高知県公文書開示審査会答申第68号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第68号

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諮問第68号


第1 審査会の結論

教育委員会は、「平成12年4月から9月までに、教育職員免許状に関する規則(昭和44年高知県教育委員会規則第5号)第13条第1項に基づき、各校より県教委に提出された免許教科外の教科教授担任許可申請書(第9号様式)及び同条第2項に基づき、県教委が交付した免許教科外の教科教授担任許可書(第10号様式)」のうち、「免許教科外の教科教授担任許可申請書(第9号様式)」について、非開示とした部分の中の「所有免許状の教科」の欄に記載された情報については、開示すべきである。

第2 異議申立ての趣旨

本件異議申立ては、異議申立人が平成12年10月16日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「高知県教育委員会、教育職員免許状に関する規則第13条に記された平成12年度分4月から9月までの第9号様式による各校より県教委に提出された文書および第10号様式による県教委が許可した文書」の開示請求に対し、教育委員会(以下「実施機関」という。)が部分開示とした「平成12年4月から9月までに、教育職員免許状に関する規則(昭和44年高知県教育委員会規則第5号)第13条第1項に基づき、各校より県教委に提出された免許教科外の教科教授担任許可申請書(第9号様式)及び同条第2項に基づき、県教委が交付した免許教科外の許可教授担任許可書(第10号様式)」のうち、「免許教科外の教科教授担任許可申請書(第9号様式)」(以下「本件公文書」という。)について、非開示とされた部分の中の「教職経験年数」及び「所有免許状の種類及び教科」の欄に記載されている情報についての開示を求めるというものである。

第3 実施機関の非開示決定理由等

実施機関が、決定理由説明書及び審査会の質問事項に対する回答の中で主張している部分開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。
1 本件公文書について
本件公文書は、教育職員免許状に関する規則第13条第1項に基づき、教育職員が所有している教育職員免許状の免許教科外についての教科教授担任として許可を受けるために、実施機関に対して各校から提出された申請書である。 本件公文書の様式は、教育職員免許法施行規則(昭和29年10月27日文部省令第26号)附則第13項第1号から第6号で申請書に記載すべき事項として規定されている各項目を基に、作成しているものである。
また、本件公文書中の「最終学歴」及び「教職経験年数」の欄は、いずれも同項第5号の「教諭の履歴」の項目に基づき設けているものであるが、本件公文書の記入要領等を作成していないため、「教職経験年数」の欄に記入する年数の起算については、必ずしも統一したものとなっていない。
実施機関は各校から問い合わせがあった場合には、「教職経験年数」の欄には講師の時からの分を含めるとともに、県外や私立学校での教員歴の期間が長い場合には、その年数も含めて記入するよう指導している。
2 高知県情報公開条例の一部を改正する条例(平成13年3月27日条例第11号)による改正前の高知県情報公開条例(以下「改正前の条例」という。)第6条第2号該当性について
公文書の開示は、県民が有する「知る権利」が十分に尊重されるよう条例を解釈し運用しなければならないとともに、個人に関する情報については、十分に保護されるよう最大限の配慮をしなければならない。
本件公文書に記載されている、免許教科外の教科教授を担当しようとする教育職員の「最終学歴」、「教職経験年数」、「所有免許状の種類及び教科」並びに「所有資格」は、特定の個人に係る学歴、経歴及び資格に当たる。
したがって、これらの情報は、個人に関する情報であると認められる。
3 第6条第2号ただし書該当性について
実施機関が毎年度発行している『高知県教育関係職員名簿』(以下「名簿」という。)には担当教科を掲載しているが、当該年度に担当している教科を掲載しているのであって、教育職員が免許状を所有している教科の全てを掲載しているのではない。
例えば、中学校教諭でありながら小学校若しくは高等学校教諭免許状を所有している者も多く、複数教科の免許状を所有していながら担当教科は一つだけであるといった例も多くあり、「所有免許状の教科」と名簿に掲載されている担当教科とは必ずしも一致しない場合がある。
したがって、「所有免許状の教科」は、名簿等によって明らかにされている情報とはいえず、本号ただし書に該当しない。

