高知県公文書開示審査会答申第173号

公開日 2012年10月04日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第173号

諮問第173号


第1 審査会の結論

 教育委員会が教育委員会の職員Aの出勤簿(平成20年度から平成23年度)について部分開示とした決定は、妥当である。

第2 異議申立ての趣旨

 本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成23年12月26日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「教育委員会の職員Aが現担当職に就任してから平成23年5月16日までの間の勤務開始時に出勤してなかった日の出勤簿(各種休暇及び出張を含む)」(以下「本件公文書」という。)の開示請求に対し、教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成24年1月6日付けで行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

 実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している本件部分開示決定理由等の主な内容は、以下のように要約できる。
1 本件公文書について
本件公文書を教育委員会の職員A(以下「本件職員A」という。)の「出勤簿(平成20年から平成23年)」と特定し、条例第6条第1項第2号の規定により部分開示した。
本件公文書には、平成20年1月1日から平成23年12月31日までの月日の欄、前年に請求できた年次有給休暇の日数欄、前年に与えられた年次有給休暇の日数欄、年次有給休暇の残日数欄、繰越しできる日数欄、本年に請求できる年次有給休暇の日数欄、年次有給休暇の月別集計欄、特別休暇の月別集計欄、その他の月別集計欄、職名、氏名、出勤、出張、年休、特休、私病、変更の表示がある。
2 条例第6条第1項第2号該当性について
本号本文は、個人のプライバシーを最大限に保護する観点から、特定の個人を識別することができるような情報を非開示とすることを定めている。ただし、本号ただし書は、個人のプライバシーを侵害しないことが明らかな情報及び公的責任を明らかにする必要があると認められる情報は、開示することとしている。
このことから、前年に請求できた年次有給休暇の日数、前年に与えられた年次有給休暇の日数、年次有給休暇の残日数、繰越しできる日数、本年に請求できる年次有給休暇の日数、年休、特休、私病の表示及びこれらを月別に表示したものは、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものと認められ、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められることから、非開示とすべき情報であると判断した。
一方、職名、氏名、出勤、出張、変更の表示は、公務に係る情報と認められることから、開示すべき情報であると判断した。
3 異議申立人の主張に対する意見
異議申立人の本件開示請求の趣旨は、出勤簿によって本件職員Aの勤務開始時の出勤状況を確認することであるが、高知県の出勤簿には、休暇、出張等の時間帯が記載されていない。このため、勤務開始時の出勤状況が分かる公文書は「休暇届承認願」と「旅行命令簿」等であり、これらの公文書を開示請求すれば、異議申立人の請求趣旨に合致すると説明したが、異議申立人は、あくまで出勤簿の開示で勤務開始時の出勤状況を明らかにすべきであると主張している。
 

