高知県公文書開示審査会答申第151号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第151号

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諮問第151号


第1 審査会の結論

 知事は、本件公文書不存在決定を取り消し、次の(a)~(d)に掲げる「元課長補佐からの聴取録」について、本件開示請求に係る対象公文書として特定した上で、改めて高知県情報公開条例第10条第1項の決定を行うべきである。
(a) 「元課長補佐からの聴き取り」と題する聴取録
(b) 「元課長補佐の話(2、3回目)メモ」と題する聴取録
(c) 「元課長補佐の話」と題する聴取録
(d) 「○○さんの話」と題する聴取録

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成18年7月3日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「『よこはま水産』に対する県の支援の実態を県産業経済委員会が集中審議していることに関し、平成18年4月以降、県当局が平成11年当時の経緯や事情を聴き取った記録の文書一切(メモやフロッピー保存記録を含む)」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が平成18年7月14日付けで行った公文書不存在決定の取消しを求めるというものである。

第3 実施機関の不存在決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している不存在決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
 よこはま水産問題に関して平成11年当時の関係者との面談等により経緯や事情を聴き取った際、内容を記録したメモは存在するが、このメモは個人的な覚え書きとして作成したものである。当該メモは、職務上作成したものであり、聴き取った内容に基づいて会議等で発言することはあったが、そのメモを直接会議等の資料として使用したことはなく、このメモが組織的に用いられた事実はない。また、関係者の意向等も踏まえてメモは聴き取った本人が保管しており、実施機関において管理しているものではない。
 条例や高知県公文書規程(昭和39年高知県訓令第64号)では、このようなメモをすべて公文書として保管しなければならないという具体的な規定はなく、そのようなメモをすべて公文書として保管しなければならないことになれば、未整理のままであったり、不正確であったりする公文書が大量に生じることとなり、混乱を招くことは必至である。
 これらの事実から、当該メモは、条例第2条第2項にいう「組織的に用いるものとして実施機関において管理しているもの」に該当しないため、開示請求の対象となる公文書には該当しない。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書、決定理由説明書に対する意見書及び意見陳述で主張している主な内容は、次のように要約できる。
 海洋局(現「海洋部」を指す。以下同じ。)職員は、県議会産業経済委員会の審議に関連し、平成11年頃のよこはま水産への県の対応について、当時の県担当者から電話や面談で聴き取りをしており、同局職員によれば、少なくとも、【1】個々の職員が聴取中に聴取内容を書きまとめたもの、【2】当該聴取内容を各職員が同局幹部に複数人で報告し合った際に同局幹部が書きまとめたものの2種類のメモが存在する。
 関係者からの聴取後に同局幹部を含めた場で複数の聴取メモを基にして当時の状況について協議していることや、産業経済委員会での審議の過程で同局側は当該聴取内容も基にして当時の経緯や状況を説明していることから、【1】のメモは、仮に職員個々が聴取時に書き記した体裁が個人の手帳であったとしても、組織的に用い、管理している「公文書」に該当する。
 【2】のメモも、同局幹部が【1】のメモに基づいて行った各職員の報告を記し直したものであり、産業経済委員会での審議のたびに継続的、反復的に実施機関として用いているため、「職員が職務上作成し、組織的に用いた文書」に該当する。
 また、関係者の意向を踏まえて職員個々が保管することを実施機関として決めて「保管している」、「保管させている」のであれば、それは実施機関としての一保管形態である。その上「関係者の意向等」という抽象的理由で文書の保管方法を決定できるのであれば、重要な文書を公文書のらち外に置くことが簡単にできることになり、それは開かれた行政執行のあり方と矛盾するものである。