第4 異議申立人の主張

異議申立人が異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。
 1
免許教科外の教科教授担任については、教育職員免許法(昭和24年5月31日法律第147号、同年9月1日施行)附則第2項の「ある教科の教授を担任すべき教員を採用することができないと認めるときは、当該学校の校長及び教諭の申請により、一年以内の期間を限り、当該教科についての免許状を有しない教諭が当該教科の教授を担任することを許可することができる。」の規定により、免許状制度の特例として、当分の間、認めてきているものである。しかしながら、52年間経った現在でも、免許教科外の教科教授は行われており、今回の請求の目的は、その実態について調査することである。
同法において、「教育職員の免許に関する基準を定め、教育職員の資質の保持と向上を図ることを目的とする。」(第1条)、「教育職員は、この法律により授与する各相当の免許状を有する者でなければならない。」(第3条)とあるように、教育職員となるためには免許状が必要不可欠であるということであり、また、教育を受ける権利(日本国憲法第26条)を保障するために、教育職員の専門性を確立しようとするものである。
  教育基本法第10条第2項では、「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目的として行わなければならない。」が示すように、教育職員が免許教科外の教科を教授することは、児童生徒の学習権利を保障する上で極力避けなければならない。そして、教育行政としても、教育条件整備の課題としてなくさなければならないものであり、なくすことができないのであれば、その理由と実態を県民に明らかにしなければならない。
また、保護者、県民にとっても、子どもたちの教育を保障していくためには、教育職員がきちんと免許状を所持して教育を行っているかどうかということは、大きな関心事である。
そのため、何の教科の免許状を持っている教育職員が、どんな免許教科外の教科を担当しているかが明らかにならなければ、条例第1条の目的である、県民の県政に対する理解と信頼を深めることはできない。
 2 改正前の条例第6条第2号該当性について
  (1)
 「最終学歴」は、明らかに個人情報と認め、ここでは争わない。

  (2)

「教職経験年数」は、教育職員採用時に、教員採用の名簿が新聞発表等により公表されているため、公表された年度により簡単に推測することができる。また、教職経験年数そのものは、具体的な履歴とはいえず、個人に関する情報とはいえない。

  (3)

教育職員免許状については、教育公務員として職務上、当然必要なものであるとともに、調理師免許、医師・歯科医師免許等と同じように、職務に関係する第三者から提示を求められれば、速やかに見せなければならないものである。 
  また、採用された教育職員が教育職員免許状を所有していることについては、実施機関が採用段階で確認しており、県民はそれを担保にしている。「教育職員免許を持っていても教育公務員でない者」と「教育公務員として教壇に立っている者」とは明らかに異なり、所有免許状を個人に関する情報と判断するときには、そのことを十分考慮する必要がある。
(4)
名簿には教育職員の担当教科が掲載されているが、担当教科と所有免許状とは密接に関係している。今回の開示請求の対象文書である「免許教科外の教科教授担任許可書(様式10号)」(以下「許可書」という。)中の「免許教科外の担任教科」については、今回の開示請求により開示されており、「免許教科外の担任教科」と名簿に記載されている担当教科とを比較すれば、「所有免許状の教科」が推測できるため、実質公開されているといえる。
このことから、「所有免許状の教科」は、改正前の条例第6条第2号ただし書ロの「公表を目的として作成し、又は取得した情報」であるといえるとともに、「公にすることが慣行となっており、公表しても社会通念上、個人のプライバシーを侵害するおそれがないと認められる情報」であるといえる。
また、もし、「所有免許状の教科」を非開示とするならば、今回開示されている許可書の「免許教科外の担任教科」についても非開示としなければならない。したがって、「所有免許状の教科」を非開示とする理由はない。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について

