高知県公文書開示審査会答申第71号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第71号

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諮問第71号


第1 審査会の結論

 知事は、不受理とした「警察職員互助会の平成10、11年度事業報告書(決算書等)、平成10、11年度補助金支出決裁書類(支出命令書(控え)、支出個別表を除く。)、平成12年度補助金支出決裁書類、平成12年度事業計画書及び警察職員互助会の規約」のうち、「平成10、11年度補助金支出決裁書類(支出命令書(控え)、支出個別表を除く。)、平成12年度補助金支出決裁書類」については不受理としたことは妥当であるが、その余の公文書については、請求を受理したうえで開示・非開示等の決定を行うことが適当である。

第2 異議申立ての趣旨

  本件異議申立ては、異議申立人が平成13年1月31日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「警察職員互助会の平成10、11年度事業報告書(決算書等)、平成10、11、12年度補助金支出決裁書類(添付資料含む。)、平成12年度事業計画書及び規約」の開示請求に対し、知事(以下「実施機関」という。)が行った「警察職員互助会の平成10、11年度事業報告書(決算書等)、平成10、11年度補助金支出決裁書類(支出命令書(控え)、支出個別表を除く。)、平成12年度補助金支出決裁書類、平成12年度事業計画書及び警察職員互助会の規約」(これらを併せて、以下「本件公文書」という。)の不受理処分を取り消し、本件公文書の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の不受理とした理由等

実施機関が決定理由説明書及び意見陳述で主張している不受理とした理由等の主な内容は、次のように要約できる。

(1) 不受理とした公文書の管理について

本件公文書は、財団法人高知県警察職員互助会(以下「警察職員互助会」という。)に補助金を支出するために、高知県会計規則(平成4年3月10日規則第2号。以下「会計規則」という。)第3条第1項に基づく知事の委任を受けた警察本部長からの支出命令を受けた際に、支出の確認及び決定を出納室で行っているものである。支出の決定を行った後は、会計規則第48条第2項の規定により、支出命令書等の証拠書類の原本を警察本部長に返しており、知事は支出命令書の控えを除いては管理していない。
(2) 条例第2条第2項該当性について
条例第2条第2項により、公文書の定義として「組織的に用いるものとして実施機関において管理しているもの」という要件が含まれるが、平成11年(行ヒ)第221号・平成13年12月14日最高裁判所判決(以下「最高裁判決」という。)において、開示請求の対象となる「実施機関において『管理』している公文書」の意義について、「管理」とは、「当該公文書を現実に支配、管理していることを意味するものと解すべきである。」という判断がなされており、この判断に従えば、本件公文書は実施機関に入っていない警察本部長において現実に管理している書類であるから、実施機関において管理している公文書に当たらず、条例第2条第2項に規定する公文書に該当しない。

第4 異議申立人の主張

異議申立人が異議申立書、意見書及び意見陳述で主張している異議申立ての主な内容は、次のように要約できる。


(1) 本件公文書の公開の意義について

実施機関は、警察職員互助会に多額の公費が補助金として支出されている以上、本件公文書を公開することにより、その使途を具体的に明らかにするのは当然である。また、警察職員には知事の任免権の及ばない国費職員が多数対象とされており、県民負担をすることの可否自体に問題があり、他の互助会と比較してもより透明性を高めることが求められる。

仮に証拠書類が警察本部長に返されていても、取り寄せて公開することは簡単なことであり、官の自己中心的な見解により県民のチェックを回避しようとする態度は許されない。

また、事業報告書等は、補助金を交付された団体が知事に行う収支報告書類として、知事は当然開示すべきものである。

(2) 公文書の保管管理について

    実施機関は最高裁判所の一判決を引き合いに、公益性には全く意を払わない偏った主張をしているが、高知県が交際費の公開等、最高裁判所の判断の枠を超えた公開を行ってきたように、情報公開に真摯に取り組む姿勢があれば、事務執行に支障がない以上情報提供として扱っても問題がないものであり、条例を盾に本件公文書を県民から隠そうとする見識は、県民の立場に立っていないと言わなければならない。

 なお、地方自治法第149条第8号において、地方公共団体の長の事務として「公文書を保管すること」とされており、総括的には知事が保管権限を有する。

 また、諸判決において、「独立した機関において現実に保管されている場所から取り寄せ得ることができるものと解する」との判決もある。

第5 審査会の判断

当審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を踏まえ、調査した結果、以下のとおり判断する。



 (1) 補助金支出決裁書類について

 実施機関は、補助金支出決裁書類について出納室において支出の確認を行い、会計規則の規定に基づき控えを保管し、原本は警察本部長に返す取扱いをしており、知事は現実に上記公文書を管理していない旨を主張し、また、異議申立人は、知事が保管権限を有し、取り寄せて開示すべきであると主張しているので、以下検討する。

 



