
 また、県民の税金で設置された大学院が、適切な資格を持った教員によって運営されているかどうかは、県民や関係者にとっては重大な関心事であり、教員判定の結果も当然開示されてしかるべきものである。
   イ 公務員の職務の遂行に係る職名及び氏名等について
 実施機関は「教員審査を受けることそのものは、教員の職務ではない」というが、本件大学院設置申請は、既に開示された公文書から、高知県及び高知女子大学として取り組んでいる事業であることは明らかである。教員審査は、その結果次第では認可申請そのものの正否を左右する重要なものであり、個人調書等の作成を教員が任意に行ったとは考えられず、個人調書等の教員資格審査用の公文書は、認可申請当時高知女子大学の教員であった者にとっては、自らの職務として作成したものと考えるのが自然である。また、知る権利を保障した条例の趣旨、積極的公開を義務付けた大学院設置基準から考えれば、大学教員にとって保護しなければならないプライバシーの範囲は一般人より小さく、職名及び氏名の他に、教員としての経歴、資格、業績、教員判定結果等が公開されても受忍すべきである。
   ウ その他
 実施機関は、申請書及び補正申請書に記載されている情報を、各情報を結びつけることによって間接的に特定の個人の教員判定結果を識別することができるという理由で非開示としているが、上述のように申請書の情報はそもそも全て開示すべきである。

