高知県公文書開示審査会答申第156号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第156号

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諮問第156号


第1 審査会の結論

 知事が「長岡郡大豊町津家土地改良共同施行委員長から平成19年10月26日に提出された『異議申立』及び『不服申立』の取下書」について部分開示とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成20年3月5日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「長岡郡大豊町津家土地改良共同施行委員長から平成19年10月26日に提出された『異議申立』及び『不服申立』の取下書の写し及び取り下げの決裁文書」(以下「本件対象文書」という。)の開示請求に対して、知事(以下「実施機関」という。)が平成20年3月14日付けで本件対象文書のうち「取下書」(以下「本件公文書」という。)について部分開示とした決定を取り消し、非開示とした印影の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している部分開示決定理由等の主な内容は、次のように要約できる。
 1 本件の経緯について
 長岡郡大豊町津家土地改良共同施行(以下「本件共同施行」という。)から平成19年6月4日付けで大豊町津家地区の換地計画認可申請書が提出されたが、実施機関は、平成19年9月20日付けで「認可できない」旨の行政処分を行った。これに対し、本件共同施行は、平成19年10月26日付けで「異議申立」及び「不服申立」(以下「本件異議申立等」という。)を行ったが、平成19年12月4日付けで本件共同施行の施行委員長名により本件異議申立等の取下書が提出された。
 本件対象文書のうち、本件公文書である「取下書」については、本件共同施行の施行委員長の印影を除いて開示する部分開示決定を行った。また、「取り下げの決裁文書」については、取下書が提出されており措置を講じていないため、平成20年3月14日付けで別途不存在決定を行った。
 2 部分開示とした理由について
 (1)土地改良法第95条の規定による共同施行者が行う土地改良事業の場合には、同条第2項の規約で事業の施行に関する一切の事務を処理する施行委員の代表者(施行委員長)を定め、同条第4項の規定による公告後においては、その代表者が一切の行為を代表して行うことになる。
 また、代理人によって登記を申請するときは、当該代理人の権限を証する情報(不動産登記令第7条第1項第2号)の添付を要することとなっている。換地処分による登記の申請についても同規定が適用され、代理人(代表者)によって登記申請をすることができるが、その場合には申請書に規約、共同施行者名簿及びその者が共同施行者の代表者である旨の都道府県知事の証明書を添付するものとされている。
 したがって、共同施行者の委任により、代表者である施行委員長は、事業の施行に関する一切の事務処理を代表して行い、換地処分による登記の申請についても、代表者(施行委員長)に登記の申請を委任するものであり、委任されている代表者は、使用する印鑑と共同施行の代表者である旨の実施機関の証明を添付して申請することになる。それゆえ、委任された代表者が個人印を事業実施のため共同施行代表者の印鑑として使用することはあり得ることである。
 (2)本件で問題となった印鑑は、その使用に際して換地処分による登記申請に用いられる等その性格上慎重な管理がされているものである。印影の開示が、グラフィック技術が進んだ今日、印鑑偽造等により印影の不正使用を増大させることも考えられる。
 (3)以上により、本件公文書のうち、非開示とした施行委員長の印影は、個人の実印などである可能性があり、開示することにより、当該個人の財産等の保護に支障を生じるおそれがあるため、条例第6条第1項第5号に該当する。
 3 異議申立人の主張について
 (1)異議申立人は、「不動産登記における土地改良区の代表者の印鑑証明について(昭和57年8月3日57−19構造改善局農政部長通達)」(以下「通達文書」という。)により、「代表者の資格及び印鑑証明」(証明者は実施機関)に準じて作成された印鑑であると主張しているが、この   通達文書は土地改良区に関するものであり、これにより実施機関が共同施行者の「代表者の資格及び印鑑証明」をするものではない。
 (2)また、異議申立人は、本件異議申立等を行った本件共同施行は、土地改良法の主務官庁たる実施機関に認可された土地改良事業団体であると主張している。しかし、土地改良法第3条資格者数人が共同して施行する土地改良事業は、一般に土地改良共同施行と略称されるが、この事業を実施する第3条資格者数人(共同施行者)で構成される団体は、民法上の組合に類似するものとして広い意味で組合関係を構成する法人格なき社団たるものであり、土地改良区設立認可とは異なり、法人格なき社団である本件共同施行を認可した事実はない。

