平成21年度研究報告 第35号 平成22年3月

公開日 2010年04月28日

更新日 2014年03月16日

1 土佐褐毛牛と電気牧柵による下刈りの省力化とニホンジカ被害の軽減効果

【深田英久、渡辺直史】

 電気牧柵で囲んだ試験地内にヒノキ苗木を植栽し、放牧区内にメスの土佐褐毛牛を2から4頭放牧して無放牧区との群落高の変化および下刈り時間、ススキなどの優占種別の下刈り効果を比較し、苗木の状況を調査した。また、高知県のニホンジカの生息密度が高い地域で電気牧柵の内外にスギ・ヒノキ苗木を植栽し、電気牧柵の有無、また土佐褐毛牛放牧によるシカ害軽減効果を調査した。下刈り省力化試験は、ススキが優占する造林地において顕著な効果がみられたが、放牧日数の増加とともに苗木の踏付けによる枯死が、また、牛の体重が放牧開始時に比べて減少し始めた頃から牛による苗木への食害が増加した。シカ害軽減効果試験は、傾斜の緩やかな試験区(傾斜10°程度)では、電気牧柵のみで被害を十分に防ぐことができなかったが、牛を放牧することでシカ害軽減効果が確認された。また、比較的傾斜が急な試験区(傾斜20°以上)では、電気牧柵のみを設置した試験区でもシカ害がほとんどみられず、放牧による軽減効果は不明確であった。 


2 木製構造物のライフサイクルマネージメントの確立

【政岡尚志、沖公友、東博文、盛田貴雄、板井拓司】

 外構用木製構造物の耐用年数を延長させて構造物が長期的、継続的に使用できるようにするために、施設管理者を対象とした維持管理指針を作成した。指針は、(1)ライフサイクルマネジメントの考え方(2)維持管理に関するアンケート調査(3)劣化状況調査(4)軽微な補修方法(5)大規模な補修方法(6)施工法別ライフサイクルコスト試算から構成され、その内容については、県下の具体的な事例を中心に取りまとめた。


3 高知方式で白炭化されたカシ類の特性調査技術支援 

【市原孝志、三好和広】

 高知方式で白炭化されたカシ類の特性を調査したところ,ウバメガシ炭,アラカシ炭,カシ類炭では,ウバメガシ炭のかさ密度が高いが,真比重に差がないことがわかった。発熱量はウバメガシ炭が高く,その原因は灰分が影響していると考えられる。燃焼特性としては,アラカシ炭やカシ類炭は着火し易く,昇温速度の上昇も速い。炭の容積を一定にすると,ウバメガシ炭の質量が大きくなるため最高温度が高く,燃焼時間が長くなる傾向にあるが,質量を一定にするとアラカシ炭,カシ類炭の最高温度が高くなる。これらウバメガシ炭,アラカシ炭,カシ類炭の燃焼特性の差は,炭のかさ密度の影響が大きいと考えられる。


4 ウドの栽培技術支援(不休眠性ウドの普及にむけて)

【藤本浩平、田所賢一、今西隆男、市原孝志】

 不休眠性ウド「東津野7号」の特性を明らかにするため栽培試験を行った。
1)「東津野7号」の春の萌芽時期は標準品種「都」「愛知紫」「多摩」よりも早く、4月上旬であった。
2)「東津野7号」は、地上部が枯れはじめる11月以降にも萌芽がみられたが、標準品種では萌芽がみられなかった。
3)「東津野7号」の軟化茎は「多摩」に比べて収穫時期が早かった。しかし、収穫した軟化茎は地際直径が細く、一本当たりの重量が軽かった。株当たりの収量は本数が多いものの重量は軽かった。


5 バークの乾燥技術支援

【東博文、沖公友、盛田貴雄】

 平成12年に施設園芸用養液培地のロックウールの代替資材としてスギの樹皮(以下バークと称す)を加熱圧縮成型したモックウールが開発された。その後行われた試験施工により、モックウールの製造工程でのバークの乾燥ムラが原因で、整形不良製品が発生することが確認された。そこで、モックウールの実用化のために太陽熱を利用したバークの予備乾燥方法及び保管管理方法を検討した。バークの保管運搬性を考慮し設計したバーク保管バケットを試作し、ガラス温室内外に設置して、保管バケットにおけるバークの乾燥性能を季節別(夏季、冬季)に確認した。ガラス温室内に保管したものは、屋外保管に比べ乾燥効率が夏季において約3倍向上することが確認された。また、保管バケット内部の通気性を向上させるためにガラス温室内で送風乾燥を行ったものでは、無風乾燥時と比較して乾燥効率が約3倍向上した。


6 優良品種の選抜技術支援(高知県におけるスギ精英樹の材質特性)

【藤本浩平、田所賢一、今西隆男】

 次代検定林の精英樹4クローン「高岡6号」、「土佐1号」、「安芸104号」、「安芸10号」を対象に材質調査を行い、次の知見を得た。
1) 丸太の動的ヤング率を測定した結果、「高岡6号」>「安芸10号」>「土佐1号」「安芸104号」の順であった。
2) 系統に関わりなく、2番玉、3番玉に比べて元玉のヤング率は低い傾向が見られた。
3) 年輪幅が狭いほど動的ヤング率が高い傾向がみられたが、どの因子がヤング率に影響しているかはわからなかった。
4) Fakoppで測定した立木の応力波伝搬速度と、伐倒木でのFFTアナライザーを用いたタッピング法の値には比較的高い正の相関関係がみられた。


この記事に関するお問い合わせ

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