第5 審査会の判断

1 本件開示請求に係る文書について
 実施機関は、県議会産業経済委員会で「よこはま水産」の問題が集中的に審議されたため、海洋局の複数の職員が平成11年当時の関係者から面談や電話で聴き取りを行い、そして議会答弁用に、それぞれ職員が聴き取った内容を局内協議で報告し、それを「産業経済委員会想定問答」という形で整理した。このため聴き取り記録という形で残っているのは、海洋局次長が当時の水産振興課長補佐から聴き取りをしたもの(以下「元課長補佐からの聴取録」という。)だけで、その他の聴き取り記録(以下「他の聴取録」という。)は存在しないと主張している。
 一方、異議申立人は、聴き取りをした職員が作成したかかる聴取録以外に、聴取内容を各職員が報告しあった際に同局幹部が書きまとめたメモ(以下「再録メモ」という。)も存在すると主張している。
 そこで、元課長補佐からの聴取録、他の聴取録及び再録メモについて、公文書不存在決定の妥当性を検討する。
2 元課長補佐からの聴取録について
(1) 当該聴取録について
 元課長補佐からの聴取録として、(a)「元課長補佐からの聴き取り」と題する聴取録、(b)「元課長補佐の話(2、3回目メモ)」と題する聴取録、(c)「元課長補佐の話」と題する聴取録、(d)「○○さんの話」と題する聴取録(以下「聴取録(d)」という。)の4通が存在し、すべてワープロで作成されている。
 また、当該聴取録のすべてに、聴き取りをした年月日及びその方法(面談か電話か)、聴取録作成の年月日並びに海洋局次長の氏名が記載されており、聴取録(d)には「取扱注意」との文言がある。
 実施機関によれば、元課長補佐からの聴き取りは、海洋局次長と相手方との人間関係の中で聴き取りができたもので、公にするという前提なしに聴き取ったものであり、かつ、当該聴取録の議会への提出について相手方から了解が得られなかったため、海洋局次長が相手方との信義則に基づき自らが保管していた。
 ただ、平成19年1月23日に相手方の元課長補佐が地方自治法第100条権限を付与された産業経済委員会において証言するに当たって、当該聴取録の議会への提出について了解が得られ、同月15日に当該聴取録を議会に提出したことから、この日以降は当該聴取録を公文書として海洋局で管理しているとのことである。
(2) 条例第2条第2項該当性について
 実施機関は、当該聴取録について、実施機関の職員が職務上作成した文書であると認めるものの、「組織的に用いるものとして実施機関において管理しているもの」の要件を満たしておらず、条例第2条第2項にいう「公文書」に該当しないとして不存在決定を行っているので、以下、条例第2条第2項該当性を検討する。
 条例第2条第2項は、条例による開示請求の対象となる公文書の範囲について、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」であって、「組織的に用いるものとして実施機関において管理しているもの」と定めている。
ア 「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」への該当性
 当該聴取録は、海洋局次長が職務上聴き取りした内容を記録したものであり、「実施機関の職員が職務上作成した文書」に該当することは明らかである。
イ 「組織的に用いるものとして実施機関において管理しているもの」への該当性
 「組織的に用いるものとして実施機関において管理しているもの」とは、作成又は取得した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関において業務上必要なものとして利用・保存されている状態のものを意味する。
 実施機関は、聴き取った内容に基づいて会議等で発言することはあったが、当該聴取録を会議等の資料として使用したことはないため、組織的に用いられたものでないこと、及び、当該聴取録は、聴き取った海洋局次長が自ら保管しており、実施機関で管理しているものでもなかったことを主張している。
 しかしながら、【1】当該聴取録はすべてワープロで作成され、どの聴取録にも表題右下に作成者である海洋局次長の氏名が記載されており、また、聴取録(d)の左上余白には他の文字より大きい印字で「取扱注意」という文言の記載もあることから、当該聴取録が他の職員の利用に供する目的で作成されたものと伺われること、【2】当該聴取録は、県議会で集中審理された問題について県議会で答弁するために行われた極めて重要な聴き取り調査の内容を記録したものであり、また、本件開示請求から半年後に聴き取りの相手方からの了解が得られると直ちに県議会に当該聴取録を提出していることから、実施機関が当該聴取録の存在及び所在場所を把握しており、聴き取りの相手方の意向から実施機関に代わって海洋局次長が保管していたにすぎないと見るのが自然であることを考慮すると、当該聴取録は、作成した職員個人のメモにとどまるものではなく、「組織的に用いるものとして実施機関において管理しているもの」に該当すると言わざるを得ない。
 したがって、元課長補佐からの聴取録は、条例第2条第2項にいう「公文書」に該当すると認められる。
(3) 条例第10条第1項の決定について
 もっとも、条例は、開示請求のあった文書について、条例の定める非開示情報が記録されている場合には非開示とする事を定めている。
 したがって、実施機関は、本件公文書不存在決定を取り消し、元課長補佐からの聴取録について、本件開示請求に係る対象公文書と特定した上で、改めて条例第10条第1項の決定を行うべきである。
 なお、実施機関によれば、平成19年1月15日に元課長補佐からの聴取録を県議会に提出し、県議会の傍聴人にも一部黒塗りした当該聴取録を含む傍聴用資料を閲覧させたとのことであり、そうであれば本件開示請求時はともかく、現時点においては、当該聴取録について、少なくとも傍聴人に閲覧させた範囲での開示については支障がないものと考えられ、このことを考慮に入れた実施機関の決定が望まれる。
3 他の聴取録及び再録メモについて
 実施機関は、海洋局次長による元課長補佐からの聴取録の存在を当初から認めた上で、その他の職員も電話や面談の際に走り書き程度はした場合もあったと思うが、その走り書きは残されていないと主張している。
 関係者からの聴取後に同局内で聴取内容を報告しあった上で協議し、最終的に「産業経済委員会想定問答」の形で整理していることも併せて考慮すると、他の聴取録について不存在とする実施機関の主張は、不合理なものではないと認められる。
 また、異議申立人は、同局職員によれば、聴き取りをした職員が作成した聴取録以外に、聴取内容を各職員が報告しあった際に同局幹部が書きまとめた再録メモが存在すると主張しているが、実施機関によると、それは別件の開示請求によりすでに異議申立人に開示済みである「産業経済委員会想定問答」のことを指すとのことである。また、仮に局内協議に出席した職員が聴取内容に関する他の職員の発言を手持ち資料として書きとどめることがあったとしても、それは職員個人のメモにとどまり、条例第2条第2項にいう「公文書」とは認められない。

第6 結論

 当審査会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3号の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成18年7月21日 ・実施機関から諮問を受けた。
平成18年7月29日 ・実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成18年9月26日 ・異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成19年2月13日
(平成18年度第8回第一小委員会)
・実施機関及び異議申立人からの意見聴取を行った。
平成19年3月26日
(平成18年度第9回第一小委員会)
・諮問の審議を行った。
平成19年5月1日
(平成19年度第1回第一小委員会)
・諮問の審議を行った。
平成19年6月12日
(平成19年度第2回第一小委員会)
・諮問の審議を行った。
平成19年7月2日
(平成19年度第3回第一小委員会)
・諮問の審議を行った。
平成19年7月30日
(平成19年度第1回公文書開示審査会)
・諮問の審議を行った。
平成19年8月29日 ・答申を行った。

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