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
 1 本件異議申立等に使用された印鑑は、本件土地改良共同施行において通達文書により「代表者の資格及び印鑑証明」(証明者は実施機関)に準じて作成された印鑑であり、本件共同施行の意思表示を行うことのできる公用印である。
 実施機関が行った部分開示決定の理由が「非開示とした施行委員長の印影は、個人の実印などである可能性がある」ということであれば、本件異議申立等の取下書に公用印が使用されていないことになる。
 2 本件異議申立等を行った本件共同施行は、土地改良法の主務官庁たる実施機関に認可された土地改良事業団体であり、公益事業を行っていること、土地改良法その他の法令に従っていること、組織の規約に従っていること  を証するために公用印を常に使用し、土地改良事業団体として使用する印鑑は一つしかない。
 また、公用印は同時にその資格を実施機関が証するものであるので、代表者が個人の印鑑を使用することはありえない。
 したがって、本件公文書の印影は、県知事印や市長村長印と同様の公用印の印影であり、開示することにより、人の生命、身体、財産等の保護に支障を生じるおそれのある情報には該当しない。

第5 審査会の判断

 1 本件公文書について
 本件公文書は、平成19年12月4日付けで本件共同施行の施行委員長から実施機関へ提出された本件異議申立等の取下書である。
 本件公文書には、施行委員長の氏名の右側に施行委員長の印影(以下「本件印影」という。)が記録されている。
 実施機関は、本件印影について条例第6条第1項第5号に該当すると主張しているので、以下検討する。
 2 条例第6条第1項第5号該当性について
(1) 条例第6条第1項第5号は、個人の生命、身体、財産等を保護する観点から、開示するとこれらの保護に支障を生じるおそれのある情報は非開示とすることを定めたものである。
  (2) 土地改良法第95条に基づき同法第3条に規定する資格を有する者数人(共同施行者)が共同して土地改良事業を施行する土地改良共同施行の場合、法人格を有する土地改良区と異なり、共同施行者から構成される団体は、民法上の組合に類似する法人格なき社団たる性格を有するものである。そして、土地改良共同施行の規約でその代表者である施行委員長について定め、施行委員長が事業の施行に関する一切の行為を代表して行うべきものとされている。
  (3) 本件印影は、施行委員長の姓が彫られた印鑑の印影であり、施行委員長が個人としても使用する個人印を本件公文書に押なつした可能性は十分考えられる。
 個人が使用する個人印の印影は、当該個人の財産等を保護する上で特に慎重な管理を要する情報であり、これを開示すると当該個人の財産等の保護に支障が生じることは明らかである。
 したがって、本件印影は、本号に該当すると認められる。
 3 その他
  (1) なお、代理人によって登記の申請をするときは、当該代理人の権限を証する情報の添付が必要とされている。実施機関によれば、換地処分による登記の申請についても、土地改良共同施行の規約で代表者に登記の申請を委任する旨を定めて、代表者が単独でできるものとされている。この場合、代表者である施行委員長は、使用する印鑑と共同施行者の代表者である旨の実施機関の証明を添付して申請するが、印鑑(○○土地改良区理事長之印)の登録が必要な土地改良区の場合と異なり、土地改良共同施行の場合は共同施行之印といったものはなく、施行委員長の個人印を使用しているとのことである。
  (2) 異議申立人は、本件公文書に使用された印鑑について、実施機関の証明を受けた本件共同施行の公用印であり、県知事印や市長村長印と同様の公用印であるため、本件印影を開示すべきであると主張している。
  (3) しかしながら、本件異議申立等の取下書に実施機関の証明を受けた印鑑を使用する必要はないが、異議申立人が主張するように、仮に登記の申請に使用するために実施機関の証明を受けた印鑑が本件公文書に使用されたのであれば、むしろ、当該印鑑の印影は、本件共同施行において事業を施行する上で重要な内部限りで管理すべき情報であり、これが開示されれば本件共同施行の正当な利益が害されると考えられる。
 条例第6条第1項第3号は、法人その他の団体に関する情報であって、開示することにより、当該法人等の競争上又は事業運営上の地位その他の正当な利益を害すると認められる情報は非開示とすることを定めている。
したがって、本件印影がもし施行委員長が登記申請の際に使用する実施機関の証明を受けた印鑑の印影である場合には、条例第6条第1項第3号にも該当すると認められる。

第6 結論

 当委員会は、本件不存在決定について具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成20年7月3日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成20年7月14日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成20年8月7日 ・ 実施機関から意見陳述書を受理した。
平成20年8月18日
(平成20年度第1回第一小委員会)
・   実施機関及び異議申立人からの意見聴取及びの諮問の審議を行った。
平成20年10月15日
(平成20年度第2回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成20年11月26日
(平成20年度第3回第一小委員会)
・ 諮問の審議を行った。
平成21年1月14日
(平成20年度第4回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成21年4月30日 ・ 答申を行った。

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