 条例第2条第2項の「組織的に用いるものとして実施機関において管理しているもの」にいう「管理」について、最高裁判所は、「地方自治法第149条第8号の『保管』は地方公共団体のすべての証書及び公文書類の総括的な責任と権限を有する者が長であることを明らかにしたものに過ぎず、これに対し、条例の『管理』は、それぞれの実施機関が現実に支配、管理していることを意味するものと解すべきであり、地方自治法第149条第8号を根拠に、県における保存の実態等を考慮しないまま、本件公文書を知事が管理するものと断定することはできない。」(最高裁判決)旨、判示している。

 当審査会の判断としても、地方自治法第149条第8号の規定により知事以外の実施機関の公文書にまで当然に知事の管理権限が及ぶと解することはできないと考える。したがって、条例第2条第2項の公文書に該当するか否かについては、当該公文書の性質、県における保存の実態等を考慮し、総合的に判断する必要がある。



 そこで、補助金支出決裁書類について見てみると、知事は高知県会計規則に規定する知事の権限に属する事務の一部を、地方自治法第180条の2の規定に基づき警察本部長に委任している。これに基づき、警察本部長は支出負担行為を歳出予算の範囲内で執行し、支出を出納長に命令しており、補助金支出決裁書類は、実施機関が主張するとおり支出命令書の控えを出納室に保管するほかは、会計規則第48条第2項の規定に基づき、警察本部長に返していることが認められた。

 



 以上のことから、補助金支出決裁書類については、知事において現実に管理していないことに加えて、支出命令等の権限を知事が警察本部長に委任し、警察本部長がその委任された権限に基づき支出命令等を行い、関連文書を保管していることから、本件公文書のうち、「平成10、11年度補助金支出決裁書類(支出命令書(控え)、支出個別表を除く。)、平成12年度補助金支出決裁書類」について不受理としたことは妥当である。

(2) 警察職員互助会事業報告書等について
 本件公文書について、実施機関は補助金支出決裁書類という側面でしか特に主張を行っていないが、異議申立人は、事業報告書等について、補助金を交付された団体が知事に行う収支報告書類として知事が開示すべきであると主張する。

 



 この点について、警察職員互助会は民法上の公益法人であり、その設立許可及び監督事務は知事に属する。この事務について、知事は昭和60年12月1日付け高知県訓第148号により、地方自治法第180条の2の規定に基づき警察本部長に補助執行させており、法人の事業実績報告書、事業計画書、収支決算書、収支予算書等の受理、法人の寄附行為の変更認可の申請の受理等の事務がこれに含まれる。したがって、本件公文書のうち、「警察職員互助会の平成10、11年度事業報告書(決算書等)、平成12年度事業計画書」は、警察本部長が知事の事務を補助執行して受理するものであると認められる。

 当該公文書の管理については、上記訓により、その時点で関係書類が知事部局関係課より警察本部関係課に引き継がれており、その後の警察職員互助会の事業報告書等については、知事部局関係各課においては受理していないことが認められた。



 しかしながら、知事の主管に属する公益法人の設立の許可及び監督に関しては、通常は知事部局の関係各課が公文書を保管するものであり、現実に警察本部長が管理しているものであっても、警察職員互助会に係る公益法人の設立許可及び監督事務については、知事の権限を警察本部長に補助執行させているに過ぎず、委任と違い、知事に当該事務についての権限が残されていると解される。

 したがって、条例第3条の公文書の開示を請求する権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用しなければならないという趣旨から判断すると、本件開示請求の段階で警察本部長が条例の実施機関ではなく、警察本部長が本件公文書について開示請求に対する決定を行い得ないことを考慮し、知事が補助執行させることにより作成又は取得した公文書である「警察職員互助会の平成10、11年度事業報告書(決算書等)、平成12年度事業計画書」については、知事の権限により取り寄せ、開示・非開示等の判断を行うことが適当である。

(3) 警察職員互助会規約について

    警察職員互助会規約としては、警察職員互助会寄附行為及び警察職員互助会運営規則が該当する。

 上記訓によれば、警察職員互助会に係る関係書類については、知事部局関係課から警察本部関係課へ引き継ぐこととされており、これら文書の保管管理の事務も、知事が警察本部長に補助執行させている事務の一部に含まれるものである。

 したがって、本件公文書のうちこれらについても、補助執行させている知事の権限として取り寄せて、知事が開示・非開示等の判断を行うことが適当である。

第6 結論

当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、次のとおり。

年月日 処理内容
平成13年3月28日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成14年2月19日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成14年3月11日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成14年3月20日
(平成13年度第10回第二小委員会)
・ 実施機関及び異議申立人の意見陳述を行った。
平成14年4月9日
(平成14年度第1回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年5月7日
(平成14年度第2回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年6月10日
(平成14年度第3回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年7月11日
(平成14年度第2回公文書開示審査会)
・   諮問の審議を行った。
平成14年10月28日 ・ 答申を行った。

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