第4 異議申立人の主張

 異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している本件異議申立ての主な内容は、以下のように要約できる。
1 本件開示請求で求めたのは、出勤簿中の「勤務開始時に出勤していなかった日」のみであり、それ以外の日は求めていない。それゆえ、本件職員Aの「出張命令」、「各種休暇届」等を調査し、出勤簿で該当する日を特定して、それ以外の日を「黒塗り」して開示すべきである。
出勤簿中の本件開示請求で求めた日以外を黒塗りせずに開示したことは、請求以上の公文書を開示したことになり、条例の「請求に基づく公文書開示制度」に反する行為であるのみならず、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第34条にいう職員の守秘義務違反に当たる。
2 休暇時間数をすべて非開示としているが、これでは当該日に出勤していたか全く判断できず、条例第1条の目的に反する。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について
本件公文書は、本件職員Aの平成20年から平成23年の出勤簿である。
高知県では、出勤簿は、平成20年から勤務実績管理システムを通じてコンピューターにより管理されており、本件公文書は、この勤務実績管理システムから本件職員Aの該当年度の出勤簿を出力して印刷したものである。
本件公文書には、(1)本件職員Aの職名及び氏名の欄、(2)平成20年1月1日から平成23年12月31日までの月日の欄、(3)土、日及び休日の表示、(4)出勤、出張、年休、特休、私病及び変更の表示、(5)出勤の月別集計欄、出張の月別集計欄、年次有給休暇の月別集計欄、特別休暇の月別集計欄、その他の月別集計欄、(6)前年に請求できた年次有給休暇の日数欄、前年に与えられた年次有給休暇の日数欄、年次有給休暇の残日数欄、繰越しできる日数欄、本年に請求できる年次有給休暇の日数欄がある。
実施機関は、本件公文書のうち、(1)年休、特休及び私病の表示、(2)年次有給休暇の月別集計欄、特別休暇の月別集計欄、その他の月別集計欄、(3)前年に請求できた年次有給休暇の日数欄、前年に与えられた年次有給休暇の日数欄、年次有給休暇の残日数欄、繰越しできる日数欄、本年に請求できる年次有給休暇の日数欄について、条例第6条第1項第2号の規定により非開示にしているので、以下検討する。
2  条例第6条第1項第2号該当性について
(1)条例第6条第1項第2号について
条例第6条第1項第2号本文は、「個人に関する情報」であって、「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができると認められるもの」については、本号ただし書に該当する場合を除き非開示とすることを定めている。
その上で、本号ただし書エは、地方公務員の職務の遂行に係る情報のうち、当該職務の遂行の内容に係る部分については、開示することを定めている。
(2)条例第6号第1項第2号本文該当性
本件公文書は、本件職員Aの職及び氏名とともに、出勤、出張、年休、特休、私病等の情報を1日単位で表示した出勤簿である。それゆえ、本件公文書中に表示された情報は、特定の個人が識別され得る個人情報であって、本号本文に該当すると認められる。
そこで、本件公文書中の非開示とされた情報がただし書エに該当するかどうかについて、以下検討する。
(3)条例第6条第1項第2号ただし書エ該当性
「年休」は、年次有給休暇の手続を行った場合、表示される。「特休」は、特別休暇の手続を行った場合、表示される。「私病」は、病気休暇(私傷病)の手続を行った場合、表示される。「年次有給休暇の月別集計欄」、「特別休暇の月別集計欄」、「その他の月別集計欄」には、それぞれ年次有給休暇、特別休暇、その他の病気休暇等の休暇について、月別の集計日数が表示される。また、「前年に請求できた年次有給休暇の日数欄」、「前年に与えられた年次有給休暇の日数欄」、「年次有給休暇の残日数欄」、「繰越しできる日数欄」、「本年に請求できる年次有給休暇の日数欄」には、それぞれに該当する日数が表示される。
これらの休暇の種別及び取得状況を示す情報は、地方公務員の職務の遂行とは直接かかわりのない事柄であって、本号ただし書エには該当しないと認められる。
(4)したがって、本件公文書中の非開示とされた情報は、本号本文に該当し、かつ、本号ただし書に該当しないと判断する。
3 その他
(1) 異議申立人は、本件開示請求において出勤簿中の「勤務開始時に出勤していなかった日」のみを求めており、本件職員Aの「出張命令」、「各種休暇届」等を調査し、出勤簿で該当する日を特定して、それ以外の日を「黒塗り」して開示すべきであると主張している。条例第2条は、開示請求の対象となる「公文書」について、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」等であって、「組織的に用いるものとして実施機関が管理しているものをいう。」と定めている。
異議申立人の主張は、実施機関に対し、異議申立人の開示請求の趣旨に沿うような勤務時間開始時に出勤していなかった日を特定した新たな出勤簿の作成を要請するものといえる。しかしながら、条例第2条は、「実施機関が管理しているもの」を開示請求の対象となる公文書としており、それゆえ、条例は、実施機関に対し、開示請求時点において管理していない公文書を、開示請求に応じるために新たに作成することまで義務づけるものではないので、異議申立人の主張は認められない。
(2) 異議申立人は、出勤簿中の本件開示請求で求めた日以外を黒塗りにせずに開示したことは、請求以上の公文書を開示したことになり、条例の「請求に基づく公文書開示制度」に反する行為であるのみならず、地方公務員法第34条にいう職員の守秘義務違反に当たると主張している。
条例第2条は、公文書を「文書」等と定め、また、条例第5条は、「何人も、実施機関に対して、公文書の開示を請求することができる。」と定めている。
条例第2条及び第5条は、開示請求の対象を情報それ自体ではなく、文書等である公文書としており、それゆえ、条例上、開示請求者の求める情報が表示されている公文書中に開示請求者の求めない情報が表示されている場合でも、当該公文書全体が開示請求の対象となるのであり、異議申立人の主張は認められない。

第6 結論

 当審査会は、本件部分開示決定について以上のとおり検討した結果、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断したので、答申する。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成24年1月23日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成24年2月13日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。

平成24年5月1日
(平成24年度第1回第一小委員会)

・ 実施機関から意見聴取を行った。諮問の審議を行った。

平成24年6月12日
(平成24年度第2回第一小委員会)

・ 諮問の審議を行った。

平成24年6月26日
(平成24年度第2回公文書開示審査会全体会)

・ 諮問の審議を行った。
平成24年7月6日 ・ 答申を行った。

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