第5 審査会の判断

(1) 本件対象公文書について
   ア 本件公文書は、平成9年6月20日に、高知女子大学大学院の設置認可を求めて文部省に提出した「申請書」(別紙1の番号1~13)、平成9年7月1日現在で文部省に提出した「関係資料」(同番号14)、平成9年8月の「教員判定結果」(同番号15)、平成9年10月31日に文部省に提出した「補正申請書」(同番号16~26)、平成9年11月の「教員判定結果(補正)」(同番号27)からなり、いずれも旧条例が適用される。
  イ 申請書は学校教育法第4条の規定に基づく認可を文部大臣に求めるもので、関
係資料はその付属資料であり、教員判定結果は、当該申請に係る担当教員の資格について大学設置審議会が審査した結果である。
 そして、審査の結果、不可とされた授業科目について担当教員を差し替え、申請をし直すのが補正申請書であり、補正申請書に対する大学設置審議会の審査の結果が教員判定結果(補正)である。
 (2) 旧条例第6条第2号該当性について
    本号は、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ただし書イ、ロ、ハに該当する情報を除き開示してはならないとするものである。
    ア 本号本文該当性について
    本件公文書には、3(2)の実施機関の主張にあるように、教員の氏名、略歴等と、教員審査の判定結果等が記載されている。これらは、いずれも個人に関する情報であり、本号本文に該当する。
     イ 本号ただし書該当性について
     (ア) 本号ただし書イ該当性
        本件公文書に関しては、何人も閲覧できるとする法令上の規定はなく、本号
        ただし書イに該当しない。
     (イ) 本号ただし書ロ該当性
        本号ただし書ロは、公表を目的として作成し、又は取得した情報は開示することとしたものである。「公表を目的として」とは、積極的に公表を目的としていなくても、結果として同じ効果をもたらす場合を含むものであり、個人が自主的に公表した資料等から何人でも知り得る情報や、公にすることが慣行となっており、公表しても社会通念上、個人のプライバシーを侵害するおそれがないと認められる情報等が該当する。
        a 異議申立人は、大学院所属教員の氏名と担当授業科目名は、公刊されている入試情報誌等により公表されており、また、教員判定結果についても大学院設置後の各教員の担当科目からある程度判断できると主張するので、その点検討する。
        5(1)イで述べたように、教員審査は、申請書に基づき行われるが、審査の結果、不可とされる担当授業科目等があれば、補正申請書により、更に審査を受ける必要がある。したがって、申請書で審査を受けた教員名と担当授業科目名は、大学院設置時の教員体制と必ずしも一致するわけではないので、公表することにより、不可の判定を受けた教員名が明らかになるなど、個人のプライバシーを侵害するおそれがあり、これらはただし書ロに該当しない。
        一方、補正申請書をもって教員審査に関する手続きが終了していることから、本件公文書の場合、補正申請書で審査を受けた教員名及び担当授業科目名は、大学院設置時の教員体制に一致するものである。
        したがって、補正申請書中にある教員名及び担当授業科目名のうち、補正申請で審査を受けた全ての教員の氏名、担当授業科目名が一覧となっている別紙1の番号21、26及び専任教員の一覧である同番号25における教員の氏名及び担当授業科目名は、開示しても審査の過程を知ることはできず、大学院設置時の教員体制として何人でも知り得る情報であるので、本号ただし書ロに該当すると認められる。
        しかしながら、補正申請書中にある教員名及び担当授業科目名であっても、開示することにより、補正申請の段階で初めて審査を受けることになる教員名が明らかになるもの(別紙1の番号22の教員の個人調書中の教員名及び担当授業科目名)や、申請書により不可の判定を受けた教員名が明らかになるもの(同番号23の(科目を減ずる場合の)就任承諾書中の教員名及び担当授業科目名)がある。このように、開示することにより大学院設置時の教員体制からは知り得ない情報が明らかになる教員名や担当授業科目名は、本号ただし書ロに該当しない。
        次に、受審した教員の判定結果である○合、合、可の別については、大学院設置審査基準要項の四 教員組織の規定に基づくものであり、設置後の各教員の担当授業科目からある程度は推測できるとしても、明らかになっているわけではなく、また、申請書により審査を受けたのか、補正申請書により審査を受けたのかという審査の過程が明らかになる情報でもあり、本号ただし書ロに該当しない。
        b 本件公文書には、異議申立人が主張するように各教員の最終学歴、学位、略歴、主な研究業績等、総覧で公になっている情報がある。
        実施機関は、教員の個人調書等にある情報は、総覧とは様式や内容等が異なり、公にすることが慣行になっているとまではいえないと主張するが、総覧と申請書等とで様式や内容が異なっているとしても、高知女子大学自らが発行した総覧の中には、上記のように本件公文書と近似した項目についても記載されている。したがって、(イ)aにおいて氏名及び担当授業科目名が本号ただし書ロに該当すると判断した箇所に記載されている当該教員の経歴等の個人情報及び、教員審査の対象となる部分以外の箇所に記載されている学長や大学院の研究科長、大学の各学部長等の経歴等の個人情報のうち、総覧と一致している情報については、公表された資料等から何人でも知り得る情報であるので、本号ただし書ロに該当すると認められる。
        ただし、上述の総覧と一致する情報のうち、年齢、生年月日については、他で公表しているとしてもなお、慎重に取り扱うべき個人情報の最たるものであるから、非開示が妥当である。
        c また、実施機関は、著書・学術論文等の数について、著書や論文が個々に公表されているかどうかを判断するのは困難で、その総数も他の資料からは知り得ないと主張するが、著書や論文は全て公表されているものであり、総数についても公表された著書等から容易に知ることができるものであることから、実施機関の主張は認められない。
     (ウ) 本号ただし書ハ該当性
        本号ただし書ハは、法令等の規定による許可、免許、届出等に際して作成し、又は取得した情報であって、公益上開示することが必要な情報は開示することとしたものである。
        本件公文書は、学校教育法第4条の規定に基づき、実施機関が大学院設置認可を文部大臣に申請するものであり、本号ただし書ハ前段に該当するものである。そこで後段に該当するか、以下検討する。
        異議申立人は、教員判定結果について、大学院が適切な資格を持った教員によって運営されているかどうかは県民や関係者にとっては
        重大な関心事であるので開示すべきであると主張する。しかしながら、適切な資格を持つ教員による運営は、文部省への履行状況の報告や、大学院設置基準の規定に基づく大学院側の自主的な公表等の、制度的な担保によって図られるべき問題であり、個々の教員の判定結果という個人情報を保護する利益に優越する公益上の必要性があるとまでは認められない。
        したがって、教員判定結果は本号ただし書ハ後段に該当しない。
  (3) 公務員の職名及び氏名について
    異議申立人は、申請当時高知女子大学の教員であった者は、個人調書等資格審査用の公文書を職務上作成しているので、当該公文書に含まれるこれらの教員の職名、氏名等については開示しなければならないと主張する。旧条例においては、公務員の職務の遂行に係る職名及び氏名であっても開示することとなっていないが、実施機関職員の職務の遂行に係る職名及び氏名は、従来から開示されているところである。しかしながら、審査の対象者としての教員の職名及び氏名は、大学院設置認可申請に係る教員の資格審査に用いられるものであり、情報を提供した教員はいるとしても、公文書の作成者はあくまで実施機関であって、当該教員は記載内容について確認をしたに過ぎず、公務員の職務の遂行に係る情報であるとは認められない。
   以上(1)から(3)で検討してきたように、大学院設置後の教員体制及び総覧等既に公表された情報から知り得る情報について、個人の評価に関する教員審査の結果が明らかにならない範囲で開示すべきであるから、別紙1の開示してはならない情報欄に記載する部分を除き、開示すべきである。

第6 結論

 当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。なお、橋本委員は、県立高知女子大学の教員であることから、本件の審査には加わっていない。

第7 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙2のとおり。

別紙1

以下の「別紙1」をクリックするとダウンロードできます。
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別紙2

以下の「別紙2」をクリックするとダウンロードできます。
「別紙2」 [その他のファイル/13KB]


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