免許教科外の教科教授担任については、教育職員は相当の免許状を有する者でなければならないとされている教育職員免許法の規定の特例として、当分の間、学校長及び教諭の申請により、ある教科の免許状を所有していない教諭が当該教科の教授担任することを、実施機関が許可することができるとされているものである。
本件公文書は、教育職員免許状に関する規則第13条の規定に基づき、教育職員が免許教科外の教科教授を担任することについて許可を受けようとする中学校、高等学校、盲学校、ろう学校及び養護学校の各校から実施機関に提出されたものである。また、許可書は、提出された本件公文書を基に、免許教科外の教科教授を担任することについて許可するために、実施機関が交付したものである。
非開示理由の適用に当たっては、本件公文書は平成13年3月31日以前に作成し、又は取得した公文書であるので、改正前の条例第6条が適用される。
2 改正前の条例第6条第2号該当性について
本号は、条例第3条後段の「個人に関する情報が十分保護されるように最大限の配慮をしなければならない」の規定を受け、原則公開の情報公開制度の下であっても、特定の個人を識別することができる情報は、原則非開示とすることを定めたものである。
これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができると認められる情報は、本号ただし書イ、ロ、ハに該当する情報を除き開示してはならないとするものである。
異議申立人は、本件公文書のうち「教職経験年数」及び「所有免許状の種類及び教科」の欄に記載されている情報については開示するべきであると主張するので、以下検討する。
(1) 「教職経験年数」の欄に記載されている情報について
ア 本号本文該当性について
本件公文書は、教育職員免許法施行規則附則第13項第1号から第6号で、本件公文書に記載すべき事項として規定されている各項目に基づいて作成されている。
「教職経験年数」の欄は、同項第5号の「教諭の履歴」の項目に基づき設けられた欄である。
  異議申立人は、教職経験年数そのものは具体的な履歴とはいえず、個人情報ではないと主張している。
しかしながら、教育職員が教職を何年経験しているかということは、教育職員個人に関する情報であると認められ、本号本文に該当する。
イ 本号ただし書該当性について

(ア) 本号ただし書イ該当性について
「教職経験年数」については、何人も閲覧できるとする法令上の規定はないため、ただし書イに該当しない。

(イ) 本号ただし書ロ該当性について
異議申立人は、教育職員の採用時に、教員採用の名簿が新聞発表等により公表されているため、「教職経験年数」は簡単に推測できると主張している。
  しかしながら、実施機関の主張にもあるように、「教職経験年数」の欄の記載は、必ずしも統一されたものとはなっていない。実施機関は、高知県に採用されてからの年数だけではなく、講師歴や県外及び私立学校での教員歴を含めた年数を記入するよう指導している。
このことから、各年度の高知県公立学校教員採用候補者名簿登載者として新聞発表等により公表されている情報から推測できるのは、あくまで県に採用されてからの年数であり、「教職経験年数」は、教員採用候補者名簿から推測できる年数と同じであるとはいえない。
したがって、ただし書ロに該当しない。

(ウ) 本号ただし書ハ該当性について
教育職員が教職を何年経験しているかという情報は、当該職員の職務の遂行に係る情報とは認められないため、ただし書ハに該当しない。

 
   (2) 「所有免許状の種類及び教科」の欄に記載されている情報について

ア 本号本文該当性について
(ア) 「所有免許状の種類」の欄について
「所有免許状の種類」の欄には、教育職員免許法に規定されている普通免許状の中学校教諭二種免許状を省略した「中二」や高等学校教諭一種免許状を省略した「高一」など、教育職員が所有している免許状の種類についての情報が記載されている。
また、同法の規定による普通免許状には、例えば、中学校教諭の場合、専修、一種、二種免許状があり、それぞれの免許状を受けるための基礎資格として修士、学士の学位や準学士の称号等を要することや、大学において習得することを必要とする最低単位数などが定められている。
このことから、「所有免許状の種類」は、開示すると、教育職員の学歴等の情報が明らかになる場合もあり、個人に関する情報であると認められる。
したがって、「所有免許状の種類」は本号本文に該当する。

(イ) 「所有免許状の教科」の欄について
「所有免許状の教科」の欄には、理科や音楽など、教育職員が免許状を所有している教科名が記載されており、教科名は、教育職員が所有する資格についての個人に関する情報であると認められる。
  したがって、「所有免許状の教科」は本号本文に該当する。

イ 本号ただし書該当性について

(ア) 「所有免許状の種類」の本号ただし書該当性について

a 本号ただし書イ該当性について
「所有免許状の種類」の欄には、何人も閲覧できるとする法令上の規定はないため、ただし書イに該当しない。
b 本号ただし書ロ該当性について
「所有免許状の種類」は、公表されている名簿等でも明らかにされておらず、公表を目的として作成し、又は取得した情報とは認められない。また、 & 公にすることが慣行になっている情報であるともいえない。
したがって、ただし書ロに該当しない。
c 本号ただし書ハ該当性について
「所有免許状の種類」の欄に記載されている情報は、教育職員の職務の遂行に係る情報とは認められない。
したがって、ただし書ハに該当しない。


(イ) 「所有免許状の教科」の本号ただし書該当性について
実施機関は、教育職員の「所有免許状の教科」と名簿に記載されている担当教科とが必ずしも一致しない場合があるため、本号ただし書に該当しないと主張しているが、当該項目について、以下検討する。

a  教育職員が免許状を所有している教科のうち、当該年度に教科教授を担当している教科については、実施機関が毎年度発行している名簿に掲載されており、既に公にされた情報であるといえる。
また、教科教授を担当するためには、教育職員が当該教科の免許状を所有しているか、若しくは免許教科外の教科教授担任について許可を受ける必要があり、名簿には免許状を所有している教科か、免許教科外の教科教授担任の許可を受けた教科のいずれかが掲載されることになる。
こうしたことから、名簿に掲載されている担当教科と、許可書で開示されている「免許教科外の担当教科」とを比較すれば、当該教育職員が免許状を所有している教科全てについては推測できないものの、当該年度に担当している教科については、当該教育職員が所有している免許状の教科を容易に推測することが可能である。
更に、教育職員がどの教科を担当しているかという情報は、学校の所在する地域において、児童生徒はもちろん、保護者や住民にも既に周知の事実となっている。
b 次に、教育職員が免許状を所有している教科のうち、当該年度に教科教授を担当していない教科については、名簿では、確かに明らかにはなっていない。
しかしながら、教育職員の採用後の教科教授の担当については、採用された時の教科にかかわらず、免許状を所有している教科に基づいて学校内で調整をして決定されている。
このことから、教育職員が免許状を所有している教科については、ある年度においては教科教授を担当していなくても、他の年度においては担当する可能性があり、学校の所在する地域住民の方には、おのずと知られていく情報である。
したがって、「所有免許状の教科」は、教育職員の職務遂行上、一般的に明らかになるものであり、公表しても、個人のプライバシーを侵害するおそれがないと認められる。
以上のことから、「教育免許状の教科」はただし書ロに該当する。

     (3) 「備考」の欄に記載されている情報について
  「備考」の欄には、教育職員の教育職員免許以外の所有資格等が記載されており、当該個人に関する情報であるので、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。
 
  以上のように、本件公文書のうち、「教職経験年数」、「所有免許状の種類」及び「備考」の欄に記載された情報は、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないため、非開示が妥当である。
  また、「所有免許状の教科」の欄に記載された情報は、本号ただし書ロに該当するため、開示すべきである。

第6 結論

当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成12年12月7日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成13年1月12日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成13年3月19日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成13年5月10日
(平成13年度第1回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年6月12日
(平成13年度第3回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年7月5日
(平成13年度第5回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年7月19日
(平成13年度第7回第一小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年7月24日
(平成13年度第1回公文書開示審査会)
・   諮問の審議を行った。
平成13年8月27日 ・ 答申を行った。

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